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令嬢13歳・ノエル様とそのライバル?
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ノエル様はリュオンの手を捻り上げたまま――ミルカ王女と、シュミナ嬢と、そしてわたくしとを見比べて。
――訳が分からないという顔で首を傾げた。
ノエル様のシュミナ嬢を見る目には明らかな嫌悪が含まれている。
けれど、ミルカ王女の手前どうしていいのか、そんな困った表情だった。
……そりゃ、そうですよね。ゾフィー様にとても酷い事をしたものね、シュミナ嬢は。
そしてそれを未だ謝罪していない。
監禁の危機だからそれどころでは……なんて事はされた方には関係無いしなぁ……。
ノエル様はわたくしを何度見かして『ん……ビ……?? いや、男だな? 誰だ?』と小声で呟いた。
衣装合わせの時にノエル様には『男装』姿は見せた事があるのだけれど、今は髪飾りで『性転換』している状態なので体格の差などが引っかかり彼は『ビアンカ』だと断定出来ないのだろう。
ノエル様。混乱させてごめんなさい……いずれ事情は話します!
「ノエル・ダウストリア!! いい加減に離せ!! お前には関係ない事だ!!」
リュオンがノエル様の手を解こうと身を捩るけれど、ビクともしない。
ノエル様の方がリュオンよりもかなり細身に見えるのになぁ……日々の訓練の成果ってすごい。
「ヴィゴ様……!」
図書室の扉が開きマクシミリアンが慌ただしくこちらへと駆け寄って来た。
『犬』越しで情報を得た後に急いで来てくれたのだろう。
黒い髪が少し乱れて、息も上がっており、いつもよりも隙がある雰囲気がなんだか色っぽい。好き。うちの執事で彼氏がとてもかっこいいです。
そんな場合じゃないのは分かっているのだけど……うん。
……図書室で真面目に勉強をしていた生徒達は興味津々だったり迷惑そうだったり……様々な顔でこちらを見ている。
本当に申し訳ないやら居た堪れないやらな気持ちになってしまう。
「……大丈夫ですか?」
「平気だよ。マクシミリアン」
わたくしは彼に微笑むと、心配いらないというように手を振ってみせる。
だけどマクシミリアンはこちらに歩み寄ると、わたくしの頬を両手で挟んでじっと覗き込んだ。
「……本当に、無事ですか? お坊ちゃま」
「……無事だって言ってるでしょ?」
マクシミリアンは安心したように息を吐くと、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
彼の手で撫でられるとつい安心してしまって、思わずいつもの癖でぎゅーっと抱きつきそうになってしまったけれど……。
公衆の面前……以前に、今のわたくしの外見は『男』なのよね。
……止めておこう。
「マクシミリアンが一緒にいるって事はシュラット侯爵家の縁者かな? ビアンカ嬢に似てる訳だね」
ノエル様は得心がいったように頷いた。
「……シュラット侯爵家の縁者……?」
リュオンは苦々しい顔をして、また舌打ちをする。
ノエル様はそのリュオンの腕を少し乱暴に付き飛ばすようにして離した。
「リュオン・パルフィ子爵家子息。相手を見てケンカを売った方がいいんじゃないの? 君がいくらエイデン様のお気に入りでも、シュラット侯爵家の縁者を傷つけたとあっては庇っては貰えないと思うよ?」
「黙れ、ノエル・ダウストリア。痛い目に遭いたいのか?」
「俺に訓練で一度も勝てない癖に、相変わらず態度だけはでかいね」
ノエル様はなんだかリュオンには敵意剥き出しだ。
しかしなんとなく、この二人の関係が見えてきた気がする。
ノエル様は代々近衛騎士を輩出するダウストリア家のご子息……つまりフィリップ王子の側近候補だ。
そしてこのリュオンは王家の血筋が流れる筆頭公爵家、カーウェル家に仕える者。
カーウェル家は王国で二番目の権勢を誇っており、エイデン様も第5位の王位継承権を持っている。
この二人は……2大派閥の次世代の騎士筆頭として鎬を削る者同士なのだろう。
ちなみに我がシュラット侯爵家は公爵家でないのにも関わらず父様の手腕により、実質的にはこの国で四指に入る権力を持っている。
なのでエイデン様もおいそれとは手を出せないのだ……父様、本当にありがとう。
お兄様もやり手のようだし、シュラット侯爵家は安泰です。
「騎士祭で決着をつけてやる。その首を洗って待っていろ」
「リュオンの腕で決勝まで残れるの? まぁ、ゾフィーに俺のかっこいいところを見せられるいい機会だし、二度と立ち上がれないくらいに叩きのめしてやるよ」
ノエル様、さりげなく惚気たわね。
ゲーム内でもヒロインの為にノエル様が噛ませ犬キャラと騎士祭で戦うみたいなイベントがあった気がする。
もしかしてあの噛ませ犬キャラって、リュオンだったのかしら。
ちなみに騎士祭は学園祭と同時開催の腕に自信がある生徒達がトーナメント形式で戦う催しだ。
自分の想い人が出場する令嬢達にとっては盛り上がるイベントでもあり、これを機会に想いを伝える男女も多いらしい。
ゲームの成長を遂げ決勝を勝ち抜いたノエル様が微笑みながらヒロインを抱きしめるスチル、すごく良かったなぁ。
……ノエル様がお勝ちになった後のゾフィー様とのやり取り、こっそり覗き見しちゃダメかしら。
ノエル様の事だからきっとすごく素敵な事を言ってくれるんだろうな。
「ノエル・ダウストリア、覚えていろよ……!」
そう言ってリュオンは鼻息荒く去って行った。
なんだか嵐みたいな人だったな……。
……カーウェル家の子飼いって他にも学園に居るのかな。
マクシミリアンに後で調べて貰おう。
「ノエル~騎士祭、私も応援に行くわ」
「ミルカ王女、是非いらして下さい。必ず勝利するよ、可愛いゾフィーの為に」
ミルカ王女がなんだか楽しそうに言い、ノエル様はまた惚気る。
ゾフィー様の事が可愛くて仕方ないみたいね。ご婚約はいつなのかしら……!
今日は勉強どころじゃなくなったので、ひとまず解散という事になった。
ノエル様はミルカ王女にシュミナ・パピヨンと何故いたのか聞きたげな顔をしていたけど、シュミナ嬢がなんだか大人しいのを見て複雑な顔をした後に黙り込んだ。
シュミナ嬢が元気そうだった事には安心したけれどエイデン様の束縛が強くなっているのだなという事を実感してしまう。
ヤンデレの思考パターンなんて分からないし……どう気を付けてあげればいいんだろうなぁ。
――訳が分からないという顔で首を傾げた。
ノエル様のシュミナ嬢を見る目には明らかな嫌悪が含まれている。
けれど、ミルカ王女の手前どうしていいのか、そんな困った表情だった。
……そりゃ、そうですよね。ゾフィー様にとても酷い事をしたものね、シュミナ嬢は。
そしてそれを未だ謝罪していない。
監禁の危機だからそれどころでは……なんて事はされた方には関係無いしなぁ……。
ノエル様はわたくしを何度見かして『ん……ビ……?? いや、男だな? 誰だ?』と小声で呟いた。
衣装合わせの時にノエル様には『男装』姿は見せた事があるのだけれど、今は髪飾りで『性転換』している状態なので体格の差などが引っかかり彼は『ビアンカ』だと断定出来ないのだろう。
ノエル様。混乱させてごめんなさい……いずれ事情は話します!
「ノエル・ダウストリア!! いい加減に離せ!! お前には関係ない事だ!!」
リュオンがノエル様の手を解こうと身を捩るけれど、ビクともしない。
ノエル様の方がリュオンよりもかなり細身に見えるのになぁ……日々の訓練の成果ってすごい。
「ヴィゴ様……!」
図書室の扉が開きマクシミリアンが慌ただしくこちらへと駆け寄って来た。
『犬』越しで情報を得た後に急いで来てくれたのだろう。
黒い髪が少し乱れて、息も上がっており、いつもよりも隙がある雰囲気がなんだか色っぽい。好き。うちの執事で彼氏がとてもかっこいいです。
そんな場合じゃないのは分かっているのだけど……うん。
……図書室で真面目に勉強をしていた生徒達は興味津々だったり迷惑そうだったり……様々な顔でこちらを見ている。
本当に申し訳ないやら居た堪れないやらな気持ちになってしまう。
「……大丈夫ですか?」
「平気だよ。マクシミリアン」
わたくしは彼に微笑むと、心配いらないというように手を振ってみせる。
だけどマクシミリアンはこちらに歩み寄ると、わたくしの頬を両手で挟んでじっと覗き込んだ。
「……本当に、無事ですか? お坊ちゃま」
「……無事だって言ってるでしょ?」
マクシミリアンは安心したように息を吐くと、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
彼の手で撫でられるとつい安心してしまって、思わずいつもの癖でぎゅーっと抱きつきそうになってしまったけれど……。
公衆の面前……以前に、今のわたくしの外見は『男』なのよね。
……止めておこう。
「マクシミリアンが一緒にいるって事はシュラット侯爵家の縁者かな? ビアンカ嬢に似てる訳だね」
ノエル様は得心がいったように頷いた。
「……シュラット侯爵家の縁者……?」
リュオンは苦々しい顔をして、また舌打ちをする。
ノエル様はそのリュオンの腕を少し乱暴に付き飛ばすようにして離した。
「リュオン・パルフィ子爵家子息。相手を見てケンカを売った方がいいんじゃないの? 君がいくらエイデン様のお気に入りでも、シュラット侯爵家の縁者を傷つけたとあっては庇っては貰えないと思うよ?」
「黙れ、ノエル・ダウストリア。痛い目に遭いたいのか?」
「俺に訓練で一度も勝てない癖に、相変わらず態度だけはでかいね」
ノエル様はなんだかリュオンには敵意剥き出しだ。
しかしなんとなく、この二人の関係が見えてきた気がする。
ノエル様は代々近衛騎士を輩出するダウストリア家のご子息……つまりフィリップ王子の側近候補だ。
そしてこのリュオンは王家の血筋が流れる筆頭公爵家、カーウェル家に仕える者。
カーウェル家は王国で二番目の権勢を誇っており、エイデン様も第5位の王位継承権を持っている。
この二人は……2大派閥の次世代の騎士筆頭として鎬を削る者同士なのだろう。
ちなみに我がシュラット侯爵家は公爵家でないのにも関わらず父様の手腕により、実質的にはこの国で四指に入る権力を持っている。
なのでエイデン様もおいそれとは手を出せないのだ……父様、本当にありがとう。
お兄様もやり手のようだし、シュラット侯爵家は安泰です。
「騎士祭で決着をつけてやる。その首を洗って待っていろ」
「リュオンの腕で決勝まで残れるの? まぁ、ゾフィーに俺のかっこいいところを見せられるいい機会だし、二度と立ち上がれないくらいに叩きのめしてやるよ」
ノエル様、さりげなく惚気たわね。
ゲーム内でもヒロインの為にノエル様が噛ませ犬キャラと騎士祭で戦うみたいなイベントがあった気がする。
もしかしてあの噛ませ犬キャラって、リュオンだったのかしら。
ちなみに騎士祭は学園祭と同時開催の腕に自信がある生徒達がトーナメント形式で戦う催しだ。
自分の想い人が出場する令嬢達にとっては盛り上がるイベントでもあり、これを機会に想いを伝える男女も多いらしい。
ゲームの成長を遂げ決勝を勝ち抜いたノエル様が微笑みながらヒロインを抱きしめるスチル、すごく良かったなぁ。
……ノエル様がお勝ちになった後のゾフィー様とのやり取り、こっそり覗き見しちゃダメかしら。
ノエル様の事だからきっとすごく素敵な事を言ってくれるんだろうな。
「ノエル・ダウストリア、覚えていろよ……!」
そう言ってリュオンは鼻息荒く去って行った。
なんだか嵐みたいな人だったな……。
……カーウェル家の子飼いって他にも学園に居るのかな。
マクシミリアンに後で調べて貰おう。
「ノエル~騎士祭、私も応援に行くわ」
「ミルカ王女、是非いらして下さい。必ず勝利するよ、可愛いゾフィーの為に」
ミルカ王女がなんだか楽しそうに言い、ノエル様はまた惚気る。
ゾフィー様の事が可愛くて仕方ないみたいね。ご婚約はいつなのかしら……!
今日は勉強どころじゃなくなったので、ひとまず解散という事になった。
ノエル様はミルカ王女にシュミナ・パピヨンと何故いたのか聞きたげな顔をしていたけど、シュミナ嬢がなんだか大人しいのを見て複雑な顔をした後に黙り込んだ。
シュミナ嬢が元気そうだった事には安心したけれどエイデン様の束縛が強くなっているのだなという事を実感してしまう。
ヤンデレの思考パターンなんて分からないし……どう気を付けてあげればいいんだろうなぁ。
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