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令嬢13歳・隠しキャラに思いを馳せる
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エイデン・カーウェル公爵家子息。
攻略キャラのうちの一人……なんだけど割と特殊な隠しキャラだ。
まずパラメーターが極端に低くないと、出現しない。普通に過ごしていたら出ないキャラなのだ。
一切勉強や運動をせずに遊ぶコマンドのみを選び続けて極端にパラメーターを低くしたら出るのよね、確か。
……シュミナ嬢、貴女どれだけ遊んでいたの。
そして彼の属性は……『ヤンデレ・共依存』だ。
ダメっ子なヒロインに惹かれる彼はヒロインがダメであればある程彼女にのめり込んでいく。
ヒロインが途中からちゃんとパラメーターを上げた上で彼に寄り添う選択肢を選べば、目が覚めた彼との健全なハッピーエンドを迎えられるのだけれど……。
パラメーターを上げずに彼と過ごし続けると、ヒロインは愛と共依存が暴走した彼に監禁される……つまりはバッドエンドを迎えるのよね。
エイデン様のルートだけはビアンカにバッドエンドがなく、その代わりにヒロインにバッドエンドが用意されているという特殊なキャラなのだ。
シュミナ嬢、貴女大丈夫なの? 現状彼としか好感度が上がってない上に、パラメーター……どう見ても低いじゃない!!
バッドエンドになる訳なんてないと、高を括ってるんだろうか……あの子強気で本当に恐ろしいわ。
――シュミナ嬢はヒロインとしては落第点だけれど……それは完全に彼の好みよね。彼にとっては完璧なヒロインだわ。
でも……そうだとすると。
「……エイデン様に関しては。関わってくると面倒だけれど……そうしない気がするのよね」
「どうして?」
わたくしの独り言を聞いたメイカ王子が、赤い髪を揺らしながら首を傾げる。
「あの方、シュミナ嬢がダメであればある程好きなのでしょう? だから基本的に『問題』は放置の姿勢なんじゃないかしらって……なんとなく思うのですわ。彼女を『更生』させようって人の方が逆に排除の対象なんじゃないかしら……」
「……あーなるほど。それにしてもビアンカ嬢、エイデンの好みなんてよく知ってるね?」
「まぁ、なんとなくそう思っただけですの。じゃあわたくし、教室に戻りますので。メイカ王子、ご忠告ありがとうございます」
適当にメイカ王子の追求を躱して、わたくしは彼に一礼すると教室に戻ろうと踵を返した。
すると彼はわたくしの肩を軽く掴んで、わたくしを引き留める。
わたくしが怪訝そうな顔で見ると彼は……。
「ビアンカ嬢、お礼は今度カフェテリアでお茶でいいから」
なんて色気がたっぷり溢れる笑顔で言うから、懲りない人だなと思わず溜め息が出てしまった。
そんなお顔をされてもわたくし、マクシミリアンでお色気耐性はありますのよ? その程度じゃ効きませんわ。
「――ミルカ王女がご一緒なら!」
わたくしが満面の笑みでそう言うと彼は困った顔をして、肩を竦めた。
……メイカ王子は、妹に頭が上がらないみたい。
「お帰り、ビアンカ嬢。大丈夫だった?」
教室に戻ると心配そうな顔のノエル様が声をかけてきた。
以前メイカ王子との間に起きた事を彼は知らないはずだけど……先程もついて来ようとして下さったしわたくしが彼が苦手だという事を、空気でなんとなく察してくれたのだろう。
……ゾフィー様、ノエル様は本当に良い彼氏だと思うわ。うん。
「大丈夫でしたわ。メイカ王子に……ちょっとシュミナ嬢の関係でご忠告を頂いただけで」
「……シュミナ嬢……ね」
ノエル様の目が鋭く細められ表情が一気に冷たくなった……ゾフィー様を傷つけたのがシュミナ嬢だと、マリア様かゾフィー様自身に聞いて彼は知ったのだろう。
ノエル様のこんなにも冷たい表情を見たのは初めてで……その溢れる殺気にわたくしは思わずぶるりと身を震わせた。
「シュミナ嬢がエイデン様と懇意にされているようだから……気を付けろと言われましたわ」
「カーウェル公爵家か。そりゃあ面倒だね」
……そうカーウェル公爵家は、王家の血も入ったリーベッヘ王国きっての名家だ。
この国の四指に入る権力を持つシュラット侯爵家の者でも、カーウェル公爵家のご子息においそれと無礼な態度は取れない。
恐らく絡んでこないとは思うのだけど……注意するに越したことはない。
万が一面倒事があれば王子にご助力を願うしかないのだろうなぁ……彼に借りは作りたくないのだけれど。
『婚約者になるんだから当たり前だろう』なんて言いながら嬉々として助けてくれるのが想像出来てしまうわね。
王子との既成事実を作らない為にも、エイデン様……本当に絡んでこないで下さいませ。
こんな鬱々とした事を考えるよりも、近づく学園祭の事を考えたいわ……。
わたくしは思わず遠い目で、窓から見える青い空を眺めた。
攻略キャラのうちの一人……なんだけど割と特殊な隠しキャラだ。
まずパラメーターが極端に低くないと、出現しない。普通に過ごしていたら出ないキャラなのだ。
一切勉強や運動をせずに遊ぶコマンドのみを選び続けて極端にパラメーターを低くしたら出るのよね、確か。
……シュミナ嬢、貴女どれだけ遊んでいたの。
そして彼の属性は……『ヤンデレ・共依存』だ。
ダメっ子なヒロインに惹かれる彼はヒロインがダメであればある程彼女にのめり込んでいく。
ヒロインが途中からちゃんとパラメーターを上げた上で彼に寄り添う選択肢を選べば、目が覚めた彼との健全なハッピーエンドを迎えられるのだけれど……。
パラメーターを上げずに彼と過ごし続けると、ヒロインは愛と共依存が暴走した彼に監禁される……つまりはバッドエンドを迎えるのよね。
エイデン様のルートだけはビアンカにバッドエンドがなく、その代わりにヒロインにバッドエンドが用意されているという特殊なキャラなのだ。
シュミナ嬢、貴女大丈夫なの? 現状彼としか好感度が上がってない上に、パラメーター……どう見ても低いじゃない!!
バッドエンドになる訳なんてないと、高を括ってるんだろうか……あの子強気で本当に恐ろしいわ。
――シュミナ嬢はヒロインとしては落第点だけれど……それは完全に彼の好みよね。彼にとっては完璧なヒロインだわ。
でも……そうだとすると。
「……エイデン様に関しては。関わってくると面倒だけれど……そうしない気がするのよね」
「どうして?」
わたくしの独り言を聞いたメイカ王子が、赤い髪を揺らしながら首を傾げる。
「あの方、シュミナ嬢がダメであればある程好きなのでしょう? だから基本的に『問題』は放置の姿勢なんじゃないかしらって……なんとなく思うのですわ。彼女を『更生』させようって人の方が逆に排除の対象なんじゃないかしら……」
「……あーなるほど。それにしてもビアンカ嬢、エイデンの好みなんてよく知ってるね?」
「まぁ、なんとなくそう思っただけですの。じゃあわたくし、教室に戻りますので。メイカ王子、ご忠告ありがとうございます」
適当にメイカ王子の追求を躱して、わたくしは彼に一礼すると教室に戻ろうと踵を返した。
すると彼はわたくしの肩を軽く掴んで、わたくしを引き留める。
わたくしが怪訝そうな顔で見ると彼は……。
「ビアンカ嬢、お礼は今度カフェテリアでお茶でいいから」
なんて色気がたっぷり溢れる笑顔で言うから、懲りない人だなと思わず溜め息が出てしまった。
そんなお顔をされてもわたくし、マクシミリアンでお色気耐性はありますのよ? その程度じゃ効きませんわ。
「――ミルカ王女がご一緒なら!」
わたくしが満面の笑みでそう言うと彼は困った顔をして、肩を竦めた。
……メイカ王子は、妹に頭が上がらないみたい。
「お帰り、ビアンカ嬢。大丈夫だった?」
教室に戻ると心配そうな顔のノエル様が声をかけてきた。
以前メイカ王子との間に起きた事を彼は知らないはずだけど……先程もついて来ようとして下さったしわたくしが彼が苦手だという事を、空気でなんとなく察してくれたのだろう。
……ゾフィー様、ノエル様は本当に良い彼氏だと思うわ。うん。
「大丈夫でしたわ。メイカ王子に……ちょっとシュミナ嬢の関係でご忠告を頂いただけで」
「……シュミナ嬢……ね」
ノエル様の目が鋭く細められ表情が一気に冷たくなった……ゾフィー様を傷つけたのがシュミナ嬢だと、マリア様かゾフィー様自身に聞いて彼は知ったのだろう。
ノエル様のこんなにも冷たい表情を見たのは初めてで……その溢れる殺気にわたくしは思わずぶるりと身を震わせた。
「シュミナ嬢がエイデン様と懇意にされているようだから……気を付けろと言われましたわ」
「カーウェル公爵家か。そりゃあ面倒だね」
……そうカーウェル公爵家は、王家の血も入ったリーベッヘ王国きっての名家だ。
この国の四指に入る権力を持つシュラット侯爵家の者でも、カーウェル公爵家のご子息においそれと無礼な態度は取れない。
恐らく絡んでこないとは思うのだけど……注意するに越したことはない。
万が一面倒事があれば王子にご助力を願うしかないのだろうなぁ……彼に借りは作りたくないのだけれど。
『婚約者になるんだから当たり前だろう』なんて言いながら嬉々として助けてくれるのが想像出来てしまうわね。
王子との既成事実を作らない為にも、エイデン様……本当に絡んでこないで下さいませ。
こんな鬱々とした事を考えるよりも、近づく学園祭の事を考えたいわ……。
わたくしは思わず遠い目で、窓から見える青い空を眺めた。
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