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令嬢13歳・天国の雫
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今日のわたくしは浮かれていた。
だって…今日はミルカ王女に図書室で本を見ながらパラディスコ王国の事を教えて頂く約束をした日なのだ!
ああ…ワクワクする。何を教えて貰おう。
我が家の蔵書にはパラディスコ王国に関する詳しい本が無かったので、新しい知識を得られる事への期待に胸が膨らむ。
ミルカ王女との待ち合わせの時間までに、パラディスコ王国に関する本を選別しようとわたくしとマクシミリアンは図書室へ向かった。
図書室へ入ると、紙の匂いがふわりと漂っていて胸に吸い込むと心が落ち着く。
テスト期間がまだ先だからか、図書室を利用している人は少なく席に着いている生徒はまばらだ。
珍しい蔵書が多い良い図書室なのに勿体ないわ…。
…だけど学園は勉学よりも婚活の場と捉えている方々も多いし、仕方ないのかな、うん。
わたくしも彼氏作りを頑張りたいけど、全く出来る気がしない。
身分的な意味で駆け落ちに向いてる学園の下位貴族の令息はシュミナ嬢の味方も多いし…。
わたくしはすっかり、彼らの敵なのだ。
どうしてそんなにコロリとシュミナ嬢に騙されるのかしら?って思うけれど。
上位貴族に虐げられる美少女を守る俺達、っていう構図に酔っているんだと思う。恐らく。
実際虐げられている美少女はわたくしなんですけどね。
しかもわたくしが虐めをしている現場なんて貴方達見た事無いでしょう?
わたくし、シュミナ嬢には自主的に近付いた事なんて無いし…そこの所ちゃんと考えて欲しい。
その代わり彼女の無礼な態度に憤る令嬢方や、集団で大きい顔をし『病弱で可憐な』侯爵家令嬢を貶める下位貴族に苦々しい思いを抱いている上位貴族の令息方にはわたくしの味方が多い…らしいんだけど。
『病弱で可憐』の部分は、入学式の時のお姫様抱っこが後を引いてるんだろうなぁ…。
すっかり遠巻きに見られてしまっているわたくしには体感的としては良く分からないし、変に担ぎ上げられても困るので彼、彼女らと関わろうとも思わない。
ぼっちは嫌だけど取り巻きみたいなものが出来て、シュミナ嬢を懲らしめましょうよ!みたいな話の中心人物にされるのはもっと嫌なのだ。
そんな気分が暗くなる事は、今日は忘れよう……。
「マクシミリアン!この本なんてどうかしら?」
書架を巡って、パラディスコの歴史、パラディスコの農耕、パラディスコの地理と3大火山…そんなタイトルの本数冊を手元に確保しマクシミリアンに見せると、彼はしばしタイトルを見て地理の本を指差した。
「初回から色々なお話をするのは王女様も大変だと思いますので。取り合えずはジャンルを絞った方が良いかと…。まずは地理からお伺いするのはどうでしょう?」
確かにそうね。色々訊きたいけれど王女を何時間も拘束するなんて失礼な事は出来ないし…。
「ありがとうマクシミリアン。この本にするわね」
にこりと笑って彼を見ると、彼も柔和に微笑み返してくれた。
席も確保したしあとはミルカ王女を待つだけ。待ち合わせの時間は少しずつ近付いて来ている。
「ビアンカ嬢~お待たせ」
ふわふわとした口調のミルカ王女の声がしたので浮き立った気持ちでそちらを見ると、彼女は一人の青年を連れていた。
「メイカもビアンカ嬢に会いたいって言うから、連れて来ちゃった。私の双子の兄なの」
――――攻略対象、その4。
その少年を目にした瞬間。そんな言葉が浮かんで、意外な展開に頭が一瞬真っ白になる。
メイカ・グラシアス……パラディスコ王国第一王子。
赤く背中まである髪、日に焼けた肌、澄んだ緑色の瞳。彫りの深いエキゾチックな顔立ち…。
女好きで常に誰かと浮名を流しているけれど、心の底からは誰の事も愛した事がない移り気な南国の王子様だ。
妹と同じく、制服を着崩して刺青が彫られたその逞しい胸板をチラリと見せるゲームのお色気担当でもある。
メイカ王子のルートは、ヒロインが移り気な彼の気持ちをその無垢な様で捉えて翻弄し、彼が初めて感じる独占欲や愛という感情を与え…最終的にヒロインはパラディスコ王国の王妃に…と言う話である。
メイカ王子ルートでのビアンカも勿論最後は酷い目に遭うのだけど…彼はビアンカのバッドエンドに直接的な関わりがない。
というのも…。
ミルカ王女。ミルカ・グラシアスは彼の双子の妹……そして『ヒロインのサポートキャラ』。
ビアンカに手を下すのは、彼女だからだ。
大切な親友であるヒロインを虐め、婚約者が居るのにも関わらず兄への醜い恋慕を滲ませる侯爵家令嬢…ビアンカが、ヒロインの暗殺を企てている事に諜報により気付くミルカ王女。
親友を殺される前にと、ミルカ王女はビアンカに…『天国の雫』という王家秘伝の体内に残らない毒を飲ませ毒殺してしまう。
『あら、どうしたの~?心臓が弱かったのかしら。可哀想』ミルカ王女はそう言って、死んだビアンカを見て無邪気に微笑むのだ…。
……ヒロインのサポートキャラは、悪役令嬢のお友達になってくれますか?
第4の攻略対象の事よりも死亡フラグよりも。
……先にそっちの方が気になってしまったわたくしは、女友達に余程飢えているのだろう。
だって…今日はミルカ王女に図書室で本を見ながらパラディスコ王国の事を教えて頂く約束をした日なのだ!
ああ…ワクワクする。何を教えて貰おう。
我が家の蔵書にはパラディスコ王国に関する詳しい本が無かったので、新しい知識を得られる事への期待に胸が膨らむ。
ミルカ王女との待ち合わせの時間までに、パラディスコ王国に関する本を選別しようとわたくしとマクシミリアンは図書室へ向かった。
図書室へ入ると、紙の匂いがふわりと漂っていて胸に吸い込むと心が落ち着く。
テスト期間がまだ先だからか、図書室を利用している人は少なく席に着いている生徒はまばらだ。
珍しい蔵書が多い良い図書室なのに勿体ないわ…。
…だけど学園は勉学よりも婚活の場と捉えている方々も多いし、仕方ないのかな、うん。
わたくしも彼氏作りを頑張りたいけど、全く出来る気がしない。
身分的な意味で駆け落ちに向いてる学園の下位貴族の令息はシュミナ嬢の味方も多いし…。
わたくしはすっかり、彼らの敵なのだ。
どうしてそんなにコロリとシュミナ嬢に騙されるのかしら?って思うけれど。
上位貴族に虐げられる美少女を守る俺達、っていう構図に酔っているんだと思う。恐らく。
実際虐げられている美少女はわたくしなんですけどね。
しかもわたくしが虐めをしている現場なんて貴方達見た事無いでしょう?
わたくし、シュミナ嬢には自主的に近付いた事なんて無いし…そこの所ちゃんと考えて欲しい。
その代わり彼女の無礼な態度に憤る令嬢方や、集団で大きい顔をし『病弱で可憐な』侯爵家令嬢を貶める下位貴族に苦々しい思いを抱いている上位貴族の令息方にはわたくしの味方が多い…らしいんだけど。
『病弱で可憐』の部分は、入学式の時のお姫様抱っこが後を引いてるんだろうなぁ…。
すっかり遠巻きに見られてしまっているわたくしには体感的としては良く分からないし、変に担ぎ上げられても困るので彼、彼女らと関わろうとも思わない。
ぼっちは嫌だけど取り巻きみたいなものが出来て、シュミナ嬢を懲らしめましょうよ!みたいな話の中心人物にされるのはもっと嫌なのだ。
そんな気分が暗くなる事は、今日は忘れよう……。
「マクシミリアン!この本なんてどうかしら?」
書架を巡って、パラディスコの歴史、パラディスコの農耕、パラディスコの地理と3大火山…そんなタイトルの本数冊を手元に確保しマクシミリアンに見せると、彼はしばしタイトルを見て地理の本を指差した。
「初回から色々なお話をするのは王女様も大変だと思いますので。取り合えずはジャンルを絞った方が良いかと…。まずは地理からお伺いするのはどうでしょう?」
確かにそうね。色々訊きたいけれど王女を何時間も拘束するなんて失礼な事は出来ないし…。
「ありがとうマクシミリアン。この本にするわね」
にこりと笑って彼を見ると、彼も柔和に微笑み返してくれた。
席も確保したしあとはミルカ王女を待つだけ。待ち合わせの時間は少しずつ近付いて来ている。
「ビアンカ嬢~お待たせ」
ふわふわとした口調のミルカ王女の声がしたので浮き立った気持ちでそちらを見ると、彼女は一人の青年を連れていた。
「メイカもビアンカ嬢に会いたいって言うから、連れて来ちゃった。私の双子の兄なの」
――――攻略対象、その4。
その少年を目にした瞬間。そんな言葉が浮かんで、意外な展開に頭が一瞬真っ白になる。
メイカ・グラシアス……パラディスコ王国第一王子。
赤く背中まである髪、日に焼けた肌、澄んだ緑色の瞳。彫りの深いエキゾチックな顔立ち…。
女好きで常に誰かと浮名を流しているけれど、心の底からは誰の事も愛した事がない移り気な南国の王子様だ。
妹と同じく、制服を着崩して刺青が彫られたその逞しい胸板をチラリと見せるゲームのお色気担当でもある。
メイカ王子のルートは、ヒロインが移り気な彼の気持ちをその無垢な様で捉えて翻弄し、彼が初めて感じる独占欲や愛という感情を与え…最終的にヒロインはパラディスコ王国の王妃に…と言う話である。
メイカ王子ルートでのビアンカも勿論最後は酷い目に遭うのだけど…彼はビアンカのバッドエンドに直接的な関わりがない。
というのも…。
ミルカ王女。ミルカ・グラシアスは彼の双子の妹……そして『ヒロインのサポートキャラ』。
ビアンカに手を下すのは、彼女だからだ。
大切な親友であるヒロインを虐め、婚約者が居るのにも関わらず兄への醜い恋慕を滲ませる侯爵家令嬢…ビアンカが、ヒロインの暗殺を企てている事に諜報により気付くミルカ王女。
親友を殺される前にと、ミルカ王女はビアンカに…『天国の雫』という王家秘伝の体内に残らない毒を飲ませ毒殺してしまう。
『あら、どうしたの~?心臓が弱かったのかしら。可哀想』ミルカ王女はそう言って、死んだビアンカを見て無邪気に微笑むのだ…。
……ヒロインのサポートキャラは、悪役令嬢のお友達になってくれますか?
第4の攻略対象の事よりも死亡フラグよりも。
……先にそっちの方が気になってしまったわたくしは、女友達に余程飢えているのだろう。
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