Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
206 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第二百四話

しおりを挟む
鎧騎士はアインに剣を振り下ろす。

「『可変式片手半剣トツカノツルギ・壱式=アメノハバキリ』」
アルージェは咄嗟に盾が浮いている形態『可変式片手半剣トツカノツルギ・弐式=ヤタノカガミ』から大剣形態『可変式片手半剣トツカノツルギ・壱式=アメノハバキリ』に変化させて前に出る。

そして瞬間的に魔力で腕力と脚力を強化して、アルージェがアインと鎧騎士の前に割って入る。
鎧騎士が振り下ろした剣にアルージェが可変式片手半剣トツカノツルギをぶつけると、キーンッと金属同士がぶつかり合う音が響き、衝撃波が生まれる。

いつの間にか距離を取っていたいたアインと後方支援のカレンが魔法を行使するために詠唱を始める。

「悪きものを浄火せよ」
澎湃ほうはいたる水禍」

「燃え盛れ炎熱」
「荒れ狂う飛瀑ひばく

「燃やし尽くせ」
「全てを飲み込め」

アルージェの剣と鎧騎士の剣がぶつかった衝撃でお互いに剣が弾かれて、お互いに大きな隙が生じる。

「アインさん!!カレンさん!!」
アルージェが二人に声を掛ける。

「既に準備出来てるよ!」

「こっちもいけるわ!」
アインとカレンの周りには魔法陣が展開されており、アルージェが離れればいつでも行使することができる状態だった。

アルージェは弾かれた剣に身を預けて、そのまま後ろにわざと飛ばされて離れる。
二人はアルージェの様子を見て、アイコンタクトする。
そして魔法を行使する。

「『光炎熱波ルミナスヒートウェーブ』」

「『激昂する水竜ドラゴニックシュトローム』」

カレンが行使した魔法は水で模られたドラゴンを顕現させる。
水で模ったドラゴンが咆哮すると、ジリジリと鼓膜を震わせる。

アインが行使した魔法は瞬い白炎が現れて鎧騎士を包みこむ。
白炎が放つ熱が少し離れたアルージェの元まで届く。

その後、水で模られたドラゴンが咆哮すると鎧騎士の周りに渦潮が起こる。
鎧騎士を包んでいた白炎と渦潮がぶつかると、アインとカレンが発動した魔法が消失する。

「消えちゃった・・・?」
アルージェは二人が行使していた強そうな魔法が急に消失してしまったので驚き、アインとカレンに視線を向ける。
アインとカレンは全く焦った様子はなかった。

まだ何か有る。
アルージェは直感的に理解した。

相殺爆裂バーストデトネーション
カレンが呟いた数秒後。

炎と水。
真逆の性質を持つ属性の魔法がぶつかり、消失したかと思われた魔力が爆発を起こす。

アルージェは爆発の衝撃で体を飛ばさそうになりながら、なんとか持ち堪える。
「何がどうなってるのぉぉぉぉ!」

大規模な爆発に巻き込まれた鎧騎士は一溜まりもなかったのだろう。
地面に倒れ込んでピクリとも動かなくなっていた。

アインが額を拭う。
「ふぅ、何とかなったね」

「そうね。今日は大規模魔法を二回も連続で使ったからクタクタよ」
カレンは杖で肩をトントンと叩く。

アルージェはアインとカレンに駆け寄る。
「あの、さっきの現象何なんだったんですか・・・?」

相殺爆裂バーストデトネーションかい?」

「はい!魔法が消えたかと思ったんですけど、数秒後に爆発?が起きて吹き飛ばされるかと思いましたよ」

「あれは私が仮説を立てて実際に検証して見つけた現象よ。詳しいことは省くけど同威力の真逆の属性を持つ魔法がぶつかった時に魔法は消失したように見えるの。炎であれば水、風であれば地、光であれば闇ね。けど実際は消失はしてなくて魔法に使われた魔力同士はぶつかっている。小規模の魔法同士なら大したことにはならないんだけど大規模の魔法だった場合。膨大な魔力同士がぶつかることで無属性の爆発が起きるってこと」

「な、なるほど・・・?何となく理解は出来ました」

「まぁ、君もいつか研究者になったら、よくわからないことを生涯を賭けて調べる事になると思うわ」

「あはは・・・。ま、まぁ、僕の本業は鍛冶屋なので、研究者になるかわからないですけどね!さてと。嫌ですけど、あの鎧騎士動かないみたいですけど、念の為に確認だけしますか?」

「あぁ、そうしようか」
三人は警戒しながら鎧騎士に近づく。

アインが鎧騎士の兜を取ると、中には何も入っていなかった。

カレンが鎧の中を覗き、確認する。
「闇の魔力だけで動いてたってことね。中にアンデット系の魔物が居なくて良かったわ」

「この鎧どうします?」
アルージェはチラチラと鎧に視線を移す。

「んー、そうねぇ。魔法学校に持って帰って、付与について研究してる人に渡す?」

「それなら!僕、欲しいんですけど!」

「まぁ、別に君が貰ってもいいんじゃない?倒したのは私達だし。ね?アイン?」

「そうだね。アルージェが欲しいなら、アルージェが持って帰ってもいいね」

「ありがとうございます!」
アルージェが鎧に近付き、アイテムボックスへ収納しようと手を伸ばす。

「アルージェ!離れろ!」
アインが鎧の様子がおかしいことに気付き、アルージェに駆け寄り突き飛ばす。

アルージェはアインに突き飛ばされて、尻餅を付いてしまう。

「いてて・・・」
アルージェが後ろを振り返ると鎧騎士は何事も無かったかのように起き上がっていた。
鎧騎士の横には闇の魔力で包み込まれ、気を失っているアインの姿が有った。

「うそっ!?なんで?さっきまで魔力なんて全く感じなかったのに!」
鎧騎士から溢れ出る闇の魔力をカレンが見て、驚いていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...