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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第二百三話
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「さて、これからどうしようか」
アインは辺りを見渡す。
「かなり広いのでどこから闇の魔力が出てるか探すの骨が折れそうですね」
大広間には壁が崩れて散らばった石ころや、壊れた椅子の残骸やらしか見当たらない。
「有ったわ。アレよ」
カレンが指差した先にはポツンとこの場には相応しくない真っ黒の鎧が置かれていた。
胴体部分はプレートアーマーに華美では無い意匠が施されている。
背中にはボロボロのマント。
頭には二本角の装飾が施されており、まるで悪魔のような見た目をしていた。
その鎧は動くことなく地面にアルージェの体よりも大きな剣を突き刺し、何かを待つようにただ跪いていた。
アルージェはこの部屋に充満した闇の魔力のせいで感覚では魔力を認識することが出来ない。
なので自分の魔力を目に集中させて、魔力の流れを見る。
鎧からは重く冥い煙の様な魔力が、地面を這うように溢れ出ている。
「ただの鎧騎士ってわけじゃ無さそうですね。あの鎧からは尋常じゃない位、闇の魔力が溢れています」
「あぁ、僕には魔力は見えないけど、すごい威圧感を感じる」
鎧を見るアインの額には汗が滲み出ていた。
「私が魔法で破壊出来るか、確かめてみるわ」
カレンはすぐさま詠唱を始める。
「吹き荒れろ風雪。氷蝕せよ氷冠。凍たる氷丘。我創りたるは雪華の城。圧壊せ『天楼雪獄』」
カレンが魔法の詠唱を終えると大きな氷塊が現れる。
ただの氷塊ではない。
それは西洋の城の形を模った氷塊。
「すげぇ」
アルージェはあまりにも綺麗なその魔法に見惚れてしまう。
カレンが杖を上から下に下ろすと、氷の城が鎧に目掛けて落下する。
氷の城は天辺から鎧にぶつかり、崩壊した氷が四方八方に飛び散る。
冷気が余波となりアルージェ達に襲いかかる。
アルージェの周りに浮いていたミスリルの盾がアルージェの前に現れて、冷気や氷の破片からアルージェを守る。
アインは氷がカレンに当たらないように、盾を構えてカレンを守るように前に立つ。
氷の城は見る影もなく崩壊し、鎧は氷の中に埋もれてしまった。
故に鎧がどういう状態なのかを目視では確認することが出来ない。
数秒間の沈黙が有ったが、闇の魔力が動いていることにアルージェが気付く。
「気を付けてください!魔力が鎧に集まっています!・・・来ます!」
鎧に集まっていた闇の魔力が一気に放出され、積もっていた氷が吹き飛ばされる。
鎧は先ほどまで跪いていたが、剣を手にこちらの様子を伺っていた。
カレンは無傷な鎧騎士を見て、声を上げる。
「あれでも無傷って、おかしいんじゃないの!?私が使える最高火力の魔法なのよ」
「鎧だと思っていましたが、一人でに動いてるところを見るとただの鎧では無さそうですね。もしかして鎧では鎧騎士なんでしょうか?」
身体強化を目だけでは無く全身に施して、アルージェは何が起きても大丈夫なように警戒する。
「鎧騎士か・・・。どちらにせよ、ただ立っているだけでここまで威圧感を感じるんだ。もしかしたら手を出したらいけないものだったかもしれないね」
アインは剣を握る手に力が入る。
数秒の睨み合いが起こるが鎧騎士は全く動く気配が無い。
「あちらさんはあくまでこっちの出方を伺うみたいだね。カレンの魔法でもダメなら僕達三人で連携してどうにかするしかない。僕が前衛あれと打ち合うよ。アルージェは中衛で遊撃を、カレンは後衛で魔法での支援をお願いしてもいいかな」
アインの言葉にアルージェとカレンは頷く。
「了解です」
「分かったわ」
「さぁ!行こうか!」
アインは体に金色の魔力を纏い、鎧騎士に肉薄する。
鎧騎士は剣を片手で持ち上げ、アインに叩きつける。
アインは盾を使い、鎧からの攻撃を受け流す。
だが、アルージェよりも大きな剣。
盾を使って受け流すだけでも、手がジンジンと痺れる程の衝撃が来る。
「クッ」
アインは顔を歪める。
鎧騎士からの追撃が来る前にアルージェとカレンが魔法を鎧騎士に向かって放つ。
アルージェは破裂する小球を鎧騎士の顔に向かって放ち、視界を遮る。
カレンは氷の槍を鎧騎士の剣目掛けて放ち、軌道をズラす算段だ。
どちらも狙い通りの箇所に当たり、破裂する小球が顔部分で爆発を起こし、氷の槍で剣の軌道を変わると予想していた。
だが、鎧騎士は一切怯みもせずに自身の膂力を使って、ズレた軌道を修正しアインに追撃を行った。
「なっ!?」
アインは咄嗟に盾では無く剣を使い、なんとか攻撃をいなした。
「視界を爆発で塞がれて、氷で軌道を変えたのに、無理矢理自分の膂力で軌道を変えてくるなんてね。これは本当に危険かもしれない」
アインはジンジンと痺れる手を意識して、苦虫を潰したような顔をする。
鎧騎士は更にアインに向けて、横薙ぎを繰り出す。
アインは屈んで剣を躱し反撃を入れる。
アインの攻撃は確実に入った。
見ていた二人でさえもそう思ったのだ。
アインが思わないはずが無い。
だが予想外の方法で攻撃を無力化されてしまう。
鎧騎士から闇の魔力が滲み出し、クッションのようにアインの攻撃を無力化する。
鎧で剣が弾かれることは有っても、魔力がクッションのように作用するとは思っていなかった。
アインは何が起きたのか咄嗟に理解できず、一瞬だけ思考が止まってしまう。
だが戦いの中での一瞬は大きな隙となる。
アインの思考が戻った時、鎧騎士は剣を振りかぶりアインに叩きつけようとしていた。
アインは辺りを見渡す。
「かなり広いのでどこから闇の魔力が出てるか探すの骨が折れそうですね」
大広間には壁が崩れて散らばった石ころや、壊れた椅子の残骸やらしか見当たらない。
「有ったわ。アレよ」
カレンが指差した先にはポツンとこの場には相応しくない真っ黒の鎧が置かれていた。
胴体部分はプレートアーマーに華美では無い意匠が施されている。
背中にはボロボロのマント。
頭には二本角の装飾が施されており、まるで悪魔のような見た目をしていた。
その鎧は動くことなく地面にアルージェの体よりも大きな剣を突き刺し、何かを待つようにただ跪いていた。
アルージェはこの部屋に充満した闇の魔力のせいで感覚では魔力を認識することが出来ない。
なので自分の魔力を目に集中させて、魔力の流れを見る。
鎧からは重く冥い煙の様な魔力が、地面を這うように溢れ出ている。
「ただの鎧騎士ってわけじゃ無さそうですね。あの鎧からは尋常じゃない位、闇の魔力が溢れています」
「あぁ、僕には魔力は見えないけど、すごい威圧感を感じる」
鎧を見るアインの額には汗が滲み出ていた。
「私が魔法で破壊出来るか、確かめてみるわ」
カレンはすぐさま詠唱を始める。
「吹き荒れろ風雪。氷蝕せよ氷冠。凍たる氷丘。我創りたるは雪華の城。圧壊せ『天楼雪獄』」
カレンが魔法の詠唱を終えると大きな氷塊が現れる。
ただの氷塊ではない。
それは西洋の城の形を模った氷塊。
「すげぇ」
アルージェはあまりにも綺麗なその魔法に見惚れてしまう。
カレンが杖を上から下に下ろすと、氷の城が鎧に目掛けて落下する。
氷の城は天辺から鎧にぶつかり、崩壊した氷が四方八方に飛び散る。
冷気が余波となりアルージェ達に襲いかかる。
アルージェの周りに浮いていたミスリルの盾がアルージェの前に現れて、冷気や氷の破片からアルージェを守る。
アインは氷がカレンに当たらないように、盾を構えてカレンを守るように前に立つ。
氷の城は見る影もなく崩壊し、鎧は氷の中に埋もれてしまった。
故に鎧がどういう状態なのかを目視では確認することが出来ない。
数秒間の沈黙が有ったが、闇の魔力が動いていることにアルージェが気付く。
「気を付けてください!魔力が鎧に集まっています!・・・来ます!」
鎧に集まっていた闇の魔力が一気に放出され、積もっていた氷が吹き飛ばされる。
鎧は先ほどまで跪いていたが、剣を手にこちらの様子を伺っていた。
カレンは無傷な鎧騎士を見て、声を上げる。
「あれでも無傷って、おかしいんじゃないの!?私が使える最高火力の魔法なのよ」
「鎧だと思っていましたが、一人でに動いてるところを見るとただの鎧では無さそうですね。もしかして鎧では鎧騎士なんでしょうか?」
身体強化を目だけでは無く全身に施して、アルージェは何が起きても大丈夫なように警戒する。
「鎧騎士か・・・。どちらにせよ、ただ立っているだけでここまで威圧感を感じるんだ。もしかしたら手を出したらいけないものだったかもしれないね」
アインは剣を握る手に力が入る。
数秒の睨み合いが起こるが鎧騎士は全く動く気配が無い。
「あちらさんはあくまでこっちの出方を伺うみたいだね。カレンの魔法でもダメなら僕達三人で連携してどうにかするしかない。僕が前衛あれと打ち合うよ。アルージェは中衛で遊撃を、カレンは後衛で魔法での支援をお願いしてもいいかな」
アインの言葉にアルージェとカレンは頷く。
「了解です」
「分かったわ」
「さぁ!行こうか!」
アインは体に金色の魔力を纏い、鎧騎士に肉薄する。
鎧騎士は剣を片手で持ち上げ、アインに叩きつける。
アインは盾を使い、鎧からの攻撃を受け流す。
だが、アルージェよりも大きな剣。
盾を使って受け流すだけでも、手がジンジンと痺れる程の衝撃が来る。
「クッ」
アインは顔を歪める。
鎧騎士からの追撃が来る前にアルージェとカレンが魔法を鎧騎士に向かって放つ。
アルージェは破裂する小球を鎧騎士の顔に向かって放ち、視界を遮る。
カレンは氷の槍を鎧騎士の剣目掛けて放ち、軌道をズラす算段だ。
どちらも狙い通りの箇所に当たり、破裂する小球が顔部分で爆発を起こし、氷の槍で剣の軌道を変わると予想していた。
だが、鎧騎士は一切怯みもせずに自身の膂力を使って、ズレた軌道を修正しアインに追撃を行った。
「なっ!?」
アインは咄嗟に盾では無く剣を使い、なんとか攻撃をいなした。
「視界を爆発で塞がれて、氷で軌道を変えたのに、無理矢理自分の膂力で軌道を変えてくるなんてね。これは本当に危険かもしれない」
アインはジンジンと痺れる手を意識して、苦虫を潰したような顔をする。
鎧騎士は更にアインに向けて、横薙ぎを繰り出す。
アインは屈んで剣を躱し反撃を入れる。
アインの攻撃は確実に入った。
見ていた二人でさえもそう思ったのだ。
アインが思わないはずが無い。
だが予想外の方法で攻撃を無力化されてしまう。
鎧騎士から闇の魔力が滲み出し、クッションのようにアインの攻撃を無力化する。
鎧で剣が弾かれることは有っても、魔力がクッションのように作用するとは思っていなかった。
アインは何が起きたのか咄嗟に理解できず、一瞬だけ思考が止まってしまう。
だが戦いの中での一瞬は大きな隙となる。
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