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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百九十九話
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訓練が終わりアルージェはエマと一緒に訓練場から別館に戻る。
エマが途中で倒れたので、体調を心配したアルージェは急遽ルーネを呼び出した。
ルーネに頼んでエマを背中に乗せて別館まで連れて行ってもらう。
「大袈裟だよー」
エマは腕をブンブンと振り遠慮していたが、「もうルーネも呼んじゃった」とアルージェに言われ、渋々ルーネの背中に乗せてもらっている。
「ルーネちゃん、ごめんね?」
エマが頭を撫でるとルーネは嬉しそうに尻尾を振り「ワウッ」と吠える。
エマを乗せて別館に戻るだけなら、アルージェにいきなり呼び出される用事の中でもかなり楽な部類なのだろう。
「なんかエマに撫でてもらってる時と僕が撫でてる時の反応違うくない?」
アルージェがルーネを撫でる。
「フンスッ」
ルーネは鼻息を荒くするだけで、尻尾なんて全く振っていない。
「ふふふ、アルージェ君、ルーネちゃん使いが酷いって怒ってるんだよね」
エマはルーネの事を撫でながら話す。
「バウッ!」
エマの言葉に同調するかのようにしっかりと吠える。
「えぇ、そうかなぁ?」
アルージェはこめかみを押しながら考えるが、いまいち思い当たる節が無い。
「おっ、アルージェ戻ったか。ルーネがいきなり外に出たから何かと思ったぞ」
別館に戻るとミスティが扉の前で待っていた。
「いやー、エマが体調崩しちゃって、急遽ルーネに来てもらったんですよ」
「むっ、そうだったのか。エマ大丈夫だったか?」
「あー・・・。はい、体調不良というか心の準備が出来てなかっただけと言うか・・・」
エマは言葉を濁らせる。
ミスティは要領が掴めず、首を傾げる。
「と、とにかく!もう元気です!ご心配おかけしました!」
エマはそそくさとルーネから降りて自分の部屋に戻っていく。
「なぁ、アルージェ。一体何が有ったのか教えてくれないか?」
別に隠す程のことでも無いと思いアルージェはミスティに何が有ったかを話す。
ミスティは頬を赤らめる。
その後、少し悔しそうにしていた。
「何故、今日に限って私は訓練に出ていなかったんだ・・・」
アルージェは表情豊かなミスティを見て、本当初めて会った時から変わったなぁと微笑ましくなる。
アルージェは汗を流すために本館に行き、ルーネと一緒に風呂に入ってまた別館に戻る。
気を取り直したミスティさんに夕食に誘われて、さっと席に座る。
秘密結社達がマイアと一緒に食事を運んできてくれた。
今日の夕食はシチューのようだ。
初めは本館で辺境伯様と食事を取ったりもしていたが、メイドが主人と一緒に食事を取るなんてと怒られるので、最近はずっと別館でミスティさんとマイアさん、エマとルーネと僕の五人で食事をとることが多くなった。
「美味しかった!僕今日使った槍の手入れするので、先部屋に戻りますね!」
「あぁ、分かった、エマは少しだけ残ってもらえるか?」
逃げられないようにミスティがエマの腕を掴んでいた。
「あっ・・・。はい・・・」
エマも何を聞かれるのか分かっているようだ。
部屋に戻るために立ち上がっていたエマは、すぅっとソファに腰を下ろす。
アルージェは部屋に戻り、すぐにアイテムボックスから無極流転槍を取り出す。
「今日だけでだいぶ学習出来たんじゃないかなぁ」
慣れた手つきで槍の状態を確認し、上機嫌で手入れを始める。
「どんだけ蓄積されてるか、分からないのがきついなぁ。当面の問題はどんな学習をしたかを確認できる方法とか確立することかなぁ」
学習記憶は槍というハードウェアに保存されている為、こちらでどんな情報が入っているかは確認できない。
ディスプレイの無いデスクトップPCと同じ状態である。
「映像出力出来る物としてパッと思いつくのは、プロジェクターみたいなの作って槍と接続とかかなぁ?あれ?そもそも映像出力出来たとしても、学習状態を数値やグラフで表示する機能つけてないから意味なくない?ぐぬぬ、ならそこらへんの機能追加とプロジェクターの制作が必須だなぁ・・・。そもそもプロジェクターをどうやって作るんだろ?検討もつかないや」
だが、今日ラーニャさんに実際に触ってもらってラーニャさんの動きが明らかに良くなったり、アインさんとジェスさんも言っていたから学習が出来ているのは間違いない。
不意に時計を見ると、いつの間にか日が変わろうとしていた。
考えながら槍の手入れを済ませていたら、かなり時間が経っていたようだ。
「えっ、もうこんな時間?寝ないと」
アルージェは寝ている間に体を冷やさないようにする為に窓を閉めようとため窓に近づくと、いつもよりも外が明るいことに気づく。
普段ならほとんど明かりが消えている本館の至るところでまだ明かりがついていた。
「こんな時間までメイドさん達頑張ってるんだなぁ。マイアさんもきっとまだ色々やってくれてるんだろうし、頭上がらないや。あれ?でも辺境伯様は寝るの早いって言ってたから、それに合わせてメイドさん達も寝るはずだよね。こんな時間まで明かりが付いてるのおかしくない?」
不審に思ったアルージェは無極流転槍をアイテムボックスに片付けて部屋を出る。
ミスティとマイアにこの時間に本館で何かするか言っていたかを確認にする為、ミスティの部屋に急いで向かう。
エマが途中で倒れたので、体調を心配したアルージェは急遽ルーネを呼び出した。
ルーネに頼んでエマを背中に乗せて別館まで連れて行ってもらう。
「大袈裟だよー」
エマは腕をブンブンと振り遠慮していたが、「もうルーネも呼んじゃった」とアルージェに言われ、渋々ルーネの背中に乗せてもらっている。
「ルーネちゃん、ごめんね?」
エマが頭を撫でるとルーネは嬉しそうに尻尾を振り「ワウッ」と吠える。
エマを乗せて別館に戻るだけなら、アルージェにいきなり呼び出される用事の中でもかなり楽な部類なのだろう。
「なんかエマに撫でてもらってる時と僕が撫でてる時の反応違うくない?」
アルージェがルーネを撫でる。
「フンスッ」
ルーネは鼻息を荒くするだけで、尻尾なんて全く振っていない。
「ふふふ、アルージェ君、ルーネちゃん使いが酷いって怒ってるんだよね」
エマはルーネの事を撫でながら話す。
「バウッ!」
エマの言葉に同調するかのようにしっかりと吠える。
「えぇ、そうかなぁ?」
アルージェはこめかみを押しながら考えるが、いまいち思い当たる節が無い。
「おっ、アルージェ戻ったか。ルーネがいきなり外に出たから何かと思ったぞ」
別館に戻るとミスティが扉の前で待っていた。
「いやー、エマが体調崩しちゃって、急遽ルーネに来てもらったんですよ」
「むっ、そうだったのか。エマ大丈夫だったか?」
「あー・・・。はい、体調不良というか心の準備が出来てなかっただけと言うか・・・」
エマは言葉を濁らせる。
ミスティは要領が掴めず、首を傾げる。
「と、とにかく!もう元気です!ご心配おかけしました!」
エマはそそくさとルーネから降りて自分の部屋に戻っていく。
「なぁ、アルージェ。一体何が有ったのか教えてくれないか?」
別に隠す程のことでも無いと思いアルージェはミスティに何が有ったかを話す。
ミスティは頬を赤らめる。
その後、少し悔しそうにしていた。
「何故、今日に限って私は訓練に出ていなかったんだ・・・」
アルージェは表情豊かなミスティを見て、本当初めて会った時から変わったなぁと微笑ましくなる。
アルージェは汗を流すために本館に行き、ルーネと一緒に風呂に入ってまた別館に戻る。
気を取り直したミスティさんに夕食に誘われて、さっと席に座る。
秘密結社達がマイアと一緒に食事を運んできてくれた。
今日の夕食はシチューのようだ。
初めは本館で辺境伯様と食事を取ったりもしていたが、メイドが主人と一緒に食事を取るなんてと怒られるので、最近はずっと別館でミスティさんとマイアさん、エマとルーネと僕の五人で食事をとることが多くなった。
「美味しかった!僕今日使った槍の手入れするので、先部屋に戻りますね!」
「あぁ、分かった、エマは少しだけ残ってもらえるか?」
逃げられないようにミスティがエマの腕を掴んでいた。
「あっ・・・。はい・・・」
エマも何を聞かれるのか分かっているようだ。
部屋に戻るために立ち上がっていたエマは、すぅっとソファに腰を下ろす。
アルージェは部屋に戻り、すぐにアイテムボックスから無極流転槍を取り出す。
「今日だけでだいぶ学習出来たんじゃないかなぁ」
慣れた手つきで槍の状態を確認し、上機嫌で手入れを始める。
「どんだけ蓄積されてるか、分からないのがきついなぁ。当面の問題はどんな学習をしたかを確認できる方法とか確立することかなぁ」
学習記憶は槍というハードウェアに保存されている為、こちらでどんな情報が入っているかは確認できない。
ディスプレイの無いデスクトップPCと同じ状態である。
「映像出力出来る物としてパッと思いつくのは、プロジェクターみたいなの作って槍と接続とかかなぁ?あれ?そもそも映像出力出来たとしても、学習状態を数値やグラフで表示する機能つけてないから意味なくない?ぐぬぬ、ならそこらへんの機能追加とプロジェクターの制作が必須だなぁ・・・。そもそもプロジェクターをどうやって作るんだろ?検討もつかないや」
だが、今日ラーニャさんに実際に触ってもらってラーニャさんの動きが明らかに良くなったり、アインさんとジェスさんも言っていたから学習が出来ているのは間違いない。
不意に時計を見ると、いつの間にか日が変わろうとしていた。
考えながら槍の手入れを済ませていたら、かなり時間が経っていたようだ。
「えっ、もうこんな時間?寝ないと」
アルージェは寝ている間に体を冷やさないようにする為に窓を閉めようとため窓に近づくと、いつもよりも外が明るいことに気づく。
普段ならほとんど明かりが消えている本館の至るところでまだ明かりがついていた。
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不審に思ったアルージェは無極流転槍をアイテムボックスに片付けて部屋を出る。
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