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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百九十七話
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アインと打ち合いの後、さらに検証相手を探す為にウロウロとする。
端っこの方でエマとラーニャさんが二人で型の練習をしている様子が見えた。
アルージェは逸材を見つけたと、ニヤリと笑い二人に駆け寄る。
「エマ、ラーニャさん。お疲れ様です!」
アルージェが手を振りながら、近付くとエマとラーニャが気付き笑顔で迎えてくれる。
「アルージェ君。お疲れ様」
「ふふふ、アルージェ君は元気ですね」
「はい!それはそれはとても元気です!なんたって今日は新しい武器の試運転の日ですから!」
「アルージェ君、鎧が出来てからも、ずっと頑張ってたもんね」
エマはアルージェがここ最近ずっと付与をしていたのを知っていた。
「新しい武器ですか?」
ラーニャは顎に人差し指を置いて首を傾げる。
アルージェは内心でラーニャが食い付いてくれたことに喜ぶが顔には出さない。
「はい!これなんですけどね」
背中に背負っていた無極流転槍を二人に見せる。
「この槍、誰でも最強にっていうコンセプトで作ってまして。ラーニャさんにも是非試してもらいたいんです!」
まさか指名されると思っていなかったラーニャは驚きの声を上げる。
「わ、私ですか?」
「そう、ラーニャさんです!一つだけ確認なんですけど宗教上の問題とかで血を使っての契約とかまずいとか無いですよね・・・?」
「えぇ、そう言ったものは問題ないですが、私に出来ることなんて無いように思いますが」
「いえ、むしろラーニャさんだからいいんです!」
アルージェはラーニャに無極流転槍を渡す。
「ちょっとだけこの槍に血を垂らしてもらえますか?」
アルージェは魔力を操作して、無極流転槍を使用者登録状態に変更する。
「分かりました」
ラーニャは槍の穂先を使って指先を切って血を無極流転槍に垂らす。
無極流転槍が光を纏い、ラーニャと血の契約のパスを繋げる。
その瞬間ラーニャは一瞬顔を歪めて、体がフラッと倒れそうになる。
槍からの初めてのフィードバックがラーニャにいったのだろう。
初めての時はかなりの容量になるので、学習内容が多ければ多いほど頭がクラっとする可能性が高い。
「ラーニャさん大丈夫ですか?」
アルージェはラーニャの体を支える。
「大丈夫ですよ。少し立ち眩みがしただけですので」
アルージェの問いにラーニャは笑顔で答える。
「無理そうだったら言ってくださいね」
「はい、でももう平気です。これから何を試せばいいんでしょう?」
ラーニャはアルージェの検証に付き合ってくれる気満々らしい。
「なら、まずはラーニャさんって最近棒術の練習してますよね?」
「してますけどまだ型しかしてないので、アルージェ君の相手にはなれないと思いますけど・・・」
「問題ないですよ!ラーニャさんが一番使いやすい棒を頭の中で想像してみてください!」
ラーニャは目を瞑り、頭の中で想像をする。
「想像できたら槍に魔力を流しながら、こんなイメージの武器が欲しいって考えてみてください」
数秒後、槍の穂先の刃物を魔力で被い、ただの棒の様な形状になる。
拡張化を付与しているおかげで魔力を実体化させること出来るからである。
「えぇ、ラーニャすごいよ!槍の穂先が隠れて棒になってる!」
エマの言葉にラーニャは目を開けて、確認する。
「驚きました。魔力を実体化させてこんな風に使うなんて。アルージェ君は本当に優秀な学生さんなんですね」
ラーニャはアルージェの成長を見ることが出来て嬉しそうである。
「まぁ、付与したら勝手になるので、僕の力というか付与の力ですよ!それにしっかりとイメージできないと、ここまで綺麗な形には出来ません。つまりラーニャさんが凄いんですよ!さぁ、さぁ、ラーニャさんが一番使いやすい武器が出来たので、いつも通り型の練習してみてください!」
アルージェに言われるままラーニャはいつも通り型の練習を始める。
あくまで体を動かす目的と軽い自衛の為にしか棒術をしていないので、ぎこちない動きだった。
だが何度も使っていく内に明らかに動きが洗礼されている。
洗礼されていくラーニャの動きを見て、アルージェは成功だ!と内心大喜びしている。
もしかしたら顔に出ていたかもしれない。
型の練習が終わったラーニャにアルージェは駆け寄り、声を掛ける。
「ラーニャさん!ちょっと打ち合いしませんか?」
「いいですけどアルージェ君強いので、私じゃ相手にならないと思いますよ」
ラーニャは渋々了承してくれる。
「大丈夫です!」
ラーニャが十分に休息を取った後に打ち合いを開始する。
「行きます!」
アルージェがアイテムボックスから剣を取り出し、身体強化を使わずにラーニャに肉薄する。
そしてラーニャが反応できそうな速度で剣を振るう、ラーニャは棒で受け流す。
これを繰り返しやることでラーニャの動きが徐々に良くなっていくのが分かった。
アルージェもこの速度に反応できるならもっと早く出来るなと判断したらどんどんと速度を上げて、ラーニャを攻める。
身体強化無しの本気の速度での攻撃もラーニャは対応してくる。
逆にラーニャから反撃が繰り出されるようになり。
「おぉ!」
アルージェは喜びで感嘆の声を上げる。
見ていたエマも目を丸くして驚いていた。
「これくらいで終わりにしましょうか!」
アルージェが剣を下ろすと、ラーニャもハァハァと肩で息をしながら頷き無極流転槍を下ろす。
ラーニャ自身もあそこまで動けるようになるとは思っていなかったようだ。
今回の検証で分かったこと。
それはどれだけ無極流転槍のおかげで反応できても人間側のスペックが不足していれば、今のラーニャさんの状態よりひどい状態になっていただろう。
全く運動をしない人が使っていたなら、おそらくは全身の筋肉が痛くてその場から動くこともできなかったかもしれない。
これはもう少し修正が必要かもしれない。
無極流転槍を返してもらい、普段使っている棒を渡す。
「ラーニャさんお疲れのところ申し訳ないんですけど、息が整ったらこれでもう一回だけ型の練習してもらえないですか?」
「はぁはぁ、わ、分かりました」
ラーニャさんが落ち着いた後で、型の練習をしてもらう。
若干拙いがそれでも無極流転槍を使う前と後では、使った後の方が格段に動きが良くなっていた。
端っこの方でエマとラーニャさんが二人で型の練習をしている様子が見えた。
アルージェは逸材を見つけたと、ニヤリと笑い二人に駆け寄る。
「エマ、ラーニャさん。お疲れ様です!」
アルージェが手を振りながら、近付くとエマとラーニャが気付き笑顔で迎えてくれる。
「アルージェ君。お疲れ様」
「ふふふ、アルージェ君は元気ですね」
「はい!それはそれはとても元気です!なんたって今日は新しい武器の試運転の日ですから!」
「アルージェ君、鎧が出来てからも、ずっと頑張ってたもんね」
エマはアルージェがここ最近ずっと付与をしていたのを知っていた。
「新しい武器ですか?」
ラーニャは顎に人差し指を置いて首を傾げる。
アルージェは内心でラーニャが食い付いてくれたことに喜ぶが顔には出さない。
「はい!これなんですけどね」
背中に背負っていた無極流転槍を二人に見せる。
「この槍、誰でも最強にっていうコンセプトで作ってまして。ラーニャさんにも是非試してもらいたいんです!」
まさか指名されると思っていなかったラーニャは驚きの声を上げる。
「わ、私ですか?」
「そう、ラーニャさんです!一つだけ確認なんですけど宗教上の問題とかで血を使っての契約とかまずいとか無いですよね・・・?」
「えぇ、そう言ったものは問題ないですが、私に出来ることなんて無いように思いますが」
「いえ、むしろラーニャさんだからいいんです!」
アルージェはラーニャに無極流転槍を渡す。
「ちょっとだけこの槍に血を垂らしてもらえますか?」
アルージェは魔力を操作して、無極流転槍を使用者登録状態に変更する。
「分かりました」
ラーニャは槍の穂先を使って指先を切って血を無極流転槍に垂らす。
無極流転槍が光を纏い、ラーニャと血の契約のパスを繋げる。
その瞬間ラーニャは一瞬顔を歪めて、体がフラッと倒れそうになる。
槍からの初めてのフィードバックがラーニャにいったのだろう。
初めての時はかなりの容量になるので、学習内容が多ければ多いほど頭がクラっとする可能性が高い。
「ラーニャさん大丈夫ですか?」
アルージェはラーニャの体を支える。
「大丈夫ですよ。少し立ち眩みがしただけですので」
アルージェの問いにラーニャは笑顔で答える。
「無理そうだったら言ってくださいね」
「はい、でももう平気です。これから何を試せばいいんでしょう?」
ラーニャはアルージェの検証に付き合ってくれる気満々らしい。
「なら、まずはラーニャさんって最近棒術の練習してますよね?」
「してますけどまだ型しかしてないので、アルージェ君の相手にはなれないと思いますけど・・・」
「問題ないですよ!ラーニャさんが一番使いやすい棒を頭の中で想像してみてください!」
ラーニャは目を瞑り、頭の中で想像をする。
「想像できたら槍に魔力を流しながら、こんなイメージの武器が欲しいって考えてみてください」
数秒後、槍の穂先の刃物を魔力で被い、ただの棒の様な形状になる。
拡張化を付与しているおかげで魔力を実体化させること出来るからである。
「えぇ、ラーニャすごいよ!槍の穂先が隠れて棒になってる!」
エマの言葉にラーニャは目を開けて、確認する。
「驚きました。魔力を実体化させてこんな風に使うなんて。アルージェ君は本当に優秀な学生さんなんですね」
ラーニャはアルージェの成長を見ることが出来て嬉しそうである。
「まぁ、付与したら勝手になるので、僕の力というか付与の力ですよ!それにしっかりとイメージできないと、ここまで綺麗な形には出来ません。つまりラーニャさんが凄いんですよ!さぁ、さぁ、ラーニャさんが一番使いやすい武器が出来たので、いつも通り型の練習してみてください!」
アルージェに言われるままラーニャはいつも通り型の練習を始める。
あくまで体を動かす目的と軽い自衛の為にしか棒術をしていないので、ぎこちない動きだった。
だが何度も使っていく内に明らかに動きが洗礼されている。
洗礼されていくラーニャの動きを見て、アルージェは成功だ!と内心大喜びしている。
もしかしたら顔に出ていたかもしれない。
型の練習が終わったラーニャにアルージェは駆け寄り、声を掛ける。
「ラーニャさん!ちょっと打ち合いしませんか?」
「いいですけどアルージェ君強いので、私じゃ相手にならないと思いますよ」
ラーニャは渋々了承してくれる。
「大丈夫です!」
ラーニャが十分に休息を取った後に打ち合いを開始する。
「行きます!」
アルージェがアイテムボックスから剣を取り出し、身体強化を使わずにラーニャに肉薄する。
そしてラーニャが反応できそうな速度で剣を振るう、ラーニャは棒で受け流す。
これを繰り返しやることでラーニャの動きが徐々に良くなっていくのが分かった。
アルージェもこの速度に反応できるならもっと早く出来るなと判断したらどんどんと速度を上げて、ラーニャを攻める。
身体強化無しの本気の速度での攻撃もラーニャは対応してくる。
逆にラーニャから反撃が繰り出されるようになり。
「おぉ!」
アルージェは喜びで感嘆の声を上げる。
見ていたエマも目を丸くして驚いていた。
「これくらいで終わりにしましょうか!」
アルージェが剣を下ろすと、ラーニャもハァハァと肩で息をしながら頷き無極流転槍を下ろす。
ラーニャ自身もあそこまで動けるようになるとは思っていなかったようだ。
今回の検証で分かったこと。
それはどれだけ無極流転槍のおかげで反応できても人間側のスペックが不足していれば、今のラーニャさんの状態よりひどい状態になっていただろう。
全く運動をしない人が使っていたなら、おそらくは全身の筋肉が痛くてその場から動くこともできなかったかもしれない。
これはもう少し修正が必要かもしれない。
無極流転槍を返してもらい、普段使っている棒を渡す。
「ラーニャさんお疲れのところ申し訳ないんですけど、息が整ったらこれでもう一回だけ型の練習してもらえないですか?」
「はぁはぁ、わ、分かりました」
ラーニャさんが落ち着いた後で、型の練習をしてもらう。
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