Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
198 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百九十六話

しおりを挟む
魔法学校でもそうだったが日本とは違い、昼休憩は三時間程ある。
かなりゆっくりに思えるが、これくらいが個人的にはちょうど良い気もする。

食事中ミスティさんは目を合わせてくれなかったが、チラチラと視線だけは感じた。

「さて、お腹も落ち着いてきたし、そろそろ訓練場戻ろうかな。ルーネ!」
いつも通り丸まって眠っているルーネに声を掛ける。

ルーネは頭を上げてチラリとこちらを見るが、またすぐに丸まり眠る体勢に入る。

「ほら、ルーネ!起きて起きて!早く行こ!」
アルージェが倒れたバイクを起こすようにルーネの体を起こすと渋々立ち上がる。
「グゥ・・・」

今日は早く起きたから眠たいんだと念を飛ばしてくるが、お構いなくルーネに跨る。
何を言っても無駄だと理解したのかトボトボと訓練場に向かう。

訓練場には私兵団員達が集まっていたが、まだ訓練は始まっていないのか楽しげに雑談をしていた。
アインも昼から参加するようで雑談の輪の中にはアインの姿もあった。

午後も相手をしてくれるジェスを探す。
ジェスは木陰で寝転び木の枝みたいなものを咥えて寝そべっていた。
アルージェはアイテムボックスから無極流転槍アメノヌボコを取り出し、ジェスに声を掛ける。

「ジェスさん!午後もよろしくお願いします!」

「おっ、アルージェももう来たのか。早いねぇ」

「この槍を検証中なんで、ワクワクしちゃって!休憩前にも話しましたけど、午後はジェスさんにこの槍を使ってもらいたいんです」
無極流転槍アメノヌボコをジェスに渡す。

「午前中も使ってたねぇ、これ。アルージェのことだからなんか秘密があるんでしょ?教えてよ」
ジェスは起き上がり、アルージェから無極流転槍アメノヌボコを受け取る。

「もうちょっと内緒で!実際に使ってみて、どんな効果か考えてみてくださいよ!」
ちゃんと学習しているのか外から見ただけではわからないが、問題ないはずだ。
こういう時の為に使用者登録しなくても、槍を使ってもらえば学習するようにしている。

「かぁ!教えてくれても良いのに、ツレないねぇ」
ジェスは軽く槍の素振りをする。

「んー、振ってみた感じ特に変わったところは無いなぁ。重心とかも抜群で振りやすいってのは有るけど」
ジェスは首を傾げながら、素振りをする。

「まぁ、とりあえず組み手しましょ!ジェスさんの槍貸してくれません?あぁ・・・。嫌なら自分の使いますけど」

「ん?あぁいいよ。背中に持ってたら邪魔になるし」
背負っている槍をアルージェに渡す。

「へぇ、ジェスさん結構しっかり重たい奴使ってるんですね。重心は後ろ目か」
アルージェは素振りをして、槍の仕様を確かめる。

「よし!いつでもいけます!」
アルージェが槍を構える。

「はぁ、本当は訓練とかサボりたいんだけどねぇ」
ジェスも無極流転槍アメノヌボコを構えて、アルージェに向かって駆け始める。


そこそこの時間打ち合いをしたが、途中から明らかにジェスの動きが変わった。
ジェスもそのことに気付いているようだ。

「ちょっと待て。ちょっと待て」
ジェスが動きを止める。

「なんだこの槍。なんか俺が俺じゃねぇみたいだ。使えば使うほど手に馴染んできて、体も思うように動くし。気味がわりぃな」

「どうですか?僕が考えた最強の槍の実力は?」
アルージェはニヤニヤと笑う。

「どうですかも何も、絶好調すぎるぜ。攻撃が狙った場所に行くしよ」

これは成功しているんではないだろうか。

「この槍、俺にも作ってくれよ!すげぇ欲しい」

「もう一個作るのはちょっと・・・。すいません・・・」
アルージェは謝り、無極流転槍アメノヌボコをジェスから返してもらう。
アルージェもジェスに借りた槍をお返しする。

「いらなくなったら俺にくれよな!」
ジェスはどうしてもこの槍が気に入ったようだ。

誰か他に槍使える人いないかなぁと見渡す。
ちょうどアインさんが少し休憩をしていた。

「アインさん!」
アルージェはアインの元に駆け寄る。

「おっ?アルージェか。どうしたんだい?」
アインは爽やかに額の汗を布で拭って、アルージェの方へ視線を移す。

「アインさんって槍使えましたっけ?」

「唐突だね。一応昔道場で使い方を教わったよ。素人に毛が生えた程度だけどね」

「またまたー。絶対謙遜ですよねぇ」

「いや、ほんとだって。あれから使った記憶が無いほどさ。それで、どうして槍なんだい?」

「実は新しく槍を作ったんですけど、是非使用感とか教えて欲しいなと思いまして」
アルージェが無極流転槍アメノヌボコを見せる。

「なるほど、別に構わないよ。ちょうど相手も居なくなったからね」

「やった!」
アルージェは無極流転槍アメノヌボコをアインさんに渡す。

アインもジェス同じようにまず素振りをする。

「なるほどね。アルージェが作った武器初めて使ったけど、使いやすいね。変なクセがないや。流石グレンデさんの弟子だね」

「まぁ師匠と比べると全然ですけどね」
アルージェは笑いながらアイテムボックスから別の槍を取り出す。

「いきますよー!」
アルージェはアインの方へ駆け出す。

アインも昔道場で色々な武器の使い方を習っていた為アルージェ程では無いが、ある程度色々な種類の武器を使用することができる。
またアインは型に忠実に戦うので、学習の素材としては非常によかった。

初めはあまりしっくりときていない様子だったが、打ち合いをすればする程動きが鋭くなった。

アイン自身も驚いていた。
普段剣でしか戦っていないにの、アルージェとここまで打ち合いを出来るとは思っていなかった。
「この槍はなんなんだい?」
やはりアインも気になるようだ。

「ふっふっふ、まだ検証中なので内緒です!」

「まぁ、そうだろうね。ははは」
アインはアルージェに無極流転槍アメノヌボコを返却する。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...