Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百九十四話

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翌日。

まだ日が昇るか昇らないかという時間にアルージェはパチリと目を覚ます。

「起きた!」
ベッドから立ち上がり、部屋のカーテンを開ける。
そして寝ているルーネを抱きしめる。

「ルーネ!おはよう!今日もいい朝だね!」

アルージェが話しかけると、ルーネはまだ眠いのか尻尾で自分の顔を隠す。

「ルーネ!起きてって!ほら!」
もう一度寝ようとするルーネの体を雑に撫で回す。

こうなったら起きるしか無いことが分かっているルーネは渋々と立ち上がり、欠伸と伸びをして体を起こす。

「おはよう!」
アルージェが元気に挨拶して頭をわしゃわしゃと撫でると満更でもなさそうに、目を細めて頭を差し出す。

「よし、ルーネも起きたし、ご飯食べないと!」
扉を開けて、先に部屋から出るようにルーネに指示をする。
以前、アルージェが先に部屋を出て行った時にルーネはそのまま部屋に戻り、二度寝をしていたことがあったからだ。

ルーネは不服そうに鳴き、部屋から出る。
「ワウゥ・・・」

リビングに行くとマイアと秘密結社らびっといあー達がせかせかと朝ごはんの用意をしていた。
机の上でゴロゴロしていた秘密結社らびっといあーのサメがアルージェに気付き、ヒレをシュピっと上げて敬礼する。

「おはよう」
アルージェが挨拶をすると秘密結社らびっといあー達が全員振り向き、敬礼をする。

「おはようございます、アルージェ様。早起きですね」
マイアさんがエプロンで手を拭き、アルージェの近くに寄ってくる。

「早起きと言うことは何か楽しみなことでもありましたか?」

「あっ、分かります?そうなんです!今日は新しく作った武器を使って訓練に出るんですよ!うへへ」

「なるほど、それでは今朝は元気が出るメニューにしておきますね」

そそくさとキッチンに戻り、料理の続きを始める。

「あっ、アルージェ様。大変申し訳ないのですが、お嬢様を起こしてきていただけませんか?」

「ん?いいですよ」
アルージェはルーネを連れてミスティを起こしに行く。

まずノックをする。
数秒待って返事がなかったので、「失礼しまーす」と部屋の中に入っていく。

ベッドでミスティが寝ているのが見える。

今更だがミスティさんの部屋に入ったことがなかったので、部屋の中を見渡すと本棚に沢山の本が入っていた。
ほとんどが言い伝えや伝承などの本でミスティさんは昔から本当に勉強熱心のようだ。

アルージェが本を見ながらベッドに近づく。
ミスティは布団をかけず、薄着で眠っていた。

部屋に入ったの自体初めてだったので、ミスティの寝衣がここまで際どい物だとは予想していなかったアルージェが言葉を漏らす。
「うわ、すごっ」

かなり際どい服を着ているミスティの体に触れるのはどうかと思い、とりあえず声を掛けてみる。

「ミスティさん、起きてください」
優しく声をかけるが全く起きる気配はない。

「ミスティさん!」
先ほどより少し大きめの声で呼びかける。

「あとちょっとだけぇ」
今まで聞いたことない程、甘い声で返事をしてそのまま寝返りをうつ。

このままでは起きないと思ったアルージェは意を決して体に触れて、ゆさゆさと揺らす。
「ダメですって!起きてください」

「でも、まだ眠いー」
先ほどと同じように甘えた声で返事をして、布団に包まる。

「あっ、ミスティさん!だめですよ!起きてください!」
アルージェは負けじとユサユサと体を揺らすと、ミスティがいつも起こしてくれるマイアと違うと気付き目を覚ます。

そして、顔を見るとアルージェが居た。

「あ、あ、アルージェ!?」
ミスティは慌てて、布団の中に隠れる。

「はい!アルージェです!おはようございます、ミスティさん!朝ですよ!」

布団から少しだけ顔を出して、アルージェの方を見る。
「なんで、アルージェが?マイアは・・・?」

「あっ、マイアさんは朝ごはんを作っている最中です。朝から元気が出るもの作ってくれる見たいなので、代わりに僕が起こしにきました!」

「むー。みたか?」
ミスティはジト目でアルージェを見る。

「見たとは?」

「だから・・・。その・・・。」
ミスティは自分で言うのは恥ずかしいようで言葉に詰まる。

「えと・・・。寝衣は見ました。あといつもと違う甘えた声のヘブッ」
アルージェは全部言い切る前に枕を投げつけられる。

「ば、バカもの!全部言うやつがあるか!もう起きたから部屋から出てけ!それとさっきのは忘れろ!いいな?」

「あぁ・・・」
アルージェは振り返り、身体強化を施す。
そしてルーネに念を送り部屋から立ち去る。

「あっ!こら!アルージェ!返事をしろ!」

リビングに戻ると、既にエマが起きてきていた。

「アルージェ君、おはよう。なんだか今日は早起きだね」

「おはよう、エマ。新しい武器出来たから訓練が楽しみなんだよ!」

「ふふふ、そっか。いつも通りのアルージェ君だね」
エマは口元を隠し清楚に笑う。

エマと他愛のない話をしていたら、顔を赤くしたミスティがリビングに現れる。

「おはようございます。ミスティさん」
エマはいつも通り、ミスティに挨拶する。

「あ、あぁ。おはようエマ」

「お、おはようございます」
アルージェは俯き、挨拶をする。

「う、うむ。おはようアルージェ」

エマは首を傾げる。
「ミスティさんなんだか顔赤くないですか?何かありました?」

「な、何を言う!いつも通りだ!そう、私はいつも通り!何も無かった!」
あまりにも慌てすぎて不自然なのだが、ミスティ自身全く気付いていない。

「・・・?そうですか、しんどかったらしっかり休んでてくださいね?」

「あぁ、エマ、ありがとう。アルージェ、後で“個人的”な話しをしたいのだが大丈夫か」

「あぁ、えーと・・・。訓練に行くからちょっと・・・」
アルージェは訓練にかこつけて、有耶無耶にしようとする。

「むっ、そんなに時間は取らせんぞ?」

もう無理かとアルージェが返事をしようとしたところでちょうどマイアさんと秘密結社らびっといあー達が食事を運んでくる。

「お食事が出来上がりました」

机には朝から元気が出そうな物ばかりが並んでいる。

「わーい!頂きます!」

「むー、マイア。今のは絶対タイミング計ってきただろう」

「仰っている意味が分かりかねます」
マイアがすっとぼけるミスティもため息を付き、観念したようで食事を食べ始める。
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