196 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百九十四話
しおりを挟む
翌日。
まだ日が昇るか昇らないかという時間にアルージェはパチリと目を覚ます。
「起きた!」
ベッドから立ち上がり、部屋のカーテンを開ける。
そして寝ているルーネを抱きしめる。
「ルーネ!おはよう!今日もいい朝だね!」
アルージェが話しかけると、ルーネはまだ眠いのか尻尾で自分の顔を隠す。
「ルーネ!起きてって!ほら!」
もう一度寝ようとするルーネの体を雑に撫で回す。
こうなったら起きるしか無いことが分かっているルーネは渋々と立ち上がり、欠伸と伸びをして体を起こす。
「おはよう!」
アルージェが元気に挨拶して頭をわしゃわしゃと撫でると満更でもなさそうに、目を細めて頭を差し出す。
「よし、ルーネも起きたし、ご飯食べないと!」
扉を開けて、先に部屋から出るようにルーネに指示をする。
以前、アルージェが先に部屋を出て行った時にルーネはそのまま部屋に戻り、二度寝をしていたことがあったからだ。
ルーネは不服そうに鳴き、部屋から出る。
「ワウゥ・・・」
リビングに行くとマイアと秘密結社達がせかせかと朝ごはんの用意をしていた。
机の上でゴロゴロしていた秘密結社のサメがアルージェに気付き、ヒレをシュピっと上げて敬礼する。
「おはよう」
アルージェが挨拶をすると秘密結社達が全員振り向き、敬礼をする。
「おはようございます、アルージェ様。早起きですね」
マイアさんがエプロンで手を拭き、アルージェの近くに寄ってくる。
「早起きと言うことは何か楽しみなことでもありましたか?」
「あっ、分かります?そうなんです!今日は新しく作った武器を使って訓練に出るんですよ!うへへ」
「なるほど、それでは今朝は元気が出るメニューにしておきますね」
そそくさとキッチンに戻り、料理の続きを始める。
「あっ、アルージェ様。大変申し訳ないのですが、お嬢様を起こしてきていただけませんか?」
「ん?いいですよ」
アルージェはルーネを連れてミスティを起こしに行く。
まずノックをする。
数秒待って返事がなかったので、「失礼しまーす」と部屋の中に入っていく。
ベッドでミスティが寝ているのが見える。
今更だがミスティさんの部屋に入ったことがなかったので、部屋の中を見渡すと本棚に沢山の本が入っていた。
ほとんどが言い伝えや伝承などの本でミスティさんは昔から本当に勉強熱心のようだ。
アルージェが本を見ながらベッドに近づく。
ミスティは布団をかけず、薄着で眠っていた。
部屋に入ったの自体初めてだったので、ミスティの寝衣がここまで際どい物だとは予想していなかったアルージェが言葉を漏らす。
「うわ、すごっ」
かなり際どい服を着ているミスティの体に触れるのはどうかと思い、とりあえず声を掛けてみる。
「ミスティさん、起きてください」
優しく声をかけるが全く起きる気配はない。
「ミスティさん!」
先ほどより少し大きめの声で呼びかける。
「あとちょっとだけぇ」
今まで聞いたことない程、甘い声で返事をしてそのまま寝返りをうつ。
このままでは起きないと思ったアルージェは意を決して体に触れて、ゆさゆさと揺らす。
「ダメですって!起きてください」
「でも、まだ眠いー」
先ほどと同じように甘えた声で返事をして、布団に包まる。
「あっ、ミスティさん!だめですよ!起きてください!」
アルージェは負けじとユサユサと体を揺らすと、ミスティがいつも起こしてくれるマイアと違うと気付き目を覚ます。
そして、顔を見るとアルージェが居た。
「あ、あ、アルージェ!?」
ミスティは慌てて、布団の中に隠れる。
「はい!アルージェです!おはようございます、ミスティさん!朝ですよ!」
布団から少しだけ顔を出して、アルージェの方を見る。
「なんで、アルージェが?マイアは・・・?」
「あっ、マイアさんは朝ごはんを作っている最中です。朝から元気が出るもの作ってくれる見たいなので、代わりに僕が起こしにきました!」
「むー。みたか?」
ミスティはジト目でアルージェを見る。
「見たとは?」
「だから・・・。その・・・。」
ミスティは自分で言うのは恥ずかしいようで言葉に詰まる。
「えと・・・。寝衣は見ました。あといつもと違う甘えた声のヘブッ」
アルージェは全部言い切る前に枕を投げつけられる。
「ば、バカもの!全部言うやつがあるか!もう起きたから部屋から出てけ!それとさっきのは忘れろ!いいな?」
「あぁ・・・」
アルージェは振り返り、身体強化を施す。
そしてルーネに念を送り部屋から立ち去る。
「あっ!こら!アルージェ!返事をしろ!」
リビングに戻ると、既にエマが起きてきていた。
「アルージェ君、おはよう。なんだか今日は早起きだね」
「おはよう、エマ。新しい武器出来たから訓練が楽しみなんだよ!」
「ふふふ、そっか。いつも通りのアルージェ君だね」
エマは口元を隠し清楚に笑う。
エマと他愛のない話をしていたら、顔を赤くしたミスティがリビングに現れる。
「おはようございます。ミスティさん」
エマはいつも通り、ミスティに挨拶する。
「あ、あぁ。おはようエマ」
「お、おはようございます」
アルージェは俯き、挨拶をする。
「う、うむ。おはようアルージェ」
エマは首を傾げる。
「ミスティさんなんだか顔赤くないですか?何かありました?」
「な、何を言う!いつも通りだ!そう、私はいつも通り!何も無かった!」
あまりにも慌てすぎて不自然なのだが、ミスティ自身全く気付いていない。
「・・・?そうですか、しんどかったらしっかり休んでてくださいね?」
「あぁ、エマ、ありがとう。アルージェ、後で“個人的”な話しをしたいのだが大丈夫か」
「あぁ、えーと・・・。訓練に行くからちょっと・・・」
アルージェは訓練にかこつけて、有耶無耶にしようとする。
「むっ、そんなに時間は取らせんぞ?」
もう無理かとアルージェが返事をしようとしたところでちょうどマイアさんと秘密結社達が食事を運んでくる。
「お食事が出来上がりました」
机には朝から元気が出そうな物ばかりが並んでいる。
「わーい!頂きます!」
「むー、マイア。今のは絶対タイミング計ってきただろう」
「仰っている意味が分かりかねます」
マイアがすっとぼけるミスティもため息を付き、観念したようで食事を食べ始める。
まだ日が昇るか昇らないかという時間にアルージェはパチリと目を覚ます。
「起きた!」
ベッドから立ち上がり、部屋のカーテンを開ける。
そして寝ているルーネを抱きしめる。
「ルーネ!おはよう!今日もいい朝だね!」
アルージェが話しかけると、ルーネはまだ眠いのか尻尾で自分の顔を隠す。
「ルーネ!起きてって!ほら!」
もう一度寝ようとするルーネの体を雑に撫で回す。
こうなったら起きるしか無いことが分かっているルーネは渋々と立ち上がり、欠伸と伸びをして体を起こす。
「おはよう!」
アルージェが元気に挨拶して頭をわしゃわしゃと撫でると満更でもなさそうに、目を細めて頭を差し出す。
「よし、ルーネも起きたし、ご飯食べないと!」
扉を開けて、先に部屋から出るようにルーネに指示をする。
以前、アルージェが先に部屋を出て行った時にルーネはそのまま部屋に戻り、二度寝をしていたことがあったからだ。
ルーネは不服そうに鳴き、部屋から出る。
「ワウゥ・・・」
リビングに行くとマイアと秘密結社達がせかせかと朝ごはんの用意をしていた。
机の上でゴロゴロしていた秘密結社のサメがアルージェに気付き、ヒレをシュピっと上げて敬礼する。
「おはよう」
アルージェが挨拶をすると秘密結社達が全員振り向き、敬礼をする。
「おはようございます、アルージェ様。早起きですね」
マイアさんがエプロンで手を拭き、アルージェの近くに寄ってくる。
「早起きと言うことは何か楽しみなことでもありましたか?」
「あっ、分かります?そうなんです!今日は新しく作った武器を使って訓練に出るんですよ!うへへ」
「なるほど、それでは今朝は元気が出るメニューにしておきますね」
そそくさとキッチンに戻り、料理の続きを始める。
「あっ、アルージェ様。大変申し訳ないのですが、お嬢様を起こしてきていただけませんか?」
「ん?いいですよ」
アルージェはルーネを連れてミスティを起こしに行く。
まずノックをする。
数秒待って返事がなかったので、「失礼しまーす」と部屋の中に入っていく。
ベッドでミスティが寝ているのが見える。
今更だがミスティさんの部屋に入ったことがなかったので、部屋の中を見渡すと本棚に沢山の本が入っていた。
ほとんどが言い伝えや伝承などの本でミスティさんは昔から本当に勉強熱心のようだ。
アルージェが本を見ながらベッドに近づく。
ミスティは布団をかけず、薄着で眠っていた。
部屋に入ったの自体初めてだったので、ミスティの寝衣がここまで際どい物だとは予想していなかったアルージェが言葉を漏らす。
「うわ、すごっ」
かなり際どい服を着ているミスティの体に触れるのはどうかと思い、とりあえず声を掛けてみる。
「ミスティさん、起きてください」
優しく声をかけるが全く起きる気配はない。
「ミスティさん!」
先ほどより少し大きめの声で呼びかける。
「あとちょっとだけぇ」
今まで聞いたことない程、甘い声で返事をしてそのまま寝返りをうつ。
このままでは起きないと思ったアルージェは意を決して体に触れて、ゆさゆさと揺らす。
「ダメですって!起きてください」
「でも、まだ眠いー」
先ほどと同じように甘えた声で返事をして、布団に包まる。
「あっ、ミスティさん!だめですよ!起きてください!」
アルージェは負けじとユサユサと体を揺らすと、ミスティがいつも起こしてくれるマイアと違うと気付き目を覚ます。
そして、顔を見るとアルージェが居た。
「あ、あ、アルージェ!?」
ミスティは慌てて、布団の中に隠れる。
「はい!アルージェです!おはようございます、ミスティさん!朝ですよ!」
布団から少しだけ顔を出して、アルージェの方を見る。
「なんで、アルージェが?マイアは・・・?」
「あっ、マイアさんは朝ごはんを作っている最中です。朝から元気が出るもの作ってくれる見たいなので、代わりに僕が起こしにきました!」
「むー。みたか?」
ミスティはジト目でアルージェを見る。
「見たとは?」
「だから・・・。その・・・。」
ミスティは自分で言うのは恥ずかしいようで言葉に詰まる。
「えと・・・。寝衣は見ました。あといつもと違う甘えた声のヘブッ」
アルージェは全部言い切る前に枕を投げつけられる。
「ば、バカもの!全部言うやつがあるか!もう起きたから部屋から出てけ!それとさっきのは忘れろ!いいな?」
「あぁ・・・」
アルージェは振り返り、身体強化を施す。
そしてルーネに念を送り部屋から立ち去る。
「あっ!こら!アルージェ!返事をしろ!」
リビングに戻ると、既にエマが起きてきていた。
「アルージェ君、おはよう。なんだか今日は早起きだね」
「おはよう、エマ。新しい武器出来たから訓練が楽しみなんだよ!」
「ふふふ、そっか。いつも通りのアルージェ君だね」
エマは口元を隠し清楚に笑う。
エマと他愛のない話をしていたら、顔を赤くしたミスティがリビングに現れる。
「おはようございます。ミスティさん」
エマはいつも通り、ミスティに挨拶する。
「あ、あぁ。おはようエマ」
「お、おはようございます」
アルージェは俯き、挨拶をする。
「う、うむ。おはようアルージェ」
エマは首を傾げる。
「ミスティさんなんだか顔赤くないですか?何かありました?」
「な、何を言う!いつも通りだ!そう、私はいつも通り!何も無かった!」
あまりにも慌てすぎて不自然なのだが、ミスティ自身全く気付いていない。
「・・・?そうですか、しんどかったらしっかり休んでてくださいね?」
「あぁ、エマ、ありがとう。アルージェ、後で“個人的”な話しをしたいのだが大丈夫か」
「あぁ、えーと・・・。訓練に行くからちょっと・・・」
アルージェは訓練にかこつけて、有耶無耶にしようとする。
「むっ、そんなに時間は取らせんぞ?」
もう無理かとアルージェが返事をしようとしたところでちょうどマイアさんと秘密結社達が食事を運んでくる。
「お食事が出来上がりました」
机には朝から元気が出そうな物ばかりが並んでいる。
「わーい!頂きます!」
「むー、マイア。今のは絶対タイミング計ってきただろう」
「仰っている意味が分かりかねます」
マイアがすっとぼけるミスティもため息を付き、観念したようで食事を食べ始める。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる