Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
195 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百九十一話

しおりを挟む
それから一月が経った。
夕方まで私兵団員達の訓練に出て体を作り、訓練後は別館に戻ってアインの鎧に付与を施すだけ日々が続いた。

ミスティさんとエマもやることがなくなってきたのか、訓練に顔を出す日が増えてきた。
私兵団員達はミスティさんの事を嫌っている様子は無かった。
どちらかといえば小さい頃ずっと訓練場に来ていたのを面倒を見ていたので、娘みたいな感覚なのかもしれない。

また私兵団に所属しているのは男性ばかりで華が無い。
そんな中にエマやラーニャさんが入ると、少しでも格好いいところを見て欲しいと思うのが男の心情だ。
エマやラーニャさんがいる時の皆のやる気は暑苦しいまで有った。

ついでで話したがラーニャさんも偶に訓練場の端っこでエマと一緒に体を動かしているのを見かける。
基本的にラーニャさんは屋敷に常駐している治療師に技術を教えているらしいが、何日かに一回は体を動かすために来ているようだ。

ちなみにカレン教授は一度も顔を出したことは無い。
アインさん曰くカレン教授は部屋に篭って論文を書いているらしい。

ちょうど学校自体が大型連休で授業が無いとはいえ、教授の本分は研究なのだろう。

鎧の方は順調でアインの要望通り軽量化、硬質化、炎熱抵抗、氷結抵抗、自動修復を付与出来た。
それと追加で反射の効果も付与した。
矢などが鎧に当たった際、同じ速度で同じ場所に反射する効果だ。
頼まれてはいないので必要ないかもしれないが、不慮の事故を減らせる良い付与だと個人的には思っている。

一緒に魔法反射も付与したかったが、反射を付与したら魔法反射が付与できなかったので、どちらか一つしか出来ないのだろう。
この辺りは実際にやってみないとわからないので時間が無駄に掛かっただけだ。

鎧に対しての付与は二回目。
且つ今まで付与したことの無い物ばかりだった為、少し時間が掛かったけれど要望通りのものが出来てよかった。

以前付与した魔鉄と比べると魔鋼は付与に必要な時間がかなり短かった。

ん?ならなんで一月も時間が掛かったかって?
そりゃ、鍛冶場に行って鍛冶もしてたからだよ!

屋敷に備え付けの鍛冶場に初めて行った時逃げるように帰ったので、行くのが躊躇われたがどうしても武器が作りたくなって観念して行った。

作業を始める前に常駐している鍛冶屋三人に根掘り葉掘り聞かれるかと思ったけど、向こうも自重してくれたみたいでそんなことは無かった。

作業の合間に話をしたけど、皆一流の鍛冶屋のようで店を構えていてもおかしくない技術水準だった。

おかげさまでさまざまな金属の事を教えてもらえた。
一人でやっていたら実際に触ってみるまで知り得ない情報だったので本当に勉強になった。
逆に僕からは効率化を図った手順なんかを提案したりして、WinーWinの関係になったんでは無いだろうか。


とまぁこんな感じで一月過ごしていた。
非常に有意義で自分が聖国に追われているなんて忘れるほどに目まぐるしい日々だった。

さて鎧が完成の報告をしたいので、訓練終わりにアインに声をかける。
「アインさん!頼まれていた鎧への付与、完了しましたよ!早速見せたいんですけど良いですか?」

アルージェが話しかけると、待ってましたと言わんばかりにアインは興奮する。
「おっ!本当かい?なんだかワクワクするね」

アルージェはアイテムボックスから完成した鎧を取り出し、アインに渡す。

「お納め下さい」
アルージェがアインに渡すとアインは「おぉ」と感嘆の声を漏らす。
少し触っただけで違いが分かったみたいだ。

アインは受け取った鎧を早速着用する。

「本当にすごいね、アルージェは。着ただけで分かるよ、鎧から力を感じる。それに軽いし、今までよりも硬くなっているがわかるよ」

アインは鎧をコンコンとノックしてみたりして、実際の効果を確かめているようだ。

「要望は確か軽量化フェザー硬質化リジダイズ炎熱抵抗フレイムレジスト氷結抵抗アイスレジスト自動修復オートリペアだったと思うけど軽量化フェザー硬質化リジダイズは確認できた。他も確認させてもらうね」
アインは鎧を脱いで、少し離れば場所に置いてアルージェの方に戻ってくる。

そして、ぶつぶつと魔法の詠唱を唱え始める。

「悪きものを浄火せよ。燃え盛れ炎熱。燃やし尽くせ光炎熱波ルミナスヒートウェーブ

アインの目の前に魔法陣が現れて詠唱を完了すると、アルージェの方まで熱を感じる白炎が現れて、鎧を包み込む。

炎が収束すると鎧はまだそこに存在した。
アインは鎧の元まで駆け寄り鎧を手に取り確認する。
若干焦げていたところがあったが、すぐに自動修復オートリペアが発動し焦げは跡形も無くなっていた。

アインがアルージェの近くに戻ってくる。
「すごいね。予想以上の出来だよ」

そして、またアインの前に魔法陣が現れる。
別の魔法を魔法を試すようだ。

「氷の楔、聖なる氷雨。悪き物を貫け六花槍ヘイルジェベリン
アインが詠唱を済ますと細雪の様な氷が集まり、いくつもの氷の槍が形成する。

そしてアインが手を前に出すと一斉に鎧に向かい槍が放たれる。

氷槍はアインの狙い通り鎧に一直線に向かい、鎧と接触し破砕する。

「あぁ・・・。流石にやりすぎたと思ったのだろうか・・・」
アインは慌てて鎧の元に駆け寄る。
だが鎧には傷一つついていなかった。

アインは鎧を手に取り、顔をこわばらせて呟く。
「まさかここまでとはね。僕は君が恐ろしいよ。アルージェ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...