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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百八十八話
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「いきなりごめんね。同じくらいの歳に見えたから声掛けちゃった。僕はアルージェ。ミスティさんの婚約者です」
アルージェは右手を前に出し、握手を求める。
「あの悪魔憑きの婚約者?」
少年は更に顔を歪めて、アルージェが出した手を払う。
「あんな気味が悪い奴と結婚なんて、お前相当物好きだな。悪魔憑きの女なんて気持ち悪い趣向の中年男と結婚して玩具として一生を過ごすものだと思っていたけど、あぁ、さては貴族との繋がり目当てか」
少年はアルージェを嘲笑する。
アルージェは少年を一瞬睨みつけるが、すぐに表情を戻す。
「すいません。僕のことはいくら悪く言ってもらっても構わないですが、ミスティさんに対する言葉撤回もらえないですか?」
少年はお腹を抱える程笑い、壁を叩く。
「あはははははは、撤回する?全部事実だろ?」
アルージェは少年の胸ぐらを掴む。
「撤回してください」
「離せよ」
少年はアルージェの手を払い除けようとする。
だが、アルージェは怒りで無意識に身体強化をしていて、少年は手を払うことが出来ない。
「おぉ、アルージェ君こんなところでどうしたんだい?」
たまたま通り掛かった辺境伯が声を掛ける。
辺境伯に話しかけられてアルージェの身体強化が解けたので少年はアルージェの手を払う。
「何をムキになってんだよ」
少年は崩れた服を整えてからその場を立ち去る。
「ライナ待ちなさい」
辺境伯が少年の名前を呼び、制止しようとするがライナは立ち去ってしまう。
「はぁ、ライナが失礼なことを言ってしまっただろう?申し訳ない」
辺境伯がアルージェの側に来て頭を下げる。
「いえ、僕も冷静に対応出来なかったので」
辺境伯は頭を上げて、アルージェに笑いかける。
「ははは、恥ずかしいところを見せてしまったね。あれはライナ。色々合った時に妻が何処からか連れてきた子なんだが、私もその時から戦場に出ていたからあまり躾が出来ていないだ。それで?こんなところで何してるんだい?」
「ここに用事と言うか。辺境伯様の書斎に行こうとしたんですけど、迷子になってしまったみたいで・・・」
アルージェが恥ずかしそうに話すと辺境伯は目を点にして、そして急に笑い出す。
「いやぁ、すまない。不快にさせてしまったかな?」
目元あたりをハンカチで拭って謝る辺境伯。
「いえ、気になさらないでください」
アルージェは手をブンブンと横に振る。
「それにしても私兵団員を倒すくらい強くて、グレンデさんに鍛冶を教えてもらって、魔法まで使える完璧人間だと思っていたんだが、まさかそんな一面があるなんて知らなかったよ」
「あはは・・・。いつもはルーネに道案内頼むんですけど、今日は何も言わずに部屋から出てきてしまって・・・。鍛冶場にはたまたま金属を叩く音が聞こえたので、辿り着けたんですけど辺境伯様の書斎は本当に分からなくて・・・」
アルージェは照れを隠すように後頭部を摩り笑う。
「ははは、なら一緒に行くとしようか」
辺境伯が先導し書斎に向かう。
書斎に向かう途中、辺境伯が先に要件だけ聞いとこうとアルージェに話しかける。
「そういえば、要件は何かな?」
「あっ、昨日食事の時に言ってた師匠から預かってた鎧を見てもらいたくて」
「あー、それは書斎じゃ厳しそうだ・・・。訓練場に行くとしようか」
アルージェは奇しくも最終目的地であった訓練場に行くことになる。
辺境伯が訓練場に近づくと私兵団達が訓練を辞めて、整列する。
「アルージェ君が鎧を持ってきてくれたから、皆んなも見て欲しい。アルージェ君よろしく」
「はい!」
アイテムボックスからニツールで預かってきた、地面に置く。
まずスベンと辺境伯が鎧を手に取る。
「これは・・・。驚いたな」
辺境伯は全く重さを感じないことに驚く。
「ですが、これだと訓練では使え無さそうですね」
スベンは鎧を片手でブンブンと振り回す。
他の私兵団員も鎧を手に取り、各々感嘆の声を上げる。
一緒に訓練していたアインも興味を持ち、鎧を持ち上げる。
軽いとはいっても重量はあるだろうと思い力を入れていたので、アインは拍子抜けする。
「おわっと。危ない落としてしまうところだったよ。これは本当に凄いね。僕の鎧の付与もアルージェにして貰おうかな」
「アインさんの鎧すごく高そうなので手を加えるのちょっと怖いですけど、僕でいいならいつでもやりますよ」
アルージェがアインに答えると、「本当かい!?」とすごい食いつきを見せる。
「えぇ、要望とかいってもらえれば」
とアルージェが答える。
「すぐに考えるよ!」とかなり乗り気だった。
「ははは、確かにここまで出来るなら見知った仲のアルージェ君に頼みたくなるのわかるよ。でも軽いだけなら役に立たない。スベンやってくれ」
辺境伯は次に鎧の耐久度を確かめるため、スベンに指示を出す。
「はっ!」
スベンは背中に背負っていた自前の大斧を取り出し構える。
そしてそのまま鎧に向かって叩きつける。
鎧は衝撃でカランカランと吹き飛ばされる。
辺境伯が指示を出す前に私兵の一人が鎧の様子を確認しにいく。
「こりゃ、すげぇ!団長の斧でも壊れてねぇよ!」
団員は鎧をスベンと辺境伯の元に見せに行く。
「おぉ、本当に凄いな。スベンの一撃を受けても無傷か。スベン、アルージェ君を建てようとして手加減したりしてないだろうな?」
辺境伯がスベンに視線を移し目を細める。
スベンは苦い顔をする。
「もちろんです。ジェスがアルージェにやられたんで、むしろ鼻っ柱をへし折ってやるつもりでした。俺もあの鎧を砕けないとは・・・。ブレイブライン家は安泰ですね」
「ははは、そうだな。アルージェ君、末永く頼むよ」
辺境伯は上機嫌でアルージェの肩を叩く。
私兵団達もアルージェを中心に集まり各々声を掛ける。
そんな様子を離れたところでライナが忌々しげに見ている。
「所詮悪魔憑きの婚約者、貴族との繋がりが欲しいだけなら何かあれば尻尾巻いて逃げ出すに決まってる。今に見てろ」
ライナは吐き捨てるように言い残し、その場を立ち去る。
アルージェは右手を前に出し、握手を求める。
「あの悪魔憑きの婚約者?」
少年は更に顔を歪めて、アルージェが出した手を払う。
「あんな気味が悪い奴と結婚なんて、お前相当物好きだな。悪魔憑きの女なんて気持ち悪い趣向の中年男と結婚して玩具として一生を過ごすものだと思っていたけど、あぁ、さては貴族との繋がり目当てか」
少年はアルージェを嘲笑する。
アルージェは少年を一瞬睨みつけるが、すぐに表情を戻す。
「すいません。僕のことはいくら悪く言ってもらっても構わないですが、ミスティさんに対する言葉撤回もらえないですか?」
少年はお腹を抱える程笑い、壁を叩く。
「あはははははは、撤回する?全部事実だろ?」
アルージェは少年の胸ぐらを掴む。
「撤回してください」
「離せよ」
少年はアルージェの手を払い除けようとする。
だが、アルージェは怒りで無意識に身体強化をしていて、少年は手を払うことが出来ない。
「おぉ、アルージェ君こんなところでどうしたんだい?」
たまたま通り掛かった辺境伯が声を掛ける。
辺境伯に話しかけられてアルージェの身体強化が解けたので少年はアルージェの手を払う。
「何をムキになってんだよ」
少年は崩れた服を整えてからその場を立ち去る。
「ライナ待ちなさい」
辺境伯が少年の名前を呼び、制止しようとするがライナは立ち去ってしまう。
「はぁ、ライナが失礼なことを言ってしまっただろう?申し訳ない」
辺境伯がアルージェの側に来て頭を下げる。
「いえ、僕も冷静に対応出来なかったので」
辺境伯は頭を上げて、アルージェに笑いかける。
「ははは、恥ずかしいところを見せてしまったね。あれはライナ。色々合った時に妻が何処からか連れてきた子なんだが、私もその時から戦場に出ていたからあまり躾が出来ていないだ。それで?こんなところで何してるんだい?」
「ここに用事と言うか。辺境伯様の書斎に行こうとしたんですけど、迷子になってしまったみたいで・・・」
アルージェが恥ずかしそうに話すと辺境伯は目を点にして、そして急に笑い出す。
「いやぁ、すまない。不快にさせてしまったかな?」
目元あたりをハンカチで拭って謝る辺境伯。
「いえ、気になさらないでください」
アルージェは手をブンブンと横に振る。
「それにしても私兵団員を倒すくらい強くて、グレンデさんに鍛冶を教えてもらって、魔法まで使える完璧人間だと思っていたんだが、まさかそんな一面があるなんて知らなかったよ」
「あはは・・・。いつもはルーネに道案内頼むんですけど、今日は何も言わずに部屋から出てきてしまって・・・。鍛冶場にはたまたま金属を叩く音が聞こえたので、辿り着けたんですけど辺境伯様の書斎は本当に分からなくて・・・」
アルージェは照れを隠すように後頭部を摩り笑う。
「ははは、なら一緒に行くとしようか」
辺境伯が先導し書斎に向かう。
書斎に向かう途中、辺境伯が先に要件だけ聞いとこうとアルージェに話しかける。
「そういえば、要件は何かな?」
「あっ、昨日食事の時に言ってた師匠から預かってた鎧を見てもらいたくて」
「あー、それは書斎じゃ厳しそうだ・・・。訓練場に行くとしようか」
アルージェは奇しくも最終目的地であった訓練場に行くことになる。
辺境伯が訓練場に近づくと私兵団達が訓練を辞めて、整列する。
「アルージェ君が鎧を持ってきてくれたから、皆んなも見て欲しい。アルージェ君よろしく」
「はい!」
アイテムボックスからニツールで預かってきた、地面に置く。
まずスベンと辺境伯が鎧を手に取る。
「これは・・・。驚いたな」
辺境伯は全く重さを感じないことに驚く。
「ですが、これだと訓練では使え無さそうですね」
スベンは鎧を片手でブンブンと振り回す。
他の私兵団員も鎧を手に取り、各々感嘆の声を上げる。
一緒に訓練していたアインも興味を持ち、鎧を持ち上げる。
軽いとはいっても重量はあるだろうと思い力を入れていたので、アインは拍子抜けする。
「おわっと。危ない落としてしまうところだったよ。これは本当に凄いね。僕の鎧の付与もアルージェにして貰おうかな」
「アインさんの鎧すごく高そうなので手を加えるのちょっと怖いですけど、僕でいいならいつでもやりますよ」
アルージェがアインに答えると、「本当かい!?」とすごい食いつきを見せる。
「えぇ、要望とかいってもらえれば」
とアルージェが答える。
「すぐに考えるよ!」とかなり乗り気だった。
「ははは、確かにここまで出来るなら見知った仲のアルージェ君に頼みたくなるのわかるよ。でも軽いだけなら役に立たない。スベンやってくれ」
辺境伯は次に鎧の耐久度を確かめるため、スベンに指示を出す。
「はっ!」
スベンは背中に背負っていた自前の大斧を取り出し構える。
そしてそのまま鎧に向かって叩きつける。
鎧は衝撃でカランカランと吹き飛ばされる。
辺境伯が指示を出す前に私兵の一人が鎧の様子を確認しにいく。
「こりゃ、すげぇ!団長の斧でも壊れてねぇよ!」
団員は鎧をスベンと辺境伯の元に見せに行く。
「おぉ、本当に凄いな。スベンの一撃を受けても無傷か。スベン、アルージェ君を建てようとして手加減したりしてないだろうな?」
辺境伯がスベンに視線を移し目を細める。
スベンは苦い顔をする。
「もちろんです。ジェスがアルージェにやられたんで、むしろ鼻っ柱をへし折ってやるつもりでした。俺もあの鎧を砕けないとは・・・。ブレイブライン家は安泰ですね」
「ははは、そうだな。アルージェ君、末永く頼むよ」
辺境伯は上機嫌でアルージェの肩を叩く。
私兵団達もアルージェを中心に集まり各々声を掛ける。
そんな様子を離れたところでライナが忌々しげに見ている。
「所詮悪魔憑きの婚約者、貴族との繋がりが欲しいだけなら何かあれば尻尾巻いて逃げ出すに決まってる。今に見てろ」
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