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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百八十六話
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「そういえば、アイン達とは何処で知り合ったんだ?」
辺境伯がアルージェに尋ねる。
果実水を飲んでいたアルージェは器を置く。
「アインさん達ですか?初めて会ったのはニツールです。僕がまだ五歳位の時ですね。森で魔物に襲われているところをたまたま村の近くで依頼を受けていたアインさん達に助けてもらいました」
「なるほど、確かニツール村は毎年ゴブリン退治の依頼を出していたな。それかな?」
「そうですよ」
「おや?僕達の出会いの話かな?」
アインが果実水を持って現れる。
「あっ、アインさん」
アルージェがアインの方へ視線を向ける。
「やぁ、私兵団員達と話してたけど、お酒のせいか話してた人が眠ちゃったからこっちに来たよ」
アインはアルージェと辺境伯の対面に腰を下ろす。
「それにしてもアルージェと出会った時か。懐かしいね。確かあの日は僕達がゴブリン退治を終えて、帰ろうとしたら戦闘の音が聞こえたんだったね。辺りは暗くなってるのにおかしいと思って音のする方に行ってみたら、アルージェが狼型の魔物に襲われてて、間一髪のところで助けたんだったよね」
「なるほどな。ならアイン達はアルージェ君の命の恩人と言う訳か」
辺境伯は持っていた酒をチョビチョビと飲む。
「それから色々あって少しの間村に滞在してたんですけど、最終日に今みたいな感じで食事会開いたんですよ。ニツール村の人みんな誘って、その時に仲間に入れてくれってアルージェに頼みこまれたんだったね。あの時からアルージェは頑固だったよね」
アインはあの時のことを思い出し笑う。
「その時仲間に入れたのか?」
アインは手を横に振り否定する。
「いや、まさか。アルージェはまだ小さくて冒険者登録も出来ない歳だったんで、十歳になってまだ仲間になりたかったらフォルスタに会いに来てくれって行ったんですよ。まぁ僕達はそれからすぐにゴールドランクになって王都の方に拠点を変えたんですけどね」
「なるほど、それからは私が知っている通りか。フォルスタに本当に行って、たまたま私の依頼を受けて。その後、私と決闘してミスティと一緒に王都の魔法学校に行ったのか」
「えっ、アルージェ。辺境伯様と決闘したのかい?」
アインが決闘という言葉に食い付く。
「そうだぞ、アイン。しかもその時アルージェ君は私に勝ってるからね」
「しかも勝ってるんだ。アルージェはほんとに凄いな。やっぱり冒険者ランクゴールド帯になれるように進言しておこうか?」
「おいおい、アインそりゃ無いだろ。アルージェ君は家の跡取り候補だぞ?」
「いやいや、辞めてくださいよ!辺境伯様が僕を殺す気だったら勝ててませんから!それに辺境伯様は軍師だって聞きましたよ?軍を率いる人なんですから!」
アルージェはアワアワと手を動かす。
「私も結構本気で戦っていたさ。ミスティにいい顔をしたかったからね。まぁミスティは今の関係に満足している様だがね」
「関係?普通に婚約者じゃないのかい?」
「え、えーと・・・。なんて説明したらいいんでしょうか・・・」
アルージェが言い淀んでいると辺境伯が横から突っ込みを入れる。
「そんなに恥ずかしがることでも無いだろう?ミスティの事を魔法契約で死ぬまで側付きにしているだけじゃないか」
アインが飲み物をブッと吐き出し、笑う。
「ははは!アルージェ!君本当にいい趣味してるよ!」
「いやぁ・・・。流れに身を任せていたら、こんなことになってました。あははは」
「アルージェ君はその歳で色んな経験をしているな。ハハハハ」
辺境伯もお酒がだいぶ入っているのか上機嫌だ。
「経験で思い出したけど。アルージェは魔法学校の魔法実験中に現れてしまった暴食スライムを単独でやったとかカレンが言ってましたね」
「なに!?暴食スライムと言えば災害指定の魔物じゃないか!」
辺境伯はコップを強く机に置く。
「い、いやー。あれは単独っていうか、ルーネも居て、ミスティさんも居て、マイアさんが居て、生徒達が協力してくれたからどうにかなっただけですよ。それに最後は何も出来ずに誰かが魔法で倒してくれたので、実際のところ僕は足止めしただけって感じですね」
「いやいや、十分過ぎる功績だろう。私の軍でも足止めだけでも骨が折れる。それを学生だけでどうにかするなんて。とんでもないな。少し酔いが覚めてしまったよ」
辺境伯は器に入っているお酒の残量を見るがもう空になっていた。
「そうだよ、アルージェ。君はもっと自分に自信を持った方がいいと思うよ」
「結局僕の力じゃなくて、恵まれた魔力総量でゴリ押ししただけですから。今回のジェスさんとの戦いだって同じ展開でしたし。」
「なに。まだまだ若いんだ、生き急ぐことは無いさ。技術なんてもんはやってればスグに身につく。明日から私兵団と訓練するって聞いてるぞ?それだけやる気があれば、すぐに強くなるさ」
辺境伯がアルージェの肩ポンポンと叩き、酒を取りに席から離れていく。
「そうだね。自分で言うのもなんだけどその歳で僕と対等に戦えてる時点で、本当に凄いことなんだ。ゴールド帯の冒険者ってのは、一人で軍すらも倒せる実力が有る人達ばかりなんだから、自信を持ちなよ!」
アインもアルージェの背中をパンと叩き、果実水を取りに立ち上がる。
辺境伯がアルージェに尋ねる。
果実水を飲んでいたアルージェは器を置く。
「アインさん達ですか?初めて会ったのはニツールです。僕がまだ五歳位の時ですね。森で魔物に襲われているところをたまたま村の近くで依頼を受けていたアインさん達に助けてもらいました」
「なるほど、確かニツール村は毎年ゴブリン退治の依頼を出していたな。それかな?」
「そうですよ」
「おや?僕達の出会いの話かな?」
アインが果実水を持って現れる。
「あっ、アインさん」
アルージェがアインの方へ視線を向ける。
「やぁ、私兵団員達と話してたけど、お酒のせいか話してた人が眠ちゃったからこっちに来たよ」
アインはアルージェと辺境伯の対面に腰を下ろす。
「それにしてもアルージェと出会った時か。懐かしいね。確かあの日は僕達がゴブリン退治を終えて、帰ろうとしたら戦闘の音が聞こえたんだったね。辺りは暗くなってるのにおかしいと思って音のする方に行ってみたら、アルージェが狼型の魔物に襲われてて、間一髪のところで助けたんだったよね」
「なるほどな。ならアイン達はアルージェ君の命の恩人と言う訳か」
辺境伯は持っていた酒をチョビチョビと飲む。
「それから色々あって少しの間村に滞在してたんですけど、最終日に今みたいな感じで食事会開いたんですよ。ニツール村の人みんな誘って、その時に仲間に入れてくれってアルージェに頼みこまれたんだったね。あの時からアルージェは頑固だったよね」
アインはあの時のことを思い出し笑う。
「その時仲間に入れたのか?」
アインは手を横に振り否定する。
「いや、まさか。アルージェはまだ小さくて冒険者登録も出来ない歳だったんで、十歳になってまだ仲間になりたかったらフォルスタに会いに来てくれって行ったんですよ。まぁ僕達はそれからすぐにゴールドランクになって王都の方に拠点を変えたんですけどね」
「なるほど、それからは私が知っている通りか。フォルスタに本当に行って、たまたま私の依頼を受けて。その後、私と決闘してミスティと一緒に王都の魔法学校に行ったのか」
「えっ、アルージェ。辺境伯様と決闘したのかい?」
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「そうだぞ、アイン。しかもその時アルージェ君は私に勝ってるからね」
「しかも勝ってるんだ。アルージェはほんとに凄いな。やっぱり冒険者ランクゴールド帯になれるように進言しておこうか?」
「おいおい、アインそりゃ無いだろ。アルージェ君は家の跡取り候補だぞ?」
「いやいや、辞めてくださいよ!辺境伯様が僕を殺す気だったら勝ててませんから!それに辺境伯様は軍師だって聞きましたよ?軍を率いる人なんですから!」
アルージェはアワアワと手を動かす。
「私も結構本気で戦っていたさ。ミスティにいい顔をしたかったからね。まぁミスティは今の関係に満足している様だがね」
「関係?普通に婚約者じゃないのかい?」
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アルージェが言い淀んでいると辺境伯が横から突っ込みを入れる。
「そんなに恥ずかしがることでも無いだろう?ミスティの事を魔法契約で死ぬまで側付きにしているだけじゃないか」
アインが飲み物をブッと吐き出し、笑う。
「ははは!アルージェ!君本当にいい趣味してるよ!」
「いやぁ・・・。流れに身を任せていたら、こんなことになってました。あははは」
「アルージェ君はその歳で色んな経験をしているな。ハハハハ」
辺境伯もお酒がだいぶ入っているのか上機嫌だ。
「経験で思い出したけど。アルージェは魔法学校の魔法実験中に現れてしまった暴食スライムを単独でやったとかカレンが言ってましたね」
「なに!?暴食スライムと言えば災害指定の魔物じゃないか!」
辺境伯はコップを強く机に置く。
「い、いやー。あれは単独っていうか、ルーネも居て、ミスティさんも居て、マイアさんが居て、生徒達が協力してくれたからどうにかなっただけですよ。それに最後は何も出来ずに誰かが魔法で倒してくれたので、実際のところ僕は足止めしただけって感じですね」
「いやいや、十分過ぎる功績だろう。私の軍でも足止めだけでも骨が折れる。それを学生だけでどうにかするなんて。とんでもないな。少し酔いが覚めてしまったよ」
辺境伯は器に入っているお酒の残量を見るがもう空になっていた。
「そうだよ、アルージェ。君はもっと自分に自信を持った方がいいと思うよ」
「結局僕の力じゃなくて、恵まれた魔力総量でゴリ押ししただけですから。今回のジェスさんとの戦いだって同じ展開でしたし。」
「なに。まだまだ若いんだ、生き急ぐことは無いさ。技術なんてもんはやってればスグに身につく。明日から私兵団と訓練するって聞いてるぞ?それだけやる気があれば、すぐに強くなるさ」
辺境伯がアルージェの肩ポンポンと叩き、酒を取りに席から離れていく。
「そうだね。自分で言うのもなんだけどその歳で僕と対等に戦えてる時点で、本当に凄いことなんだ。ゴールド帯の冒険者ってのは、一人で軍すらも倒せる実力が有る人達ばかりなんだから、自信を持ちなよ!」
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