188 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百八十六話
しおりを挟む
「そういえば、アイン達とは何処で知り合ったんだ?」
辺境伯がアルージェに尋ねる。
果実水を飲んでいたアルージェは器を置く。
「アインさん達ですか?初めて会ったのはニツールです。僕がまだ五歳位の時ですね。森で魔物に襲われているところをたまたま村の近くで依頼を受けていたアインさん達に助けてもらいました」
「なるほど、確かニツール村は毎年ゴブリン退治の依頼を出していたな。それかな?」
「そうですよ」
「おや?僕達の出会いの話かな?」
アインが果実水を持って現れる。
「あっ、アインさん」
アルージェがアインの方へ視線を向ける。
「やぁ、私兵団員達と話してたけど、お酒のせいか話してた人が眠ちゃったからこっちに来たよ」
アインはアルージェと辺境伯の対面に腰を下ろす。
「それにしてもアルージェと出会った時か。懐かしいね。確かあの日は僕達がゴブリン退治を終えて、帰ろうとしたら戦闘の音が聞こえたんだったね。辺りは暗くなってるのにおかしいと思って音のする方に行ってみたら、アルージェが狼型の魔物に襲われてて、間一髪のところで助けたんだったよね」
「なるほどな。ならアイン達はアルージェ君の命の恩人と言う訳か」
辺境伯は持っていた酒をチョビチョビと飲む。
「それから色々あって少しの間村に滞在してたんですけど、最終日に今みたいな感じで食事会開いたんですよ。ニツール村の人みんな誘って、その時に仲間に入れてくれってアルージェに頼みこまれたんだったね。あの時からアルージェは頑固だったよね」
アインはあの時のことを思い出し笑う。
「その時仲間に入れたのか?」
アインは手を横に振り否定する。
「いや、まさか。アルージェはまだ小さくて冒険者登録も出来ない歳だったんで、十歳になってまだ仲間になりたかったらフォルスタに会いに来てくれって行ったんですよ。まぁ僕達はそれからすぐにゴールドランクになって王都の方に拠点を変えたんですけどね」
「なるほど、それからは私が知っている通りか。フォルスタに本当に行って、たまたま私の依頼を受けて。その後、私と決闘してミスティと一緒に王都の魔法学校に行ったのか」
「えっ、アルージェ。辺境伯様と決闘したのかい?」
アインが決闘という言葉に食い付く。
「そうだぞ、アイン。しかもその時アルージェ君は私に勝ってるからね」
「しかも勝ってるんだ。アルージェはほんとに凄いな。やっぱり冒険者ランクゴールド帯になれるように進言しておこうか?」
「おいおい、アインそりゃ無いだろ。アルージェ君は家の跡取り候補だぞ?」
「いやいや、辞めてくださいよ!辺境伯様が僕を殺す気だったら勝ててませんから!それに辺境伯様は軍師だって聞きましたよ?軍を率いる人なんですから!」
アルージェはアワアワと手を動かす。
「私も結構本気で戦っていたさ。ミスティにいい顔をしたかったからね。まぁミスティは今の関係に満足している様だがね」
「関係?普通に婚約者じゃないのかい?」
「え、えーと・・・。なんて説明したらいいんでしょうか・・・」
アルージェが言い淀んでいると辺境伯が横から突っ込みを入れる。
「そんなに恥ずかしがることでも無いだろう?ミスティの事を魔法契約で死ぬまで側付きにしているだけじゃないか」
アインが飲み物をブッと吐き出し、笑う。
「ははは!アルージェ!君本当にいい趣味してるよ!」
「いやぁ・・・。流れに身を任せていたら、こんなことになってました。あははは」
「アルージェ君はその歳で色んな経験をしているな。ハハハハ」
辺境伯もお酒がだいぶ入っているのか上機嫌だ。
「経験で思い出したけど。アルージェは魔法学校の魔法実験中に現れてしまった暴食スライムを単独でやったとかカレンが言ってましたね」
「なに!?暴食スライムと言えば災害指定の魔物じゃないか!」
辺境伯はコップを強く机に置く。
「い、いやー。あれは単独っていうか、ルーネも居て、ミスティさんも居て、マイアさんが居て、生徒達が協力してくれたからどうにかなっただけですよ。それに最後は何も出来ずに誰かが魔法で倒してくれたので、実際のところ僕は足止めしただけって感じですね」
「いやいや、十分過ぎる功績だろう。私の軍でも足止めだけでも骨が折れる。それを学生だけでどうにかするなんて。とんでもないな。少し酔いが覚めてしまったよ」
辺境伯は器に入っているお酒の残量を見るがもう空になっていた。
「そうだよ、アルージェ。君はもっと自分に自信を持った方がいいと思うよ」
「結局僕の力じゃなくて、恵まれた魔力総量でゴリ押ししただけですから。今回のジェスさんとの戦いだって同じ展開でしたし。」
「なに。まだまだ若いんだ、生き急ぐことは無いさ。技術なんてもんはやってればスグに身につく。明日から私兵団と訓練するって聞いてるぞ?それだけやる気があれば、すぐに強くなるさ」
辺境伯がアルージェの肩ポンポンと叩き、酒を取りに席から離れていく。
「そうだね。自分で言うのもなんだけどその歳で僕と対等に戦えてる時点で、本当に凄いことなんだ。ゴールド帯の冒険者ってのは、一人で軍すらも倒せる実力が有る人達ばかりなんだから、自信を持ちなよ!」
アインもアルージェの背中をパンと叩き、果実水を取りに立ち上がる。
辺境伯がアルージェに尋ねる。
果実水を飲んでいたアルージェは器を置く。
「アインさん達ですか?初めて会ったのはニツールです。僕がまだ五歳位の時ですね。森で魔物に襲われているところをたまたま村の近くで依頼を受けていたアインさん達に助けてもらいました」
「なるほど、確かニツール村は毎年ゴブリン退治の依頼を出していたな。それかな?」
「そうですよ」
「おや?僕達の出会いの話かな?」
アインが果実水を持って現れる。
「あっ、アインさん」
アルージェがアインの方へ視線を向ける。
「やぁ、私兵団員達と話してたけど、お酒のせいか話してた人が眠ちゃったからこっちに来たよ」
アインはアルージェと辺境伯の対面に腰を下ろす。
「それにしてもアルージェと出会った時か。懐かしいね。確かあの日は僕達がゴブリン退治を終えて、帰ろうとしたら戦闘の音が聞こえたんだったね。辺りは暗くなってるのにおかしいと思って音のする方に行ってみたら、アルージェが狼型の魔物に襲われてて、間一髪のところで助けたんだったよね」
「なるほどな。ならアイン達はアルージェ君の命の恩人と言う訳か」
辺境伯は持っていた酒をチョビチョビと飲む。
「それから色々あって少しの間村に滞在してたんですけど、最終日に今みたいな感じで食事会開いたんですよ。ニツール村の人みんな誘って、その時に仲間に入れてくれってアルージェに頼みこまれたんだったね。あの時からアルージェは頑固だったよね」
アインはあの時のことを思い出し笑う。
「その時仲間に入れたのか?」
アインは手を横に振り否定する。
「いや、まさか。アルージェはまだ小さくて冒険者登録も出来ない歳だったんで、十歳になってまだ仲間になりたかったらフォルスタに会いに来てくれって行ったんですよ。まぁ僕達はそれからすぐにゴールドランクになって王都の方に拠点を変えたんですけどね」
「なるほど、それからは私が知っている通りか。フォルスタに本当に行って、たまたま私の依頼を受けて。その後、私と決闘してミスティと一緒に王都の魔法学校に行ったのか」
「えっ、アルージェ。辺境伯様と決闘したのかい?」
アインが決闘という言葉に食い付く。
「そうだぞ、アイン。しかもその時アルージェ君は私に勝ってるからね」
「しかも勝ってるんだ。アルージェはほんとに凄いな。やっぱり冒険者ランクゴールド帯になれるように進言しておこうか?」
「おいおい、アインそりゃ無いだろ。アルージェ君は家の跡取り候補だぞ?」
「いやいや、辞めてくださいよ!辺境伯様が僕を殺す気だったら勝ててませんから!それに辺境伯様は軍師だって聞きましたよ?軍を率いる人なんですから!」
アルージェはアワアワと手を動かす。
「私も結構本気で戦っていたさ。ミスティにいい顔をしたかったからね。まぁミスティは今の関係に満足している様だがね」
「関係?普通に婚約者じゃないのかい?」
「え、えーと・・・。なんて説明したらいいんでしょうか・・・」
アルージェが言い淀んでいると辺境伯が横から突っ込みを入れる。
「そんなに恥ずかしがることでも無いだろう?ミスティの事を魔法契約で死ぬまで側付きにしているだけじゃないか」
アインが飲み物をブッと吐き出し、笑う。
「ははは!アルージェ!君本当にいい趣味してるよ!」
「いやぁ・・・。流れに身を任せていたら、こんなことになってました。あははは」
「アルージェ君はその歳で色んな経験をしているな。ハハハハ」
辺境伯もお酒がだいぶ入っているのか上機嫌だ。
「経験で思い出したけど。アルージェは魔法学校の魔法実験中に現れてしまった暴食スライムを単独でやったとかカレンが言ってましたね」
「なに!?暴食スライムと言えば災害指定の魔物じゃないか!」
辺境伯はコップを強く机に置く。
「い、いやー。あれは単独っていうか、ルーネも居て、ミスティさんも居て、マイアさんが居て、生徒達が協力してくれたからどうにかなっただけですよ。それに最後は何も出来ずに誰かが魔法で倒してくれたので、実際のところ僕は足止めしただけって感じですね」
「いやいや、十分過ぎる功績だろう。私の軍でも足止めだけでも骨が折れる。それを学生だけでどうにかするなんて。とんでもないな。少し酔いが覚めてしまったよ」
辺境伯は器に入っているお酒の残量を見るがもう空になっていた。
「そうだよ、アルージェ。君はもっと自分に自信を持った方がいいと思うよ」
「結局僕の力じゃなくて、恵まれた魔力総量でゴリ押ししただけですから。今回のジェスさんとの戦いだって同じ展開でしたし。」
「なに。まだまだ若いんだ、生き急ぐことは無いさ。技術なんてもんはやってればスグに身につく。明日から私兵団と訓練するって聞いてるぞ?それだけやる気があれば、すぐに強くなるさ」
辺境伯がアルージェの肩ポンポンと叩き、酒を取りに席から離れていく。
「そうだね。自分で言うのもなんだけどその歳で僕と対等に戦えてる時点で、本当に凄いことなんだ。ゴールド帯の冒険者ってのは、一人で軍すらも倒せる実力が有る人達ばかりなんだから、自信を持ちなよ!」
アインもアルージェの背中をパンと叩き、果実水を取りに立ち上がる。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる