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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百八十四話
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「剣で槍と対等に戦えて、槍も俺と同じくらい使えて、ナイフや斧まで正確に投げてくる。一体何が一番得意なんだ?もしかしてあれか?風巻国のニンジャって奴か?」
「風巻国・・・?聞いたことないので、あんまり分からないですけど。忍者ではないですよ。戦いを生業にしてる人にそこまで言ってもらえて嬉しいです。けど僕はちょっと戦えるだけの鍛冶屋さんですよ」
アルージェは照れ臭そうに後頭部に手を回す。
ジェスはポカンと口を開く。
そして、ハッと意識を戻して驚く。
「えっ、アルージェって鍛冶屋?正気?」
「そうですよ!本業は鍛冶屋です!さっき戦った時に使った武器、全部お手製ですからね!あとは魔法学校行ってるんで魔法も使えますよ。あぁ、でも魔法で戦うのはミスティさん達の方が上手ですね。あとは武器に付与もするので、魔道具だってついでに作れたりします。けど本業は鍛冶屋です!」
「いやいや、その歳でどんだけやってんのさ。俺、アルージェくらいの時には何の目標もなく適当に生きてたって。ひぇぇ、お嬢の婚約者こえぇ。団長!アルージェすげぇって!」
ジェスは叫びながらスベンの元に行く。
「ジェス、戻ってきたか。ラーニャさんに感謝しておけよ。あんだけボロボロだったお前を傷跡も残らないように回復してくれたんだから」
「いや、それはもちろん感謝してますって!いや、それよりアルージェのこと聞きました?外側で会話に入ってる風に話聞きながら一人でウンウンと頷いてたんで、話してきたんですけど」
「いや、聞いてないな。そもそもこっちに来てるのも知らなかった。ここからだと外側にいられたら見えないんだ」
「アルージェすげぇっすよ。あんだけ武器上手く使えて、身体強化もうまくて魔法も使えるらしいっすよ!」
「おぉ、確かに剣だけでなく槍も一流だったな。軍一の槍師のお前と互角以上に戦えてたしな。あと投擲武器の扱いも上手かったな。あんなに多才に武器を使えるなんて風巻国のニンジャみたいだな、ハハハハ」
スベンは上機嫌に笑う。
「そうなんすよ!んで、ここからが驚きなんすけど、アルージェ実は鍛冶屋らしくて、魔道具も作れるらしいんすよ!」
「鍛冶屋・・・?あの強さで?そういえば辺境伯様が屋敷内に魔道具が増えたって言ってたな。食材を冷やすための箱や身近な物だと訓練場のトイレも水が出たりと」
「それ、僕が作った魔道具です!」
スベン達はお酒を飲んで馬鹿でかい声で話すので、少し離れていたアルージェまで聞こえていた。
ついでなので返事をする。
「おいおい、すげぇな!あのトイレから水が出てケツきれいにするやつ最高だよ!」
話を聞いていた別の私兵団員がアルージェに話しかける。
「だよな!あれ、クセになるんだよな!」
「俺なんて一番勢いの強いやつで洗ってるぜ!」
「お前のケツどうなってんだよ!あんなの一番つえーのでやったら痛ぇだろう!ケツ穴鉄でできてんじゃねぇのか!」
ゲラゲラゲラと私兵団員達が笑い出す。
「あはは!あれの一番強いやつ相当痛いと思いますよ!」
アルージェもなんだか雰囲気が楽しくて笑う。
「アルージェ、楽しそうだね」
カレン達から逃げてきたアインも話に入ってくる。
アルージェが声がする方に視線を移す。
「あれ?アインさんもこっちに?」
「あぁ、ちょっと冗談を言ったらカレンに怒られそうになってね。こっちに逃げてきたんだ」
アインは恥ずかしそうに頬を掻く。
「あはは!カレン教授って怒ったら怖そうですもんね。授業の時とかは本気で怒ってなさそうでしたけど」
「怖いなんてもんじゃないよ。ドラゴンと戦う方がマシかもしれない」
二人が話していると、ジェスが団長の元から戻ってくる。
「おっ、兄ちゃんあれだろ?冒険者ギルドの勇者様だろ?」
「勇者なんてそんな烏滸がましいよ。勝手にギルドの奴らが言ってるだけさ」
「そうなのか?でも立ち居振る舞いで分かるぜ。あんたも相当強いんだろ?」
「どうだろう。試してみたいし、明日とかよければ訓練させてもらえないかな?」
「構わないぞ。強いやつは歓迎だ。もちろんアルージェも出るだろ?」
スベンもいつの間にかこちらの方に移動してきたようだ。
「そうですねぇ。あっ、でも鍛冶場があるって辺境伯様言ってたので、ちょっと武器の調整とかしてから参加したいです」
「ハハハハ!本当に鍛冶屋なのか!あんなに強いのに鍛冶屋とはなぁ。世界は広いもんだ。お嬢が俺達に紹介したくなるのも分かるぜ。アルージェも今日から俺達の仲間だ!なぁ、野郎ども!」
スベンの掛け声で私兵団達が返事をする。
「ほんとにあんなに強いなんてすげぇよ!よろしくなぁ!」
「小せぇのにジェスをのしちまうなんて、ぶっ飛んでるぜ!」
「トイレ王子!トイレ王子!」
一人が言い出した“トイレ王子”という言葉に皆が同調し、トイレ王子コールが始まる。
全然内容を知らないアインまでもトイレ王子!と声を上げている。
「ちょっと!ちょっと!トイレ王子はやめてくださいよ!」
アルージェがトイレ王子に反応すると、そこでまた笑いが起きる。
「風巻国・・・?聞いたことないので、あんまり分からないですけど。忍者ではないですよ。戦いを生業にしてる人にそこまで言ってもらえて嬉しいです。けど僕はちょっと戦えるだけの鍛冶屋さんですよ」
アルージェは照れ臭そうに後頭部に手を回す。
ジェスはポカンと口を開く。
そして、ハッと意識を戻して驚く。
「えっ、アルージェって鍛冶屋?正気?」
「そうですよ!本業は鍛冶屋です!さっき戦った時に使った武器、全部お手製ですからね!あとは魔法学校行ってるんで魔法も使えますよ。あぁ、でも魔法で戦うのはミスティさん達の方が上手ですね。あとは武器に付与もするので、魔道具だってついでに作れたりします。けど本業は鍛冶屋です!」
「いやいや、その歳でどんだけやってんのさ。俺、アルージェくらいの時には何の目標もなく適当に生きてたって。ひぇぇ、お嬢の婚約者こえぇ。団長!アルージェすげぇって!」
ジェスは叫びながらスベンの元に行く。
「ジェス、戻ってきたか。ラーニャさんに感謝しておけよ。あんだけボロボロだったお前を傷跡も残らないように回復してくれたんだから」
「いや、それはもちろん感謝してますって!いや、それよりアルージェのこと聞きました?外側で会話に入ってる風に話聞きながら一人でウンウンと頷いてたんで、話してきたんですけど」
「いや、聞いてないな。そもそもこっちに来てるのも知らなかった。ここからだと外側にいられたら見えないんだ」
「アルージェすげぇっすよ。あんだけ武器上手く使えて、身体強化もうまくて魔法も使えるらしいっすよ!」
「おぉ、確かに剣だけでなく槍も一流だったな。軍一の槍師のお前と互角以上に戦えてたしな。あと投擲武器の扱いも上手かったな。あんなに多才に武器を使えるなんて風巻国のニンジャみたいだな、ハハハハ」
スベンは上機嫌に笑う。
「そうなんすよ!んで、ここからが驚きなんすけど、アルージェ実は鍛冶屋らしくて、魔道具も作れるらしいんすよ!」
「鍛冶屋・・・?あの強さで?そういえば辺境伯様が屋敷内に魔道具が増えたって言ってたな。食材を冷やすための箱や身近な物だと訓練場のトイレも水が出たりと」
「それ、僕が作った魔道具です!」
スベン達はお酒を飲んで馬鹿でかい声で話すので、少し離れていたアルージェまで聞こえていた。
ついでなので返事をする。
「おいおい、すげぇな!あのトイレから水が出てケツきれいにするやつ最高だよ!」
話を聞いていた別の私兵団員がアルージェに話しかける。
「だよな!あれ、クセになるんだよな!」
「俺なんて一番勢いの強いやつで洗ってるぜ!」
「お前のケツどうなってんだよ!あんなの一番つえーのでやったら痛ぇだろう!ケツ穴鉄でできてんじゃねぇのか!」
ゲラゲラゲラと私兵団員達が笑い出す。
「あはは!あれの一番強いやつ相当痛いと思いますよ!」
アルージェもなんだか雰囲気が楽しくて笑う。
「アルージェ、楽しそうだね」
カレン達から逃げてきたアインも話に入ってくる。
アルージェが声がする方に視線を移す。
「あれ?アインさんもこっちに?」
「あぁ、ちょっと冗談を言ったらカレンに怒られそうになってね。こっちに逃げてきたんだ」
アインは恥ずかしそうに頬を掻く。
「あはは!カレン教授って怒ったら怖そうですもんね。授業の時とかは本気で怒ってなさそうでしたけど」
「怖いなんてもんじゃないよ。ドラゴンと戦う方がマシかもしれない」
二人が話していると、ジェスが団長の元から戻ってくる。
「おっ、兄ちゃんあれだろ?冒険者ギルドの勇者様だろ?」
「勇者なんてそんな烏滸がましいよ。勝手にギルドの奴らが言ってるだけさ」
「そうなのか?でも立ち居振る舞いで分かるぜ。あんたも相当強いんだろ?」
「どうだろう。試してみたいし、明日とかよければ訓練させてもらえないかな?」
「構わないぞ。強いやつは歓迎だ。もちろんアルージェも出るだろ?」
スベンもいつの間にかこちらの方に移動してきたようだ。
「そうですねぇ。あっ、でも鍛冶場があるって辺境伯様言ってたので、ちょっと武器の調整とかしてから参加したいです」
「ハハハハ!本当に鍛冶屋なのか!あんなに強いのに鍛冶屋とはなぁ。世界は広いもんだ。お嬢が俺達に紹介したくなるのも分かるぜ。アルージェも今日から俺達の仲間だ!なぁ、野郎ども!」
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「ほんとにあんなに強いなんてすげぇよ!よろしくなぁ!」
「小せぇのにジェスをのしちまうなんて、ぶっ飛んでるぜ!」
「トイレ王子!トイレ王子!」
一人が言い出した“トイレ王子”という言葉に皆が同調し、トイレ王子コールが始まる。
全然内容を知らないアインまでもトイレ王子!と声を上げている。
「ちょっと!ちょっと!トイレ王子はやめてくださいよ!」
アルージェがトイレ王子に反応すると、そこでまた笑いが起きる。
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