Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
177 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百七十五話

しおりを挟む
明日の朝出ていくので、最後にやるべきことを済ませに向かう。

数分後アルージェはロイの家に来ていた。

ロイ家の扉をノックする。
「アルージェです」

「はいはーい。ちょっと待ってね」
ソフィアの声がして扉が開く。

「よく来たね。今日はどうしたんだい?」

「こんにちは、ソフィアさん。ライって居ますか?」

「ライかい?ライなら家の裏で弓の練習してるよ」

「おっ!ちょうど良かった!行っても良いですか?」

「あぁ、構わないよ」
ソフィアから許可をもらったので、アルージェは家の裏に回る。

ロイは狩ってきたであろう動物の処理を、ライはソフィアのいう通り弓の練習をしていた。

「おぉ、ライ頑張ってるじゃん」
アルージェが声を掛けるとライが振り向く。

「兄ちゃん!どうしたの!?」
嬉しそうに弓を置いて、こちらに駆け寄ってくる。

「ふふふ、前に約束したでしょ?特製の弓を作ってあげるって」

「えっ!ってことは??」
ライは目を輝かせる。

「うん、出来たよ」
アイテムボックスからスラ弓すらきゅうとハンティングダガーを取り出す。

「おぉ!その弓は俺があげたやつじゃねぇか」
ライが騒いでいたので、ロイも仕事の手を止めて様子を見にくる。

「はい、前に先生には言いましたけど、魔法を使ってると弓を使う機会が減って宝の持ち腐れになっちゃうので付与魔法を施して改造しました」

「なら兄ちゃんが使ってた弓ってこと!?そんなのもらっていいのか?」

「もちろん!使い方みせるからちょっとこっち来て」
ライが先程まで的を狙っていた場所に移動する。

「まず何もしなければ、普通の弓だよ」
アルージェがスラ弓すらきゅうに矢を番え的に向かって放つ。

「おっ、使ってないって言ってた割に腕は落ちてないみたいだな」
的のど真ん中を射抜いた矢を見て、ロイが感心する。

「実戦では使ってないだけで、訓練は程々にしてますからね!そしたら次はこのハンティングナイフを」
アルージェはハンティングナイフに魔力を少しだけ込めて、的に向かって投擲する。

ハンティングナイフはまたもや的のど真ん中に刺さる。

「おぉ、うまいもんだな!」
ライはマジマジと話を聞いていて反応が薄い、ライよりもロイの方が楽しんでいるみたいだ。

「んで、スラ弓すらきゅうに魔力を流して起動させる」
スラ弓すらきゅうは魔力を流すことで、刻印が浮き出る。

「見てて」
アルージェは適当な方に向けて、矢を放つ。
だが、矢が軌道が不自然な挙動でハンティングダガーの方に修正される。

ライは無言で的に刺さった矢を見つめる。

「あれ?あんまりってかん・・・」
ライの反応が薄いので、滑ったかと思ったがアルージェの言葉を遮りライが叫ぶ。

「すげぇぇぇぇぇぇ!!どこに向かって打ってもあのナイフのとこに行くってこと?」

「うん、まぁ、そうい・・」
「すげぇぇぇぇぇぇ!!やり方俺にも教えてくれよ!」

「あはは、喜んでもらえて良かったよ。ライは魔力の操作方法わからないと思うからそこから教えるね。ちゃんと毎日やらないと咄嗟に使えないからやるんだよ?」

「当たり前じゃん!それより早く教えてくれよ!」

とりあえず魔力操作の方法とハンティングダガー、スラ弓すらきゅうに対して魔力を注ぐ方法を教える。
どちらも魔力の少ないライの為に少し注げば起動するようにチューニングしている。

その日の夕方にはなんとかスラ弓すらきゅうとハンティングナイフの機能を使えるようになっていた。

「いやー、なんとか使えるようになって良かった。これから練習してしっかり使いこなせっよー!」

「当たり前じゃん!兄ちゃんがくれたスラ弓すらきゅうってやつ弓とは少し違うけど慣れたら使いやすいし!これからはナイフの投擲も練習するよ!兄ちゃん、ありがとう!」

「明日には村から出て行くけど、また絶対にもどってくるからその時には僕よりも使いこなしてよ!」

「うん!」

その後、ロイとソフィアにもまた村から出ていくと話す。

「そうか、また出て行くのか。アル坊の元気な姿見れて俺は嬉しかったぜ。また戻ってきて元気な姿見せてくれや!」

「そうよ。アル君も私達の息子みたいなもんなんだから。いつでも戻ってきてね」

「はい!」
アルージェは三人に別れを告げて家に戻る。
夜ご飯は今までに無いくらい豪華なご飯だった。

アイン達が最終日だということで、森に食材を取りに行っていたらしい。
そのおこぼれがこちらにも来たみたいだ。

そして、村から出立の日。

フリード・サーシャ・マールはもちろんのこと、ロイ・ソフィア・ライも見送りに来てくれていた。
少し離れたところにはグレンデの姿もあった。

驚いたのはミスティとアインが訓練していた村人や村長のリベルも来ていて、なんやかんやで村人達総出で見送ってくれるらしい。

「結局、みんな来てくれたんですね」
アルージェは嬉しそうに微笑む。

アルージェ達が皆んなと言葉を交わしている時、サイラスは厳重に布で包まれた棒を持って走ってくる。

「あの馬鹿」
リベルがサイラスを見て頭を抱える。

「アルージェ!最後にもう一回戦ってくれよ。本気でさ」
サイラスは棒を包んでいた布を解く。
中には訓練用の槍では無く、真剣の槍を持ってきていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

処理中です...