Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
175 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百七十三話

しおりを挟む
あれから五日が経っていた。
この五日間アイン、ミスティと打ち合いをしていた。

アルージェは今日も何も考えずに訓練場に向かう。

「あれ?なんか忘れてるような・・・?」
最近は体を動かしていなかったので、打ち合いが楽しかったのだ。
だがアルージェは重要なことを思い出す。

「うわっ、ちょっと待って!体動かすの楽しくて忘れてたけど、鎧見に行かないと!」
今日はお休みします!と宣言し、アルージェはグレンデ家に鎧の様子を見にいく。

「師匠ぉ!すいません!遅くなりました!」

「ようやく来たか。どうせ他のことに夢中になっておったんじゃろ」

「あはは、面目ない・・・。それじゃ鎧見に行きましょう」
アルージェとグレンデは仮設の倉庫に向かう。

仮説の倉庫とは言うが知らない人が見れば、ただの四角いオブジェに見えるだろう。
魔力が溢れてこないように出来るだけ密閉していたので、扉もない。

魔力の動きが分かる人なら、一目見ただけで警戒するかもしれないがこの村にはそんな人いない。

魔力を操作して倉庫に中に入る為の出入り口を作り、中の様子を伺う。
アルージェが穴を開けると逃げ道が出来た魔力が中から溢れてきて、風が起きる。

「鎧どうなってるかなぁ?」
アルージェが灯りをつけて中に入る。

「ほぉ、こりゃまたすごいのぉ」
グレンデもワクワクで中に入っていく。

アルージェが鎧を手に取り、見てみると明らかに鉄から変質していた。

「これ鉄じゃないですよね?」

「そうじゃな。見た目は鉄っぽいが」
グレンデも鎧を一つ手に取り、軽く叩いたりして観察する。

「ふむ、やはりこれは鉄ではないな。明らかに別の金属に変質しておる」

「鉄の武器をぶつけてみてどうなるか試したいんですけど、いいですか?」

「んあ?ちょうど儂も気になっていた所じゃ!やってみるぞ!」
二人は一つだけ鎧を手に持って、外に出る。

何も付与していないただの鋼鉄の剣を、アルージェはアイテムボックスから取り出す。

「それじゃあ、いきますね」
アルージェは剣を掲げて突き刺す準備をする。
グレンデは頷き、唾を飲み込む。

「えい!」
アルージェが鎧に勢いよく剣を突き立てる。

金属同士がぶつかる音がするが、アルージェが持っていた鋼鉄の剣が折れてしまった。
「おぉぉぉぉぉぉ!師匠!これ、付与出来てますよ!」

アルージェは興奮気味にグレンデに近づく。

「あぁ!確かに付与されているな!」
グレンデも興奮気味にアルージェの手を取る。

二人は何故か息ぴったりに奇妙な踊りを踊って喜びを表現する。

グレンデが正気に戻り、咳払いをする。
「こんな方法初めてじゃ。時間はかかるがまとめて付与が出来るなんて凄い方法を思いついたのぉ、アル」

「空間を魔力で満たす必要がありますが、その間の時間別のことが出来る・・・。なんて効率的な方法なんだ!本当にすごいですね!」
アルージェは嬉しくて飛び跳ねている。

「なら次は軽量化フェザーもやってみましょうか!」

「そうじゃな、どうせ納期には余裕が有るからやってみるとするか!」

アルージェは簡易付与テンポラリー=軽量化フェザーを付与するつもりで、魔力を操作する。

そして途中で魔力を放出して空間を魔力で満たし、倉庫を密閉する。

その後同じくらい時間を置いてから、グレンデと一緒に倉庫を見に行く。

付与されているかどうかは持つだけですぐに分かった。
鉄で出来た鎧なのに重さをほぼ感じない。

「すげぇぇぇぇぇぇぇ!」
アルージェはまたテンション高く叫ぶ!

「これはなんとも、珍妙なものを作ってしまったのぉ。辺境伯に怒られんかったら良いが」

「やっぱり、重くないとまずいですかね?」

「うむ、どうじゃろう。ただこれに慣れてしまったら、訓練にはならんからな・・・」

「あっ・・・、確かにそうですね・・・。どうしましょう・・・?」

「まぁ、一回このまま納品してみるか。付与がついて性能がいいことには変わらんからな。訓練ではなく、実戦でなら使い勝手良いしな」

「確かに。なら僕達この後辺境様の家に行く予定なので、ついでに届けましょうか?」

「おっ!助かるわい!重さはないが嵩張るからな」

「了解です!」
アルージェは倉庫に有った鎧をアイテムボックスに片付けていく。

片付けながらアルージェはグレンデに話しかける。
「師匠。僕達、近々村から出ていくと思います。会えて本当に楽しかったし、嬉しかったです」

「んあ?何、湿っぽくなっとるんじゃ。今生の別れってことはないじゃろ。儂はいつでもアルが帰ってくるのを待っているぞ」

片付けが終わり、アルージェはグレンデの方へ顔を向ける。
「違うんです。実は僕、聖国の人達に命を狙われてるんです。だからもしかしたら本当に最後に・・・」
アルージェの視線が段々と下がっていく。

「カカカカカ、何言っとるんじゃ。男なら立ち塞がる者は全員倒して、また戻ってくるくらいの甲斐性を持て。アルなら出来ると信じておる」
グレンデがアルージェの背中を力強く叩く。

「うわっ」
アルージェは背中を叩かれて、前に飛び出てしまう。

「絶対にまた会いにくるんじゃぞ!」
ニカッとグレンデが笑う。

「・・・。はい、絶対また会いにきます!」
アルージェは頭を下げて、家に戻る。

グレンデはアルージェの背中を何も言わずただ見つめる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...