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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百七十二話
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「見つけたぞ!アルージェ!」
アルージェがグレンデの家から戻る途中、名前を呼ばれて振り向く。
声の方を向くとサイラスが指を差して立っていた。
そして、駆け足で寄ってくる。
「あれ?サイラスどうしたの?」
「どうしたの?じゃねぇ!今日こそはお前も訓練に参加しろ!そしてお前もどれだけしんどいか味わえばいい!」
「えぇ、今日は体怠いから勘弁してほしいんだけどなぁ・・・」
「うるせぇ!早く来い!」
アルージェはサイラスに手を引かれながら、訓練場に連れて行かれる。
「むっ?アルージェどうしたんだ?」
ミスティがサイラスに連れてこられたアルージェを見て、近づいてくる。
「今日はアルージェも参戦だ!」
サイラスは村人達にもアピールすると、村人達がヤジを飛ばす。
「おー!」
「お前も一緒に地獄に堕ちろ!!」
「そうだ!そうだ!」
「なんだか凄いこと言われてますけど?」
アルージェがミスティに声を掛ける。
「今、言ったものは罰として通常の訓練の三倍だ。顔は覚えているぞ。覚悟しておけ」
ミスティがギロリと村人を睨みつける。
「ひぇ・・・」
一人はミスティに睨まれ、怖がり竦む。
そして、いそいそと訓練を始める。
「ありがとうございます!」
「我々の業界ではご褒美です!」
だが、他二人はどこか嬉しそうに訓練を始める。
「はぁ・・・、これでは罰になってるのか分からんな」
ミスティは二人の反応を見てため息をつく。
「はっは!ざまぁ見ろ!ミスティさんに楯突くからそうなるんだ!」
サイラスは村人達を煽る。
あれでは虎の威を借る狐だ。
「サイラス。お前が扇動したんだろ?お前は五倍だ」
「えっ・・・、五倍・・・?そんなの今日中に終わらないですよ・・・」
サイラスは魂が抜けた様に無表情になる。
「いや、終わらせてこい」
ミスティがサイラスに指示すると、アインがニコッと笑いサイラスの肩を掴む。
サイラスはアインの手を払い逃げようとするが、アインには全く効いていない。
すぐに肩を掴まれて、そのまま連れていかれる。
「なんでこうなるんだよぉぉぉぉぉ!」
アインに見守られながら、サイラスも素振りをを始める。
「あはは、みんな元気がいいですね。それにミスティさんも慕われているみたいで、良かったです」
アルージェはミスティに微笑みかける。
「むっ、なんだその目は!私は辺境伯の娘だぞ!ここの指揮を取るくらい出来て当然だ!」
「そうですね!頑張ってるミスティさん素敵です!」
ミスティは顔を赤くする。
「えぇい!揶揄うな!」
「ははは、なんか皆んな頑張ってるの見てたら、僕も体動かしたくなってきました!」
アルージェは体を解して準備運動をする。
「誰かと打ち合いとかやりたいんだけどなぁ」
アルージェが見渡すと村人達は誰一人として、アルージェと目を合わせようとしない。
村人達の脳裏には以前サイラスとやっていたの打ち合いが焼き付いている。
サイラスが立てなくなるまで打ち合いをしていたのを覚えているので、当たり前である。
「誰も目を合わせてくれない・・・。うぅ・・・。一人で素振りでもしますか・・・」
アルージェは肩を落として、トボトボと端の方に移動する。
ラーニャが棒術の型をしているのを見ながら、アルージェも素振りをする。
エマも格闘術の型をしているみたいだ。
「型ってカッコいいなぁ。僕も型とかやってみたいなぁ」
「ははは、それは難しいんじゃ無いかな」
話を聞いていたアインが笑いながら近づいてくる。
「あれ?サイラスは?」
「サイラスはミスティさんが見ているよ。なんたって五倍だからね」
アインは楽しそうに笑っている。
「五倍ってどんくらいなんだろ・・・」
アルージェは自分達がやっていた訓練の五倍と考えて、体を震わす。
「んー、そうだな。数字でいうのは難しいけど、実は僕達が毎日当たり前にこなしてる程度なんだよね。王都からフォルスタに帰る時、毎日の様にやってただろ?あれくらいだよ」
「あ、でもあれは魔力有りだったんで僕も何とかついていけてましたけど、サイラス達には普通にしんどそうですね。それで型が無理っていうのは?」
「あぁ、そうだ型についてだったね。アルージェは魔法を使うし、片手半剣、双剣、片手剣と盾っていうパターンがあるだろ?それに加えて他の武器も扱うからね。覚えるのが大変だろ?型っていうのは、みんなが使えるようにする為に存在するものだからね。アルージェみたいに状況に応じて、武器を変える戦う方法に型はちょっと難しいかな」
「なるほど、確かに僕の戦い方は誰でも使えるみたいなのは意識してないですね・・・」
「そうそう。むしろ唯一無二でかっこいいじゃないか」
「アインさんは違うんですか?」
「そうだね。僕は小さい時に武術道場に行って学んだものだからね。魔法を使うから若干変えてるところはあるけど、割と型に忠実な戦い方だよ。」
「型に忠実な戦い方・・・。かっけぇ!」
アルージェは目を輝かせる。
「ははは、僕からすれば型に囚われないアルージェの戦い方のほうがかっこいいよ。それより相手がいなくて困ってるのかい?僕が相手になろうか?」
「えっ!いいんですか!ぜひお願いします!」
アインに誘ってもらえたので、アインと打ち合いをする。
「あぁ!もちろんさ!」
アインは剣と盾を構える。
「あっ、でも身体強化だけで頼むよ。教会で戦った時みたいに魔法を使って戦うと、カレンに怒られるんだ」
アインは恥ずかしそうに頭を掻く。
アルージェがグレンデの家から戻る途中、名前を呼ばれて振り向く。
声の方を向くとサイラスが指を差して立っていた。
そして、駆け足で寄ってくる。
「あれ?サイラスどうしたの?」
「どうしたの?じゃねぇ!今日こそはお前も訓練に参加しろ!そしてお前もどれだけしんどいか味わえばいい!」
「えぇ、今日は体怠いから勘弁してほしいんだけどなぁ・・・」
「うるせぇ!早く来い!」
アルージェはサイラスに手を引かれながら、訓練場に連れて行かれる。
「むっ?アルージェどうしたんだ?」
ミスティがサイラスに連れてこられたアルージェを見て、近づいてくる。
「今日はアルージェも参戦だ!」
サイラスは村人達にもアピールすると、村人達がヤジを飛ばす。
「おー!」
「お前も一緒に地獄に堕ちろ!!」
「そうだ!そうだ!」
「なんだか凄いこと言われてますけど?」
アルージェがミスティに声を掛ける。
「今、言ったものは罰として通常の訓練の三倍だ。顔は覚えているぞ。覚悟しておけ」
ミスティがギロリと村人を睨みつける。
「ひぇ・・・」
一人はミスティに睨まれ、怖がり竦む。
そして、いそいそと訓練を始める。
「ありがとうございます!」
「我々の業界ではご褒美です!」
だが、他二人はどこか嬉しそうに訓練を始める。
「はぁ・・・、これでは罰になってるのか分からんな」
ミスティは二人の反応を見てため息をつく。
「はっは!ざまぁ見ろ!ミスティさんに楯突くからそうなるんだ!」
サイラスは村人達を煽る。
あれでは虎の威を借る狐だ。
「サイラス。お前が扇動したんだろ?お前は五倍だ」
「えっ・・・、五倍・・・?そんなの今日中に終わらないですよ・・・」
サイラスは魂が抜けた様に無表情になる。
「いや、終わらせてこい」
ミスティがサイラスに指示すると、アインがニコッと笑いサイラスの肩を掴む。
サイラスはアインの手を払い逃げようとするが、アインには全く効いていない。
すぐに肩を掴まれて、そのまま連れていかれる。
「なんでこうなるんだよぉぉぉぉぉ!」
アインに見守られながら、サイラスも素振りをを始める。
「あはは、みんな元気がいいですね。それにミスティさんも慕われているみたいで、良かったです」
アルージェはミスティに微笑みかける。
「むっ、なんだその目は!私は辺境伯の娘だぞ!ここの指揮を取るくらい出来て当然だ!」
「そうですね!頑張ってるミスティさん素敵です!」
ミスティは顔を赤くする。
「えぇい!揶揄うな!」
「ははは、なんか皆んな頑張ってるの見てたら、僕も体動かしたくなってきました!」
アルージェは体を解して準備運動をする。
「誰かと打ち合いとかやりたいんだけどなぁ」
アルージェが見渡すと村人達は誰一人として、アルージェと目を合わせようとしない。
村人達の脳裏には以前サイラスとやっていたの打ち合いが焼き付いている。
サイラスが立てなくなるまで打ち合いをしていたのを覚えているので、当たり前である。
「誰も目を合わせてくれない・・・。うぅ・・・。一人で素振りでもしますか・・・」
アルージェは肩を落として、トボトボと端の方に移動する。
ラーニャが棒術の型をしているのを見ながら、アルージェも素振りをする。
エマも格闘術の型をしているみたいだ。
「型ってカッコいいなぁ。僕も型とかやってみたいなぁ」
「ははは、それは難しいんじゃ無いかな」
話を聞いていたアインが笑いながら近づいてくる。
「あれ?サイラスは?」
「サイラスはミスティさんが見ているよ。なんたって五倍だからね」
アインは楽しそうに笑っている。
「五倍ってどんくらいなんだろ・・・」
アルージェは自分達がやっていた訓練の五倍と考えて、体を震わす。
「んー、そうだな。数字でいうのは難しいけど、実は僕達が毎日当たり前にこなしてる程度なんだよね。王都からフォルスタに帰る時、毎日の様にやってただろ?あれくらいだよ」
「あ、でもあれは魔力有りだったんで僕も何とかついていけてましたけど、サイラス達には普通にしんどそうですね。それで型が無理っていうのは?」
「あぁ、そうだ型についてだったね。アルージェは魔法を使うし、片手半剣、双剣、片手剣と盾っていうパターンがあるだろ?それに加えて他の武器も扱うからね。覚えるのが大変だろ?型っていうのは、みんなが使えるようにする為に存在するものだからね。アルージェみたいに状況に応じて、武器を変える戦う方法に型はちょっと難しいかな」
「なるほど、確かに僕の戦い方は誰でも使えるみたいなのは意識してないですね・・・」
「そうそう。むしろ唯一無二でかっこいいじゃないか」
「アインさんは違うんですか?」
「そうだね。僕は小さい時に武術道場に行って学んだものだからね。魔法を使うから若干変えてるところはあるけど、割と型に忠実な戦い方だよ。」
「型に忠実な戦い方・・・。かっけぇ!」
アルージェは目を輝かせる。
「ははは、僕からすれば型に囚われないアルージェの戦い方のほうがかっこいいよ。それより相手がいなくて困ってるのかい?僕が相手になろうか?」
「えっ!いいんですか!ぜひお願いします!」
アインに誘ってもらえたので、アインと打ち合いをする。
「あぁ!もちろんさ!」
アインは剣と盾を構える。
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