168 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百六十六話
しおりを挟む
昨夜、ミスティはエマに何度も一緒に訓練に行こうと言っていた。
その度にエマは嫌な顔せずに「はい!一緒に行きます!」と返事をしていた。
ミスティは何もしていないという気持ちがよほど強かったのだろう。
そして翌日。
「おはようございます。今日はミスティさんとエマは訓練場に行くんですよね?」
「あぁ!そうだ!この村の民達は私がビシバシと鍛えてやるからな!」
「あははは!それは頼もしいですね!よろしくお願いしますね!特に村長の息子サイラスは鍛え甲斐あると思いますよ!」
「ふむ、サイラスだな。覚えておこう!」
訓練をすると決めてからのミスティは、本当に上機嫌でなんだか子供のようだった。
「ミスティさんのことは私に任せて、アルージェ君は自分のやりたいことしっかりやって来てね」
エマがアルージェにそばに来て耳打ちする。
「あはは、ありがとう。助かるよ」
アルージェもエマに耳打ちする。
「エマ!そろそろ着替えないといけないんじゃないか?ほら一緒に動ける服に着替えよう!」
「あっ、そうですね。今行きます」
ミスティはエマを引き連れて、部屋を出る。
「マイアは無理に着いてくる必要はないぞ!村の中は安全だからな!」
「承知いたしました。では家で秘密結社達と一緒に作業をしておきます」
ということでマイアはお留守番をするらしい。
そういえば、マイアには秘密結社のぬいぐるみを売って、起業する夢があるのだとミスティが話てたことを思い出す。
「マイアさん、少しいいですか?」
アルージェが声を掛けると、マイアはぬいぐるみ作りの準備を止めて立ち上がる。
そしてプライベートなマイアでは無く仕事モードのマイアに切り替える。
「どうされました?何か必要ですか?」
その切り替えの速さにアルージェは少し驚く。
「あぁ、いえ、世間話程度のものなので、畏まらないでください」
マイアは首を傾げる。
「マイアさんは秘密結社達のぬいぐるみを売って起業する夢が有るって聞いたんですけど、本当ですか?」
マイアは目を丸くしてみるみると顔が赤くなっていく。
「お嬢様からですか?」
「そうです。ミスティさんから聞きました」
「うぅ、まだそこまではっきりとした未来を見ている訳ではないので、少し恥ずかしいですね」
マイアが珍しく縮こまっている。
「いやいや!すごくいい夢だと思いました!秘密結社ってみんな個性的で可愛いですし!」
「秘密結社の可愛さ、わかるんですね!?そうなんです。みんな個性的で中には肉食獣をモチーフにした子も居るって秘密結社に聞きました。そんな子達が健気に自分達の可愛さを磨く。そんな健気な姿に私は心打たれてしまい。勇気を貰ったんです!そもそも秘密結社達の可愛さはあの造形に有る思っていて、みんなふわふわで抱きしめると・・・」
マイアは早口で秘密結社達の良さを話していたが正気に戻り、コホンと咳払いをする。
「失礼しました。先ほどのは忘れてください」
「あはは、マイアさんもあんな早口で話すんですね。すごい熱意が伝わって来ました」
「私だって好きなものの話をする時は気持ちが上がってしまうんです」
「あはは、当たり前ですよね!マイアさんって初めて見た時、完璧なメイドさんだと思っていたので、少し近寄り難いと思っていたんです。けど最近はすごく親近感が湧いて、本当は普通の人なんだなって思ったんですよね。それから話しかけやすくなりました」
「なんだか褒められてる気がしないのですが?」
ジトリとマイアがアルージェを睨む。
「いやいや、そんなことないですって!あっ、それで本題なんですけど。フォルスタでリリィさんと言う方が商会を始めるそうなんです。良ければそこで少しぬいぐるみ売ってみませんか?もちろんリリィさんと話してみて相手の了承も必要になりますが、販路の確保が出来れば、大きな一歩にはなると思うんですよね」
「アルージェ様!その話詳しくお教えいただけますか!」
マイアがアルージェの手を握る。
マイアからすればまたとない機会だった。
創作をするのは空き時間に出来るがどうしても商売を始めるとなると、ミスティの側から離れる日が出来てしまう。
だから本当に夢で終わらそうとしていたのだ。
「戻ったぞー!」
「お、お待たせしました」
用意を終わった二人が部屋に戻ってくる。
「むっ?」
ミスティはマイアがアルージェの手を握っていることに気付く。
「ほう、まさかマイアもだったとはな」
ミスティはニヤニヤとマイアに近付く。
マイアはミスティが何を言っているのか、わからなかったがミスティの視線に気付きアルージェの手サッと離す。
「ご、誤解です!」
「頬を赤らめて手を握っているのに誤解も何もあるか?」
「ま、マイアさんまで・・・」
エマは頬を赤らめて、何かを想像しているようだ。
「お嬢様、本当に誤解なんです!」
「大丈夫だ。マイア、隠す必要はないぞ」
ミスティはずっとニヤニヤとしている。
「ミスティさん、本当に違いますって!秘密結社のぬいぐるみで起業する話をしてたんです」
流石にまずいと思ったアルージェがフォローを入れる。
「ふふふ、分かっているさ。少しマイアを揶揄っただけだ」
ミスティはマイアを笑う
「お嬢様・・・。はぁ、少し人が悪いのではないでしょうか?」
「いつも肩肘を張ったマイアには、多少の遊びが必要だろう?さて、アルージェ訓練場とやらにいくとしよう」
ミスティが家の外に出ていく。
「はぁ、びっくりさせられちゃったよ。それじゃあ、詳しい話はまた後でしましょう」
アルージェはマイアに声を掛けてからルーネを呼んで、ミスティの後ろについていく。
「三人で・・・」
エマは未だに頬を赤らめて、何かを想像していた。
「エマ様、お嬢様とアルージェ様は行ってしまわれましたよ?」
マイアがエマに声を掛けると、エマは我に戻る。
「えっ?あ、二人とも待ってくださいよー」
エマはキョロキョロはしてから、慌てて二人の後ろを追いかけていく。
その度にエマは嫌な顔せずに「はい!一緒に行きます!」と返事をしていた。
ミスティは何もしていないという気持ちがよほど強かったのだろう。
そして翌日。
「おはようございます。今日はミスティさんとエマは訓練場に行くんですよね?」
「あぁ!そうだ!この村の民達は私がビシバシと鍛えてやるからな!」
「あははは!それは頼もしいですね!よろしくお願いしますね!特に村長の息子サイラスは鍛え甲斐あると思いますよ!」
「ふむ、サイラスだな。覚えておこう!」
訓練をすると決めてからのミスティは、本当に上機嫌でなんだか子供のようだった。
「ミスティさんのことは私に任せて、アルージェ君は自分のやりたいことしっかりやって来てね」
エマがアルージェにそばに来て耳打ちする。
「あはは、ありがとう。助かるよ」
アルージェもエマに耳打ちする。
「エマ!そろそろ着替えないといけないんじゃないか?ほら一緒に動ける服に着替えよう!」
「あっ、そうですね。今行きます」
ミスティはエマを引き連れて、部屋を出る。
「マイアは無理に着いてくる必要はないぞ!村の中は安全だからな!」
「承知いたしました。では家で秘密結社達と一緒に作業をしておきます」
ということでマイアはお留守番をするらしい。
そういえば、マイアには秘密結社のぬいぐるみを売って、起業する夢があるのだとミスティが話てたことを思い出す。
「マイアさん、少しいいですか?」
アルージェが声を掛けると、マイアはぬいぐるみ作りの準備を止めて立ち上がる。
そしてプライベートなマイアでは無く仕事モードのマイアに切り替える。
「どうされました?何か必要ですか?」
その切り替えの速さにアルージェは少し驚く。
「あぁ、いえ、世間話程度のものなので、畏まらないでください」
マイアは首を傾げる。
「マイアさんは秘密結社達のぬいぐるみを売って起業する夢が有るって聞いたんですけど、本当ですか?」
マイアは目を丸くしてみるみると顔が赤くなっていく。
「お嬢様からですか?」
「そうです。ミスティさんから聞きました」
「うぅ、まだそこまではっきりとした未来を見ている訳ではないので、少し恥ずかしいですね」
マイアが珍しく縮こまっている。
「いやいや!すごくいい夢だと思いました!秘密結社ってみんな個性的で可愛いですし!」
「秘密結社の可愛さ、わかるんですね!?そうなんです。みんな個性的で中には肉食獣をモチーフにした子も居るって秘密結社に聞きました。そんな子達が健気に自分達の可愛さを磨く。そんな健気な姿に私は心打たれてしまい。勇気を貰ったんです!そもそも秘密結社達の可愛さはあの造形に有る思っていて、みんなふわふわで抱きしめると・・・」
マイアは早口で秘密結社達の良さを話していたが正気に戻り、コホンと咳払いをする。
「失礼しました。先ほどのは忘れてください」
「あはは、マイアさんもあんな早口で話すんですね。すごい熱意が伝わって来ました」
「私だって好きなものの話をする時は気持ちが上がってしまうんです」
「あはは、当たり前ですよね!マイアさんって初めて見た時、完璧なメイドさんだと思っていたので、少し近寄り難いと思っていたんです。けど最近はすごく親近感が湧いて、本当は普通の人なんだなって思ったんですよね。それから話しかけやすくなりました」
「なんだか褒められてる気がしないのですが?」
ジトリとマイアがアルージェを睨む。
「いやいや、そんなことないですって!あっ、それで本題なんですけど。フォルスタでリリィさんと言う方が商会を始めるそうなんです。良ければそこで少しぬいぐるみ売ってみませんか?もちろんリリィさんと話してみて相手の了承も必要になりますが、販路の確保が出来れば、大きな一歩にはなると思うんですよね」
「アルージェ様!その話詳しくお教えいただけますか!」
マイアがアルージェの手を握る。
マイアからすればまたとない機会だった。
創作をするのは空き時間に出来るがどうしても商売を始めるとなると、ミスティの側から離れる日が出来てしまう。
だから本当に夢で終わらそうとしていたのだ。
「戻ったぞー!」
「お、お待たせしました」
用意を終わった二人が部屋に戻ってくる。
「むっ?」
ミスティはマイアがアルージェの手を握っていることに気付く。
「ほう、まさかマイアもだったとはな」
ミスティはニヤニヤとマイアに近付く。
マイアはミスティが何を言っているのか、わからなかったがミスティの視線に気付きアルージェの手サッと離す。
「ご、誤解です!」
「頬を赤らめて手を握っているのに誤解も何もあるか?」
「ま、マイアさんまで・・・」
エマは頬を赤らめて、何かを想像しているようだ。
「お嬢様、本当に誤解なんです!」
「大丈夫だ。マイア、隠す必要はないぞ」
ミスティはずっとニヤニヤとしている。
「ミスティさん、本当に違いますって!秘密結社のぬいぐるみで起業する話をしてたんです」
流石にまずいと思ったアルージェがフォローを入れる。
「ふふふ、分かっているさ。少しマイアを揶揄っただけだ」
ミスティはマイアを笑う
「お嬢様・・・。はぁ、少し人が悪いのではないでしょうか?」
「いつも肩肘を張ったマイアには、多少の遊びが必要だろう?さて、アルージェ訓練場とやらにいくとしよう」
ミスティが家の外に出ていく。
「はぁ、びっくりさせられちゃったよ。それじゃあ、詳しい話はまた後でしましょう」
アルージェはマイアに声を掛けてからルーネを呼んで、ミスティの後ろについていく。
「三人で・・・」
エマは未だに頬を赤らめて、何かを想像していた。
「エマ様、お嬢様とアルージェ様は行ってしまわれましたよ?」
マイアがエマに声を掛けると、エマは我に戻る。
「えっ?あ、二人とも待ってくださいよー」
エマはキョロキョロはしてから、慌てて二人の後ろを追いかけていく。
10
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説


無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる