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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百六十六話
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昨夜、ミスティはエマに何度も一緒に訓練に行こうと言っていた。
その度にエマは嫌な顔せずに「はい!一緒に行きます!」と返事をしていた。
ミスティは何もしていないという気持ちがよほど強かったのだろう。
そして翌日。
「おはようございます。今日はミスティさんとエマは訓練場に行くんですよね?」
「あぁ!そうだ!この村の民達は私がビシバシと鍛えてやるからな!」
「あははは!それは頼もしいですね!よろしくお願いしますね!特に村長の息子サイラスは鍛え甲斐あると思いますよ!」
「ふむ、サイラスだな。覚えておこう!」
訓練をすると決めてからのミスティは、本当に上機嫌でなんだか子供のようだった。
「ミスティさんのことは私に任せて、アルージェ君は自分のやりたいことしっかりやって来てね」
エマがアルージェにそばに来て耳打ちする。
「あはは、ありがとう。助かるよ」
アルージェもエマに耳打ちする。
「エマ!そろそろ着替えないといけないんじゃないか?ほら一緒に動ける服に着替えよう!」
「あっ、そうですね。今行きます」
ミスティはエマを引き連れて、部屋を出る。
「マイアは無理に着いてくる必要はないぞ!村の中は安全だからな!」
「承知いたしました。では家で秘密結社達と一緒に作業をしておきます」
ということでマイアはお留守番をするらしい。
そういえば、マイアには秘密結社のぬいぐるみを売って、起業する夢があるのだとミスティが話てたことを思い出す。
「マイアさん、少しいいですか?」
アルージェが声を掛けると、マイアはぬいぐるみ作りの準備を止めて立ち上がる。
そしてプライベートなマイアでは無く仕事モードのマイアに切り替える。
「どうされました?何か必要ですか?」
その切り替えの速さにアルージェは少し驚く。
「あぁ、いえ、世間話程度のものなので、畏まらないでください」
マイアは首を傾げる。
「マイアさんは秘密結社達のぬいぐるみを売って起業する夢が有るって聞いたんですけど、本当ですか?」
マイアは目を丸くしてみるみると顔が赤くなっていく。
「お嬢様からですか?」
「そうです。ミスティさんから聞きました」
「うぅ、まだそこまではっきりとした未来を見ている訳ではないので、少し恥ずかしいですね」
マイアが珍しく縮こまっている。
「いやいや!すごくいい夢だと思いました!秘密結社ってみんな個性的で可愛いですし!」
「秘密結社の可愛さ、わかるんですね!?そうなんです。みんな個性的で中には肉食獣をモチーフにした子も居るって秘密結社に聞きました。そんな子達が健気に自分達の可愛さを磨く。そんな健気な姿に私は心打たれてしまい。勇気を貰ったんです!そもそも秘密結社達の可愛さはあの造形に有る思っていて、みんなふわふわで抱きしめると・・・」
マイアは早口で秘密結社達の良さを話していたが正気に戻り、コホンと咳払いをする。
「失礼しました。先ほどのは忘れてください」
「あはは、マイアさんもあんな早口で話すんですね。すごい熱意が伝わって来ました」
「私だって好きなものの話をする時は気持ちが上がってしまうんです」
「あはは、当たり前ですよね!マイアさんって初めて見た時、完璧なメイドさんだと思っていたので、少し近寄り難いと思っていたんです。けど最近はすごく親近感が湧いて、本当は普通の人なんだなって思ったんですよね。それから話しかけやすくなりました」
「なんだか褒められてる気がしないのですが?」
ジトリとマイアがアルージェを睨む。
「いやいや、そんなことないですって!あっ、それで本題なんですけど。フォルスタでリリィさんと言う方が商会を始めるそうなんです。良ければそこで少しぬいぐるみ売ってみませんか?もちろんリリィさんと話してみて相手の了承も必要になりますが、販路の確保が出来れば、大きな一歩にはなると思うんですよね」
「アルージェ様!その話詳しくお教えいただけますか!」
マイアがアルージェの手を握る。
マイアからすればまたとない機会だった。
創作をするのは空き時間に出来るがどうしても商売を始めるとなると、ミスティの側から離れる日が出来てしまう。
だから本当に夢で終わらそうとしていたのだ。
「戻ったぞー!」
「お、お待たせしました」
用意を終わった二人が部屋に戻ってくる。
「むっ?」
ミスティはマイアがアルージェの手を握っていることに気付く。
「ほう、まさかマイアもだったとはな」
ミスティはニヤニヤとマイアに近付く。
マイアはミスティが何を言っているのか、わからなかったがミスティの視線に気付きアルージェの手サッと離す。
「ご、誤解です!」
「頬を赤らめて手を握っているのに誤解も何もあるか?」
「ま、マイアさんまで・・・」
エマは頬を赤らめて、何かを想像しているようだ。
「お嬢様、本当に誤解なんです!」
「大丈夫だ。マイア、隠す必要はないぞ」
ミスティはずっとニヤニヤとしている。
「ミスティさん、本当に違いますって!秘密結社のぬいぐるみで起業する話をしてたんです」
流石にまずいと思ったアルージェがフォローを入れる。
「ふふふ、分かっているさ。少しマイアを揶揄っただけだ」
ミスティはマイアを笑う
「お嬢様・・・。はぁ、少し人が悪いのではないでしょうか?」
「いつも肩肘を張ったマイアには、多少の遊びが必要だろう?さて、アルージェ訓練場とやらにいくとしよう」
ミスティが家の外に出ていく。
「はぁ、びっくりさせられちゃったよ。それじゃあ、詳しい話はまた後でしましょう」
アルージェはマイアに声を掛けてからルーネを呼んで、ミスティの後ろについていく。
「三人で・・・」
エマは未だに頬を赤らめて、何かを想像していた。
「エマ様、お嬢様とアルージェ様は行ってしまわれましたよ?」
マイアがエマに声を掛けると、エマは我に戻る。
「えっ?あ、二人とも待ってくださいよー」
エマはキョロキョロはしてから、慌てて二人の後ろを追いかけていく。
その度にエマは嫌な顔せずに「はい!一緒に行きます!」と返事をしていた。
ミスティは何もしていないという気持ちがよほど強かったのだろう。
そして翌日。
「おはようございます。今日はミスティさんとエマは訓練場に行くんですよね?」
「あぁ!そうだ!この村の民達は私がビシバシと鍛えてやるからな!」
「あははは!それは頼もしいですね!よろしくお願いしますね!特に村長の息子サイラスは鍛え甲斐あると思いますよ!」
「ふむ、サイラスだな。覚えておこう!」
訓練をすると決めてからのミスティは、本当に上機嫌でなんだか子供のようだった。
「ミスティさんのことは私に任せて、アルージェ君は自分のやりたいことしっかりやって来てね」
エマがアルージェにそばに来て耳打ちする。
「あはは、ありがとう。助かるよ」
アルージェもエマに耳打ちする。
「エマ!そろそろ着替えないといけないんじゃないか?ほら一緒に動ける服に着替えよう!」
「あっ、そうですね。今行きます」
ミスティはエマを引き連れて、部屋を出る。
「マイアは無理に着いてくる必要はないぞ!村の中は安全だからな!」
「承知いたしました。では家で秘密結社達と一緒に作業をしておきます」
ということでマイアはお留守番をするらしい。
そういえば、マイアには秘密結社のぬいぐるみを売って、起業する夢があるのだとミスティが話てたことを思い出す。
「マイアさん、少しいいですか?」
アルージェが声を掛けると、マイアはぬいぐるみ作りの準備を止めて立ち上がる。
そしてプライベートなマイアでは無く仕事モードのマイアに切り替える。
「どうされました?何か必要ですか?」
その切り替えの速さにアルージェは少し驚く。
「あぁ、いえ、世間話程度のものなので、畏まらないでください」
マイアは首を傾げる。
「マイアさんは秘密結社達のぬいぐるみを売って起業する夢が有るって聞いたんですけど、本当ですか?」
マイアは目を丸くしてみるみると顔が赤くなっていく。
「お嬢様からですか?」
「そうです。ミスティさんから聞きました」
「うぅ、まだそこまではっきりとした未来を見ている訳ではないので、少し恥ずかしいですね」
マイアが珍しく縮こまっている。
「いやいや!すごくいい夢だと思いました!秘密結社ってみんな個性的で可愛いですし!」
「秘密結社の可愛さ、わかるんですね!?そうなんです。みんな個性的で中には肉食獣をモチーフにした子も居るって秘密結社に聞きました。そんな子達が健気に自分達の可愛さを磨く。そんな健気な姿に私は心打たれてしまい。勇気を貰ったんです!そもそも秘密結社達の可愛さはあの造形に有る思っていて、みんなふわふわで抱きしめると・・・」
マイアは早口で秘密結社達の良さを話していたが正気に戻り、コホンと咳払いをする。
「失礼しました。先ほどのは忘れてください」
「あはは、マイアさんもあんな早口で話すんですね。すごい熱意が伝わって来ました」
「私だって好きなものの話をする時は気持ちが上がってしまうんです」
「あはは、当たり前ですよね!マイアさんって初めて見た時、完璧なメイドさんだと思っていたので、少し近寄り難いと思っていたんです。けど最近はすごく親近感が湧いて、本当は普通の人なんだなって思ったんですよね。それから話しかけやすくなりました」
「なんだか褒められてる気がしないのですが?」
ジトリとマイアがアルージェを睨む。
「いやいや、そんなことないですって!あっ、それで本題なんですけど。フォルスタでリリィさんと言う方が商会を始めるそうなんです。良ければそこで少しぬいぐるみ売ってみませんか?もちろんリリィさんと話してみて相手の了承も必要になりますが、販路の確保が出来れば、大きな一歩にはなると思うんですよね」
「アルージェ様!その話詳しくお教えいただけますか!」
マイアがアルージェの手を握る。
マイアからすればまたとない機会だった。
創作をするのは空き時間に出来るがどうしても商売を始めるとなると、ミスティの側から離れる日が出来てしまう。
だから本当に夢で終わらそうとしていたのだ。
「戻ったぞー!」
「お、お待たせしました」
用意を終わった二人が部屋に戻ってくる。
「むっ?」
ミスティはマイアがアルージェの手を握っていることに気付く。
「ほう、まさかマイアもだったとはな」
ミスティはニヤニヤとマイアに近付く。
マイアはミスティが何を言っているのか、わからなかったがミスティの視線に気付きアルージェの手サッと離す。
「ご、誤解です!」
「頬を赤らめて手を握っているのに誤解も何もあるか?」
「ま、マイアさんまで・・・」
エマは頬を赤らめて、何かを想像しているようだ。
「お嬢様、本当に誤解なんです!」
「大丈夫だ。マイア、隠す必要はないぞ」
ミスティはずっとニヤニヤとしている。
「ミスティさん、本当に違いますって!秘密結社のぬいぐるみで起業する話をしてたんです」
流石にまずいと思ったアルージェがフォローを入れる。
「ふふふ、分かっているさ。少しマイアを揶揄っただけだ」
ミスティはマイアを笑う
「お嬢様・・・。はぁ、少し人が悪いのではないでしょうか?」
「いつも肩肘を張ったマイアには、多少の遊びが必要だろう?さて、アルージェ訓練場とやらにいくとしよう」
ミスティが家の外に出ていく。
「はぁ、びっくりさせられちゃったよ。それじゃあ、詳しい話はまた後でしましょう」
アルージェはマイアに声を掛けてからルーネを呼んで、ミスティの後ろについていく。
「三人で・・・」
エマは未だに頬を赤らめて、何かを想像していた。
「エマ様、お嬢様とアルージェ様は行ってしまわれましたよ?」
マイアがエマに声を掛けると、エマは我に戻る。
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