161 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百五十九話
しおりを挟む
アルージェはデゾルブ剣を見つめる。
「この武器を作った時、どれだけ師匠が恋しかったか。鉱石の知識が鉄で止まっていたので、知らないことだらけで大変でしたよ」
「カカカカカ、そうじゃろうな。それで新しい鉱石を触る時ワクワクしたか?」
「そりゃもちろん!けど無駄にしたくないと思って、知識不足の自分を恨みましたね」
「カカカカ!それを体験したということは、もう立派な鍛冶屋じゃな。当分村にいるんじゃろ?」
「そうですね。ゴブリン退治の予定があるんですけど、ささっと済ませてそれからは少しの間滞在する予定ですよ」
「そうかそうか。アルージェに色々教えていたが、すっかり抜けていたことがあってな。教えたいんじゃがどうじゃ?」
「えっ!?新しいこと!?ぜひやってみたいです!ゴブリン倒したら武器の修繕しないといけないので、また来てますね!」
「おう!いつでも待っとるぞ!」
グレンデはニカッと笑う。
「ありがとうございます!なら先にちゃっちゃとゴブリン倒してきます!」
「おう、いってこい!」
アルージェはグレンデに手を振ってグレンデの家を後にする。
その足で村長の家に向かう。
他の家より一回り程大きな家の扉をノックすると、リベルが出る。
「むっ、君はフリードのとこのアルージェか?戻って来ていたんだな」
「はい、フォルスタでゴブリン退治の依頼を受けたので、確認や開始の連絡の為に来ました」
アルージェは背筋をピンと伸ばして話す。
「なるほど、君がか。いやその身のこなし、実力を疑っているわけではない。サイラスよりは明らかに強くなっているのが分かるよ」
「ありがとうございます。それで今日ゴブリン退治に行こうと思ってるんですけど、問題ないでしょうか?」
「あぁ、そうだな。あいつらを退治するのは早い方がいい。集落になっていて、数が多いから気をつけてくれよ」
「はい、お気遣いありがとうございます。そういえばサイラスは?」
家の周りをキョロキョロと見渡すが、声もしないし姿も見えない。
「あぁ、サイラスなら向こうの広場で自主訓練をしてるよ。あいつも努力して、今では私を抜いて村で一番強いんだ。君には到底及ばないがね。ハハハ」
「そうなんですね!本当に変わったんですね」
アルージェは昔のことを思い出す。
「そうだな。更生させるために私が本気で訓練したからな。後にも先にもあれほど恥ずかしい思いをすることは無いだろうな」
リベルは視線を上に向けて、あの時のことを思い出す。
「サイラスに会ってもいいですか?」
「あぁ、もちろん。サイラスも喜ぶだろう」
自主訓練しているという広場に向かうと、他の村人達と一緒に槍の訓練をしていた。
「おぉ!ほんとにやってるや。それにリベルさんが言ってたことは本当だったね。強くなってる!おーい!サイラス!」
アルージェは手を振りながら広場に駆けて行き、サイラスの名を叫ぶとびくっと体を震わしてこちらに振り向く。
「おいおいおい!アルージェじゃねぇか!戻ってきたのか!」
サイラスは嬉しそうに、アルージェに駆け寄る。
「うん、少しの間だけだけどね。ゴブリン退治と少し故郷が恋しくなって戻って来たんだよ」
「なに?お前がゴブリン退治?お前そんなに強くなったのかよ」
ゴブリン退治と聞いて、サイラスが驚く。
「どうだろ?打ち合いでもしてみる?」
アルージェがアイテムボックスから木剣を取り出す。
「おっ!いいな!お前負けても泣くんじゃねぇぞ!」
サイラスがアルージェから離れていく。
「おぉ!お前達戦うんか!おーいお前ら集まれ!二人がやり合うらしいぞ!」
ぞろぞろと広場にいた村人達が集まってくる。
「どっちが、勝つだろうなぁ」
「村で一番つえぇサイラスが負けるわけないだろ!」
「どうだかな、アルージェも村を出て訓練してきたかもしれないぞ!」
「俺はサイラスに今晩の酒を賭けるぜ!」
「なら、俺はアルージェだ!」
村人達はアルージェとサイラスどちらが勝つかで賭けまで始める。
サイラスは長い棒の先に布を巻きつけた木槍を構える。
身体強化はしないようだ。
アルージェも身体強化せずに木剣を構える。
サイラスが木槍をアルージェの方に向けて駆け出す。
アルージェは木剣で木槍の先を弾く。
サイラスはすぐに木槍の穂先をアルージェに向けなおす。
そのまま木槍で何度もアルージェに突きを繰り出す。
それもアルージェは全て最小の動きで躱す。
アルージェは躱しながら、徐々にサイラスとの距離を詰めていく。
そして、サイラスの槍をはじき飛ばす。
「な、なんだよ。全部避けるとか嘘だろ!お前強くなりすぎだ!」
「あはは、僕なんてまだまだだよ。どっちかって言うと鍛冶師とか付与師だからね。それにもうサイラスには負けられないからさ」
アルージェは、木剣をアイテムボックスに片付けながら笑う。
「お前、そんな嫌味な奴だったか?」
アルージェはそそくさとアイテムボックスから、訓練用の槍を取り出す。
「さぁ、もっとやろ!」
アルージェは槍を構える。
「いや、ちょっと待て!明らかに相手に・・・」
サイラスは叫ぶが、アルージェは槍を構えてサイラスに駆け始める。
「お前、だいぶおかしいよ!」
サイラスは槍を構えて、アルージェの槍に応戦する。
「この武器を作った時、どれだけ師匠が恋しかったか。鉱石の知識が鉄で止まっていたので、知らないことだらけで大変でしたよ」
「カカカカカ、そうじゃろうな。それで新しい鉱石を触る時ワクワクしたか?」
「そりゃもちろん!けど無駄にしたくないと思って、知識不足の自分を恨みましたね」
「カカカカ!それを体験したということは、もう立派な鍛冶屋じゃな。当分村にいるんじゃろ?」
「そうですね。ゴブリン退治の予定があるんですけど、ささっと済ませてそれからは少しの間滞在する予定ですよ」
「そうかそうか。アルージェに色々教えていたが、すっかり抜けていたことがあってな。教えたいんじゃがどうじゃ?」
「えっ!?新しいこと!?ぜひやってみたいです!ゴブリン倒したら武器の修繕しないといけないので、また来てますね!」
「おう!いつでも待っとるぞ!」
グレンデはニカッと笑う。
「ありがとうございます!なら先にちゃっちゃとゴブリン倒してきます!」
「おう、いってこい!」
アルージェはグレンデに手を振ってグレンデの家を後にする。
その足で村長の家に向かう。
他の家より一回り程大きな家の扉をノックすると、リベルが出る。
「むっ、君はフリードのとこのアルージェか?戻って来ていたんだな」
「はい、フォルスタでゴブリン退治の依頼を受けたので、確認や開始の連絡の為に来ました」
アルージェは背筋をピンと伸ばして話す。
「なるほど、君がか。いやその身のこなし、実力を疑っているわけではない。サイラスよりは明らかに強くなっているのが分かるよ」
「ありがとうございます。それで今日ゴブリン退治に行こうと思ってるんですけど、問題ないでしょうか?」
「あぁ、そうだな。あいつらを退治するのは早い方がいい。集落になっていて、数が多いから気をつけてくれよ」
「はい、お気遣いありがとうございます。そういえばサイラスは?」
家の周りをキョロキョロと見渡すが、声もしないし姿も見えない。
「あぁ、サイラスなら向こうの広場で自主訓練をしてるよ。あいつも努力して、今では私を抜いて村で一番強いんだ。君には到底及ばないがね。ハハハ」
「そうなんですね!本当に変わったんですね」
アルージェは昔のことを思い出す。
「そうだな。更生させるために私が本気で訓練したからな。後にも先にもあれほど恥ずかしい思いをすることは無いだろうな」
リベルは視線を上に向けて、あの時のことを思い出す。
「サイラスに会ってもいいですか?」
「あぁ、もちろん。サイラスも喜ぶだろう」
自主訓練しているという広場に向かうと、他の村人達と一緒に槍の訓練をしていた。
「おぉ!ほんとにやってるや。それにリベルさんが言ってたことは本当だったね。強くなってる!おーい!サイラス!」
アルージェは手を振りながら広場に駆けて行き、サイラスの名を叫ぶとびくっと体を震わしてこちらに振り向く。
「おいおいおい!アルージェじゃねぇか!戻ってきたのか!」
サイラスは嬉しそうに、アルージェに駆け寄る。
「うん、少しの間だけだけどね。ゴブリン退治と少し故郷が恋しくなって戻って来たんだよ」
「なに?お前がゴブリン退治?お前そんなに強くなったのかよ」
ゴブリン退治と聞いて、サイラスが驚く。
「どうだろ?打ち合いでもしてみる?」
アルージェがアイテムボックスから木剣を取り出す。
「おっ!いいな!お前負けても泣くんじゃねぇぞ!」
サイラスがアルージェから離れていく。
「おぉ!お前達戦うんか!おーいお前ら集まれ!二人がやり合うらしいぞ!」
ぞろぞろと広場にいた村人達が集まってくる。
「どっちが、勝つだろうなぁ」
「村で一番つえぇサイラスが負けるわけないだろ!」
「どうだかな、アルージェも村を出て訓練してきたかもしれないぞ!」
「俺はサイラスに今晩の酒を賭けるぜ!」
「なら、俺はアルージェだ!」
村人達はアルージェとサイラスどちらが勝つかで賭けまで始める。
サイラスは長い棒の先に布を巻きつけた木槍を構える。
身体強化はしないようだ。
アルージェも身体強化せずに木剣を構える。
サイラスが木槍をアルージェの方に向けて駆け出す。
アルージェは木剣で木槍の先を弾く。
サイラスはすぐに木槍の穂先をアルージェに向けなおす。
そのまま木槍で何度もアルージェに突きを繰り出す。
それもアルージェは全て最小の動きで躱す。
アルージェは躱しながら、徐々にサイラスとの距離を詰めていく。
そして、サイラスの槍をはじき飛ばす。
「な、なんだよ。全部避けるとか嘘だろ!お前強くなりすぎだ!」
「あはは、僕なんてまだまだだよ。どっちかって言うと鍛冶師とか付与師だからね。それにもうサイラスには負けられないからさ」
アルージェは、木剣をアイテムボックスに片付けながら笑う。
「お前、そんな嫌味な奴だったか?」
アルージェはそそくさとアイテムボックスから、訓練用の槍を取り出す。
「さぁ、もっとやろ!」
アルージェは槍を構える。
「いや、ちょっと待て!明らかに相手に・・・」
サイラスは叫ぶが、アルージェは槍を構えてサイラスに駆け始める。
「お前、だいぶおかしいよ!」
サイラスは槍を構えて、アルージェの槍に応戦する。
10
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる