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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百四十八話
しおりを挟む 泣きながらも愛莉は冷静にその前後に何が起きていたのかを思い出していた。それは自分が見舞われた悲劇でなく世界の情勢だ。
とにかく2020年代は人類史上最悪なものだった。堕落して分裂した民主主義国家と、一部エリート層に牛耳られた権威主義国家による、冷戦が次第に熱を帯びていた。
かつての民主主義国家群のリーダーであった国々も、経済的利益を優先し権威主義国家による複数の国に対する軍事的侵略行為に対し無為無策に終始していた。特にリーダであった某国の大統領が個人的に権威主義国の総統と友好関係があったため、半ば公認していた一方で自らの同盟の絆を分断したため、全く無力となり世界中で難民が増加しても自らの国の繁栄しか顧みらなくなっていた。
そんな中、2020年代中盤になって複数の国で発生したのが、生物の身体を機械のように変えてしまうウイルス型ナノマシーンの蔓延と、超中性子弾搭載の小型超音速巡航ミサイルの拡散だった。最初のうちに封じ込めができなかったのは、発生したのが権威主義国家と極端に通信技術が整備されていない国などであったため、情報の共有が出来なかったのは原因だった。
そんな中、発生したのが悲劇の13日間の前年に起きた第三次世界大戦だった。その戦いそのものは約半日、正確には14時間32分で終結したが、その間に米中露の三大軍事大国の中枢システムは完全に崩壊していた。世界大戦と称しているが人的被害は開戦前の戦乱の方が大部分を占めていたが、世界秩序は瓦解していた。
「淳司、分かっているわ。もう後戻りできなかったということよね。でも、なぜエキゾチックブレインは人類に歯向かったの?」
愛莉がいくら調べてもそれは知らなかった。実は公式に原因不明とされているからだ。公式見解では麗華は世界を手玉にとって兄弟国の蔡国と結託して世界征服を意図していたが、制御不能に陥り悲劇の13日間を引き起こしたとされていた。そのエキゾチックブレインの暴走が終わったのも何者かが設置されていた共和国宮殿を麗華首都ごと純粋水爆で破壊したとされていた。全ての真相は完全に解明されていないとされているのだ。
「それは・・・丹下教順が知った時には手遅れだったが、麗華がエキゾチックブレインという悪魔を作り出した最初から現生人類の粛清と新たな人類の創造という目的があったのさ。もちろん麗華の政治指導者どもは踊らされていたのを知らなかったけどな」
「じゃあ、人間を機械にするウイルスも」
「そう、丹下教授は加担したのさ。愛莉ちゃんの身体をガイノイドにした技術の開発に」
愛莉は自分の本当の身体を思い出してぞっとしていた。
とにかく2020年代は人類史上最悪なものだった。堕落して分裂した民主主義国家と、一部エリート層に牛耳られた権威主義国家による、冷戦が次第に熱を帯びていた。
かつての民主主義国家群のリーダーであった国々も、経済的利益を優先し権威主義国家による複数の国に対する軍事的侵略行為に対し無為無策に終始していた。特にリーダであった某国の大統領が個人的に権威主義国の総統と友好関係があったため、半ば公認していた一方で自らの同盟の絆を分断したため、全く無力となり世界中で難民が増加しても自らの国の繁栄しか顧みらなくなっていた。
そんな中、2020年代中盤になって複数の国で発生したのが、生物の身体を機械のように変えてしまうウイルス型ナノマシーンの蔓延と、超中性子弾搭載の小型超音速巡航ミサイルの拡散だった。最初のうちに封じ込めができなかったのは、発生したのが権威主義国家と極端に通信技術が整備されていない国などであったため、情報の共有が出来なかったのは原因だった。
そんな中、発生したのが悲劇の13日間の前年に起きた第三次世界大戦だった。その戦いそのものは約半日、正確には14時間32分で終結したが、その間に米中露の三大軍事大国の中枢システムは完全に崩壊していた。世界大戦と称しているが人的被害は開戦前の戦乱の方が大部分を占めていたが、世界秩序は瓦解していた。
「淳司、分かっているわ。もう後戻りできなかったということよね。でも、なぜエキゾチックブレインは人類に歯向かったの?」
愛莉がいくら調べてもそれは知らなかった。実は公式に原因不明とされているからだ。公式見解では麗華は世界を手玉にとって兄弟国の蔡国と結託して世界征服を意図していたが、制御不能に陥り悲劇の13日間を引き起こしたとされていた。そのエキゾチックブレインの暴走が終わったのも何者かが設置されていた共和国宮殿を麗華首都ごと純粋水爆で破壊したとされていた。全ての真相は完全に解明されていないとされているのだ。
「それは・・・丹下教順が知った時には手遅れだったが、麗華がエキゾチックブレインという悪魔を作り出した最初から現生人類の粛清と新たな人類の創造という目的があったのさ。もちろん麗華の政治指導者どもは踊らされていたのを知らなかったけどな」
「じゃあ、人間を機械にするウイルスも」
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愛莉は自分の本当の身体を思い出してぞっとしていた。
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