141 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百三十九話
しおりを挟む
「カレン教授。ラーニャさんってすごい人なんですか?」
アルージェは教台で説教をしているラーニャを見ながら、カレンに尋ねる。
「そうね。フォルスくらいの町で一番偉い人になれるくらいにはすごい人よ。位はなんて言うんだったか忘れちゃったけど。本来ならこうして会うだけでも、何年も前から予約を取らないと会えないような人間なんだから。君もついでだから祈ってご利益もらっときなさい」
カレンがアルージェに答えていると、教台で説教しているラーニャがカレンの姿があることに気付く。
そして横にいる見覚えのある少年を見て目を見開くが、次第に表情が柔らかくなる。
ラーニャの説教が終わるまで聞いていたが、あまり意味は分からなかった。
神様の名前なのか、専門用語なのか、そのあたりの認識が全くできない。
「さぁ、いくわよ」
カレンがアルージェに声をかけてラーニャの方へ向かう。
近くに行こうとすると立っていた聖堂騎士達が行く手を阻もうとするが、ラーニャの一声で聖堂騎士達が警戒を解く。
「早く着てごめんね。けど予定より早くついたから、ご利益貰うためにラーニャの説教聞いちゃったわ」
「カレンさん。説教を聞いても信じる心がないと全く意味ないですよ」
「まぁ、そう固いこと言わないでよ。それより、ほらこの子見覚えあるでしょ?」
「えぇ、忘れるわけありません。ここではなんですから、まずはあちらの部屋まで移動しましょう」
ラーニャが先導し、礼拝堂から続く部屋に入る。
「すいません。説教の時間が長かったので、先に飲み物の用意をしますね。お二人はそちらでお待ちください」
そう言い残してラーニャは更に奥の個室に入っていく。
カレンとアルージェは言われた席に腰を掛ける。
数分後、ラーニャが紅茶持って現れ、カレンとアルージェの前に紅茶を置く。
「さてお待たせしました。カレンさんお久しぶりです。お手紙はやり取りしてますが、お会いするのは久しぶりですね。それでこの子はニツールの?」
「そうよ。ラーニャの想像通り、ニツールで会ったアルージェよ」
「お、お久しぶりです。ラーニャさん」
緊張しながらアルージェはラーニャに挨拶する。
「まさかまた会えるとは思ってなかったです。それに元気そうで本当に良かった。あの事件をきっかけに心に傷を負ってないか本当心配でしたが、立ち直れたみたいでなによりです」
ラーニャは本当にアルージェを心配していたようで、手を胸に置いて安堵する。
「実をいうと完全に吹っ切ったわけではないです。正直まだ少し引きずってるかもしれません。けど学校に通えるほどには元気になりました!」
「あんな悲惨な現場をみたんですから当たり前ですよね・・・。でも普通に生活はできてるようで良かった。学校というとカレンさんの?」
ラーニャはカレンに視線を向ける。
「そうなのよ。いつも通り授業始めようとした時に学期始まりとかでもないのにいきなり現れてね。こんな目立つ髪してるのってなかなかいないじゃない?だからすぐピンと来たわよ。ビックリしたわ、ほんと」
「そうだったんですね。アルージェ君学校は楽しいですか?」
「はい!もちろんです!付与魔法も攻撃魔法も魔道具製作も全部楽しいです!」
「聞いてよラーニャ!この子、生まれたての暴食スライムを単騎でそこそこいいとこまで追い詰めたのよ。まぁ最後は詰めが甘くて”あいつ”が手を貸してたけど」
カレンは楽しそうに話すが、”あいつ”という時だけ明らかに嫌そうに話す。
「暴食スライムを単騎ですか!それはすごいですね!アインに話したらきっと喜ぶでしょうね」
ラーニャはアルージェの成長を素直に喜ぶ。
「そういえば、アインは?」
部屋にアインがなかなか現れないので、カレンはラーニャに尋ねる。
「時間は言っているのでもう少しで来ると思うのですが・・・」
ラーニャが壁に掛けている時計を見て時間を確認すると、ガチャリと扉が開く。
音を聞いて皆が扉の方へ視線を移す。
「遅くなってしまってすまない。ちょっと寄り道をしてしまった」
この声を聴くとアルージェは少し安心感を覚える。
とても安心感を覚える優しい声だった。
「おや?もしかしてその赤髪の少年は」
部屋に入るなりアインはアルージェに視線を向ける。
「そうよ。ニツールに行った時にあんたが助けた、アルージェよ」
「おぉ!やっぱりか!まさかフォルスタ超えて王都にまで来るなんてね」
アインは扉を閉めて、とても嬉しそうにアルージェに近寄る。
「お久しぶりです、アインさん。フォルスタでは音声結晶ありがとうございました!なんとか冒険者になりましたよ」
「いやー、まさか本当に追いかけてくるとは思わなかったな。まぁ、それが君の決断なんだったら尊重しないとね」
アインはアルージェの肩に手を置いてから、空いている席に腰掛ける。
「王都にいるのは冒険者で成功したからではなくて、魔法学校に通っているからなんですけどね」
「魔法学校か。確かカレンはアルージェの魔力が凄いって言ってたね」
「はぁ、そうよ。せっかく私が見つけてきた逸材なのに、コルクスのやつに取られちゃったけどね」
ため息をつきながらカレンは話す。
「ははは、カレンは好き嫌いがはっきりしてるからね」
アインは楽しそうに笑う。
「ほらほら、せっかくアルージェ君がいるのだから、愚痴はまた今度にしましょう?それより私はアルージェ君の今までのこと教えてほしいな」
ラーニャがアルージェがここまで何をしてきたのかを訪ねる。
「そうだね。僕も久しぶりに会ったアルージェのこと聞きたいな」
アインがそれに賛同する。
「そんなに面白いことなんてなかったですよ?」
アルージェはぽつぽつとここまで何があったかを話し始める。
アルージェは教台で説教をしているラーニャを見ながら、カレンに尋ねる。
「そうね。フォルスくらいの町で一番偉い人になれるくらいにはすごい人よ。位はなんて言うんだったか忘れちゃったけど。本来ならこうして会うだけでも、何年も前から予約を取らないと会えないような人間なんだから。君もついでだから祈ってご利益もらっときなさい」
カレンがアルージェに答えていると、教台で説教しているラーニャがカレンの姿があることに気付く。
そして横にいる見覚えのある少年を見て目を見開くが、次第に表情が柔らかくなる。
ラーニャの説教が終わるまで聞いていたが、あまり意味は分からなかった。
神様の名前なのか、専門用語なのか、そのあたりの認識が全くできない。
「さぁ、いくわよ」
カレンがアルージェに声をかけてラーニャの方へ向かう。
近くに行こうとすると立っていた聖堂騎士達が行く手を阻もうとするが、ラーニャの一声で聖堂騎士達が警戒を解く。
「早く着てごめんね。けど予定より早くついたから、ご利益貰うためにラーニャの説教聞いちゃったわ」
「カレンさん。説教を聞いても信じる心がないと全く意味ないですよ」
「まぁ、そう固いこと言わないでよ。それより、ほらこの子見覚えあるでしょ?」
「えぇ、忘れるわけありません。ここではなんですから、まずはあちらの部屋まで移動しましょう」
ラーニャが先導し、礼拝堂から続く部屋に入る。
「すいません。説教の時間が長かったので、先に飲み物の用意をしますね。お二人はそちらでお待ちください」
そう言い残してラーニャは更に奥の個室に入っていく。
カレンとアルージェは言われた席に腰を掛ける。
数分後、ラーニャが紅茶持って現れ、カレンとアルージェの前に紅茶を置く。
「さてお待たせしました。カレンさんお久しぶりです。お手紙はやり取りしてますが、お会いするのは久しぶりですね。それでこの子はニツールの?」
「そうよ。ラーニャの想像通り、ニツールで会ったアルージェよ」
「お、お久しぶりです。ラーニャさん」
緊張しながらアルージェはラーニャに挨拶する。
「まさかまた会えるとは思ってなかったです。それに元気そうで本当に良かった。あの事件をきっかけに心に傷を負ってないか本当心配でしたが、立ち直れたみたいでなによりです」
ラーニャは本当にアルージェを心配していたようで、手を胸に置いて安堵する。
「実をいうと完全に吹っ切ったわけではないです。正直まだ少し引きずってるかもしれません。けど学校に通えるほどには元気になりました!」
「あんな悲惨な現場をみたんですから当たり前ですよね・・・。でも普通に生活はできてるようで良かった。学校というとカレンさんの?」
ラーニャはカレンに視線を向ける。
「そうなのよ。いつも通り授業始めようとした時に学期始まりとかでもないのにいきなり現れてね。こんな目立つ髪してるのってなかなかいないじゃない?だからすぐピンと来たわよ。ビックリしたわ、ほんと」
「そうだったんですね。アルージェ君学校は楽しいですか?」
「はい!もちろんです!付与魔法も攻撃魔法も魔道具製作も全部楽しいです!」
「聞いてよラーニャ!この子、生まれたての暴食スライムを単騎でそこそこいいとこまで追い詰めたのよ。まぁ最後は詰めが甘くて”あいつ”が手を貸してたけど」
カレンは楽しそうに話すが、”あいつ”という時だけ明らかに嫌そうに話す。
「暴食スライムを単騎ですか!それはすごいですね!アインに話したらきっと喜ぶでしょうね」
ラーニャはアルージェの成長を素直に喜ぶ。
「そういえば、アインは?」
部屋にアインがなかなか現れないので、カレンはラーニャに尋ねる。
「時間は言っているのでもう少しで来ると思うのですが・・・」
ラーニャが壁に掛けている時計を見て時間を確認すると、ガチャリと扉が開く。
音を聞いて皆が扉の方へ視線を移す。
「遅くなってしまってすまない。ちょっと寄り道をしてしまった」
この声を聴くとアルージェは少し安心感を覚える。
とても安心感を覚える優しい声だった。
「おや?もしかしてその赤髪の少年は」
部屋に入るなりアインはアルージェに視線を向ける。
「そうよ。ニツールに行った時にあんたが助けた、アルージェよ」
「おぉ!やっぱりか!まさかフォルスタ超えて王都にまで来るなんてね」
アインは扉を閉めて、とても嬉しそうにアルージェに近寄る。
「お久しぶりです、アインさん。フォルスタでは音声結晶ありがとうございました!なんとか冒険者になりましたよ」
「いやー、まさか本当に追いかけてくるとは思わなかったな。まぁ、それが君の決断なんだったら尊重しないとね」
アインはアルージェの肩に手を置いてから、空いている席に腰掛ける。
「王都にいるのは冒険者で成功したからではなくて、魔法学校に通っているからなんですけどね」
「魔法学校か。確かカレンはアルージェの魔力が凄いって言ってたね」
「はぁ、そうよ。せっかく私が見つけてきた逸材なのに、コルクスのやつに取られちゃったけどね」
ため息をつきながらカレンは話す。
「ははは、カレンは好き嫌いがはっきりしてるからね」
アインは楽しそうに笑う。
「ほらほら、せっかくアルージェ君がいるのだから、愚痴はまた今度にしましょう?それより私はアルージェ君の今までのこと教えてほしいな」
ラーニャがアルージェがここまで何をしてきたのかを訪ねる。
「そうだね。僕も久しぶりに会ったアルージェのこと聞きたいな」
アインがそれに賛同する。
「そんなに面白いことなんてなかったですよ?」
アルージェはぽつぽつとここまで何があったかを話し始める。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる