Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
139 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百三十七話

しおりを挟む
翌日、攻撃魔法研究会に顔を出す。

「おぉ!アルージェ!会いたかったよ!最近、全然顔を出してくれないからね」
研究室に入ると、ディビックがアルージェに気付き近づいてくる。

「あっ、ディビックさん。おはようございます。最近はちょっと武器作りに夢中で、他のこと全くできてなかったんですよ」
アルージェは恥ずかしそうに、頭を掻きながら話す。

「ふふふ、アルージェらしくていいじゃないか。ここに来たってことはその武器を試しに来たってとこかい?」

「えへへ、ばれちゃいました?」

「アルージェはわかりやすいからね。好きなことには真っ直ぐ、真摯に向き合う。そんな感じがするよ」

「そうですか?僕自身、回り道してる気がして仕方ないですよ」

「僕から見れば、好きなことに真摯に取り組む君が眩しいくらいさ」
ディビックがアルージェから離れて皆を集める。

「みんな!お待ちかねアルージェが来たぞ!戦いたい人はここに集まってくれ!」
アルージェとディビックの会話に耳を傾けていた学生達が集まる。

「さぁ、アルージェ。新しい君を僕に見せてくれ!」
ディビックは仮想戦場フィールドメイカーに魔力を注ぐ。

アルージェは今日が最後になってしまうので、戦いたいと言ってくれた人と全員と一戦ずつ戦った。

アルージェに挑んだ全員が戦いにもならなかった。
どちらかといえば、一方的な蹂躙が正しい表現だ。

それは皆が新魔法体系を習い始めで、魔法の行使が若干ぎこちなくなっていたとからもあるだろうが、それ以上にアルージェが作った武器は力を持っていた。
そこら辺の魔法使いを一方的に倒してしまえる程の力を。

戦いが終わった後、皆が同じことを言う。
戦っている最中は接近を許さない程に魔法を行使して、自分が圧倒していると思っていたと。

特等席でその戦いぶりを見ていたディビックだけが、なぜアルージェが勝ったかを理解できた。

「君のその武器は危険だ」
ディビックは自分がアルージェと戦うならどうするか、必死に考えるが勝てるイメージが沸かない。

「魔術師であるだけでは君には勝てない。アルージェは本職は剣士、魔術師の適正も高いが、メインは武器を使っての近接戦闘だ。魔法一辺倒の今の僕達には難しい」
ディビックは戦い終わってみんなに囲まれているアルージェを見つめる。

「やっぱり君は眩しいな」

「ディビックさーん」
アルージェがディビックの方へ視線を移し、手を振る。

「なんだい?」

「ディビックさんは戦ってくれないんですか?」

「ふふふ、今の僕では逆立ちしても君に勝てるイメージが沸かないんだ。今回は遠慮しておくよ」

「そ、そうですか・・・」
アルージェは残念そうにうつむく。

「実は僕、学園長から課外学習に行くように命じられたのでしばらく顔を出せそうになくて・・・」

「そうなのかい?そうか・・・。」
ディビックは下を向き少し考えてからアルージェに視線を戻す。

「ならこういうのはどうだい、アルージェ。君が課題学習から帰ってきたら、僕と戦ってくれ。今はまだ君に勝てるイメージが沸かない。けれど本気で君を倒すために特訓をする。どうだろう?」
ディビックがアルージェに向かって右手を前に出す。

「はい!是非!一度も戦ったことがないので、今からすごく楽しみです!」
アルージェはディビックの右手を握り、握手する。

「ふふふ、僕も楽しみさ。さて、君がみんなと戦っている間に日が暮れてしまったみたいだね。まぁあれだけの人数と戦ったら当然かな」

「えっ?もうそんな時間ですか!?帰らないと!」
アルージェはそそくさと帰る準備を始める。

「そうだね。相棒のルーネが扉付近でクルクルと回ってるよ」
ディビックが研究室の扉を指さす。

ルーネは自分の尻尾を追いかけるようにクルクルと周り、扉付近でアルージェを待っていた。

「うわっ、ルーネ、ごめんよ!お待たせ!」
アルージェはルーネの側に駆け寄る。

「飼い主がご飯もくれないから、拗ねて自分一人で食事に行ってたみたいだね」
ディビックがルーネの口元にソースがついているのに気付く。

「えぇ、ほんとだ口元にベリーのソースがついてる。ごめんよルーネ」
アルージェがルーネの口元を拭きながら謝る。

「バウゥ!」
ルーネはアルージェに「ご飯を忘れるなんてありえん!」と怒る。
そのままアルージェを背中に乗せることなく、部屋を出ていく。

「ごめんよ、そんなに怒らないでー」
アルージェはルーネに謝りながら追従する。

寮に戻る最中、アルージェは何とかルーネに許してもらって、背中に乗せてもらう。

寮に着いたが、まだミスティとマイアは戻ってきていなかった。
アルージェは体を動かして疲れたのでリビングのソファに寝転がると、お腹がぐぅと鳴る。

「そっか、朝からご飯も食べずにずっと皆と模擬戦してたのかー、そりゃお腹も空くよね」
お腹をさすりながらアルージェは何を食べようか考える。

「ミスティさん達が戻ってきたら食堂に行くことになるだろう、風呂でも入っとくかな。汗かいてるし」
アルージェはソファーから起き上がり、風呂に入りミスティ達の帰宅を待つ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...