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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百三十七話
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翌日、攻撃魔法研究会に顔を出す。
「おぉ!アルージェ!会いたかったよ!最近、全然顔を出してくれないからね」
研究室に入ると、ディビックがアルージェに気付き近づいてくる。
「あっ、ディビックさん。おはようございます。最近はちょっと武器作りに夢中で、他のこと全くできてなかったんですよ」
アルージェは恥ずかしそうに、頭を掻きながら話す。
「ふふふ、アルージェらしくていいじゃないか。ここに来たってことはその武器を試しに来たってとこかい?」
「えへへ、ばれちゃいました?」
「アルージェはわかりやすいからね。好きなことには真っ直ぐ、真摯に向き合う。そんな感じがするよ」
「そうですか?僕自身、回り道してる気がして仕方ないですよ」
「僕から見れば、好きなことに真摯に取り組む君が眩しいくらいさ」
ディビックがアルージェから離れて皆を集める。
「みんな!お待ちかねアルージェが来たぞ!戦いたい人はここに集まってくれ!」
アルージェとディビックの会話に耳を傾けていた学生達が集まる。
「さぁ、アルージェ。新しい君を僕に見せてくれ!」
ディビックは仮想戦場に魔力を注ぐ。
アルージェは今日が最後になってしまうので、戦いたいと言ってくれた人と全員と一戦ずつ戦った。
アルージェに挑んだ全員が戦いにもならなかった。
どちらかといえば、一方的な蹂躙が正しい表現だ。
それは皆が新魔法体系を習い始めで、魔法の行使が若干ぎこちなくなっていたとからもあるだろうが、それ以上にアルージェが作った武器は力を持っていた。
そこら辺の魔法使いを一方的に倒してしまえる程の力を。
戦いが終わった後、皆が同じことを言う。
戦っている最中は接近を許さない程に魔法を行使して、自分が圧倒していると思っていたと。
特等席でその戦いぶりを見ていたディビックだけが、なぜアルージェが勝ったかを理解できた。
「君のその武器は危険だ」
ディビックは自分がアルージェと戦うならどうするか、必死に考えるが勝てるイメージが沸かない。
「魔術師であるだけでは君には勝てない。アルージェは本職は剣士、魔術師の適正も高いが、メインは武器を使っての近接戦闘だ。魔法一辺倒の今の僕達には難しい」
ディビックは戦い終わってみんなに囲まれているアルージェを見つめる。
「やっぱり君は眩しいな」
「ディビックさーん」
アルージェがディビックの方へ視線を移し、手を振る。
「なんだい?」
「ディビックさんは戦ってくれないんですか?」
「ふふふ、今の僕では逆立ちしても君に勝てるイメージが沸かないんだ。今回は遠慮しておくよ」
「そ、そうですか・・・」
アルージェは残念そうにうつむく。
「実は僕、学園長から課外学習に行くように命じられたのでしばらく顔を出せそうになくて・・・」
「そうなのかい?そうか・・・。」
ディビックは下を向き少し考えてからアルージェに視線を戻す。
「ならこういうのはどうだい、アルージェ。君が課題学習から帰ってきたら、僕と戦ってくれ。今はまだ君に勝てるイメージが沸かない。けれど本気で君を倒すために特訓をする。どうだろう?」
ディビックがアルージェに向かって右手を前に出す。
「はい!是非!一度も戦ったことがないので、今からすごく楽しみです!」
アルージェはディビックの右手を握り、握手する。
「ふふふ、僕も楽しみさ。さて、君がみんなと戦っている間に日が暮れてしまったみたいだね。まぁあれだけの人数と戦ったら当然かな」
「えっ?もうそんな時間ですか!?帰らないと!」
アルージェはそそくさと帰る準備を始める。
「そうだね。相棒のルーネが扉付近でクルクルと回ってるよ」
ディビックが研究室の扉を指さす。
ルーネは自分の尻尾を追いかけるようにクルクルと周り、扉付近でアルージェを待っていた。
「うわっ、ルーネ、ごめんよ!お待たせ!」
アルージェはルーネの側に駆け寄る。
「飼い主がご飯もくれないから、拗ねて自分一人で食事に行ってたみたいだね」
ディビックがルーネの口元にソースがついているのに気付く。
「えぇ、ほんとだ口元にベリーのソースがついてる。ごめんよルーネ」
アルージェがルーネの口元を拭きながら謝る。
「バウゥ!」
ルーネはアルージェに「ご飯を忘れるなんてありえん!」と怒る。
そのままアルージェを背中に乗せることなく、部屋を出ていく。
「ごめんよ、そんなに怒らないでー」
アルージェはルーネに謝りながら追従する。
寮に戻る最中、アルージェは何とかルーネに許してもらって、背中に乗せてもらう。
寮に着いたが、まだミスティとマイアは戻ってきていなかった。
アルージェは体を動かして疲れたのでリビングのソファに寝転がると、お腹がぐぅと鳴る。
「そっか、朝からご飯も食べずにずっと皆と模擬戦してたのかー、そりゃお腹も空くよね」
お腹をさすりながらアルージェは何を食べようか考える。
「ミスティさん達が戻ってきたら食堂に行くことになるだろう、風呂でも入っとくかな。汗かいてるし」
アルージェはソファーから起き上がり、風呂に入りミスティ達の帰宅を待つ。
「おぉ!アルージェ!会いたかったよ!最近、全然顔を出してくれないからね」
研究室に入ると、ディビックがアルージェに気付き近づいてくる。
「あっ、ディビックさん。おはようございます。最近はちょっと武器作りに夢中で、他のこと全くできてなかったんですよ」
アルージェは恥ずかしそうに、頭を掻きながら話す。
「ふふふ、アルージェらしくていいじゃないか。ここに来たってことはその武器を試しに来たってとこかい?」
「えへへ、ばれちゃいました?」
「アルージェはわかりやすいからね。好きなことには真っ直ぐ、真摯に向き合う。そんな感じがするよ」
「そうですか?僕自身、回り道してる気がして仕方ないですよ」
「僕から見れば、好きなことに真摯に取り組む君が眩しいくらいさ」
ディビックがアルージェから離れて皆を集める。
「みんな!お待ちかねアルージェが来たぞ!戦いたい人はここに集まってくれ!」
アルージェとディビックの会話に耳を傾けていた学生達が集まる。
「さぁ、アルージェ。新しい君を僕に見せてくれ!」
ディビックは仮想戦場に魔力を注ぐ。
アルージェは今日が最後になってしまうので、戦いたいと言ってくれた人と全員と一戦ずつ戦った。
アルージェに挑んだ全員が戦いにもならなかった。
どちらかといえば、一方的な蹂躙が正しい表現だ。
それは皆が新魔法体系を習い始めで、魔法の行使が若干ぎこちなくなっていたとからもあるだろうが、それ以上にアルージェが作った武器は力を持っていた。
そこら辺の魔法使いを一方的に倒してしまえる程の力を。
戦いが終わった後、皆が同じことを言う。
戦っている最中は接近を許さない程に魔法を行使して、自分が圧倒していると思っていたと。
特等席でその戦いぶりを見ていたディビックだけが、なぜアルージェが勝ったかを理解できた。
「君のその武器は危険だ」
ディビックは自分がアルージェと戦うならどうするか、必死に考えるが勝てるイメージが沸かない。
「魔術師であるだけでは君には勝てない。アルージェは本職は剣士、魔術師の適正も高いが、メインは武器を使っての近接戦闘だ。魔法一辺倒の今の僕達には難しい」
ディビックは戦い終わってみんなに囲まれているアルージェを見つめる。
「やっぱり君は眩しいな」
「ディビックさーん」
アルージェがディビックの方へ視線を移し、手を振る。
「なんだい?」
「ディビックさんは戦ってくれないんですか?」
「ふふふ、今の僕では逆立ちしても君に勝てるイメージが沸かないんだ。今回は遠慮しておくよ」
「そ、そうですか・・・」
アルージェは残念そうにうつむく。
「実は僕、学園長から課外学習に行くように命じられたのでしばらく顔を出せそうになくて・・・」
「そうなのかい?そうか・・・。」
ディビックは下を向き少し考えてからアルージェに視線を戻す。
「ならこういうのはどうだい、アルージェ。君が課題学習から帰ってきたら、僕と戦ってくれ。今はまだ君に勝てるイメージが沸かない。けれど本気で君を倒すために特訓をする。どうだろう?」
ディビックがアルージェに向かって右手を前に出す。
「はい!是非!一度も戦ったことがないので、今からすごく楽しみです!」
アルージェはディビックの右手を握り、握手する。
「ふふふ、僕も楽しみさ。さて、君がみんなと戦っている間に日が暮れてしまったみたいだね。まぁあれだけの人数と戦ったら当然かな」
「えっ?もうそんな時間ですか!?帰らないと!」
アルージェはそそくさと帰る準備を始める。
「そうだね。相棒のルーネが扉付近でクルクルと回ってるよ」
ディビックが研究室の扉を指さす。
ルーネは自分の尻尾を追いかけるようにクルクルと周り、扉付近でアルージェを待っていた。
「うわっ、ルーネ、ごめんよ!お待たせ!」
アルージェはルーネの側に駆け寄る。
「飼い主がご飯もくれないから、拗ねて自分一人で食事に行ってたみたいだね」
ディビックがルーネの口元にソースがついているのに気付く。
「えぇ、ほんとだ口元にベリーのソースがついてる。ごめんよルーネ」
アルージェがルーネの口元を拭きながら謝る。
「バウゥ!」
ルーネはアルージェに「ご飯を忘れるなんてありえん!」と怒る。
そのままアルージェを背中に乗せることなく、部屋を出ていく。
「ごめんよ、そんなに怒らないでー」
アルージェはルーネに謝りながら追従する。
寮に戻る最中、アルージェは何とかルーネに許してもらって、背中に乗せてもらう。
寮に着いたが、まだミスティとマイアは戻ってきていなかった。
アルージェは体を動かして疲れたのでリビングのソファに寝転がると、お腹がぐぅと鳴る。
「そっか、朝からご飯も食べずにずっと皆と模擬戦してたのかー、そりゃお腹も空くよね」
お腹をさすりながらアルージェは何を食べようか考える。
「ミスティさん達が戻ってきたら食堂に行くことになるだろう、風呂でも入っとくかな。汗かいてるし」
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