Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
138 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百三十六話

しおりを挟む
「確実ではないが、お前がここにいることが聖国の連中に漏れているようだ。だから雲隠れしろ」

「あぁ、そういうことですか。いきなり出てけなんて言うから驚いちゃいました」
アルージェはほっと胸を撫でおろす。

「あのなぁ、安心してる場合じゃねぇ。学園内だから暗殺者がまだ来ていないだけで、いつ来てもおかしくない状況だ。どこか隠れられる場所はねぇのか?」

アルージェはしばらく考える。
「今パッと考えられるのは、村に戻るとかくらいですかね」

「村か・・・。いいじゃねぇか、よそ者がいたらすぐにわかるし暗殺者も送りにくいだろう」

「学校での僕の扱いとかどうなるんでしょう・・・?」

「そんなこと今考えてる場合かよ。まぁ学園長の指示だから、籍はおいたまま課外学習という名目になるんじゃねぇか」
コルクスはため息をつきながら話す。

「とりあえず俺が妨害工作やらで聖国の邪魔をしといてやるから、一週間以内には学園から出ろ。以上だ」

アルージェはいきなり言われて思うことはあったが、暗殺者が来るといわれた以上、他の学生たちを巻き込んでしまう可能性がある。
それにコルクス教授がいつにも無く優しく感じた。
それほどまでに緊迫した状況なのかもしれないと、アルージェは村に戻ることを決める。

アルージェはコルクスとの話を終え、寮に戻る。

部屋に戻ると、ミスティとエマが楽しそうにお茶会をしていた。
マイアが自作の秘密結社らびっといあーのぬいぐるみを持って、報告会をしていたようだ。

アルージェは楽しそうな三人を見て、巻き込むわけにはいかないと覚悟を決める。
「戻りました」

「アルージェ、今日の晩御飯だがエマも一緒にいいか?」

「えぇ、もちろんですよ」

「アルージェ君、いつもお邪魔しちゃってすいません」

「気にしないで。ちょっと考えたいことがあるから部屋に戻るね」

「アルージェ」
ミスティがアルージェを引き留める。

「ん?なんですか?」
アルージェが振り返ると、秘密結社らびっといあーのうさぎを模った大きいぬいぐるみが目の前に現れる。

「それはマイアが作ったぬいぐるみだ。かわいいだろ?アルージェが浮かない顔をしているのが気になるらしい。そのうさぎに話を聞いてもらうといい。それでもまだ話したりなければ、私達がいつでも話を聞くからな」
うさぎのぬいぐるみを横に動かし後ろからひょこっとミスティが顔を出す。
ミスティが持っていたうさぎのぬいぐるみをアルージェに渡す。

ウサギを受け取りミスティを見るとミスティは優しく微笑んでいる。
エマのほうを見ると心配そうにアルージェを見つめる。

「ありがとうございます」
アルージェはうさぎをギュッと抱きしめて、そのまま部屋に入る。
うさぎを抱きながらベッドに寝転がる。

「二人と別れるのは辛いけど、ここで別れないとどんな危険があるか分からない」
うさぎを抱きしめる力が強くなる。

「ルーネ」
丸まって寝転んでいるルーネを呼ぶとアルージェに近づいてくる。

「ルーネはついてきてくれる?一人じゃちょっと不安なんだ」

「バウッ!」
ルーネは元気よく返事をする。

「そっかぁ、ありがとう。ルーネがいたら誰にも負ける気しないね。よし覚悟は決めたぞ。ミスティさんたちに話に行こう」

ベッドから立ち上がり部屋を出る。

ミスティとエマは紅茶を飲み、アルージェが出てくるのを待っていた。

アルージェが部屋から出ると二人ともアルージェに視線が移る。
「すいません。二人とも相談があります。今いいですか?」

「あぁ、いつでもいいぞ」
ミスティはいつものように大人の落ち着きがある雰囲気を醸し出していた。

「は、はい。だ、大丈夫です」
逆にエマは紅茶を持つ手が震えていて、見ているこっちが緊張してしまいそうだ。

「どうやら聖国が、僕の居場所を見つけたらしいです」

「聖国か、昔言っていたな命を狙われると」
ミスティが思い出しながら話す。

「はい、それでこの学園から出ていくことにします。他の学生に迷惑をかけられないので」

「ふむ、ならいつ出るんだ?私も準備をしないとな」

「違うんです。戦争ではなく、きっと僕に向けて暗殺者が送られてきます。だから一緒にいると危ないです」

「ここにいても危ないかもしれないじゃないか。暗殺者が私達のところに来ないとも限らないだろ」

「ぐっ・・・、それはそうですがこっちには来る可能性があるだけで来ない可能性もあります。でも僕といれば絶対に暗殺者が来ますよ」

「そうか、ならアルージェ一人で居るより私達が居るほうが応戦できるな」

「だめですよ・・・」
アルージェは言い返せなくなり、言葉に詰まる。

「私は行くぞ、何を言われてもな。前にも言ったが既に覚悟を決めている」

「せ、聖国に命を狙われてることは知りませんでしたが、私も一緒に行きます。首飾りの付与が無くなった時、父と母に誓いましたから」

一歩も引かない二人にアルージェは言い返すことができない。

「わかりました。ならもう死ぬ時はみんな一緒です」

「そうだな、私はアルージェと共に死ぬ覚悟まで出来ているからな」

「わ、私も出来てます!」
エマはミスティに張り合う。

「わかりました。二人の決意を教えてもらったんで、これからは一心同体です!」

「ちなみに学園を出ると言っていたが、行く当てはあるのか?」

「一度ニツールに戻ろうと思います。両親にも会いたいので」

「ふむ、ニツールか。なら、ついでにうちにもこないか?以前言っていただろ?見てみたいと」

「えっ?いいんですか?今の僕、完全にお荷物ですけど・・・」

「大丈夫だろ。辺境伯邸には戦える者しかいないしな」

「わ、私もせっかくだからミスティさんの家行ってみたいです!」

「僕もミスティさんの家に興味あります。フォルスタに戻れるなんてそうそうないかもですし」

「なら、父に手紙を書いておくとしようかな」
そういうとマイアがそそくさと紙とペンを用意する。

「あ、あと次の休息日なんですけど、カレン教授と一緒に知り合いに会いに行きますので、僕は留守にします」

「な、ならミスティさん、休息日に王都に行きませんか?私も外に出る準備したいので・・・」

「ん?それはいいな。私も少し買いたいものがあったんだ。マイアも休息日は休んでもらっていいぞ。秘密結社らびっといあーとしばらく会えなくなるだろうしな」

「お心遣いありがとうございます」
マイアはミスティに頭を下げる。

「はぁ、なんか全部話したら、お腹すいたな」
アルージェが自分のお腹を摩る。

「そうですね、私もお腹すいてきました」

「なら食堂に行くとするか」
ミスティの号令で、食堂に向かうことにする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...