Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
137 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百三十五話

しおりを挟む
アルージェはまず自分の周辺に魔法陣を展開する。

そして魔力を操作し、管のようなパスを繋げる魔法を紡ぐ。

この魔法自体は不可視で、魔法陣展開後は何も動いていないように見える。
だが、実際はアルージェの魔力が大きく動いて、すでに首飾りを対象にして魔法が行使されている。

ミスティとエマは新魔法体系を学んでいるので、剣と首飾りが何かで繋がっていると感覚的に理解する。

その後、首飾りが纏っていた魔力を剣が急速に吸収していき、魔力の動きが止まる。

「終わったんですか?」
エマがアルージェに確認する。

アルージェがエマに近づき手を握る。

「ほら、この通り終わったよ」

エマがポロポロと涙を流す。

「えっ、えっ、どうしたの?何か嫌なことしちゃった?」
エマが急に泣き出したので、アルージェは慌てて握った手を離す。

「だ、大丈夫です。少しだけ一人にしてもらえますか?」
アルージェとミスティはアイコンタクトをして、自分たちの部屋に戻る。

「父さん母さん今までありがとう。そしてさようなら。これからは信頼できる友人たちと生きていきます。またいつか会おうね」
エマは膝を突き、天へ祈る。

翌日からはサボり気味だった授業に顔を出す。
まずはカレン教授が受け持つ、攻撃魔法の授業に出席する。

カレンが黒板の前に立ち出席している生徒を見渡す。
アルージェのところで目線が止まり、アルージェの傍まで寄ってくる。

「あんたのこと久しぶりに見たわ」

「い、いやぁ、ちょっと付与魔法に現を抜かしてました・・・」

「はぁ・・・。まぁ勉強してたならいいや。あとそうだ君さ、いい加減空いてる日教えなさいよ。ラーニャとアインがアルージェはまだか。アルージェはまだか。ってうるさいのよ」

「えっ、えっと・・・」
アルージェは直近で何か予定があるかを頭の中で整理する。

「い・つ!」
カレンはアルージェにプレッシャーを与える。

アルージェはカレンの圧に屈して「二日後!二日後の休息日にいけます!」と答える。

「わかったわ、なら休息日に会いに行くって伝えとくわ。もし破ったら」
カレンはギロリとアルージェをにらみつける。

「た、たとえこの身が朽ち果てようとも、絶対に行きます!」

「そう、ならいいわ」
カレンは黒板の前に戻って、授業を始める。

アルージェがカレンの授業を受けている頃、コルクスは学園室に出向く。

ノックもせずに学園長室に入ると、秘密結社らびっといあーメンバーが奥の部屋からひょっこりと顔を出す。

コルクスを見るや否や、秘密結社らびっといあーメンバーがコルクスに向かって寄ってくる。

「おい、やめろ!じゃれつくな!うお!クソッ!」
メンバーがなだれ込んできて可愛いの嵐になすすべなく、コルクスは体勢を崩して床に倒れこむ。

さめがぺったんぺったんと移動して、コルクスの上にマウントを取る。

そしてこれでもかという程、ひれでペチペチと顔を叩く。

「うわっぷ!クソッ!おい!お前らいいかげんに・・・、ぐあぁぁぁ!」
その後も十分以上は無茶苦茶にされた後、学園長がコルクスのもとに来る。

「おぉ、コルクス。相変わらず仲が良いのぉ」
長く蓄えた髭を撫でながらめちゃくちゃにされているコルクスに声をかける。

「ふざけんな!こいつらが勝手にじゃれ付いてくる。ただそれだけだ!」

「フォッフォッフォ!昔からの知り合いじゃったりしてな」
学園長がチラリとコルクスに目線を送る。

「ちげぇ、こいつらとは学園で初めて会った」

「そうか、そうか。お主がそういうならそうなんじゃろうな」

「チッ、めんどくせぇ探り入れやがってよ。今日は用事があってきた」
コルクスはバツが悪そうに話す。

「聖国の動向だが、あいつらアルージェがここに在学していることを恐らく把握してやがる」

「そうか、隠し通すことは出来ないと思っておったが、想像より早かったな」
学園長は秘密結社らびっといあー達に部屋に戻るように指示する。
そして、ソファに腰かけて考え始める。

学園長は数秒考えてから顔上げる。
「なぁ、コルクスよ。どうにかしてアルージェをこの学園から外に出してくれんか」

「学園から出せって言われてもな」

「やり方は任せる。愛弟子なんじゃろ?」

「わかった。まぁここにいるよりは別のところにいるほうが安全だろうしな」
コルスクは頭を掻きながら答える。

「フォッフォッフォ。では、任せたぞ」
学園長は机に戻っていき、コルクスも研究室に戻る。

休息日前日。
アルージェは珍しくコルクスから呼び出しがあったので研究室へ向かう。

「教授から呼び出しなんて、珍しいよね。何かあったのかな?」
アルージェは後ろからついてくるルーネに話しかける。

「グウゥン」
ルーネも何故呼び出されたかわからないので、首を傾げる。

「そうだよねぇ。呼び出しとかほんと久しぶりじゃない?」

「バウッ!」
ルーネが首を縦に振り答える。

研究室に入るとコルクスが、アルージェの到着を待っていた。

「お待たせしました。呼び出しなんて久しぶりだったので少し遅くなりました」

コルクスはアルージェの言葉に何も反応せずに用件だけを告げる。
「お前この学校から出ていけ」

「えっ・・・?」
アルージェはコルクスの言葉に驚き、言葉を失う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

処理中です...