Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
136 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百三十四話

しおりを挟む
ここまで本当に大変だった。

だが、遂に思っていた通りに剣が完成する。
それと同時にアルージェは12歳の誕生日を迎えた。

「ふふふ、ついに出来たぞ!エマに伝えにいかないと!」
アルージェは目の下に隈を作って、フラフラと寮に向かう。

途中で体力の限界を迎えて、バタンと床に倒れる。

見かねたルーネがやれやれと首を振って、アルージェを背中に乗せて寮に向かう。

付与解除ディスエンチャント、ぐへへへ」
ルーネの背中で揺られながら眠るアルージェは寝言を呟く。

アルージェは目を覚ましたのは夕方頃だった。

「うわっ!寝てた!?えっ、てことは武器も・・・?」
アルージェが部屋をキョロキョロと見渡す。

出来た武器は壁に立てかけられていた。

「よかったぁ!夢じゃなかったよぉ!」
アルージェが安堵をして、ベッドに寝転ぶ。

「良くないだろう」
アルージェが寝ているベッド脇で座っていたミスティが声をかける。
ミスティから声を掛けられたアルージェはビクッと体を揺らす。

「また、無茶をして。ほんとアルージェは変わらないな。変わらないのは良いが、こちらの気持ちも少しは考えてくれ」

「あぁ・・・、あははははは・・・・・・」
勢いでごまかそうとしたがミスティの顔を見て、笑い声が先細りする。

「本当面目ない・・・」
アルージェは体を小さくする。

「本当に反省しているんだろうな?」

「すいません・・・」
アルージェはなるべく弱い自分をミスティに見せる。

「はぁ、ならいい。それであれが?」
ミスティは壁に立て掛けている剣に視線を向けてアルージェに確認する。

「はい!そうなんです!付与解除ディスエンチャントができるように設計した武器です!」

「・・・」
ミスティはアルージェを冷たい目で見る。

「パスを繋ぐ必要があって、少し時間がかかるんですけど絶対できると思います!あっ、パスをつなぐっていうのは、僕がこのために考案した魔法で、」
ミスティの視線に気付かずアルージェはペラペラと話し続ける。

ミスティはアルージェが楽しそう話す姿を見て、次第に表情が柔らかくなる。

「アルージェ様、エマ様をお呼びしましょうか?」
マイアがアルージェの話を遮り、提案する。

「あっ!お願いします!もしかしたら王都の武術教室に行ってていないかもですが」

「本日は図書館に居ると、今朝言っておられましたので少し様子を見てきます」

「はい!お願いします。それでパスを繋ぐ魔法なんですけどね」
アルージェはマイアにお礼を言った後、すぐにミスティの方を向きなおし話を続ける。

「お嬢様、なるべく早くエマさんを連れてきますので頑張ってください」
マイアは会釈して、すぐに図書館へ向かう。

「アルージェ、今回作った武器の機能について本当は全部聞きたいのだが、これ以上話を聞いてしまうと実際に使っているときに驚きがなくなってしまう。そうだろう?だから今は少し我慢してもらって少し腹ごしらえでもどうだろう?」
ミスティがアルージェの話を遮って提案する。

アルージェは少し考える。
「それもそうですね!頑張って作ったので、驚いてほしいですからね!分かりました!」
アルージェはミスティが興味を持ってくれていると嬉しくなり、目を輝かせて答える。

「あっ、でもご飯はあるんですか?」

「もちろんだ。マイアがお昼ごろに食堂からアルージェのために持ってきてくれていたものがある。冷めてしまっているが」
ミスティは作戦がうまくいったことにホッとする。

「熱いの嫌なので、冷めたまま食べます!」
アルージェがベッドから立ち上がり、リビングのテーブルに向かう。
ミスティはマイアが持ってきてくれていた食事をテーブルに用意すると、アルージェがガツガツと食べ始める。

ルーネは壁際で体を丸めて片目だけ開けて、ミスティの巧みな誘導に感心していた。

少ししてマイアがエマを連れて戻ってくる。

マイアから現状を聞いて、ミスティの負担を減らすためにエマは速足で来た。
だが、アルージェが大人しくご飯を食べていることに驚く。

「エマ!ご飯食べてるから少し待ってね!」
アルージェはエマが来たので慌てて食事をかきこもうとする。

「アルージェ君、こんばんは。慌てないでゆっくりで良いですよ。今日はもう予定ないので!」

アルージェはそれを聞いて、かきこむのをやめる。

エマがミスティの傍によりコソコソと話しかける。
「いつものあれはどうしたんですか?」

「あぁ、実際に使っているところを見て驚きたいと言ったら、目を輝かせて喜んで食事を始めたよ」

「なるほど!さすがミスティさんです!」

アルージェは食事を終えて、すぐに皿を流し台に持っていこうとする。
アルージェが皿を持ったことにマイアが慌てて、アルージェの隣に駆け寄る。

「アルージェ様。こういったことは私の仕事ですので、すぐに呼んでください。ですが、お心遣いありがとうございます」
マイアはアルージェから皿を受け取り流し台に持っていく。

「い、いや、違うんだよ・・・。なんかごめんね・・・」
机から皿を除けたのは付与解除ディスエンチャントに邪魔なものを無くそうとしただけである。
アルージェはエマの首飾りに付与解除ディスエンチャントを早く試したかった。
それだけなのだが何か勘違いをされてしまったようだ。

「それじゃあ、エマ!首飾りの準備はいい?」

「はい!いつでも大丈夫です!」
アルージェはエマの返事を聞いてから頷き、そそくさと部屋に向かう。

すぐにアルージェは部屋から水色の剣を持って出てくる。
後ろには無理やり起こされたであろう、ルーネが眠そうにトボトボとついてきている。

「それじゃ!準備はいい?始めるよ!」
アルージェは嬉しそうに剣を構える。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...