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第三部 〜新たな力〜
第百三十二話
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二回目だったこともあり、剣は4日程で完成した。
「ぜぇぜぇ・・・、付与は明日からにしよう。そうしよう。ぜぇぜぇ・・・」
真っ白な美しい刀身の剣をアイテムボックスに片づけてルーネを呼び寮に戻る。
寮に戻るとまだ昼過ぎだというのに、珍しくミスティが先に戻っていた。
「おぉ、アルージェ戻ったか!っておい!大丈夫か!」
ミスティはルーネに完全に体を預けているアルージェを見て駆け寄る。
「あちゃー、コルクス教授のとこで訓練してるから、先に戻ってることはないと思ってたんですけどねぇ」
ミスティ達を心配させまいと早めに戻り、今まで仮眠を取ってから姿を見せるようにしていた。
なのでミスティがこの姿のアルージェを見るのは初めてだった。
「そんなこと言ってる場合か!一体どうしたんだ!」
「今ちょっと特殊な鉱石の加工をしてまして、その鉱石に触ってると魔力を吸い取られちゃうんですよね。それでこんな感じです」
ミスティが肩を貸してソファーに降ろしてもらい、背もたれに体を預ける。
「なるほど、つまり魔力が足りないということだな?」
「えぇ、端的に言えばその通りです」
「なら私が魔力を分けてやろう!なに、遠慮する必要はない!魔力操作の訓練だと思えばいいわけだ」
ミスティがアルージェの隣に座る。
ミスティは嬉しそうにアルージェの手に触れて、魔力を送り始める。
「魔力操作を教えてもらえて本当に良かった」
ミスティがどんどんと魔力を送る。
「むむむ、これだけ送ってもまだ回復しないのか・・・」
ミスティは少し慌て始める。
「はぁはぁ・・・、アルージェ・・・・、まだなのか・・・?」
「もうちょっとだけお願いします」
「むむむ・・・、そうか。まだか・・・」
ミスティは肩で息を始める。
「あ、アルージェ、も、もうダメだ・・・、もうこれ以上は・・・、クッ」
ミスティの呼吸が乱れ、だんだんとミスティの顔が険しくなっていく。
「もう少しだけ、もう少しだけください」
「も、もう限界だ・・・。アルージェ、私これ以上はもう本当に・・・、と、止めてくれ。体に力が入らなくなってきた」
「もう少しだけですから!」
「はぁはぁ・・・、クッ・・、あ、アルージェ・・・・」
ミスティが潤んだ瞳でアルージェを見つめる。
「ありがとうございます!おかげでめちゃ元気になりました!」
アルージェがソファから立ち上がる。
「あれ?ミスティさん大丈夫ですか??」
「う、うむ。大丈夫だ。しばらくこうしていようかと思う。アルージェすまないが食事を取ってきてもらえないだろうか」
ミスティはソファに横になり起き上がる気配がない。
「わかりました!いつものやつでいいですよね?すぐ取ってきます!」
ルーネに声をかけて食堂に向かう。
「お嬢様、魔力回復薬などお持ちしましょうか?」
マイアがミスティに話しかける。
「あぁ、頼んでいいか。まさかアルージェがここまで底なしだと思わなかった。膝がガクガクして起き上がることも出来そうにない」
マイアが部屋に戻り、魔力回復薬をミスティの口元に持っていく。
「ご自身で飲めますか?」
「ぐぬぬ・・・、せっかく持ってきてもらったのに腕も上げられそうにない・・・」
ミスティは仰向けになり、マイアに言う。
マイアは魔力回復薬を口に含む。
仰向けになっているミスティに近づき髪を耳にかけてから口移しで飲ませる。
「んぐんぐ」
ミスティはマイアからの魔力回復薬を流されるのを抵抗せずにただ受け止める。
「はぁはぁ・・・、助かったよマイア」
ミスティは魔力回復薬を飲み干し、何とか起き上がる。
「えぇ、それはよかったです。一度部屋に戻ってその汗ばんだ服を着替えになりますか?」
「あぁ、そうしよう。頼む」
ミスティとマイアが部屋に戻っていく。
二人の姿が見えなくなった後でアルージェがちらりと顔を出す。
「す、すごいものを見てしまった」
アルージェは胸に手を当てて胸の高まりを感じる。
「あんなに見せられたら、僕までドキドキしちゃうよ・・・」
持ってきた食事をテーブルに並べて、いつでも食べられる用意をする。
ソファーに腰掛け、先ほど見た光景を思い出す。
「おぉ、アルージェすまないな。もう食べる用意までしてくれているのか助かる」
部屋から着替え終わったミスティが出てきて、アルージェに声をかける。
「う、うわぁ!」
ミスティの声に驚きアルージェが飛び跳ねる。
胸を押さえながらミスティの方へ視線を移す。
「そんな驚かなくてもいいじゃないか。何か悪いことを考えていたのか?」
ミスティがアルージェの隣に座る。
いつもと何も変わらない光景だが、アルージェはミスティの唇に目が行ってしまう。
「ん?どうした?まだ具合が悪いのか?私はもう魔力をあげるのは無理だからエマを呼ぼうか?」
アルージェはエマの魔力がなくなり、ミスティが口移しでエマに魔力回復薬を飲ませている光景を想像してしまう。
「い、いや!大丈夫です!ほんと大丈夫なんで気にしないでくだしあ!」
ミスティは明らかに動揺しているアルージェを見て、「おかしなやつだなぁ」と言う。
「あはは・・・、食事にしましょう!冷めるとあれなんで!」
「そうだな、食事にしようか」
食事はいつもミスティと会話しながら食べるが、今日はミスティに視線を向けるのが恥ずかしくて下を向きながらご飯を食べた。
それから少しの間、アルージェはミスティに視線を向けられなかったのは言うまでもない。
「ぜぇぜぇ・・・、付与は明日からにしよう。そうしよう。ぜぇぜぇ・・・」
真っ白な美しい刀身の剣をアイテムボックスに片づけてルーネを呼び寮に戻る。
寮に戻るとまだ昼過ぎだというのに、珍しくミスティが先に戻っていた。
「おぉ、アルージェ戻ったか!っておい!大丈夫か!」
ミスティはルーネに完全に体を預けているアルージェを見て駆け寄る。
「あちゃー、コルクス教授のとこで訓練してるから、先に戻ってることはないと思ってたんですけどねぇ」
ミスティ達を心配させまいと早めに戻り、今まで仮眠を取ってから姿を見せるようにしていた。
なのでミスティがこの姿のアルージェを見るのは初めてだった。
「そんなこと言ってる場合か!一体どうしたんだ!」
「今ちょっと特殊な鉱石の加工をしてまして、その鉱石に触ってると魔力を吸い取られちゃうんですよね。それでこんな感じです」
ミスティが肩を貸してソファーに降ろしてもらい、背もたれに体を預ける。
「なるほど、つまり魔力が足りないということだな?」
「えぇ、端的に言えばその通りです」
「なら私が魔力を分けてやろう!なに、遠慮する必要はない!魔力操作の訓練だと思えばいいわけだ」
ミスティがアルージェの隣に座る。
ミスティは嬉しそうにアルージェの手に触れて、魔力を送り始める。
「魔力操作を教えてもらえて本当に良かった」
ミスティがどんどんと魔力を送る。
「むむむ、これだけ送ってもまだ回復しないのか・・・」
ミスティは少し慌て始める。
「はぁはぁ・・・、アルージェ・・・・、まだなのか・・・?」
「もうちょっとだけお願いします」
「むむむ・・・、そうか。まだか・・・」
ミスティは肩で息を始める。
「あ、アルージェ、も、もうダメだ・・・、もうこれ以上は・・・、クッ」
ミスティの呼吸が乱れ、だんだんとミスティの顔が険しくなっていく。
「もう少しだけ、もう少しだけください」
「も、もう限界だ・・・。アルージェ、私これ以上はもう本当に・・・、と、止めてくれ。体に力が入らなくなってきた」
「もう少しだけですから!」
「はぁはぁ・・・、クッ・・、あ、アルージェ・・・・」
ミスティが潤んだ瞳でアルージェを見つめる。
「ありがとうございます!おかげでめちゃ元気になりました!」
アルージェがソファから立ち上がる。
「あれ?ミスティさん大丈夫ですか??」
「う、うむ。大丈夫だ。しばらくこうしていようかと思う。アルージェすまないが食事を取ってきてもらえないだろうか」
ミスティはソファに横になり起き上がる気配がない。
「わかりました!いつものやつでいいですよね?すぐ取ってきます!」
ルーネに声をかけて食堂に向かう。
「お嬢様、魔力回復薬などお持ちしましょうか?」
マイアがミスティに話しかける。
「あぁ、頼んでいいか。まさかアルージェがここまで底なしだと思わなかった。膝がガクガクして起き上がることも出来そうにない」
マイアが部屋に戻り、魔力回復薬をミスティの口元に持っていく。
「ご自身で飲めますか?」
「ぐぬぬ・・・、せっかく持ってきてもらったのに腕も上げられそうにない・・・」
ミスティは仰向けになり、マイアに言う。
マイアは魔力回復薬を口に含む。
仰向けになっているミスティに近づき髪を耳にかけてから口移しで飲ませる。
「んぐんぐ」
ミスティはマイアからの魔力回復薬を流されるのを抵抗せずにただ受け止める。
「はぁはぁ・・・、助かったよマイア」
ミスティは魔力回復薬を飲み干し、何とか起き上がる。
「えぇ、それはよかったです。一度部屋に戻ってその汗ばんだ服を着替えになりますか?」
「あぁ、そうしよう。頼む」
ミスティとマイアが部屋に戻っていく。
二人の姿が見えなくなった後でアルージェがちらりと顔を出す。
「す、すごいものを見てしまった」
アルージェは胸に手を当てて胸の高まりを感じる。
「あんなに見せられたら、僕までドキドキしちゃうよ・・・」
持ってきた食事をテーブルに並べて、いつでも食べられる用意をする。
ソファーに腰掛け、先ほど見た光景を思い出す。
「おぉ、アルージェすまないな。もう食べる用意までしてくれているのか助かる」
部屋から着替え終わったミスティが出てきて、アルージェに声をかける。
「う、うわぁ!」
ミスティの声に驚きアルージェが飛び跳ねる。
胸を押さえながらミスティの方へ視線を移す。
「そんな驚かなくてもいいじゃないか。何か悪いことを考えていたのか?」
ミスティがアルージェの隣に座る。
いつもと何も変わらない光景だが、アルージェはミスティの唇に目が行ってしまう。
「ん?どうした?まだ具合が悪いのか?私はもう魔力をあげるのは無理だからエマを呼ぼうか?」
アルージェはエマの魔力がなくなり、ミスティが口移しでエマに魔力回復薬を飲ませている光景を想像してしまう。
「い、いや!大丈夫です!ほんと大丈夫なんで気にしないでくだしあ!」
ミスティは明らかに動揺しているアルージェを見て、「おかしなやつだなぁ」と言う。
「あはは・・・、食事にしましょう!冷めるとあれなんで!」
「そうだな、食事にしようか」
食事はいつもミスティと会話しながら食べるが、今日はミスティに視線を向けるのが恥ずかしくて下を向きながらご飯を食べた。
それから少しの間、アルージェはミスティに視線を向けられなかったのは言うまでもない。
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