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第三部 〜新たな力〜
第百三十一話
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数日が経った。
ミスティとエマは、毎日コルクス教授の元で新魔法体系を始める前の魔力操作の訓練をしている。
いつも帰ってくる頃には二人ともヘロヘロなので、かなり厳しく指導してもらっているんだろう。
ディビックさん率いる攻撃魔法研究会の皆さんも、ミスティさんとエマの二日遅れで新魔法体系を学び始めた。
満場一致で新魔法体系を学ぶことには賛成ではあったが、今までの努力が無駄になるのでいつからやるかの踏ん切りができない学生が数名いたらしい。
だが、その他生徒が背中を押したおかげで「皆と一緒に進む決意出来た」と、水色のキノコ頭の魔法使いが言っていた。
ディビックから言われたその日には、コルクス教授に攻撃魔法研究会の皆さんを紹介しにいた。
紹介に行った時のあの邪悪な笑顔は将来忘れられないだろう。
帰り際、コルクス教授に初めて「よくやった!」と褒められたが、皆には地獄への門を紹介してしまったかもしれない。
僕の方はと言うと、図書館にあった本でデゾルブ鉱石の性質やらは理解できたので今日から鍛冶場に向かう。
書物でどれだけ知識を身に着けたとしても実際に触った方が理解が深まるはずだ。
学園長から融通してもらったデゾルブ鉱石を使って実際に試作品を作ってみた。
「ぐぬぬ・・・」
とりあえず一番作りなれている形、剣に成形してみたが近くにあるだけで魔力を吸い取り続ける。
「これ形にしただけで体がだるい・・・」
試作として作ったデゾルブ鉱石の剣をアイテムボックスへ収納する。
「る、るーねぇ」
アルージェは弱弱しくルーネを呼ぶ。
いつもは鍛冶場の中に入ってアルージェの様子を見守っていたが、今日は入ってくる気配がなかった。
数秒後に扉が開いてルーネがキョロキョロと中の様子を伺いながら入ってくる。
「るーねぇ、こっちぃ」
アルージェは力も入らず、ぐでんと床に寝そべっていた。
「ワウッ!」
デゾルブ鉱石がないことを確認して、アルージェのそばに寄ってくる。
「ちょ、ちょっと今日は元気無くなったから寮に戻ろうかな・・・、連れて行ってくれない・・・?」
アルージェが寝そべりながらルーネに頼むと、ルーネはやれやれと首を振って背中に乗せてくれる。
「助かるよ。ルーネがいなかったら寮に戻ることもできなかったや」
アルージェはケラケラと笑いながら話す。
寝て起きたら魔力も回復してたので、翌日も懲りずにデゾルブ鉱石を触りに行く。
そして、昼過ぎにはルーネに寮につれて帰ってもらう。
「これめちゃくちゃ進捗悪いんだけど・・・、付与解除出来るもの作るのに一体何か月かかるの」
「ワウ」
寮のベッドでぶつぶつと言っているアルージェに対してルーネが首を傾げる。
「あぁ、ちょっと先行きが不安すぎて考えが声に出ちゃってたみたい。気にしないで!」
アルージェは布団をかけて、ミスティたちが戻ってくるまでの間仮眠を取る。
そんなこんなで一週間が経つ。
「ぜぇぜぇ・・・、何とか完成したけどこれは・・・」
真っ白な美しい刀身を持った剣がアルージェの手に握られていた。
形状は持ち手付近は横幅があるが、剣先に行くにつれて先細りしている。
「ちょ、ちょっとまって。ぜぇぜぇ・・・、ここから刻印やら付与やらするの?出来るの・・・?僕ならきっと出来るよね」
アルージェは自問自答する。
「あ、これダメだ。明日からにしよう。そうしよう。今日は無理だ」
アルージェは完成した剣をアイテムボックスに片付けて、ルーネを呼ぶ。
そしていつも通り背中に乗せられ寮に運ばれる。
「作るだけでこんなに厳しいなんてなぁ。ここから刻印と付与するのは本当に骨が折れそうだ」
言葉では嫌そうにしているが、表情はかなり嬉しそうに笑っている。
「そういえば魔道具とのパスを繋ぐ魔法も考えないといけないなぁ。この辺りはコルクス教授に助言を求めよう」
翌日
「昨日は剣が完成して戻ってきたけど、よく考えたら試し斬りしてないな。強度とか書物には記載がなかったけどどうなんだろ」
学園内で太めの木を見つけて、アイテムボックスから斧を取り出し伐採する。
「やってから気付いたけど、ここの木って伐採しても大丈夫なやつだよね・・・?まぁいいや!」
木を倒してアイテムボックスに収納、そして逃げるように鍛冶場に向かう。
「初めはグラウンドで試し斬りしようと思ったんだけど、デゾルブ鉱石出すのはさすがにまずいと思ったんだよ」
アルージェはルーネに木を切り倒した言い訳をする。
「ワウ・・・」
ルーネは自分に言われても困ると念を飛ばすが、アルージェは言い訳を続ける。
アイテムボックスに収納した木を取り出し、真っ白な刀身の剣を取り出す。
「うぐぐ・・・、やっぱり持つだけで魔力が持っていかれる・・・」
アルージェが剣を取り出した時、ルーネはいつの間に離れた場所まで移動して待機していた。
アルージェが木を剣で斬りつける。
何度も何度も斬りつけると剣が真っ二つに割れる。
「えぇ!?ちょっとまって!折れたんだけど!?剣折れたんだけど!?」
アルージェは地面に手を突き膝を突く。
「石のくせに木よりも弱いなんて・・・・。また作り直しか・・・」
一週間死ぬ気で作った剣がものの十分で折れてしまい、アルージェの心も折れそうになる。
「はぁ・・・、次は付与してからためそ・・・」
折れてしまった剣をアイテムボックスへ収納し、ルーネを呼ぶ。
「バウッ!」
剣が見当たらないので、すぐにルーネが寄ってくる。
「今日はちょっと心折れそうだから寮に戻ってゆっくりしようか」
アルージェは膝を突いたままルーネに話す。
ルーネはアルージェの様子から何か察したのか、ペロリとアルージェの顔を舐めて背中に乗せ寮に移動する。
アルージェは寮に戻ってから、ルーネをめちゃくちゃモフモフした。
ミスティとエマは、毎日コルクス教授の元で新魔法体系を始める前の魔力操作の訓練をしている。
いつも帰ってくる頃には二人ともヘロヘロなので、かなり厳しく指導してもらっているんだろう。
ディビックさん率いる攻撃魔法研究会の皆さんも、ミスティさんとエマの二日遅れで新魔法体系を学び始めた。
満場一致で新魔法体系を学ぶことには賛成ではあったが、今までの努力が無駄になるのでいつからやるかの踏ん切りができない学生が数名いたらしい。
だが、その他生徒が背中を押したおかげで「皆と一緒に進む決意出来た」と、水色のキノコ頭の魔法使いが言っていた。
ディビックから言われたその日には、コルクス教授に攻撃魔法研究会の皆さんを紹介しにいた。
紹介に行った時のあの邪悪な笑顔は将来忘れられないだろう。
帰り際、コルクス教授に初めて「よくやった!」と褒められたが、皆には地獄への門を紹介してしまったかもしれない。
僕の方はと言うと、図書館にあった本でデゾルブ鉱石の性質やらは理解できたので今日から鍛冶場に向かう。
書物でどれだけ知識を身に着けたとしても実際に触った方が理解が深まるはずだ。
学園長から融通してもらったデゾルブ鉱石を使って実際に試作品を作ってみた。
「ぐぬぬ・・・」
とりあえず一番作りなれている形、剣に成形してみたが近くにあるだけで魔力を吸い取り続ける。
「これ形にしただけで体がだるい・・・」
試作として作ったデゾルブ鉱石の剣をアイテムボックスへ収納する。
「る、るーねぇ」
アルージェは弱弱しくルーネを呼ぶ。
いつもは鍛冶場の中に入ってアルージェの様子を見守っていたが、今日は入ってくる気配がなかった。
数秒後に扉が開いてルーネがキョロキョロと中の様子を伺いながら入ってくる。
「るーねぇ、こっちぃ」
アルージェは力も入らず、ぐでんと床に寝そべっていた。
「ワウッ!」
デゾルブ鉱石がないことを確認して、アルージェのそばに寄ってくる。
「ちょ、ちょっと今日は元気無くなったから寮に戻ろうかな・・・、連れて行ってくれない・・・?」
アルージェが寝そべりながらルーネに頼むと、ルーネはやれやれと首を振って背中に乗せてくれる。
「助かるよ。ルーネがいなかったら寮に戻ることもできなかったや」
アルージェはケラケラと笑いながら話す。
寝て起きたら魔力も回復してたので、翌日も懲りずにデゾルブ鉱石を触りに行く。
そして、昼過ぎにはルーネに寮につれて帰ってもらう。
「これめちゃくちゃ進捗悪いんだけど・・・、付与解除出来るもの作るのに一体何か月かかるの」
「ワウ」
寮のベッドでぶつぶつと言っているアルージェに対してルーネが首を傾げる。
「あぁ、ちょっと先行きが不安すぎて考えが声に出ちゃってたみたい。気にしないで!」
アルージェは布団をかけて、ミスティたちが戻ってくるまでの間仮眠を取る。
そんなこんなで一週間が経つ。
「ぜぇぜぇ・・・、何とか完成したけどこれは・・・」
真っ白な美しい刀身を持った剣がアルージェの手に握られていた。
形状は持ち手付近は横幅があるが、剣先に行くにつれて先細りしている。
「ちょ、ちょっとまって。ぜぇぜぇ・・・、ここから刻印やら付与やらするの?出来るの・・・?僕ならきっと出来るよね」
アルージェは自問自答する。
「あ、これダメだ。明日からにしよう。そうしよう。今日は無理だ」
アルージェは完成した剣をアイテムボックスに片付けて、ルーネを呼ぶ。
そしていつも通り背中に乗せられ寮に運ばれる。
「作るだけでこんなに厳しいなんてなぁ。ここから刻印と付与するのは本当に骨が折れそうだ」
言葉では嫌そうにしているが、表情はかなり嬉しそうに笑っている。
「そういえば魔道具とのパスを繋ぐ魔法も考えないといけないなぁ。この辺りはコルクス教授に助言を求めよう」
翌日
「昨日は剣が完成して戻ってきたけど、よく考えたら試し斬りしてないな。強度とか書物には記載がなかったけどどうなんだろ」
学園内で太めの木を見つけて、アイテムボックスから斧を取り出し伐採する。
「やってから気付いたけど、ここの木って伐採しても大丈夫なやつだよね・・・?まぁいいや!」
木を倒してアイテムボックスに収納、そして逃げるように鍛冶場に向かう。
「初めはグラウンドで試し斬りしようと思ったんだけど、デゾルブ鉱石出すのはさすがにまずいと思ったんだよ」
アルージェはルーネに木を切り倒した言い訳をする。
「ワウ・・・」
ルーネは自分に言われても困ると念を飛ばすが、アルージェは言い訳を続ける。
アイテムボックスに収納した木を取り出し、真っ白な刀身の剣を取り出す。
「うぐぐ・・・、やっぱり持つだけで魔力が持っていかれる・・・」
アルージェが剣を取り出した時、ルーネはいつの間に離れた場所まで移動して待機していた。
アルージェが木を剣で斬りつける。
何度も何度も斬りつけると剣が真っ二つに割れる。
「えぇ!?ちょっとまって!折れたんだけど!?剣折れたんだけど!?」
アルージェは地面に手を突き膝を突く。
「石のくせに木よりも弱いなんて・・・・。また作り直しか・・・」
一週間死ぬ気で作った剣がものの十分で折れてしまい、アルージェの心も折れそうになる。
「はぁ・・・、次は付与してからためそ・・・」
折れてしまった剣をアイテムボックスへ収納し、ルーネを呼ぶ。
「バウッ!」
剣が見当たらないので、すぐにルーネが寄ってくる。
「今日はちょっと心折れそうだから寮に戻ってゆっくりしようか」
アルージェは膝を突いたままルーネに話す。
ルーネはアルージェの様子から何か察したのか、ペロリとアルージェの顔を舐めて背中に乗せ寮に移動する。
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