112 / 221
第三部 〜新たな力〜
第百十話
しおりを挟む
「席について。とっとと授業始めるわよ」
カレンは黒板の前に立ち、生徒と一通り見渡し皆の魔力周波数を識別する。
「今日からの子もいるのね、なんでこんな変な時期に、君名前は?」
カレンがアルージェ見て、「ん?」と声を出す。
「アルージェ!?君、ニツール村にいたアルージェでしょ!?」
カレンはアルージェに近寄ってくる。
「絶対そうだ。懐かしー、大きくなったね。私のこと覚えてる?」
「もちろんです!カレン教授!」
アルージェもまさか覚えてもらえていると思っておらず、嬉しさで元気に返事する。
「その様子だと、あの時の記憶とは決別できたのかな?それで、ラーニャとアインにはもう会った?」
「いやー、それが王都に来て、すぐに冒険者ギルドに顔を出したんですけど、今はいないと言われて。それからは魔法学校でずっと勉強してたので会えてないんです」
学生たちはカレンが、こうやって学生と話している光景を見たことがなかったので、皆アルージェにくぎ付けになっている。
「ちょっと、待ってくれアルージェ。まさかカレン教授と知り合いなのか?」
ミスティがアルージェとカレンの話に割って入る。
「あれ?言ってませんでしたっけ?カレン教授は僕の命の恩人ですよ。小さい時、ニツールで狼に襲われて死にそうになってるところを助けてもらいました。それに魔法学校への入学を進めてくれたのもカレン教授です」
「まぁ、助けたのは私っていうよりアインだけどね。それにしても私たちがいなかった時期って結構前ね、それまで何してたの?」
「コルクス教授に魔法を教えてもらってました!」
「えっ?あいつ人に魔法教えれるの?プププ、めっちゃ面白いんですけど」
カレンはアルージェの予想外の言葉に驚き、そして笑い始める。
「いやー、違うの。アルージェの言葉で笑ったんじゃなくて、あいつに弟子入り志願した人みんなすぐに逃げ出してきて、二度とコルクス教授とは会いたくないっていうのに、君よく耐えられるわね」
笑いすぎて出てきた涙を払いながらカレンが話す。
「厳しいですけど、しっかりと助言くれます!」
アルージェがそういうとカレンがさらに笑い出す。
「あの唐変木が助言だなんて想像できないわ、プププ」
カレンは笑わないように我慢するが、それでも笑いがこみあげてくる様子だ。
「はぁ、笑った笑った。そろそろ授業しないとね。アルージェはラーニャとアインに会いなさい。二人とも会いたがってたわよ。どこにいるかわからないなら、日付教えてくれたら私から話しとくから」
そういって黒板の前まで戻っていき授業が始まる。
カレンさんが教鞭を取る、旧体系の魔法を実際に見てみると旧魔法体系のすごさがわかる。
魔力さえあれば誰でも使用できる詠唱を考えた人は、素直にすごいと感じた。
だが、詠唱を唱えないければならない旧体系の発動の遅さに驚いた。
コルクス教授は新魔法体系で魔法を発動し、一瞬で何百という魔法陣を展開していたことを思い出す。
もしもあれを旧魔法体系で実現するなら、おそらく言葉をできるだけ強くしていく必要があるのだろう。
何も言わずとも自身の想像力と魔力だけであの光景を作れる新体系は本当にすごい。
この旧魔法体系の授業では魔法の種類を知るだけにしようと決める。
学生がみな詠唱をして、得意な属性のスピア系魔法を発動し、的に当てる。
「さて、ならアルージェも魔法使ってみて。コルクスがどんなこと教えてたのか気になるし」
「わかりました」
昨日コルクスからの許可もでたので早速新魔法体系で魔法を発動する。
詠唱はせず、魔力を操作して思い通りの形を作る。
そしてアルージェの周りには炎、氷、岩でできたスピア系魔法が並ぶ。
そのまま的に寸分の狂いなくすべてを命中させる。
この間わずか三秒ほどである。
「三秒くらいか、最近付与魔法ばっかりやってたからちょっと遅くなってる。コルクス教授に知れたら1000本ランスさせられるよ・・・」
アルージェはコルクスの顔を思い浮かべてブルブルと震える。
「あいつ何考えてんのよ、ふざけてる!」
カレンはコルクスに対して明らかに怒りを露にして体を震えさせていた。
「カレン教授!もう少し的当てしてもいいですか?」
アルージェは手を挙げてカレンに確認する。
「別にいいわよ、できるならね」
カレンは少しきつい口調になる。
まだコルクスへの怒りを収められていなかった。
魔力を直接操って、魔法を発動する。
それ自体はまぐれでできることもある。
詠唱をしたときに動く魔力と同じように魔力を動かせば発動するのだ。
それゆえに魔法使いの間では、もうどうしようもすることが出来ないときに、博打として使うものだという認識がある。
何度も連続で出すことはほぼ不可能なはずなのだが、アルージェは何度も何度も的に向かって、魔力を操作して魔法を放つ。
「あいつ、一体何を教えてるのよ・・・」
カレンはアルージェの魔法発動が失敗しないことを見て、次は呆れる。
「カレン教授、先ほどからアルージェ君は無詠唱で魔法を放っているように見えますが、我々にもできるのでしょうか」
アルージェの魔法を見た学生がカレンに尋ねる。
「はぁ、君たちはやめときなさい。今まで積み重ねたものを全部捨てる覚悟があるなら、やり方教えるけどね」
カレンはため息をついて学生にいうと、誰もやりたいとは言い出さなくなった。
アルージェは何度も何度もランス系魔法を出し、的に当ててを繰り返している。
今のところ一度も魔法行使を失敗した様子はない。
「はぁ、あの唐変木。もしアルージェが魔法使えなくなってたらどうするつもりよ。あそこまで魔力総量が多い子見たことなかったんだからね」
カレンは頭を抱えながら、ため息を付き呟く。
だがカレンは少し考えてから
「魔力総量があそこまであって無詠唱で休みなく魔法を行使するおかしいやつ、戦いたくないわ・・・。まさかこれを見越して!?そんなわけないか。どうせ研究対象とか言ってニヤニヤしながら面白半分でしたんでしょうね」
コルクスがそこまで考えているとは思わなかったので、気持ちを切り替えて授業に戻る。
カレンは黒板の前に立ち、生徒と一通り見渡し皆の魔力周波数を識別する。
「今日からの子もいるのね、なんでこんな変な時期に、君名前は?」
カレンがアルージェ見て、「ん?」と声を出す。
「アルージェ!?君、ニツール村にいたアルージェでしょ!?」
カレンはアルージェに近寄ってくる。
「絶対そうだ。懐かしー、大きくなったね。私のこと覚えてる?」
「もちろんです!カレン教授!」
アルージェもまさか覚えてもらえていると思っておらず、嬉しさで元気に返事する。
「その様子だと、あの時の記憶とは決別できたのかな?それで、ラーニャとアインにはもう会った?」
「いやー、それが王都に来て、すぐに冒険者ギルドに顔を出したんですけど、今はいないと言われて。それからは魔法学校でずっと勉強してたので会えてないんです」
学生たちはカレンが、こうやって学生と話している光景を見たことがなかったので、皆アルージェにくぎ付けになっている。
「ちょっと、待ってくれアルージェ。まさかカレン教授と知り合いなのか?」
ミスティがアルージェとカレンの話に割って入る。
「あれ?言ってませんでしたっけ?カレン教授は僕の命の恩人ですよ。小さい時、ニツールで狼に襲われて死にそうになってるところを助けてもらいました。それに魔法学校への入学を進めてくれたのもカレン教授です」
「まぁ、助けたのは私っていうよりアインだけどね。それにしても私たちがいなかった時期って結構前ね、それまで何してたの?」
「コルクス教授に魔法を教えてもらってました!」
「えっ?あいつ人に魔法教えれるの?プププ、めっちゃ面白いんですけど」
カレンはアルージェの予想外の言葉に驚き、そして笑い始める。
「いやー、違うの。アルージェの言葉で笑ったんじゃなくて、あいつに弟子入り志願した人みんなすぐに逃げ出してきて、二度とコルクス教授とは会いたくないっていうのに、君よく耐えられるわね」
笑いすぎて出てきた涙を払いながらカレンが話す。
「厳しいですけど、しっかりと助言くれます!」
アルージェがそういうとカレンがさらに笑い出す。
「あの唐変木が助言だなんて想像できないわ、プププ」
カレンは笑わないように我慢するが、それでも笑いがこみあげてくる様子だ。
「はぁ、笑った笑った。そろそろ授業しないとね。アルージェはラーニャとアインに会いなさい。二人とも会いたがってたわよ。どこにいるかわからないなら、日付教えてくれたら私から話しとくから」
そういって黒板の前まで戻っていき授業が始まる。
カレンさんが教鞭を取る、旧体系の魔法を実際に見てみると旧魔法体系のすごさがわかる。
魔力さえあれば誰でも使用できる詠唱を考えた人は、素直にすごいと感じた。
だが、詠唱を唱えないければならない旧体系の発動の遅さに驚いた。
コルクス教授は新魔法体系で魔法を発動し、一瞬で何百という魔法陣を展開していたことを思い出す。
もしもあれを旧魔法体系で実現するなら、おそらく言葉をできるだけ強くしていく必要があるのだろう。
何も言わずとも自身の想像力と魔力だけであの光景を作れる新体系は本当にすごい。
この旧魔法体系の授業では魔法の種類を知るだけにしようと決める。
学生がみな詠唱をして、得意な属性のスピア系魔法を発動し、的に当てる。
「さて、ならアルージェも魔法使ってみて。コルクスがどんなこと教えてたのか気になるし」
「わかりました」
昨日コルクスからの許可もでたので早速新魔法体系で魔法を発動する。
詠唱はせず、魔力を操作して思い通りの形を作る。
そしてアルージェの周りには炎、氷、岩でできたスピア系魔法が並ぶ。
そのまま的に寸分の狂いなくすべてを命中させる。
この間わずか三秒ほどである。
「三秒くらいか、最近付与魔法ばっかりやってたからちょっと遅くなってる。コルクス教授に知れたら1000本ランスさせられるよ・・・」
アルージェはコルクスの顔を思い浮かべてブルブルと震える。
「あいつ何考えてんのよ、ふざけてる!」
カレンはコルクスに対して明らかに怒りを露にして体を震えさせていた。
「カレン教授!もう少し的当てしてもいいですか?」
アルージェは手を挙げてカレンに確認する。
「別にいいわよ、できるならね」
カレンは少しきつい口調になる。
まだコルクスへの怒りを収められていなかった。
魔力を直接操って、魔法を発動する。
それ自体はまぐれでできることもある。
詠唱をしたときに動く魔力と同じように魔力を動かせば発動するのだ。
それゆえに魔法使いの間では、もうどうしようもすることが出来ないときに、博打として使うものだという認識がある。
何度も連続で出すことはほぼ不可能なはずなのだが、アルージェは何度も何度も的に向かって、魔力を操作して魔法を放つ。
「あいつ、一体何を教えてるのよ・・・」
カレンはアルージェの魔法発動が失敗しないことを見て、次は呆れる。
「カレン教授、先ほどからアルージェ君は無詠唱で魔法を放っているように見えますが、我々にもできるのでしょうか」
アルージェの魔法を見た学生がカレンに尋ねる。
「はぁ、君たちはやめときなさい。今まで積み重ねたものを全部捨てる覚悟があるなら、やり方教えるけどね」
カレンはため息をついて学生にいうと、誰もやりたいとは言い出さなくなった。
アルージェは何度も何度もランス系魔法を出し、的に当ててを繰り返している。
今のところ一度も魔法行使を失敗した様子はない。
「はぁ、あの唐変木。もしアルージェが魔法使えなくなってたらどうするつもりよ。あそこまで魔力総量が多い子見たことなかったんだからね」
カレンは頭を抱えながら、ため息を付き呟く。
だがカレンは少し考えてから
「魔力総量があそこまであって無詠唱で休みなく魔法を行使するおかしいやつ、戦いたくないわ・・・。まさかこれを見越して!?そんなわけないか。どうせ研究対象とか言ってニヤニヤしながら面白半分でしたんでしょうね」
コルクスがそこまで考えているとは思わなかったので、気持ちを切り替えて授業に戻る。
1
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる