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第三部 〜新たな力〜
第九十六話
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「コンナノミツケラレナイヨォォォ!!」
もうかれこれ二時間程、付与魔法の本棚を探しているアルージェが叫ぶ。
アルージェが叫ぶと、警備用であろう空を飛ぶ小型のゴーレムが何体も寄ってくる。
その中の一つのゴーレムから先ほどの受付の人の声が聞こえる。
「図書館では静かにしてください!」
「あっ、つい・・・、すいませんでした・・・」
アルージェが謝ると、「気を付けてください!」と言い残して、ゴーレム達はまた警備を始めた。
「はぁ、怒られちゃったよ・・・、とりあえず、探さないとね」
アルージェはキョロキョロと視線を移しながら本棚を確認していると、何かに弾き飛ばされる。
「うわっ」
後ろを歩いていたルーネに受け止めてもらい、ことなきを得る。
「す、す、すいません!」
前から女性の声が聞こえる。
アルージェは声がかかった方視線を向けると
三つ編みにしている、紫黒色の長い髪を揺らし女生徒が駆け寄ってくる。
「だ、だ、大丈夫ですか?」
銀縁眼鏡の奥にある透き通るような水色の瞳をキョロキョロと動かし、女生徒は慌ただしく話す。
「あぁ、大丈夫だよ、ごめんね、本を探してて前見てなかったから、えーと、怪我はない?」
アルージェが女性を見ると、女生徒は何も言わず、ただアルージェを見つめる。
「えーと・・・、何処か怪我しちゃった?」
アルージェが声を掛けるも、女生徒は反応がない。
その後もアルージェを数秒見つめてから、女生徒は「すごくきれい」と呟く。
「えっ?」
アルージェは思わず聞き返す。
「あっ、すいません、違うんです、本当にごめんなさい」
女生徒は何度も何度も頭を下げる。
「まぁ怪我なさそうでよかった。なら僕は本を探さないといけないから」
アルージェは女生徒に声を掛けて、立ち去ろうとすると、「ちょ、ちょっと待って」と女生徒に引き留められる。
「あ、あの、な、な、何の本を探してるんですか!?」
明らかにこの距離で人に質問する時に出す声量ではない。
「えーと、付与魔法応用の本なんだけどね、ちょっと訳あって授業に出れないからさ」
アルージェはまた注意されるんじゃないかと、ドギマギしながらそう言うと、女生徒は「付与魔法、付与魔法」と少し考える。
「お、お、思い出しました、こ、こ、こっちにあります!」
そういって、進み始める。
アルージェは当てもないので、女生徒の後をついていく。
少し歩いたところで止まり、アルージェの方をに体を向けて。
「こ、こ、この辺りに、ふよ、付与魔法の本、集まってます!」
アルージェが本棚に視線を向けると、
"付与魔法の基礎"、"よく分かる付与魔法"、"オークでも分かる付与魔法"、"付与魔法と魔道具"、"ゴーレムの作り方"などの基礎の本がまず目に映る。
「おぉ、付与魔法の本だ!」
アルージェは付与魔法の本を、ようやく見つけて喜びが溢れる。
そして、少し横の棚には"応用付与魔法"、”付与魔法の可能性"、"魔道具応用"、"ゴーレム使役と付与魔法の関係性"などの応用が書かれていそうな本が並び、
更にその隣には"俺の付与魔法"、"付与魔法と肉体強化"、"僕の考えた最強の付与魔法"、"簡易付与魔法"、"軟体ゴーレムのススメ"など変わり種もあった。
思っているより付与魔法は応用が効くようだ。
「あはは、変わり種の応用魔法は独特なものが多いね」
アルージェは一通り見渡して女生徒の方に戻る。
「ありがとね!助かったよ!えーと?」
女生徒の名前を聞いていなかったので、アルージェは言葉に詰まる。
アルージェの意図が分からず、女生徒は首を傾げる。
名前を答えてくれそうにないので、「名前なんていうの?」アルージェが確認する。
女生徒はようやく理解したようで「あっ」と言葉が漏れる。
「え、エマって言います。は、派閥には所属していません!」
エマの自己紹介を聞き、アルージェも名乗り返す。
「僕はアルージェ、僕も派閥には入ってないんだ。これから図書館にはよく顔を出すと思う。よろしくね!」
アルージェは握手の為に右手を前に出す。
「あっ、よ、よ、よろしくお願いします」
エマは頭を下げるだけで、握手には応じなかった。
握手されなかった右手を、恥ずかしくなって何もなかったかのように戻す。
「それにしてもすごいね、何処になんの本があるか分かるんだ。図書館にはよく来るの?」
それを誤魔化すかのようにアルージェは尋ねる。
「す、すいません、わ、私はここで」
そういって、立ち去ってしまう。
「あらら、久々にミスティさん達以外と話したから、距離感、間違えちゃったかな?」
アルージェはルーネに確認するがルーネは「クゥン」といって首を傾げる。
「あはは、ルーネも分かんないよね!さて、せっかく教えてもらったし、勉強しようかな」
そういって、付与魔法の本を何冊か手に取り、近くにあった机に置いて勉強を始める。
「よく考えたら、ノートとか何も持ってないから書き写しできないじゃん。今日は軽めにして、帰ったらミスティさんにどうしたらいいか相談しよう、そうしよう」
もうかれこれ二時間程、付与魔法の本棚を探しているアルージェが叫ぶ。
アルージェが叫ぶと、警備用であろう空を飛ぶ小型のゴーレムが何体も寄ってくる。
その中の一つのゴーレムから先ほどの受付の人の声が聞こえる。
「図書館では静かにしてください!」
「あっ、つい・・・、すいませんでした・・・」
アルージェが謝ると、「気を付けてください!」と言い残して、ゴーレム達はまた警備を始めた。
「はぁ、怒られちゃったよ・・・、とりあえず、探さないとね」
アルージェはキョロキョロと視線を移しながら本棚を確認していると、何かに弾き飛ばされる。
「うわっ」
後ろを歩いていたルーネに受け止めてもらい、ことなきを得る。
「す、す、すいません!」
前から女性の声が聞こえる。
アルージェは声がかかった方視線を向けると
三つ編みにしている、紫黒色の長い髪を揺らし女生徒が駆け寄ってくる。
「だ、だ、大丈夫ですか?」
銀縁眼鏡の奥にある透き通るような水色の瞳をキョロキョロと動かし、女生徒は慌ただしく話す。
「あぁ、大丈夫だよ、ごめんね、本を探してて前見てなかったから、えーと、怪我はない?」
アルージェが女性を見ると、女生徒は何も言わず、ただアルージェを見つめる。
「えーと・・・、何処か怪我しちゃった?」
アルージェが声を掛けるも、女生徒は反応がない。
その後もアルージェを数秒見つめてから、女生徒は「すごくきれい」と呟く。
「えっ?」
アルージェは思わず聞き返す。
「あっ、すいません、違うんです、本当にごめんなさい」
女生徒は何度も何度も頭を下げる。
「まぁ怪我なさそうでよかった。なら僕は本を探さないといけないから」
アルージェは女生徒に声を掛けて、立ち去ろうとすると、「ちょ、ちょっと待って」と女生徒に引き留められる。
「あ、あの、な、な、何の本を探してるんですか!?」
明らかにこの距離で人に質問する時に出す声量ではない。
「えーと、付与魔法応用の本なんだけどね、ちょっと訳あって授業に出れないからさ」
アルージェはまた注意されるんじゃないかと、ドギマギしながらそう言うと、女生徒は「付与魔法、付与魔法」と少し考える。
「お、お、思い出しました、こ、こ、こっちにあります!」
そういって、進み始める。
アルージェは当てもないので、女生徒の後をついていく。
少し歩いたところで止まり、アルージェの方をに体を向けて。
「こ、こ、この辺りに、ふよ、付与魔法の本、集まってます!」
アルージェが本棚に視線を向けると、
"付与魔法の基礎"、"よく分かる付与魔法"、"オークでも分かる付与魔法"、"付与魔法と魔道具"、"ゴーレムの作り方"などの基礎の本がまず目に映る。
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アルージェは付与魔法の本を、ようやく見つけて喜びが溢れる。
そして、少し横の棚には"応用付与魔法"、”付与魔法の可能性"、"魔道具応用"、"ゴーレム使役と付与魔法の関係性"などの応用が書かれていそうな本が並び、
更にその隣には"俺の付与魔法"、"付与魔法と肉体強化"、"僕の考えた最強の付与魔法"、"簡易付与魔法"、"軟体ゴーレムのススメ"など変わり種もあった。
思っているより付与魔法は応用が効くようだ。
「あはは、変わり種の応用魔法は独特なものが多いね」
アルージェは一通り見渡して女生徒の方に戻る。
「ありがとね!助かったよ!えーと?」
女生徒の名前を聞いていなかったので、アルージェは言葉に詰まる。
アルージェの意図が分からず、女生徒は首を傾げる。
名前を答えてくれそうにないので、「名前なんていうの?」アルージェが確認する。
女生徒はようやく理解したようで「あっ」と言葉が漏れる。
「え、エマって言います。は、派閥には所属していません!」
エマの自己紹介を聞き、アルージェも名乗り返す。
「僕はアルージェ、僕も派閥には入ってないんだ。これから図書館にはよく顔を出すと思う。よろしくね!」
アルージェは握手の為に右手を前に出す。
「あっ、よ、よ、よろしくお願いします」
エマは頭を下げるだけで、握手には応じなかった。
握手されなかった右手を、恥ずかしくなって何もなかったかのように戻す。
「それにしてもすごいね、何処になんの本があるか分かるんだ。図書館にはよく来るの?」
それを誤魔化すかのようにアルージェは尋ねる。
「す、すいません、わ、私はここで」
そういって、立ち去ってしまう。
「あらら、久々にミスティさん達以外と話したから、距離感、間違えちゃったかな?」
アルージェはルーネに確認するがルーネは「クゥン」といって首を傾げる。
「あはは、ルーネも分かんないよね!さて、せっかく教えてもらったし、勉強しようかな」
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