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第三部 〜新たな力〜
第九十四話
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「戻りましたー」
部屋に到着し、出入り口付近で"ただいま"代わりの言葉を声に出す。
まだミスティさん達は戻ってきていないのか返事はない。
「ミスティさんはまだ戻ってないんだ、授業かな?」
念の為にミスティさん達の部屋を、ノックして中を確認するが誰もいなかった。
「僕ミスティさんと結構長いこと一緒に居るけど、ミスティさん達がどこにいるのか知らないな」
自分の事で精いっぱいでミスティ達に気配り出来ていなかったことを実感する。
ため息をついてルーネに励まされていると、ガチャリと扉が開く音がする。
「ん?扉が開いているぞ、マイア今朝は閉めたよな?」
「はい、戸締りの確認は抜かりなくしております」
マイアはミスティの問いに即答する。
「なるほどアルージェ達がこの時間に帰ってくることはないから、知らない誰かということか。マイア構えろ。まだ中にいるかもしれん」
ミスティがマイアに指示するとマイアは金砕棒をアイテムボックスから取り出す。
「あっ!おかえりミステイさん!マイアさん!」
音がしたのでひょっこりと部屋からアルージェが顔を出す。
「むっ、アルージェなのか?」
アルージェが出てきて少し拍子抜けするミスティとマイア。
「はい、アルージェですけど?居たらまずかったですか?」
「いや、そんなことはない。ただいつもより帰りが早かったから、少し驚いただけだ」
構えを解いて武器を鞘にしまう。
「いやー、それが教授にもう教えることはないって言われちゃって、追い出されちゃったんですよねー」
アルージェは、「あはは」と笑う。
「それはなかなか難儀だな」
口ではそう言っているが、ミスティの顔は少し嬉しそうである。
「な、なら!これからは一緒に授業を受けられるのか?」
絶対に喜びを顔に出すまいとしているが、少し声が跳ねる。
「あぁ、人前で魔法を使うなと言われていて、授業は無理かもしれません」
「むぅ、そうか」
先ほどよりも明らかに声のトーンが下がる。
「あっ、でも、図書館で付与魔法の勉強しようと思うので、街に遊びに行ったりは出来るようになります!」
「ほんとか!うんうん、そうかそうか、フフフ」
ミスティはニマニマと喜びが顔に出て、声のトーンも明らかに上がっていた。
「上げて落として上げてと、巧みな精神攻撃。アルージェさん恐るべし」
マイアは誰にも聞こえないように呟く。
「バウッ」
だが、ルーネには聞こえていたようでルーネは相槌をする。
「なら、早速今日は一緒にご飯でも行きません?場所は食堂ですけど」
アルージェはお腹が空いたのでミスティへ提案する。
「そ、そうだな、食堂に行くとしよう、図書館はどこにあるのか知っているのか?」
ミスティは気を利かせてアルージェに確認する。
「あっ!知らないんです!だから今日は早めに戻ってきたんですよ!」
「おぉ、そうか!食堂からそう遠くないし案内しよう」
「ミスティさん!ありがとうございます!んじゃ、早く行きましょう!僕お腹ペコペコで」
アルージェはそそくさと出入り口に向かう。
その後に追従してミスティ、ルーネ、マイアも部屋を出る。
食堂に向かう道中にある施設をミスティが説明してくれた。
「この学園、何でもあるんですね」
「そうだな、もはや一つの都市といっても過言ではない、あ、そこの大きい建物が図書館だ」
「あれが・・・、かなり大きいですね」
建物自体は円形で地球で言うならドームとか球場になっていそうな形だ。
「あの建物には特別な魔法が掛かっていて、中に入ればあれよりもさらに広い空間になっていたぞ」
「えぇ、もうなんでも有りじゃん・・・」
「魔法を学んでみて思ったのだが、根源を覗くためにはどれだけ長生きしても足りない気がしたよ。魔法使いが皆、声を揃えて不老不死を求める理由が分かったよ」
「あはは、ミスティさんは何を専攻してるんですか?」
「あぁ、私はマナスポットの研究をしようかと思っている。あの声が言ったように、本当に他世界というやつにも興味があるしな」
「他世界・・・やっぱり、この世界は嫌いですか?」
幼い頃の苦痛や、トラウマはそう簡単に消えるものではない。
ミスティはまだこの世界を憎んでいるのかと考えた。
「ん?嫌いなわけないだろ、世界はこんなに楽しいとアルージェが教えてくれたんじゃないか」
「僕ですか?」
特に何をしたわけでもなく心当たりがないので首を傾げる。
「人並の生活が出来る、それだけで私は楽しいさ、それに今最高に幸せなんだ」
自身の長くなっている横の髪を右手でかき上げて、耳に引っ掛ける。
「学校で授業を受けて、私にも友達が出来た。誰かとワイワイと話しながら食事が出来た。マイアとも家族みたいに楽しく話すことが出来るようになった。それに・・・」
ミスティは頬を赤く染める。
「それに?」
言葉が途切れたのでアルージェはミスティの方へ視線を向ける。
「な、内緒だ!こっちみるな馬鹿者!」
ミスティは顔が熱くなっているのを感じて、アルージェから顔を背ける。
「えぇ、いきなりなんですか!」
アルージェは突然怒られたので、意味が分からなかった。
「はぁ、あそこまで鈍感だとミスティ様も大変そうです」
マイアが二人の様子を後ろから見て呟く。
「バウ」
ルーネもマイアの言葉に同意し、相槌を打つ。
部屋に到着し、出入り口付近で"ただいま"代わりの言葉を声に出す。
まだミスティさん達は戻ってきていないのか返事はない。
「ミスティさんはまだ戻ってないんだ、授業かな?」
念の為にミスティさん達の部屋を、ノックして中を確認するが誰もいなかった。
「僕ミスティさんと結構長いこと一緒に居るけど、ミスティさん達がどこにいるのか知らないな」
自分の事で精いっぱいでミスティ達に気配り出来ていなかったことを実感する。
ため息をついてルーネに励まされていると、ガチャリと扉が開く音がする。
「ん?扉が開いているぞ、マイア今朝は閉めたよな?」
「はい、戸締りの確認は抜かりなくしております」
マイアはミスティの問いに即答する。
「なるほどアルージェ達がこの時間に帰ってくることはないから、知らない誰かということか。マイア構えろ。まだ中にいるかもしれん」
ミスティがマイアに指示するとマイアは金砕棒をアイテムボックスから取り出す。
「あっ!おかえりミステイさん!マイアさん!」
音がしたのでひょっこりと部屋からアルージェが顔を出す。
「むっ、アルージェなのか?」
アルージェが出てきて少し拍子抜けするミスティとマイア。
「はい、アルージェですけど?居たらまずかったですか?」
「いや、そんなことはない。ただいつもより帰りが早かったから、少し驚いただけだ」
構えを解いて武器を鞘にしまう。
「いやー、それが教授にもう教えることはないって言われちゃって、追い出されちゃったんですよねー」
アルージェは、「あはは」と笑う。
「それはなかなか難儀だな」
口ではそう言っているが、ミスティの顔は少し嬉しそうである。
「な、なら!これからは一緒に授業を受けられるのか?」
絶対に喜びを顔に出すまいとしているが、少し声が跳ねる。
「あぁ、人前で魔法を使うなと言われていて、授業は無理かもしれません」
「むぅ、そうか」
先ほどよりも明らかに声のトーンが下がる。
「あっ、でも、図書館で付与魔法の勉強しようと思うので、街に遊びに行ったりは出来るようになります!」
「ほんとか!うんうん、そうかそうか、フフフ」
ミスティはニマニマと喜びが顔に出て、声のトーンも明らかに上がっていた。
「上げて落として上げてと、巧みな精神攻撃。アルージェさん恐るべし」
マイアは誰にも聞こえないように呟く。
「バウッ」
だが、ルーネには聞こえていたようでルーネは相槌をする。
「なら、早速今日は一緒にご飯でも行きません?場所は食堂ですけど」
アルージェはお腹が空いたのでミスティへ提案する。
「そ、そうだな、食堂に行くとしよう、図書館はどこにあるのか知っているのか?」
ミスティは気を利かせてアルージェに確認する。
「あっ!知らないんです!だから今日は早めに戻ってきたんですよ!」
「おぉ、そうか!食堂からそう遠くないし案内しよう」
「ミスティさん!ありがとうございます!んじゃ、早く行きましょう!僕お腹ペコペコで」
アルージェはそそくさと出入り口に向かう。
その後に追従してミスティ、ルーネ、マイアも部屋を出る。
食堂に向かう道中にある施設をミスティが説明してくれた。
「この学園、何でもあるんですね」
「そうだな、もはや一つの都市といっても過言ではない、あ、そこの大きい建物が図書館だ」
「あれが・・・、かなり大きいですね」
建物自体は円形で地球で言うならドームとか球場になっていそうな形だ。
「あの建物には特別な魔法が掛かっていて、中に入ればあれよりもさらに広い空間になっていたぞ」
「えぇ、もうなんでも有りじゃん・・・」
「魔法を学んでみて思ったのだが、根源を覗くためにはどれだけ長生きしても足りない気がしたよ。魔法使いが皆、声を揃えて不老不死を求める理由が分かったよ」
「あはは、ミスティさんは何を専攻してるんですか?」
「あぁ、私はマナスポットの研究をしようかと思っている。あの声が言ったように、本当に他世界というやつにも興味があるしな」
「他世界・・・やっぱり、この世界は嫌いですか?」
幼い頃の苦痛や、トラウマはそう簡単に消えるものではない。
ミスティはまだこの世界を憎んでいるのかと考えた。
「ん?嫌いなわけないだろ、世界はこんなに楽しいとアルージェが教えてくれたんじゃないか」
「僕ですか?」
特に何をしたわけでもなく心当たりがないので首を傾げる。
「人並の生活が出来る、それだけで私は楽しいさ、それに今最高に幸せなんだ」
自身の長くなっている横の髪を右手でかき上げて、耳に引っ掛ける。
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ミスティは頬を赤く染める。
「それに?」
言葉が途切れたのでアルージェはミスティの方へ視線を向ける。
「な、内緒だ!こっちみるな馬鹿者!」
ミスティは顔が熱くなっているのを感じて、アルージェから顔を背ける。
「えぇ、いきなりなんですか!」
アルージェは突然怒られたので、意味が分からなかった。
「はぁ、あそこまで鈍感だとミスティ様も大変そうです」
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