Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
96 / 221
第三部 〜新たな力〜

第九十四話

しおりを挟む
「戻りましたー」

部屋に到着し、出入り口付近で"ただいま"代わりの言葉を声に出す。
まだミスティさん達は戻ってきていないのか返事はない。

「ミスティさんはまだ戻ってないんだ、授業かな?」
念の為にミスティさん達の部屋を、ノックして中を確認するが誰もいなかった。

「僕ミスティさんと結構長いこと一緒に居るけど、ミスティさん達がどこにいるのか知らないな」
自分の事で精いっぱいでミスティ達に気配り出来ていなかったことを実感する。

ため息をついてルーネに励まされていると、ガチャリと扉が開く音がする。

「ん?扉が開いているぞ、マイア今朝は閉めたよな?」
「はい、戸締りの確認は抜かりなくしております」
マイアはミスティの問いに即答する。

「なるほどアルージェ達がこの時間に帰ってくることはないから、知らない誰かということか。マイア構えろ。まだ中にいるかもしれん」
ミスティがマイアに指示するとマイアは金砕棒をアイテムボックスから取り出す。

「あっ!おかえりミステイさん!マイアさん!」
音がしたのでひょっこりと部屋からアルージェが顔を出す。

「むっ、アルージェなのか?」
アルージェが出てきて少し拍子抜けするミスティとマイア。

「はい、アルージェですけど?居たらまずかったですか?」

「いや、そんなことはない。ただいつもより帰りが早かったから、少し驚いただけだ」
構えを解いて武器を鞘にしまう。

「いやー、それが教授にもう教えることはないって言われちゃって、追い出されちゃったんですよねー」
アルージェは、「あはは」と笑う。

「それはなかなか難儀だな」
口ではそう言っているが、ミスティの顔は少し嬉しそうである。

「な、なら!これからは一緒に授業を受けられるのか?」
絶対に喜びを顔に出すまいとしているが、少し声が跳ねる。

「あぁ、人前で魔法を使うなと言われていて、授業は無理かもしれません」

「むぅ、そうか」
先ほどよりも明らかに声のトーンが下がる。

「あっ、でも、図書館で付与魔法の勉強しようと思うので、街に遊びに行ったりは出来るようになります!」

「ほんとか!うんうん、そうかそうか、フフフ」
ミスティはニマニマと喜びが顔に出て、声のトーンも明らかに上がっていた。

「上げて落として上げてと、巧みな精神攻撃。アルージェさん恐るべし」
マイアは誰にも聞こえないように呟く。

「バウッ」
だが、ルーネには聞こえていたようでルーネは相槌をする。

「なら、早速今日は一緒にご飯でも行きません?場所は食堂ですけど」
アルージェはお腹が空いたのでミスティへ提案する。

「そ、そうだな、食堂に行くとしよう、図書館はどこにあるのか知っているのか?」
ミスティは気を利かせてアルージェに確認する。

「あっ!知らないんです!だから今日は早めに戻ってきたんですよ!」

「おぉ、そうか!食堂からそう遠くないし案内しよう」

「ミスティさん!ありがとうございます!んじゃ、早く行きましょう!僕お腹ペコペコで」
アルージェはそそくさと出入り口に向かう。

その後に追従してミスティ、ルーネ、マイアも部屋を出る。

食堂に向かう道中にある施設をミスティが説明してくれた。
「この学園、何でもあるんですね」

「そうだな、もはや一つの都市といっても過言ではない、あ、そこの大きい建物が図書館だ」

「あれが・・・、かなり大きいですね」
建物自体は円形で地球で言うならドームとか球場になっていそうな形だ。

「あの建物には特別な魔法が掛かっていて、中に入ればあれよりもさらに広い空間になっていたぞ」

「えぇ、もうなんでも有りじゃん・・・」

「魔法を学んでみて思ったのだが、根源を覗くためにはどれだけ長生きしても足りない気がしたよ。魔法使いが皆、声を揃えて不老不死を求める理由が分かったよ」

「あはは、ミスティさんは何を専攻してるんですか?」

「あぁ、私はマナスポットの研究をしようかと思っている。あの声が言ったように、本当に他世界というやつにも興味があるしな」

「他世界・・・やっぱり、この世界は嫌いですか?」
幼い頃の苦痛や、トラウマはそう簡単に消えるものではない。
ミスティはまだこの世界を憎んでいるのかと考えた。

「ん?嫌いなわけないだろ、世界はこんなに楽しいとアルージェが教えてくれたんじゃないか」

「僕ですか?」
特に何をしたわけでもなく心当たりがないので首を傾げる。

「人並の生活が出来る、それだけで私は楽しいさ、それに今最高に幸せなんだ」
自身の長くなっている横の髪を右手でかき上げて、耳に引っ掛ける。

「学校で授業を受けて、私にも友達が出来た。誰かとワイワイと話しながら食事が出来た。マイアとも家族みたいに楽しく話すことが出来るようになった。それに・・・」
ミスティは頬を赤く染める。

「それに?」
言葉が途切れたのでアルージェはミスティの方へ視線を向ける。

「な、内緒だ!こっちみるな馬鹿者!」
ミスティは顔が熱くなっているのを感じて、アルージェから顔を背ける。

「えぇ、いきなりなんですか!」
アルージェは突然怒られたので、意味が分からなかった。

「はぁ、あそこまで鈍感だとミスティ様も大変そうです」
マイアが二人の様子を後ろから見て呟く。

「バウ」
ルーネもマイアの言葉に同意し、相槌を打つ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...