Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
95 / 221
第三部 〜新たな力〜

第九十三話

しおりを挟む
教授からの指導が終わり部屋に戻ると、いつも通りミスティさんは紅茶を飲んで優雅に過ごしていたが、
いつもと雰囲気が違った。

「あぁ、アルージェか何も言わずに一日外泊とはなかなかにいいご身分だな」

「あっ・・・」

--------------------

あれから3か月

後でマイアさんにこそっと聞いた話なのだが、ミスティさんは本当に心配していたらしく、
夜は寝ずにアルージェ達の帰りを待ち、翌日の授業も全て休んで何かあってもすぐに対応できるように待ってくれていたらしい。

それを聞いて、僕はシェリーの帰りをずっと待っていたあの時を思い出した。
あんな思い、親しい人にさせるもんじゃないと思って、もしも外泊する場合はどこに泊まるかなどを細かく報告すると約束した。

魔法についてはミッチリと修練を重ねた結果、新体系魔法の魔法は戦闘時に使えるレベルに
付与魔法は鉄の武器にでも三つの効果を付与できるようになっていた。

また、初めに教えてもらっていた、付与の方法の四つのうち
魔玉を使った方法以外の三つ

『物自体に魔力刻印を施し、魔力を注ぐことで効果を付与させる』

『物の性質を一時的に変化させて効果を付与する』

『効果を持った魔力を物に馴染ませて効果を付与する』

全てを実践レベルで使えるになった。

手持ちの薄い水色の鉱石ミスリルを混ぜて作ったものと誕生日に貰った特別な剣以外には、
汎用性の高い「耐久力増加」「鋭利化」の付与魔法が施されている。
槍などは投擲した際のことを考えて「貫通力増加」も付与しているので

基本は二つで状況に応じて追加で付与できるような状態にしている。

『物の性質を一時的に変化させて効果を付与する』については、
そこら辺に落ちているどんな武器でも瞬時に付与施せるように練習したので、
即席で「鋭利化」や炎を纏わせる「炎属性付与」なんかも可能だ。

炎属性付与については、あまりに高温にしすぎると鉄が柔らかくなり、
武器としてまともに機能しなくなるのできっと炎に強い鉱石なんかに付与するのだろうが、
いかんせん鉱石についてはほぼ知識がないので、単なる想像に過ぎない。

「なるほど鉄素材に三つの効果を付与できるようになったか、ならもう俺が教えられることはない、さっさと出ていけ」
コルクスがアルージェに告げる。

「えっ、でも新体系魔法は・・・」

「あほか、瞬時に魔法を出せるだけで十分だ、俺の仮説が正しかったと証明されたわけだしな」

「でも、まだ教授から学びたいことが・・・」

「俺が教えられることはもうない、新体系の魔法は想像力でどうとでも変化させられるし、付与魔法はもう俺の上をいってる、他に何を教えてほしいってんだ?」

「えーと・・・」
アルージェは言葉に詰まる。

「無いようだな、ならさっさと出てけ」

「で、でもこれからどうやって学んだら!」
そうアルージェはコルクスから学ぶ以外に学ぶ方法を知らないのだ。
何せ学校に入学してすぐにマンツーマンでここまでコルクスに教わったのだから。

「あぁ?んなもん図書館にでも行けばいいだろ、幾万と知識が蓄えられてる、どっかの派閥に入って誰かに聞くのもいいだろう、あっでもそうだ、お前は人前で魔法をまだ使えないのか、俺が許可を出してねぇから」

「ならもう許可を・・・!」

「いや、だめだ、まだ検証結果をまとめて学会に提出してねぇ、学会に提出したら、また連絡するからそれまでは大人しく図書館で勉強してろ」

「そ、そんな殺生な」
ついに人目があるところでも魔法を使える許可をもらえると思っていたが、まだ駄目だと聞いてがっかりする。

「まぁ、そういうことだ、俺は研究資料と検証結果まとめるからさっさとでていけよ」
コルクスはさっと振り返り、シッシと手を払う動作をして、いつもの研究机に戻っていく。

「ガキの子守からもようやく解放だ。やっと、研究結果をまとめる時間ができる」
とアルージェに聞こえる声でわざと呟く。

「はぁ、教授も、もう何も教えてくれなさそうだし、図書館探そうか、ルーネ」
がっくりと肩を落として、ルーネに声をかけてトボトボとコルクスの研究室を出る。

コルクスはその様子をちらりと見て、すぐに研究資料に目線を戻し続きをまとめ始める。

「ねぇ、ルーネ図書館ってどこあるかわかる?」
アルージェは魔法学校に入学して以来、コルクスの部屋と鍛冶場、自分の部屋を行き来していただけなので、
魔法学校の敷地内に何があるのかを全く把握していていないのである。

右も左もわからないまま、放り出された気分だった。

「バウゥ?」
ルーネも基本的にはアルージェと一緒に過ごしていたので、
さすがに図書館の場所を把握していていなかった。

「ならさ、今日はもう夕方だし部屋に帰って、ミスティさん達に場所聞いてみようよ、ミスティさんはきっと僕と違って普通に学生生活を送ってるはずだし」
本来であれば、一年目は全方向に広く浅くの授業を受けていき、
二年三年と年を重ねて、派閥に入ったり、課外学習に精を出したりと方向性を決めてより専門的な知識を学んでいくのが定石である。

アルージェの提案にルーネも「ワウ」と同意する。

ルーネの同意が得られたのでルーネに跨り、部屋に戻る。

「なんか僕ってすごい歪な形で成長してる気がするなぁ、まぁ楽しいからいいけど」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...