Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
77 / 221
第三部 〜新たな力〜

第七十五話

しおりを挟む
「はぁ、他のも綺麗にしてあげたかったなぁ」
アルージェは人だかりが出来て作業できなくなってしまったので、

ミスティさん達と武器屋を後にして、市場を進む。

「なぁ少年、聞いてもいいか?」
ミスティが声をかける。

「ん?なんですか?」

「少年は鍛冶屋なのか?」

「何言ってるんですか、僕は店持ってませんよ」

「いや、そういう意味ではなくて、いや私のきき方が悪かった、本職は鍛冶屋なのか?」

「本職?一応冒険者ですけど・・・」

「だが、ただの冒険者に人だかりができるほどの鍛冶の技能はないだろ?」

「あれ?そういえばミスティさんには言ってなかったでしたっけ?
僕が生まれた村にはすごい鍛冶屋がいたんですよ、その人が僕の師匠なんですけどね、すごく”可愛がって”育ててくれたので、鍛冶得意なんですよ、ミスティさんと戦った時に使っていた武器なんて全部僕のお手製ですからね!」

「全部・・・?」

「全部は嘘言いました」

「そうだよな、さすがに驚いた」

「弓は狩人の先生に貰って、最後に使った剣は二本とも誕生日にもらったので、その他ですね」

「それはほぼ全部なのでは!?」

「そうですね!あの後全部手入れするの大変でしたよほんと!作り直したやつもあるんですから!」

「そ、そうか」

「あっ、せっかくなのでミスティさんマイアさんにも何か作りましょう?」

「ありがたい申し出だが、私はこの短剣があるからなぁ」

「あぁ、あの短剣超えるのは今の僕には難しそうです・・・すいません」

「私も申し出はうれしいのですが、アルージェ様に作成してもらうほどの武器ではないですので」

「ふと、思ったんですけどマイアさんの得物ってなんなんですか?」

「そうでした、あの犬とは戦いましたが、アルージェ様はあの犬のせいで進まれてしまいましたもんね、こういうのです」
そういってアイテムボックスからどでかい鉄塊が出される。

「か、金砕棒・・・・、マイアさん渋すぎです」

「魔法学校でもお話しましたが、私は少し変わった体質で、これくらいなら」
金砕棒を軽々振り回す。

「このように皆様が木の枝を振るくらいの感覚で振り回せますので」

「す、すごい・・・、そんなに力があるなら、僕がいつか作りたいと思ってる武器があるのでそれを使ってほしいです!」

「もちろん、アルージェ様に喜んでいただけるなら使います」

「うぉー!ありがとうございます!作りたいとは思ってたんですけど誰も使えないだろって思ってやめてたんですよ!作ったとしても今の僕だとアイテムボックスに入れるのも無理そうだったんで!」
そういってアルージェはマイアの手を取り握手してブンブンと上下に振り回す。

「いただけるのを楽しみにしてますね」

「ん?そんな力があったのにルーネはどうやってマイアさん止めたの・・・?」

「バウッ!」
ルーネはお座りの状態で誇らしそうに胸を張る。


「あの犬ころにはだまし討ちで負けてしまいましたので、実際は私のほうが強いです」
マイアがそういうとルーネはニヤリと笑って、マイアを挑発しているような顔で見る。

「くそが」
マイアがボソと呟く。

「あははは」
いつものことだがアルージェからは乾いた笑いが出る。

「そこの者たち!!!」
不意に声を掛けられる。

皆が声のほうを振り向くとずんぐりむっくりした男性が立っていた。

「喧嘩はよくないよ!これでも食べて落ち着いて!」
そういって男性はほかほかの饅頭みたいなものを皿に盛りつけて出してくる。

「えっ?あぁ、ありがとうございます」
アルージェがなんの疑いもなく手を出そうとするとミスティが止める。

「お、おい、毒でも入ってたらどうするんだ!」

「毒!?そんなことあるんですか!?」

ミスティがアルージェを止めている横からルーネが出てきて、
饅頭の匂いを嗅ぎを一つ食べる。

「バウ!」

「おぉありがとうわんちゃん!おいしいかい?毒なんてそんなものは入れないさ!僕は崇高な錬金術師だからね」
そういって皿に置いた饅頭を一つ手に取り食べる。

「うん、我ながら最高の出来だ、おいしいから食べてみてよ!」

「おぉ!ならもらおうかな!」
アルージェも一つ手に取り頬張る。

「中からはちみつ??いやシロップ・・・これはホットケーキみたいな味だ!」

「ふふふ、おいしいだろ!ほら、お姉さん達も食べてよ!」

「む、むぅ、アルージェもおいしそうに食べているしせっかくだからいただくか」
ミスティも一つ手に取り、口に運ぶ。

「う、うまい!マイアも食べてみろ!」

「では、いただきます」
マイアも一つ手に取り食べる分だけちぎって口に運ぶ。

「こ、これはふっくらした柔らかな生地、中からあふれ出る甘いシロップが生地に染み込んでいて、生地だけ千切って食べても伝わってきます!ハムッ」
次は千切らずにかぶりつく。

「はしたなくついかぶりついてしまいしたが、こうすることで中に入っているシロップと生地を一度に味わうことができて、さらに甘さが際立つということですね、ミスティ様この食べ物なかなかに奥が深いです!」
マイアがミスティを見るとミスティは少し驚いた顔でマイアを見ていた。

「あっ、コホン失礼しました、少しはしゃぎすぎてしまいました」

「いや、構わないさ、むしろそういう一面があるのだと今まで知らなかった、私がどれほどこの世界を見ようとしていなかったのか思い知らされたよ」
ミスティは嬉しそうにする一方で、自身がどれだけ自分のことしか考えていなかったのかと表情が暗くなる。

「えい!」
ずんぐりむっくりの自称錬金術師がミスティの口に饅頭を詰め込む。

「ウワ、プッ!?」
ミスティは急に口に饅頭を入れられて驚く。

「この崇高なる錬金術師が作り出したものを食べながらそんな顔するなんて許さないよ!ほら笑うんだ!」

「わ、わかったから私が悪かったよ、それにしても本当においしいな」
ミスティは口に入れられた饅頭を食べながら話す。

「これは私が考案した、蒸し饅頭さ!おいしいだろう!そうだろう!もっと褒めたたえてくれ!」

「ねぇ、本当に錬金術師なの?」
アルージェが気になって聞く。

「あぁ!そうさ!僕は崇高なる錬金術師のペポル!そしてこれが相棒のフェンリル」
そういって、背負っていた鉄製のフライパンを見せるペポル。

「ここまでしても未だ到達できぬ錬金術の高みに日々僕は挑んでいるのさ」

「料理人では・・・?」

「料理人!?何をいう!こうしてただの粉からこのモチモチの食感を作り出すんだ錬金術師といわずなんという!」

「あははは、そうかもしれないね・・・・」

「わかってもらえて何よりだ!僕はこのあたりで屋台をやっているからね、暇なときは是非とも食べにきてほしい、そして感じるんだ、僕がどれほどまでに偉大なのかをね、それでは!また会おう!」
そういって、高笑いしながら颯爽とペポル去っていった。

「なかなかに個性的な人だったね、王都ってすごいな、料理人だと思ってたんだけど錬金術師だって言い張るんだもんな」
アルージェがそういうと、

「あぁ、だが料理にはクセがなくて味のレベルは本当に高かったな、生まれて初めてあそこまでおいしいものを食べたかもしれん」
ミスティもアルージェの言葉に同意する。

「そうですね、私もつい饒舌になってしまいました」
マイアも続けて同意する。

「バウ!」
ルーネからはまだ食べたいと脳内に伝わってくる。

「そうだね、当分王都にいるんだし、余裕ができたら食べに行こうね」

その日の晩ご飯、不意に入ったレストランで食事を取り、確かにおいしかったのだが、
みなあの錬金術師の作り出したものが忘れられず、少しもやもやとした食事となってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...