Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

文字の大きさ
上 下
18 / 221
第一部 〜始まり〜

第十七話

しおりを挟む
アルージェは何が起きたのか、意味が分からずに辺りを見渡す。
少し離れたところに人影を発見する。

「大丈夫か!君!」
アルージェに近づこうとするバトルウルフを押しのけ、金髪碧眼の青年が近づいてきた。

青年はアルージェの傷の具合を少し見て、すぐに死ぬことはないと判断する。

「よく頑張った!後は任せてくれ!」
青年は残りのバトルウルフに目線を向け剣を構える。

「アイン、一人で突っ走りすぎ!」
青年はアインというようだ。
アインが通ってきた道から紫色髪で紫の目をした女性が小言を言いながら近づいてくる。
魔法使いだろうか、服装は軽装で手には木材で出来た杖の先端には大きな宝石がついている。

「そうですよ、アインさん一人だと危ないです」
更に魔法使いの後ろから金髪で緑の目をした女性が肩で息をしながら走ってくる。

この女性は聖職者だろうか。
魔法使いの女性と同じように杖を持っているが、木ではなく金属で作られている。

「すまない、カレン、ラーニャ!でも俺が急いだから少年を助けられた!」
アインは襲い掛かってくるバトルウルフの攻撃を全て持っていた盾で受け流す。
その後流れるように剣で反撃をして、バトルウルフを倒していく。

「僕、大丈夫?」
ラーニャと呼ばれていた聖職者のような女性が笑顔で話しかけてきた。

「あっ、えっと、その・・・」
アルージェはアインと呼ばれた青年の剣筋、盾捌きが気になる。
そちらをつい目線で追ってしまう。

「アインが一人で戦ってるのが気になる?大丈夫。彼ね、ほんとに強いから!とりあえず、体ケガをしてるみたいだから治すね」
ラーニャは持っていた杖を前に出し、呪文詠唱を始める。

「癒しの光よ、彼のものに再生を『治療ヒール』」

ラーニャの杖に光が集まり、その光がアルージェを包み込む。
先程までボロボロになっていたアルージェの体は、傷が癒え立てるようにまで回復していた。

「えっ、これすごい・・・」
アルージェは傷が無くなったことに驚き、呟く。

「はい、これでもう大丈夫よ。ここでアインがバトルウルフを倒し終わるの見とこうね」
ラーニャはアルージェの手を取り、いつバトルウルフがアルージェを狙っても動けるようにしていた。

「アイン!魔法いつでも打てるわ。タイミング教えて!」
カレンと呼ばれていた魔法使いは、いつでも魔法を打てるように杖を構えていた。

「了解!5秒で離れるから、そこに魔法を頼む!」
アインはバトルウルフの攻撃を捌き、盾で殴りつけて動きを止めてから距離を取る。

「『二重詠唱デュアルマジック』 敵を貫き、飛び散れ潮煙『水の弾丸ウォーターバレット』」

カレンが詠唱すると途方もない数の水の粒がバトルウルフ達を襲い、次々とバトルウルフが倒れていく。

「さすがだなカレンの魔法は。とりあえず、こんなもんか」
アインは辺りを見渡して、追加で魔物がが来ないことを確認した。

「あ、あの」
アルージェがアインに声を掛ける。

「よく、生き延びていてくれた!」
アインはアルージェの頭に手を置いて微笑む。

「それにしても、こんな時間にこんなところに子供一人で来るのは感心しないな。何かあったのかい?」
村で何かあったのかもしれないと思い、アインはアルージェに確認する。

「あの、シェリーが森から帰ってきてなくて。それで、これを見つけて、血を辿ってきたらここに出て・・・」
アルージェは先程拾ったシェリーの服の切れ端をアインに見せる。

そういうとアインが受け取り服の切れ端にべったりと血が付いているのを確認する。
「なるほど・・・、わかった。ここからは俺たちに任せてくれ、だが今日はもう夜も遅くて探索は不可能だ。一旦村に帰ろう」

「はい・・・」
アルージェはこうしている間にもシェリーが生きていて、助けを求めているかもしれないと思った。
だが、視界が悪く明かりがなければ何も見えない。
そしてバトルウルフ相手に何もできなかったアルージェはアインの言うことを聞き、村に戻ることにした。

村に戻るまでラーニャはずっとアルージェの手を握ってくれていた。

アインとカレンはアルージェの気を少しでも紛らわせようと色々と話しかけてくれた。

名前、村で流行っている遊び、携えている剣の事、親は何をしているのか、そういう些細なことをアイン達はなるべく明るい口調でアルージェに聞いていた。
だがアルージェはシェリーを守れなかったという虚無感で、あまり話すことが出来なかった。

アイン達もその様子をなんとなく察していたが、子供にそんな顔をして欲しくないという思いで話を続けた。

そして村に到着した。

「村についたぞアルージェ!家はどこだ?きっと親が心配しているはずだ!早く顔を見せに行こうぜ!」
アルージェは頷き、家の方に案内した。

家に近付くとサーシャとフリードがアルージェ達に気付き、駆け寄ってきた。

「アルゥ!無事で良かった!本当に無事で良かった」
サーシャは涙を流しながらアルージェを力いっぱい抱きしめた。

「馬鹿野郎!なんで一人で行っちまうんだよ!どんだけ心配したと思ってるんだ!」
フリードは怒りながらもサーシャとアルージェを抱きしめて、涙を浮かべていた。

家族が落ち着くまでアイン達は少し距離を置いて、家族の再会を見守っていた。

「やっぱり、こういうのいいよな」
アインもその様子を見ながら、涙を流していた。

「なんであんたが泣いてんのよ」
アインを見ながらカレンは呆れる。

ラーニャは家族の再会を微笑みながら見ていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...