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第一部 〜始まり〜
第十七話
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アルージェは何が起きたのか、意味が分からずに辺りを見渡す。
少し離れたところに人影を発見する。
「大丈夫か!君!」
アルージェに近づこうとするバトルウルフを押しのけ、金髪碧眼の青年が近づいてきた。
青年はアルージェの傷の具合を少し見て、すぐに死ぬことはないと判断する。
「よく頑張った!後は任せてくれ!」
青年は残りのバトルウルフに目線を向け剣を構える。
「アイン、一人で突っ走りすぎ!」
青年はアインというようだ。
アインが通ってきた道から紫色髪で紫の目をした女性が小言を言いながら近づいてくる。
魔法使いだろうか、服装は軽装で手には木材で出来た杖の先端には大きな宝石がついている。
「そうですよ、アインさん一人だと危ないです」
更に魔法使いの後ろから金髪で緑の目をした女性が肩で息をしながら走ってくる。
この女性は聖職者だろうか。
魔法使いの女性と同じように杖を持っているが、木ではなく金属で作られている。
「すまない、カレン、ラーニャ!でも俺が急いだから少年を助けられた!」
アインは襲い掛かってくるバトルウルフの攻撃を全て持っていた盾で受け流す。
その後流れるように剣で反撃をして、バトルウルフを倒していく。
「僕、大丈夫?」
ラーニャと呼ばれていた聖職者のような女性が笑顔で話しかけてきた。
「あっ、えっと、その・・・」
アルージェはアインと呼ばれた青年の剣筋、盾捌きが気になる。
そちらをつい目線で追ってしまう。
「アインが一人で戦ってるのが気になる?大丈夫。彼ね、ほんとに強いから!とりあえず、体ケガをしてるみたいだから治すね」
ラーニャは持っていた杖を前に出し、呪文詠唱を始める。
「癒しの光よ、彼のものに再生を『治療』」
ラーニャの杖に光が集まり、その光がアルージェを包み込む。
先程までボロボロになっていたアルージェの体は、傷が癒え立てるようにまで回復していた。
「えっ、これすごい・・・」
アルージェは傷が無くなったことに驚き、呟く。
「はい、これでもう大丈夫よ。ここでアインがバトルウルフを倒し終わるの見とこうね」
ラーニャはアルージェの手を取り、いつバトルウルフがアルージェを狙っても動けるようにしていた。
「アイン!魔法いつでも打てるわ。タイミング教えて!」
カレンと呼ばれていた魔法使いは、いつでも魔法を打てるように杖を構えていた。
「了解!5秒で離れるから、そこに魔法を頼む!」
アインはバトルウルフの攻撃を捌き、盾で殴りつけて動きを止めてから距離を取る。
「『二重詠唱』 敵を貫き、飛び散れ潮煙『水の弾丸』」
カレンが詠唱すると途方もない数の水の粒がバトルウルフ達を襲い、次々とバトルウルフが倒れていく。
「さすがだなカレンの魔法は。とりあえず、こんなもんか」
アインは辺りを見渡して、追加で魔物がが来ないことを確認した。
「あ、あの」
アルージェがアインに声を掛ける。
「よく、生き延びていてくれた!」
アインはアルージェの頭に手を置いて微笑む。
「それにしても、こんな時間にこんなところに子供一人で来るのは感心しないな。何かあったのかい?」
村で何かあったのかもしれないと思い、アインはアルージェに確認する。
「あの、シェリーが森から帰ってきてなくて。それで、これを見つけて、血を辿ってきたらここに出て・・・」
アルージェは先程拾ったシェリーの服の切れ端をアインに見せる。
そういうとアインが受け取り服の切れ端にべったりと血が付いているのを確認する。
「なるほど・・・、わかった。ここからは俺たちに任せてくれ、だが今日はもう夜も遅くて探索は不可能だ。一旦村に帰ろう」
「はい・・・」
アルージェはこうしている間にもシェリーが生きていて、助けを求めているかもしれないと思った。
だが、視界が悪く明かりがなければ何も見えない。
そしてバトルウルフ相手に何もできなかったアルージェはアインの言うことを聞き、村に戻ることにした。
村に戻るまでラーニャはずっとアルージェの手を握ってくれていた。
アインとカレンはアルージェの気を少しでも紛らわせようと色々と話しかけてくれた。
名前、村で流行っている遊び、携えている剣の事、親は何をしているのか、そういう些細なことをアイン達はなるべく明るい口調でアルージェに聞いていた。
だがアルージェはシェリーを守れなかったという虚無感で、あまり話すことが出来なかった。
アイン達もその様子をなんとなく察していたが、子供にそんな顔をして欲しくないという思いで話を続けた。
そして村に到着した。
「村についたぞアルージェ!家はどこだ?きっと親が心配しているはずだ!早く顔を見せに行こうぜ!」
アルージェは頷き、家の方に案内した。
家に近付くとサーシャとフリードがアルージェ達に気付き、駆け寄ってきた。
「アルゥ!無事で良かった!本当に無事で良かった」
サーシャは涙を流しながらアルージェを力いっぱい抱きしめた。
「馬鹿野郎!なんで一人で行っちまうんだよ!どんだけ心配したと思ってるんだ!」
フリードは怒りながらもサーシャとアルージェを抱きしめて、涙を浮かべていた。
家族が落ち着くまでアイン達は少し距離を置いて、家族の再会を見守っていた。
「やっぱり、こういうのいいよな」
アインもその様子を見ながら、涙を流していた。
「なんであんたが泣いてんのよ」
アインを見ながらカレンは呆れる。
ラーニャは家族の再会を微笑みながら見ていた。
少し離れたところに人影を発見する。
「大丈夫か!君!」
アルージェに近づこうとするバトルウルフを押しのけ、金髪碧眼の青年が近づいてきた。
青年はアルージェの傷の具合を少し見て、すぐに死ぬことはないと判断する。
「よく頑張った!後は任せてくれ!」
青年は残りのバトルウルフに目線を向け剣を構える。
「アイン、一人で突っ走りすぎ!」
青年はアインというようだ。
アインが通ってきた道から紫色髪で紫の目をした女性が小言を言いながら近づいてくる。
魔法使いだろうか、服装は軽装で手には木材で出来た杖の先端には大きな宝石がついている。
「そうですよ、アインさん一人だと危ないです」
更に魔法使いの後ろから金髪で緑の目をした女性が肩で息をしながら走ってくる。
この女性は聖職者だろうか。
魔法使いの女性と同じように杖を持っているが、木ではなく金属で作られている。
「すまない、カレン、ラーニャ!でも俺が急いだから少年を助けられた!」
アインは襲い掛かってくるバトルウルフの攻撃を全て持っていた盾で受け流す。
その後流れるように剣で反撃をして、バトルウルフを倒していく。
「僕、大丈夫?」
ラーニャと呼ばれていた聖職者のような女性が笑顔で話しかけてきた。
「あっ、えっと、その・・・」
アルージェはアインと呼ばれた青年の剣筋、盾捌きが気になる。
そちらをつい目線で追ってしまう。
「アインが一人で戦ってるのが気になる?大丈夫。彼ね、ほんとに強いから!とりあえず、体ケガをしてるみたいだから治すね」
ラーニャは持っていた杖を前に出し、呪文詠唱を始める。
「癒しの光よ、彼のものに再生を『治療』」
ラーニャの杖に光が集まり、その光がアルージェを包み込む。
先程までボロボロになっていたアルージェの体は、傷が癒え立てるようにまで回復していた。
「えっ、これすごい・・・」
アルージェは傷が無くなったことに驚き、呟く。
「はい、これでもう大丈夫よ。ここでアインがバトルウルフを倒し終わるの見とこうね」
ラーニャはアルージェの手を取り、いつバトルウルフがアルージェを狙っても動けるようにしていた。
「アイン!魔法いつでも打てるわ。タイミング教えて!」
カレンと呼ばれていた魔法使いは、いつでも魔法を打てるように杖を構えていた。
「了解!5秒で離れるから、そこに魔法を頼む!」
アインはバトルウルフの攻撃を捌き、盾で殴りつけて動きを止めてから距離を取る。
「『二重詠唱』 敵を貫き、飛び散れ潮煙『水の弾丸』」
カレンが詠唱すると途方もない数の水の粒がバトルウルフ達を襲い、次々とバトルウルフが倒れていく。
「さすがだなカレンの魔法は。とりあえず、こんなもんか」
アインは辺りを見渡して、追加で魔物がが来ないことを確認した。
「あ、あの」
アルージェがアインに声を掛ける。
「よく、生き延びていてくれた!」
アインはアルージェの頭に手を置いて微笑む。
「それにしても、こんな時間にこんなところに子供一人で来るのは感心しないな。何かあったのかい?」
村で何かあったのかもしれないと思い、アインはアルージェに確認する。
「あの、シェリーが森から帰ってきてなくて。それで、これを見つけて、血を辿ってきたらここに出て・・・」
アルージェは先程拾ったシェリーの服の切れ端をアインに見せる。
そういうとアインが受け取り服の切れ端にべったりと血が付いているのを確認する。
「なるほど・・・、わかった。ここからは俺たちに任せてくれ、だが今日はもう夜も遅くて探索は不可能だ。一旦村に帰ろう」
「はい・・・」
アルージェはこうしている間にもシェリーが生きていて、助けを求めているかもしれないと思った。
だが、視界が悪く明かりがなければ何も見えない。
そしてバトルウルフ相手に何もできなかったアルージェはアインの言うことを聞き、村に戻ることにした。
村に戻るまでラーニャはずっとアルージェの手を握ってくれていた。
アインとカレンはアルージェの気を少しでも紛らわせようと色々と話しかけてくれた。
名前、村で流行っている遊び、携えている剣の事、親は何をしているのか、そういう些細なことをアイン達はなるべく明るい口調でアルージェに聞いていた。
だがアルージェはシェリーを守れなかったという虚無感で、あまり話すことが出来なかった。
アイン達もその様子をなんとなく察していたが、子供にそんな顔をして欲しくないという思いで話を続けた。
そして村に到着した。
「村についたぞアルージェ!家はどこだ?きっと親が心配しているはずだ!早く顔を見せに行こうぜ!」
アルージェは頷き、家の方に案内した。
家に近付くとサーシャとフリードがアルージェ達に気付き、駆け寄ってきた。
「アルゥ!無事で良かった!本当に無事で良かった」
サーシャは涙を流しながらアルージェを力いっぱい抱きしめた。
「馬鹿野郎!なんで一人で行っちまうんだよ!どんだけ心配したと思ってるんだ!」
フリードは怒りながらもサーシャとアルージェを抱きしめて、涙を浮かべていた。
家族が落ち着くまでアイン達は少し距離を置いて、家族の再会を見守っていた。
「やっぱり、こういうのいいよな」
アインもその様子を見ながら、涙を流していた。
「なんであんたが泣いてんのよ」
アインを見ながらカレンは呆れる。
ラーニャは家族の再会を微笑みながら見ていた。
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