3 / 12
ノンフィクション
しおりを挟む
※オメガバース
『xx日、〇〇区の路上で女子×学生が遺体で発見された事件について、今日午後3時頃、同区の交番に犯人を名乗る男が出頭しました。調べに対し男は「運命の番だと思った。運命の番なら相手も好きなはずだと思い襲ったのにベータだったため焦って殺してしまった」と供述しています』
【ノンフィクション】
第二の性なんてフィクションの世界ならいいのに。
健康診断のたびに、右上に書かれたΩのマークがチラついてため息が出る。負け組の遺伝子。忘れもしない、私がオメガと判明した日の、泣き崩れる両親の顔。なぜか二つ持たされる防犯ブザーと、可愛くない首輪は犬みたい。学校に一人や二人、オメガはいるけどベータの男子たちがたまに私を見てひそひそ話しているのを知っている。
「この首輪外せたらなぁ~」
「いや外しちゃダメでしょ」
首輪に指をかけてかちゃかちゃ鳴らす私に、ハルが突っ込んだ。
「でもさぁ、首輪があるからオメガってバレるんだよ? あるほうが危なくない?」
「えー……、そりゃ通りすがりのベータ相手ならいいだろうけどさ。アルファとか夏希がオメガって知ってる人相手ならやっぱあった方がいいって」
「……いいなぁ、ハルはベータで」
「リアクション困るっつの」
ハルに小突かれる。ハルは優しい。私なら、こんなリアクションに困る人間とは付き合いきれない。
「あっ、来週夏希の誕生日じゃん」
「そうだよ、なんかくれんの?」
「お揃いの首輪買いに行こうよ」
「オメガ用の首輪、オシャレ用とは違って高いよ」
ふっふっふ、とわざとらしく笑ってスマホを突き出してくる。オーダーメイドで首輪の装飾を作る店のホームページだった。その辺の店で買うのとは段違いに可愛い、フリルやレースがふんだんにあしらわれている。
「ここで飾り付けしてもらって、私は同じデザインの作ろうかなって。どう?」
「買ってくれんの?」
「来年期待してる」
こういうとき、バイトしてて良かったと思う。これは来年の誕生日プレゼント選びのハードルがぐんと高くなったが、嬉しいプレゼントだと思った。ハルってやっぱいい人だ。大事な友だちだと思ってくれてるんだろうなって思わせてくれる。
「じゃあ決まりだ! 今週末買いに行こ」
「うん、ありがとね」
「ふふ、来年期待してんのよ」
ハルがアルファだったら、私は狂っていたかもしれない。
首輪をかちゃかちゃ鳴らすのはクセになっていた。でも今日は、首輪に触れるとほんの少し心が踊った。
『xx日、〇〇区の路上で女子×学生が遺体で発見された事件について、今日午後3時頃、同区の交番に犯人を名乗る男が出頭しました。調べに対し男は「運命の番だと思った。運命の番なら相手も好きなはずだと思い襲ったのにベータだったため焦って殺してしまった」と供述しています』
【ノンフィクション】
第二の性なんてフィクションの世界ならいいのに。
健康診断のたびに、右上に書かれたΩのマークがチラついてため息が出る。負け組の遺伝子。忘れもしない、私がオメガと判明した日の、泣き崩れる両親の顔。なぜか二つ持たされる防犯ブザーと、可愛くない首輪は犬みたい。学校に一人や二人、オメガはいるけどベータの男子たちがたまに私を見てひそひそ話しているのを知っている。
「この首輪外せたらなぁ~」
「いや外しちゃダメでしょ」
首輪に指をかけてかちゃかちゃ鳴らす私に、ハルが突っ込んだ。
「でもさぁ、首輪があるからオメガってバレるんだよ? あるほうが危なくない?」
「えー……、そりゃ通りすがりのベータ相手ならいいだろうけどさ。アルファとか夏希がオメガって知ってる人相手ならやっぱあった方がいいって」
「……いいなぁ、ハルはベータで」
「リアクション困るっつの」
ハルに小突かれる。ハルは優しい。私なら、こんなリアクションに困る人間とは付き合いきれない。
「あっ、来週夏希の誕生日じゃん」
「そうだよ、なんかくれんの?」
「お揃いの首輪買いに行こうよ」
「オメガ用の首輪、オシャレ用とは違って高いよ」
ふっふっふ、とわざとらしく笑ってスマホを突き出してくる。オーダーメイドで首輪の装飾を作る店のホームページだった。その辺の店で買うのとは段違いに可愛い、フリルやレースがふんだんにあしらわれている。
「ここで飾り付けしてもらって、私は同じデザインの作ろうかなって。どう?」
「買ってくれんの?」
「来年期待してる」
こういうとき、バイトしてて良かったと思う。これは来年の誕生日プレゼント選びのハードルがぐんと高くなったが、嬉しいプレゼントだと思った。ハルってやっぱいい人だ。大事な友だちだと思ってくれてるんだろうなって思わせてくれる。
「じゃあ決まりだ! 今週末買いに行こ」
「うん、ありがとね」
「ふふ、来年期待してんのよ」
ハルがアルファだったら、私は狂っていたかもしれない。
首輪をかちゃかちゃ鳴らすのはクセになっていた。でも今日は、首輪に触れるとほんの少し心が踊った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる