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4.篝火夢幻
華摘み、華心中
しおりを挟む「保明様……あなた……」
冷えた首筋に食らいつくように唇を這わせる保明の、鍛え抜かれた硬い筋肉に覆われた背中に、仁介は絡みつくように両手を回した。
忍と命のやり取りをしている最中も、既に仁介自身は保明を求めていた。屹立して涙を流すその愛しい分身に、保明が何度も口づけをすると、仁介は堪えきれぬ様な婀娜な溜息を漏らす。
女に化ける訓練もし、閨房術も叩き込まれているはずの仁介だが、まるで不慣れな処女のように頬を染めて顔を背ける仕草がまた保明を煽り立てる。
そっと後門に指を這わすと、可愛らしい菊の花はしっとりと解れていた。
「仕方のない奴だ。初めから、私を待っていたのか」
「あなたに会える日は、いつも、こうなることを夢見て……砂の一粒程の望みでも……あ、ああ……」
女のような短い嬌声を上げて、仁介がやがて保明をその身の内に迎え入れた。
血の匂いが充満する能舞台、敷物のように広げられた友禅の上で、仁介は保明に激しく攻め立てられながら、愁眉を開き、涙を零した。
「このまま、私を壊して……あ、あ……あなたと繋がったまま、し、死にた、い……んあ」
保明に見下ろされたまま、仁介は背中を反らせてその細長い両足をしっかりと保明に絡み付けた。
「言うな……おまえは既に、私の、私の血肉だ、半身だ」
「嬉しい……」
全身を突き抜ける痛みは、保明が自分と繋がっている証、快楽は……兄弟を裏切って保明の愛を得ようとした貪欲な自分の罪の証……。
一度果てた保明を友禅の上に横たえ、まだ迸るままの雄々しい逸物を体から離し、仁介は四つん這いになって顔を埋め、その愛しいものを口に含んで清拭した。微塵も衰えを見せぬそれを、仁介は保明の上に馬乗りになって、静かに己の中に再び沈めた。
仰け反る仁介の細い首に朱が走る。
下から突き上げながら、保明がその細い首筋を片手で掴んだ。軽く締め上げると、仁介の赤い唇からまた少女の様な切ない喘ぎが漏れた。
「思う様哭け、悦い声を聞かせてくれ」
「や、保明さ……ま、あ、ん……んはぅ」
その音曲を聞きながら、保明は再び仁介の中で果てた。
兄にはもう会えぬ。
「いい……保明、さま!……ああっ、ん」
体が繋がったまま、さんざんに痴態を晒した仁介は、保明の胸に突っ伏した。
「ま、まだ、まだ足りませぬ」
「私もだ。到底、抱き足りぬ」
その細い体を、保明もしっかりと抱きしめたのだった。
兄にはもう、会えぬ。弟にも、二度と会えぬ……。
愛に狂ったこの身は、髪の毛の一本まで保明に捧げてしまった。
保明の汗の芳香に包まれながら、仁介は別れの涙を流していた……。
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