天穹は青く

梅林 冬実

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果て

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だからユカが事故死したと知って倒れ、そのまま病院に担ぎ込まれ、今も病室で朦朧としている姿を見せられ、ユカはかなり取り乱した。
「何でも安易に受け取りすぎなんだよ。君に叔父さんが悪戯してたこと、お母さんは知っていたでしょ?お祖母さんはきっと君の味方になってくれた。逃れる術はあったんだよ。ちゃんと」
八方塞りだと思い込んでいた。大人たちが自分を毛嫌いしていると決め付けていた。
「私がちゃんと話したら、お祖母ちゃん聞いてくれたかな」
独り言のように呟いてみる。その子は
「さぁね」
と素っ気ない。けれど
「試してもいないことを今になって考えたってさ。お祖母さんは君に『頼ってもらえなかった』ことを猛烈に悔やんでいるよ」
「子育てに痛烈に失敗して、拠り所は君だけだったんじゃないかな」
 初めて知る、祖母の横顔。関白主義の祖父に仕え、貞淑に慎ましく生きる人。争いごととは無縁の人。
・・・違ったの?だとするなら、母親のこと、叔父のこと。まとめて相談していたなら。
「お祖母ちゃん、あいつの本性知ってた?」
恐々声を絞り出す。その子は微かに頷いた。
「君に手を出すとは、考えていなかったようだけど」
 あの日、「娘がパンパンだなんて誰にも言えねー」と母親は嘲笑した。
「アソコを武器にするとはねぇ」
発作的に窓から飛び出した娘の背中を、母親は最後まで悪びれることなく侮辱した。
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