天穹は青く

梅林 冬実

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たっくん

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パッと右手を広げて叔父に差し出す。仕方なくといった感じで叔父がテーブルに置いていた財布から、数枚の一万円札を取り出した。
「もうちょっと弾みなよ。世話してもらったんでしょ?」
とユカを顎でしゃくり、叔父は更に2枚上乗せした。
えへへと笑う母親は上機嫌で、
「条件によっては貸してやってもいいよ。下手打つならママにチクる」
そう言い残し、ユカの手を引いて叔父宅を出た。もう叔父に会わなくて済むと、その時は思った。けれど親戚の集まりや慶弔事に、母親は必ずユカを連れた。
「ユカちゃん、たっくんに意地悪したね。いけない子だね。」
その度叔父に薄暗いどこかに連れて行かれ、嫌だと感じることをされる。けれどもう母親に言う気にはなれなかった。母親は叔父が金を渡せば自分を放置する。ユカはそれに気付いていた。だから叔父にされるがまま、時が過ぎるのを待つしか術がなかった。母親に告げて母親の許可を得た叔父に何かされるより、いくらかマシだと耐えたのだ。
叔父の要求はユカが成長を遂げるごとに汚らしいものへ変容していき、とうとう堪えられなくなった。小学3年生の夏、ユカは盆の入りの集まりに「行きたくない」と駄々をこねた。ごねるユカを無理やり連れて行くようなことを母親はしなくて、それならもっと早く断ればよかったと唇を噛んだものだ。
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