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問6 等速で進む線と線の交点をさぐれ
問6-4
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今日の目的、その一。
ミューミューと叩き台になるペア戦向けデッキの構築準備。
これに関しては二人とも素人だ。
まず大まかにどういうデッキがあるかという情報を集め、同時に自分たちに向いたスタイルを選定していかなければならない。
これは複数人でやった方がいいと昨日のうちに話してあったので、チョッキとミューミューの情報網からある程度絞り込んでもらっている。
チョッキはまだその情報を持ち帰ってきてはいないが、どうせ考えなければいけないことは山ほどあるので、先にミューミューと情報交換をしておく。
「結構あるなぁ」
「二人の組み合わせですから、シングルの2倍ではなく2乗……より多いですね」
彼女が選び出しためぼしい組み合わせだけで、40以上のデッキがあった。
「でも片方のデッキごとに似たもので仕分けすれば、ある程度はまとめられます。例えば……」
二人の間にある画面に映し出されたデッキリストには、「主砲型」と書かれていた。
「主砲型? ……うーわ。なーんの面白みもないレシピだなぁ……」
「でも、安定はしています」
「そりゃあこれならね」
内容は単純なもの。バランスよく近・中距離の攻撃が主体で、相手への干渉も無難なものが多い。常に腐らないカードでまとまっている。
「で、これが主砲って事は当然……」
「相方に多いリストはこれですね」
次に表示されたリストには「支援型」という名前がついていた。
「だよなぁ」
と言いたくなるほど、それも分かりやすく支援特化のデッキだった。目を引いたカードは数枚。
まぁまぁ強いが、特定の相手には効果が大きい攻撃カードだ。
つまり主砲型が無難に立ち回り、支援型が援護と主砲が使いにくい尖ったカードを使う感じか。
「教科書通りのデッキとでも言いますか。多分誰にでも扱えますが、それ故に強いです。違いと言えば、主砲型の攻撃がどこに重きを置いているか、何枚のスペルカードをデッキに入れているか。支援型が何を仮想敵としてカードを選んでいるのか、どう支援するか、というところでしょうか?」
「なるほどね。でも、これはいいや。凡百のデッキに手を出しても、それなりの結果が出せる、止まりでしょ」
「やはりそう考えますか」
「あと、ただただつまらない」
「ロマン砲のロの字もありませんからね」
「砲の字は入ってるけどね」
確かに、とクスクス笑ってくれた。
「あー! 師匠! 例え師匠といえど、玻璃猫様との過度なイチャイチャは禁止ですよ!」
急に横のテーブルの孤狼丸が話に入ってきた。
「いや、ただ話してただけなんだけど……」
「いいえ! ごまかされませんよ! それに、ペア戦のデッキの話なら僕にも参加させて下さい!」
「まだデッキどころか情報集めてるだけだよ。ってか孤狼丸はデッキ組めたの?」
「煮詰まりました! 後でアドバイス下さい!」
「あいよ、後でな」
横のテーブルを見ると、さっき来てたリーダーもいつのまにか戻っていて、前田さんと二人でこっちをチラチラ見ていた。
あー……まぁ、情報収集の段階なら別にいいか。
むしろ相談してみるべきだろう。
「じゃあ、ちょっとみんなで話ましょうか」
俺の提案に、二人も顔を輝かせた。彼らは間違いなく俺より年上だろうに、こういうところは子供っぽい。
テーブルを大きくしてもらい、5人で卓を囲う。
「そういえば、孤狼丸含め……皆さんのペア戦経験はどれくらいなんですか?」
「私はあまり……」
「僕もダンジョンすらペア経験は皆無です……」
「俺は何度かランク戦も行ってますなぁ」
おっと、前田さんはペアもランカーか。
「とはいえ、数戦なので下位もいいとこです! なかなか難しい戦場ですよ、あそこは」
「具体的には?」
ミューミューが真剣な顔で前田さんを見据える。
その顔に前田さんも少し姿勢を改め、ミューミューと向かい合った。
「ペア戦はですね、戦闘のカンが通じにくいんですよ」
「カン、ですか?」
「そうです。おそらくシングルランカーこそそれは顕著になるでしょうな。相手は二人だ。故に、隙が少ない」
なるほど。そりゃそうだ。
相手の目は4つ。どちらかに隙があっても、もう片方がフォロー出来る状態ならそれは隙では無くなる。
「シングルは、相手の隙を伺い、小さな手を当てていく戦いになりがちです。一方で、パーティ戦では隙なぞない。なので戦略がモノを言い、先に当たった大技が試合の流れを決定付けます」
シングルは小技。パーティは大技。だからと言ってペアは中技、という単純な事にはならないだろう。
「ペア戦は、二人の隙を同時につかなければならない分、それらより遥かに難しい。隙をつける方が勝つというより、隙を見せた方が負けることになります」
「だからこういうデッキになるんですね」
俺はテーブル中央に表示されたデッキを忌々しげに見上げた。
「そうですな。つまり俺の使ってる妙ちくりんなデッキでは勝てんのですよ」
「俺は好きですけどねぇ。前田さんのデッキ」
「ま、800位台の限界という事で笑ってごまかしてます。がはははは」
楽しい人だ。
「やはり練習出来る状況が作れて良かったです」
ミューミューが少し心配そうにうなだれた。
「おっと、気落ちするのは早いよミューミューさん」
「え?」
「そこに、俺らがぶっ込んでいこう。デッキを作るのを、まずは楽しまなきゃ」
俺の顔を驚いたように見つめる。
そして数度頷くと、彼女の顔つきは変わっていた。
「そう、ですね! 楽しみましょう! だって……」
「「ゲームですから!」」
被らせたった。
先読みされたミューミューが照れたように笑う。
「いちゃつき禁止」
孤狼丸に冷たく刺された。
前田さんとリーダーの視線が痛い。
ミューミューと叩き台になるペア戦向けデッキの構築準備。
これに関しては二人とも素人だ。
まず大まかにどういうデッキがあるかという情報を集め、同時に自分たちに向いたスタイルを選定していかなければならない。
これは複数人でやった方がいいと昨日のうちに話してあったので、チョッキとミューミューの情報網からある程度絞り込んでもらっている。
チョッキはまだその情報を持ち帰ってきてはいないが、どうせ考えなければいけないことは山ほどあるので、先にミューミューと情報交換をしておく。
「結構あるなぁ」
「二人の組み合わせですから、シングルの2倍ではなく2乗……より多いですね」
彼女が選び出しためぼしい組み合わせだけで、40以上のデッキがあった。
「でも片方のデッキごとに似たもので仕分けすれば、ある程度はまとめられます。例えば……」
二人の間にある画面に映し出されたデッキリストには、「主砲型」と書かれていた。
「主砲型? ……うーわ。なーんの面白みもないレシピだなぁ……」
「でも、安定はしています」
「そりゃあこれならね」
内容は単純なもの。バランスよく近・中距離の攻撃が主体で、相手への干渉も無難なものが多い。常に腐らないカードでまとまっている。
「で、これが主砲って事は当然……」
「相方に多いリストはこれですね」
次に表示されたリストには「支援型」という名前がついていた。
「だよなぁ」
と言いたくなるほど、それも分かりやすく支援特化のデッキだった。目を引いたカードは数枚。
まぁまぁ強いが、特定の相手には効果が大きい攻撃カードだ。
つまり主砲型が無難に立ち回り、支援型が援護と主砲が使いにくい尖ったカードを使う感じか。
「教科書通りのデッキとでも言いますか。多分誰にでも扱えますが、それ故に強いです。違いと言えば、主砲型の攻撃がどこに重きを置いているか、何枚のスペルカードをデッキに入れているか。支援型が何を仮想敵としてカードを選んでいるのか、どう支援するか、というところでしょうか?」
「なるほどね。でも、これはいいや。凡百のデッキに手を出しても、それなりの結果が出せる、止まりでしょ」
「やはりそう考えますか」
「あと、ただただつまらない」
「ロマン砲のロの字もありませんからね」
「砲の字は入ってるけどね」
確かに、とクスクス笑ってくれた。
「あー! 師匠! 例え師匠といえど、玻璃猫様との過度なイチャイチャは禁止ですよ!」
急に横のテーブルの孤狼丸が話に入ってきた。
「いや、ただ話してただけなんだけど……」
「いいえ! ごまかされませんよ! それに、ペア戦のデッキの話なら僕にも参加させて下さい!」
「まだデッキどころか情報集めてるだけだよ。ってか孤狼丸はデッキ組めたの?」
「煮詰まりました! 後でアドバイス下さい!」
「あいよ、後でな」
横のテーブルを見ると、さっき来てたリーダーもいつのまにか戻っていて、前田さんと二人でこっちをチラチラ見ていた。
あー……まぁ、情報収集の段階なら別にいいか。
むしろ相談してみるべきだろう。
「じゃあ、ちょっとみんなで話ましょうか」
俺の提案に、二人も顔を輝かせた。彼らは間違いなく俺より年上だろうに、こういうところは子供っぽい。
テーブルを大きくしてもらい、5人で卓を囲う。
「そういえば、孤狼丸含め……皆さんのペア戦経験はどれくらいなんですか?」
「私はあまり……」
「僕もダンジョンすらペア経験は皆無です……」
「俺は何度かランク戦も行ってますなぁ」
おっと、前田さんはペアもランカーか。
「とはいえ、数戦なので下位もいいとこです! なかなか難しい戦場ですよ、あそこは」
「具体的には?」
ミューミューが真剣な顔で前田さんを見据える。
その顔に前田さんも少し姿勢を改め、ミューミューと向かい合った。
「ペア戦はですね、戦闘のカンが通じにくいんですよ」
「カン、ですか?」
「そうです。おそらくシングルランカーこそそれは顕著になるでしょうな。相手は二人だ。故に、隙が少ない」
なるほど。そりゃそうだ。
相手の目は4つ。どちらかに隙があっても、もう片方がフォロー出来る状態ならそれは隙では無くなる。
「シングルは、相手の隙を伺い、小さな手を当てていく戦いになりがちです。一方で、パーティ戦では隙なぞない。なので戦略がモノを言い、先に当たった大技が試合の流れを決定付けます」
シングルは小技。パーティは大技。だからと言ってペアは中技、という単純な事にはならないだろう。
「ペア戦は、二人の隙を同時につかなければならない分、それらより遥かに難しい。隙をつける方が勝つというより、隙を見せた方が負けることになります」
「だからこういうデッキになるんですね」
俺はテーブル中央に表示されたデッキを忌々しげに見上げた。
「そうですな。つまり俺の使ってる妙ちくりんなデッキでは勝てんのですよ」
「俺は好きですけどねぇ。前田さんのデッキ」
「ま、800位台の限界という事で笑ってごまかしてます。がはははは」
楽しい人だ。
「やはり練習出来る状況が作れて良かったです」
ミューミューが少し心配そうにうなだれた。
「おっと、気落ちするのは早いよミューミューさん」
「え?」
「そこに、俺らがぶっ込んでいこう。デッキを作るのを、まずは楽しまなきゃ」
俺の顔を驚いたように見つめる。
そして数度頷くと、彼女の顔つきは変わっていた。
「そう、ですね! 楽しみましょう! だって……」
「「ゲームですから!」」
被らせたった。
先読みされたミューミューが照れたように笑う。
「いちゃつき禁止」
孤狼丸に冷たく刺された。
前田さんとリーダーの視線が痛い。
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