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問4 異なる2点間の距離を求めよ
答4-7
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俺は、視線だけで射殺そうとする孤狼丸と対峙していた。
「おわかり……いただけただろうか……」
精一杯ホラーっぽい言い方で場を和ませようとするが、無事空振った。
「はぁ……。その顔を見れば君の想像通りじゃなかった事は分かる。でも、これで俺は正々堂々とやってるって事も証明されたはず。……だから戦いを続けたいところなんだけど?」
孤狼丸からの返答は無い。仕方がないので俺は勝手に話を進める。
「こんなところから『じゃあ再開しましょう』って言ってもなかなか難しいだろうから、俺はとりあえずこの場を離れて島の北端までダッシュするわ。んで、待つ。一旦仕切り直して、残りのゲーム時間が20分を過ぎた時――ダマランチャガ山の噴火を目安に、動く」
カードのアクティブ化操作をしている様子もないし、この場は穏便に離れられそうだ。
「ま、君はどういうやり方をしてくれてもいいよ。今すぐ追いかけてくるなら迎え撃つし、北端に近寄る姿が見えても攻撃する。でも、またさっきみたいに隠れて準備するならご自由にどうぞ。俺が気づかない範囲なら好きにやってくれ。その方が力を発揮出来るだろうし。……いや、それはこっちの都合か」
座り込んでいた孤狼丸が、ゆっくり立ち上がった。
何かしゃべるつもりなのかと思いきや、特に何もせずやはり睨んでくるだけだ。
俺は諦めて行動を開始する。
「じゃ、いい試合を」
その場を離れようと反動をつけてくるっと幹の上に立った瞬間、彼がぼそっと口を開いた。
「え?」
「……ダマランチャガ山じゃねぇ、ダランマチャガ山だ」
「ははっ。ご指摘ありがとう。でも――」
俺は木の幹をバネのように弾ませ、大きくジャンプした。
「――ホントは『ダランマチャガざん』だぞー!」
そのまま【空画整理】でほいほいと足場を作って北を目指す。
さ、こっちも準備をしておきますか。
轟音に、大地が震えた。
光を通さぬ黒煙があっという間に空を覆うほどに膨れ上がり、第一波の噴石が地上に降り注ぐのが遠目にも見える。
あっという間に熱気が立ち込め、火山灰が辺りにちらちらと舞い始めた。
いやー、この光景、ちょっとトラウマだ。
この黒々と染まる大地を背景に、石造りの村に住む彼らは「ああ、洗濯物を仕舞わねば」程度の反応だった。
雑すぎない? その世界観。
AIが組み込まれているわけでもないNPCとゲーム世界に常識を求める方がおかしいかも知れないが、いくらなんでもまともな人間の生活の営みには見えない。
俺の狼狽もどこ吹く風。彼らはその状況下でも平気で「薬用石鹸を買ってきてくれ」と頼んで来やがる。
いい加減にしろ、と。
お前に必要なのは薬用石鹸じゃなくて常用してそうな精神に効くお薬じゃないのかと。
いやね、そりゃあダンジョン前に物資の補給も必要だし、ここにプレイヤーが立ち寄れる拠点があるべきだっていうのは分かる。
でもその村のクエストに必要な物資ががわざわざ本島に戻らなければ買えない物にさせるなよ、と。
「俺、この試合が終わったら運営に意見書送るんだ……」
よし、フラグ立ても終わった。
自分でフラグを立てている事を認識しながらあえてフラグを立てる奴は大丈夫理論だ。思い出すたび実行しているが、目に見える効果を感じたことはない。
俺は悪くなった視界の中で目を凝らして孤狼丸を探すが、案の定彼の姿は見つからなかった。
未だお互いライフの変動はなし。全力で楽しもう。
もう見くびらない。油断もしない。ただ彼を倒すことだけを考えれば良い。
こんな風に思うだなんて、自分でも意外だ。
より強い相手を求める戦闘狂。精神性で言ったらスーパーな野菜ネームの方々と同じなんじゃないか?
――それも俺。楽しんでるのも俺。今からロマン砲の準備をするのも俺。
がんばりまっしょい。
まずは襲い来る脅威への準備をしよう。そろそろ第二波の噴石が来る。
かなりの上空まで吹き上がっていた小粒の噴石は、ここまで飛んでくるのだ。
高速で降り注ぐそれらは一発一発が弾丸のような速度を持ち、馬鹿にならないダメージを与える。
でもね、これも「安置」があるんですねぇ。
ひょいひょいと安置から安置へ進む。安置の目印はフィールドが多少変動しようが全く同じ。
既に地面に転がっている噴石のオブジェクト上には降らない、だ。
噴石同士の衝突は演算が増えすぎてしまうからか、ちょっとしたプログラム上の工夫が見える。地面にめり込む分には影響が少なそうだもんな。
おかげさまで、石から石へ飛び移るときにルートを遮りそうな噴石だけに気を配れば問題はない。
バスン、バスンと洒落にならない音を立てて地面をえぐる噴石の雨の中、俺の気分は「矢の方が避けていく」でお馴染み、アレクサンドロス大王だ。
「知識なしではスキルは発揮できない。スキルなしでは力は生み出せない。力なしでは知識は応用できない」
彼の名言を口にしながら南進していると、右手側からチカッと何かが光るのが見えた。
光は俺の頬をかすめると、背後の岩肌に当たり派手な火花のエフェクトを散らした。
来たな?
だよな。分かってる奴ならここで来るに決まってる。
俺は【脚火】をアクティブ化させ、降り注ぐ噴石から手頃な大きさのものを選び、蹴り飛ばす。
よし、だいたい狙い通りの場所に飛んでいった。
光の発生源近くで石は爆発し、着弾地点に小さなクレーターを作った。
ちょうど良く第二波の噴石の雨が収まった。
一気に距離を詰めると、俺は待ち伏せしているであろう孤狼丸と【忍犬衆】を押しつぶすため、手頃な石を踏み台に大きく跳ねる。
空中で【鳴神:玖】をアクティブ化し、両手を頭上に伸ばし雲を「溜める」。
さらに【空中跳躍】で高く飛び上がり、5mほどの位置から大きく手を振り下ろした。
それは同時にアクティブ化させた【濁流の垂下】の起動アクションでもあり、溜め中の【鳴神:玖】の発射アクションでもあった。
濁流が一帯を飲み込み、標的が視認できていない【玖】の雲は地上近くで雷撃を放った。
バヂンッ! と強烈な音が鼓膜を揺らす。
溢れた水分を伝って電撃が走り、姿の見えぬ孤狼丸のライフは大きく削れた。
研究結果。
起動アクションの重ね打ちは無効だが、カードの起動アクションと、「発射アクション」は別基準のためか、同じ動作でもそれぞれが同時に条件を満たす。
つまり、両手を振り下ろす動作1回で「電流撃」のお手軽コンボ!
お手軽過ぎてとてもロマン砲とは呼べない代物さ!
「おわかり……いただけただろうか……」
精一杯ホラーっぽい言い方で場を和ませようとするが、無事空振った。
「はぁ……。その顔を見れば君の想像通りじゃなかった事は分かる。でも、これで俺は正々堂々とやってるって事も証明されたはず。……だから戦いを続けたいところなんだけど?」
孤狼丸からの返答は無い。仕方がないので俺は勝手に話を進める。
「こんなところから『じゃあ再開しましょう』って言ってもなかなか難しいだろうから、俺はとりあえずこの場を離れて島の北端までダッシュするわ。んで、待つ。一旦仕切り直して、残りのゲーム時間が20分を過ぎた時――ダマランチャガ山の噴火を目安に、動く」
カードのアクティブ化操作をしている様子もないし、この場は穏便に離れられそうだ。
「ま、君はどういうやり方をしてくれてもいいよ。今すぐ追いかけてくるなら迎え撃つし、北端に近寄る姿が見えても攻撃する。でも、またさっきみたいに隠れて準備するならご自由にどうぞ。俺が気づかない範囲なら好きにやってくれ。その方が力を発揮出来るだろうし。……いや、それはこっちの都合か」
座り込んでいた孤狼丸が、ゆっくり立ち上がった。
何かしゃべるつもりなのかと思いきや、特に何もせずやはり睨んでくるだけだ。
俺は諦めて行動を開始する。
「じゃ、いい試合を」
その場を離れようと反動をつけてくるっと幹の上に立った瞬間、彼がぼそっと口を開いた。
「え?」
「……ダマランチャガ山じゃねぇ、ダランマチャガ山だ」
「ははっ。ご指摘ありがとう。でも――」
俺は木の幹をバネのように弾ませ、大きくジャンプした。
「――ホントは『ダランマチャガざん』だぞー!」
そのまま【空画整理】でほいほいと足場を作って北を目指す。
さ、こっちも準備をしておきますか。
轟音に、大地が震えた。
光を通さぬ黒煙があっという間に空を覆うほどに膨れ上がり、第一波の噴石が地上に降り注ぐのが遠目にも見える。
あっという間に熱気が立ち込め、火山灰が辺りにちらちらと舞い始めた。
いやー、この光景、ちょっとトラウマだ。
この黒々と染まる大地を背景に、石造りの村に住む彼らは「ああ、洗濯物を仕舞わねば」程度の反応だった。
雑すぎない? その世界観。
AIが組み込まれているわけでもないNPCとゲーム世界に常識を求める方がおかしいかも知れないが、いくらなんでもまともな人間の生活の営みには見えない。
俺の狼狽もどこ吹く風。彼らはその状況下でも平気で「薬用石鹸を買ってきてくれ」と頼んで来やがる。
いい加減にしろ、と。
お前に必要なのは薬用石鹸じゃなくて常用してそうな精神に効くお薬じゃないのかと。
いやね、そりゃあダンジョン前に物資の補給も必要だし、ここにプレイヤーが立ち寄れる拠点があるべきだっていうのは分かる。
でもその村のクエストに必要な物資ががわざわざ本島に戻らなければ買えない物にさせるなよ、と。
「俺、この試合が終わったら運営に意見書送るんだ……」
よし、フラグ立ても終わった。
自分でフラグを立てている事を認識しながらあえてフラグを立てる奴は大丈夫理論だ。思い出すたび実行しているが、目に見える効果を感じたことはない。
俺は悪くなった視界の中で目を凝らして孤狼丸を探すが、案の定彼の姿は見つからなかった。
未だお互いライフの変動はなし。全力で楽しもう。
もう見くびらない。油断もしない。ただ彼を倒すことだけを考えれば良い。
こんな風に思うだなんて、自分でも意外だ。
より強い相手を求める戦闘狂。精神性で言ったらスーパーな野菜ネームの方々と同じなんじゃないか?
――それも俺。楽しんでるのも俺。今からロマン砲の準備をするのも俺。
がんばりまっしょい。
まずは襲い来る脅威への準備をしよう。そろそろ第二波の噴石が来る。
かなりの上空まで吹き上がっていた小粒の噴石は、ここまで飛んでくるのだ。
高速で降り注ぐそれらは一発一発が弾丸のような速度を持ち、馬鹿にならないダメージを与える。
でもね、これも「安置」があるんですねぇ。
ひょいひょいと安置から安置へ進む。安置の目印はフィールドが多少変動しようが全く同じ。
既に地面に転がっている噴石のオブジェクト上には降らない、だ。
噴石同士の衝突は演算が増えすぎてしまうからか、ちょっとしたプログラム上の工夫が見える。地面にめり込む分には影響が少なそうだもんな。
おかげさまで、石から石へ飛び移るときにルートを遮りそうな噴石だけに気を配れば問題はない。
バスン、バスンと洒落にならない音を立てて地面をえぐる噴石の雨の中、俺の気分は「矢の方が避けていく」でお馴染み、アレクサンドロス大王だ。
「知識なしではスキルは発揮できない。スキルなしでは力は生み出せない。力なしでは知識は応用できない」
彼の名言を口にしながら南進していると、右手側からチカッと何かが光るのが見えた。
光は俺の頬をかすめると、背後の岩肌に当たり派手な火花のエフェクトを散らした。
来たな?
だよな。分かってる奴ならここで来るに決まってる。
俺は【脚火】をアクティブ化させ、降り注ぐ噴石から手頃な大きさのものを選び、蹴り飛ばす。
よし、だいたい狙い通りの場所に飛んでいった。
光の発生源近くで石は爆発し、着弾地点に小さなクレーターを作った。
ちょうど良く第二波の噴石の雨が収まった。
一気に距離を詰めると、俺は待ち伏せしているであろう孤狼丸と【忍犬衆】を押しつぶすため、手頃な石を踏み台に大きく跳ねる。
空中で【鳴神:玖】をアクティブ化し、両手を頭上に伸ばし雲を「溜める」。
さらに【空中跳躍】で高く飛び上がり、5mほどの位置から大きく手を振り下ろした。
それは同時にアクティブ化させた【濁流の垂下】の起動アクションでもあり、溜め中の【鳴神:玖】の発射アクションでもあった。
濁流が一帯を飲み込み、標的が視認できていない【玖】の雲は地上近くで雷撃を放った。
バヂンッ! と強烈な音が鼓膜を揺らす。
溢れた水分を伝って電撃が走り、姿の見えぬ孤狼丸のライフは大きく削れた。
研究結果。
起動アクションの重ね打ちは無効だが、カードの起動アクションと、「発射アクション」は別基準のためか、同じ動作でもそれぞれが同時に条件を満たす。
つまり、両手を振り下ろす動作1回で「電流撃」のお手軽コンボ!
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