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問4 異なる2点間の距離を求めよ
答4-5
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俺は認識を改めた。さっきまでのヌルすぎる相手ではない。
こちらの行動を読み、正しい攻撃をし、自ら有利な状況を作り出す力がある。
まだ下位ランクだからと端から舐めてかかっていた。
俺は孤狼丸が回避した方向を思考する。
上か、正面か。はたまた左右か。
正面はゴツゴツとした隠れる場所が多そうな岩場。
俺の居る場所とその左右は浜辺。すばやく両側を視認するが砂の上に残る足跡は見えない。
上ならば俺のように【空画整理】あたりを使っている可能性がある。そうだとしたら厄介だが、ならばこそ俺は奴の射程範囲内に長居するべきではない。
正面に奴が逃げ込み潜んでいた場合、俺の姿を一方的に捉えつつ次の攻撃に移るつもりだろう。
ならばそのまま岩場に突っ込むのは余程の自信家か馬鹿だけだ。
思考は数瞬。俺は右手側に全力でダッシュする。
上にしろ正面にしろ、視界の開けた浜辺を走って遠ざかれば奴の攻撃も居場所も確認出来る。
――俺はその判断が浅はかだったことをすぐに知ることとなった。
特に追撃もなく浜辺が終わり、結局また代わり映えのしない岩場にたどり着いたので身を隠そうと足を踏み入れた。
ひやり、と複数の場所から気配を感じる。
いや、ゲーム世界で「気配」なんていう曖昧なものを感じられるわけがない。実際は視界内の小さな変化や、音による微細な兆候を脳の処理を経由せず捉えているに過ぎない。
俺は気配の出処を感知するべく、周囲の人間が隠れられそうな大きさの五つの岩全てに意識を向ける。
そしてその全てから違和感を感じることに気づいた。
……囲まれてる。
ソロバトルなのにいくつもの存在を感じるのならば、答えは一つしか無い。
なんらかのミニオンが召喚され、孤狼丸の尖兵として動いているのだ。
まずい、孤狼丸に全てを先読みされているようだ。
いや、これは先読みと言うより、準備してあったという方が正しいか。
俺を先に発見し、その後どう動こうとも囲い込めるよう手を打っておき、相手の行動次第で能動的に変えながら追い詰めていく。
まるで、狩りだ。
いつものメンツの戦闘とは大きく違う。こういう相手は新鮮で面白い。面白いが……。
俺はそんな戦術を実践する相手に無防備に姿を晒した雑な行動を恥じた。
自らの力量も知らず、相手を侮ってかかるなんて三流のすることだ。
俺はまだ何者でも無い。思い上がっていた。
何も成していなければ、ミューミューの隣に立つ資格すらない。
相手がどういう手段で攻撃をしてくるのか、どうやってこちらを認識しようとしているのか、分かりもしないくせにただ手なりで「攻撃されてもいいか」と自らを餌として釣り糸を垂らしていた。
そんな三流野郎ならこうなってしかるべきだろう。
恥じただけでは足らない。
……彼には全力を尽くして、返礼と成そう。
左後ろから飛びかかってきた何かに俺は裏拳を叩き込んだ。
装備でもしてあれば別だが、単なるアバターでの物理攻撃はダメージを発生させない。
だがそれは物体や相手プレイヤーの耐久力に影響しないだけであって、物理的作用はゲーム内で演算され処理される。
ばちん、と裏拳がヒットし攻撃が止まったそれは、四脚で着地すると唸り声を上げた。
すらっとした姿の黒い猟犬、ミニオンカードの【忍犬衆】だ。
一匹を弾いた瞬間を狙うように、二匹目、三匹目が背後側から遅いかかってくる。
二匹目を蹴り飛ばし、三匹目は足を掴んで四匹目がいるであろうとがった岩に向かって投げる。案の定岩陰から出てきた四匹目にヒット。
所詮はプログラミングされた存在だ。常に同じような攻撃パターンを取るので読むのは容易い。
五匹目の岩には俺が自ら近寄り、【刀身の苦無】で処理する。
そのまま五匹目が隠れていた岩の裏に回り、ドロータイムを待ちがてらそろそろ出番が来そうな【もちもちシューズ】を装備して岩を駆け上がりジャンプ。
残りの【忍犬衆】の中央に降り立ち、同時に四方向から飛びかかってきたところを丁寧に下ごしらえするべく攻撃を受け流しながら一箇所に積み上げる。
そこに【激痛電】を流せば……あっという間に終了だ。
忍犬たちは消滅し、わずかに乱れた空気はすぐに静寂へと帰る。
問題はここから。
奴は静観し、俺の手札を確認した。
バレたところで問題は無いが、今すぐに攻撃をされるとなると手札が心もとない。
3枚を連続で切った上に、残る1枚は4回の使用回数を残した【空画整理】のみだ。
俺がやつなら、今叩く。
そしてそれは正しかった。
ぐわん、と広い範囲に闇が落ちる。
見上げると空は見えず、地上から6・7メートルの高さにある大きな黒い物体に陽光を遮られていたことを知る。
【質量の暴威】
比較的詠唱の短いスペルカードで、詠唱終了時に指定した場所に黒い正立方体を落とす。
表面に艶のない謎の巨大な箱は下にいるプレイヤーに大きなダメージを与えつつ、スキルのエフェクトなのに一定時間残り続け、ゲーム進行中に足場として利用することも出来る。
俺はとっさに周囲の地形を把握し、自分の取るべき最善を模索した。
ずしん、と音が島に鳴り響く。
俺が戦っていた岩場は、まるごと【質量の暴威】に押しつぶされた。
こちらの行動を読み、正しい攻撃をし、自ら有利な状況を作り出す力がある。
まだ下位ランクだからと端から舐めてかかっていた。
俺は孤狼丸が回避した方向を思考する。
上か、正面か。はたまた左右か。
正面はゴツゴツとした隠れる場所が多そうな岩場。
俺の居る場所とその左右は浜辺。すばやく両側を視認するが砂の上に残る足跡は見えない。
上ならば俺のように【空画整理】あたりを使っている可能性がある。そうだとしたら厄介だが、ならばこそ俺は奴の射程範囲内に長居するべきではない。
正面に奴が逃げ込み潜んでいた場合、俺の姿を一方的に捉えつつ次の攻撃に移るつもりだろう。
ならばそのまま岩場に突っ込むのは余程の自信家か馬鹿だけだ。
思考は数瞬。俺は右手側に全力でダッシュする。
上にしろ正面にしろ、視界の開けた浜辺を走って遠ざかれば奴の攻撃も居場所も確認出来る。
――俺はその判断が浅はかだったことをすぐに知ることとなった。
特に追撃もなく浜辺が終わり、結局また代わり映えのしない岩場にたどり着いたので身を隠そうと足を踏み入れた。
ひやり、と複数の場所から気配を感じる。
いや、ゲーム世界で「気配」なんていう曖昧なものを感じられるわけがない。実際は視界内の小さな変化や、音による微細な兆候を脳の処理を経由せず捉えているに過ぎない。
俺は気配の出処を感知するべく、周囲の人間が隠れられそうな大きさの五つの岩全てに意識を向ける。
そしてその全てから違和感を感じることに気づいた。
……囲まれてる。
ソロバトルなのにいくつもの存在を感じるのならば、答えは一つしか無い。
なんらかのミニオンが召喚され、孤狼丸の尖兵として動いているのだ。
まずい、孤狼丸に全てを先読みされているようだ。
いや、これは先読みと言うより、準備してあったという方が正しいか。
俺を先に発見し、その後どう動こうとも囲い込めるよう手を打っておき、相手の行動次第で能動的に変えながら追い詰めていく。
まるで、狩りだ。
いつものメンツの戦闘とは大きく違う。こういう相手は新鮮で面白い。面白いが……。
俺はそんな戦術を実践する相手に無防備に姿を晒した雑な行動を恥じた。
自らの力量も知らず、相手を侮ってかかるなんて三流のすることだ。
俺はまだ何者でも無い。思い上がっていた。
何も成していなければ、ミューミューの隣に立つ資格すらない。
相手がどういう手段で攻撃をしてくるのか、どうやってこちらを認識しようとしているのか、分かりもしないくせにただ手なりで「攻撃されてもいいか」と自らを餌として釣り糸を垂らしていた。
そんな三流野郎ならこうなってしかるべきだろう。
恥じただけでは足らない。
……彼には全力を尽くして、返礼と成そう。
左後ろから飛びかかってきた何かに俺は裏拳を叩き込んだ。
装備でもしてあれば別だが、単なるアバターでの物理攻撃はダメージを発生させない。
だがそれは物体や相手プレイヤーの耐久力に影響しないだけであって、物理的作用はゲーム内で演算され処理される。
ばちん、と裏拳がヒットし攻撃が止まったそれは、四脚で着地すると唸り声を上げた。
すらっとした姿の黒い猟犬、ミニオンカードの【忍犬衆】だ。
一匹を弾いた瞬間を狙うように、二匹目、三匹目が背後側から遅いかかってくる。
二匹目を蹴り飛ばし、三匹目は足を掴んで四匹目がいるであろうとがった岩に向かって投げる。案の定岩陰から出てきた四匹目にヒット。
所詮はプログラミングされた存在だ。常に同じような攻撃パターンを取るので読むのは容易い。
五匹目の岩には俺が自ら近寄り、【刀身の苦無】で処理する。
そのまま五匹目が隠れていた岩の裏に回り、ドロータイムを待ちがてらそろそろ出番が来そうな【もちもちシューズ】を装備して岩を駆け上がりジャンプ。
残りの【忍犬衆】の中央に降り立ち、同時に四方向から飛びかかってきたところを丁寧に下ごしらえするべく攻撃を受け流しながら一箇所に積み上げる。
そこに【激痛電】を流せば……あっという間に終了だ。
忍犬たちは消滅し、わずかに乱れた空気はすぐに静寂へと帰る。
問題はここから。
奴は静観し、俺の手札を確認した。
バレたところで問題は無いが、今すぐに攻撃をされるとなると手札が心もとない。
3枚を連続で切った上に、残る1枚は4回の使用回数を残した【空画整理】のみだ。
俺がやつなら、今叩く。
そしてそれは正しかった。
ぐわん、と広い範囲に闇が落ちる。
見上げると空は見えず、地上から6・7メートルの高さにある大きな黒い物体に陽光を遮られていたことを知る。
【質量の暴威】
比較的詠唱の短いスペルカードで、詠唱終了時に指定した場所に黒い正立方体を落とす。
表面に艶のない謎の巨大な箱は下にいるプレイヤーに大きなダメージを与えつつ、スキルのエフェクトなのに一定時間残り続け、ゲーム進行中に足場として利用することも出来る。
俺はとっさに周囲の地形を把握し、自分の取るべき最善を模索した。
ずしん、と音が島に鳴り響く。
俺が戦っていた岩場は、まるごと【質量の暴威】に押しつぶされた。
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