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問3 条件による分岐を辿れ
答3-5
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パーティでのカグツチ戦は、10mほどの上空からつかず離れず攻撃してくる炎を纏った空飛ぶ破戒僧との戦闘だった。
地上にいないんじゃ、当初の「みんなでタコ殴り大作戦」も通じない。いや、これしか作戦を用意しなかったのが悪いんだけれども。
こうなってしまったからには、きちんとした作戦を1から組み立てる必要がある。
「あいつどうやって飛んでるんだよ!?」
チョッキが指先から緑の光線を出しながら叫んでいる。光線はカグツチが数瞬前までいた虚空に向かって消えた。
俺も【強引な誘引】で引き寄せようと挑んでは見るが、引っ張ったつもりが奴の足先が少し動いた程度だった。
「さぁ? 『気』とかじゃねーの?」
舌打ちしながら俺は吐き捨てるように言った。駄目だ、【強引な誘引】はほとんど効果がない。
「じゃあ俺らも飛ばせてくれよ!」
「バランス調整の結果飛行は禁止されました」
「お前は運営かっ!」
こっちは炎に巻かれながら地上から反撃するものの、体がでかいわりにトリッキーな動きでこちらを翻弄し、あざ笑うようにカグツチは悠々と攻撃を落としてくる。
しかも、その落としてくる火炎球がまた厄介だった。
「ゲッ、また来たぞ」
「ミューミューちゃん! 頼む!」
俺とチョッキは遠距離へ撃てる攻撃が比較的多かったので本堂からの攻撃担当だ。
そしてミューミューは今の所「こいつ」担当だ。
「もう、私も、抑えきれないかもですっ!」
「俺がフォローに入る!」
降ってきた火球はさほどの速さも無いのでこちらとて当たることは無いが、それは着地し大きく燃え上がると、次第にその炎が形を成して「ホムスビ」という名のエネミーへと変化した。
火に包まれた1mほどの顔のない赤子のような姿で、四つん這いでのしのし歩きながらこいつも火炎弾を飛ばしてくる。
何が面倒って、ホムスビが吐くこの炎弾もまたダンジョン内で出てきた別のエネミーへと変化するのだ。
さっさとこのホムスビを倒さなければ、本堂内のエネミーはどんどん増える。
幸い、ホムスビから現れるエネミー達は炎から生まれる割に火への耐性があるわけではないらしく、フィールドの延焼ダメージを受けているのでもろい。燃え盛る炎の中でエネミー化し、そのまま勝手に燃え尽きている奴もいるくらいだ。
とはいえ、加速度的に増える敵を全て倒しきるのはさすがのミューミューでもキツイ。
時折俺がフォローに入りながら協力してホムスビを倒してなんとか均衡を保っているが、そうするとカグツチへの攻撃の手が減るため、どんどん長期戦化している。
「みずっち! 次、行けるか!?」
俺はホムスビにピコピコハンマーをぶん投げながら叫んだ。
「あと20秒~!!」
大きく空いた天井の端からみずちの声が聞こえてくる。
彼女は屋根の上まで放り投げて「外」に出てもらい、少しでもカグツチに近いところからの攻撃と、デッキを回して【老師の秘奥義】を最大威力で当てる為に立ち回ってもらっている。
1発目は直撃とは行かなかったが、カグツチの半身に当たりライフをしっかり削った。今は2発目のチャージ中だ。
視界ディスプレイ上に表示されたカグツチの残りのライフはまだ3分の2と言ったところだ。
あと【老師の秘奥義】を直撃で3発は必要だろう。
俺はパーティ全員のライフ残量も確認する。皆持ち前の回避と「やられる前に殺る」の思考回路でエネミーからのダメージは最低限に抑えているが、それでももう全員半分を切っていた。
特にカグツチからの攻撃目標になりやすいみずちは、火炎球以外の攻撃を多く受けていて一番ライフが少ない。とてもあと【秘奥義】3発を撃ち切るまで持たないだろう。
少しでもカグツチの攻撃意識を俺たちに向けなければ。
どうやって攻撃を当てる?
俺は燃えていない足場を転々と跳ね回りながら考える。
問題は攻撃が当たらないこと。解決するためには相手をなんとか足止めするか、移動先を先読みしなければならない。先読みは、まだ確定できていない。
俺のデッキにある敵の動きを強制させるカードは2種類しかないので、必然的にこれらを使ってなんとかカグツチの動きを止めるしかない。
【強引な誘引】と【獣王の咆哮】をどう使う?
【獣王の咆哮】は性質上、移動し続ける敵に当てるのは難しい。これは先読みが出来なければ使えないので除外だ。
残るは【強引な誘引】だけだ。直接作用させても効果が無いのは分かっている……。俺のデッキでは無理か?
そうこうしている間に、みずちに向かってカグツチの小攻撃技である無数の火の粉が飛ばされた。
みずちはそれを受けながらも【老師の秘奥義】のチャージを終える。
――まずい、このタイミングはっ……!
ごう、と屋根の上からみずちの【秘奥義】が放たれた。
カグツチがにやりと笑ったように見えた。
秘奥義が当たる寸前、奴の姿がブレる。次の瞬間、離れた位置にカグツチが再出現した。
【秘奥義】はかすりもせずに空の彼方へとその軌跡だけを残してかき消える。
今までのパターンで、カグツチが火炎球、小攻撃、移動、中攻撃か範囲攻撃、小攻撃、火炎球――と繰り返している事は分かっていた。
小さな回避では【秘奥義】が避けきれないことは実証済みだが、次のアクションは「移動」の可能性が高く、それは正しかった。
「みずっちー! ちゃんと狙えよー!」
「ごめーーーん!!」
「いや、今のは分かってたのに伝えなかった俺のミスだ! ごめん!」
外れたことを今更嘆いても仕方ない。彼女のライフもかなり厳しい。
一度降りてきてもらってミューミューの持ってる少ない回復手段を分けてもらうか?
俺は何か手は無いかと頭を回し……また手札に入ってきた【ピコピコハンマー】と【強引な誘引】を見てひらめいた。
この2枚なら――いけるか?
だがまだそれだけだと弱い。そのあとはどうする?
パーティの他のデッキ内のカードはもう頭に入っている。ずらりと脳内で並べ、必要なカードを抽出し、ルートを組み立てる。
よし、あいつらがタイミング良くカードを使ってくれれば、多分なんとかなる。
そこまで細いルートというわけでもない。もうパターンは読めているんだ、実行しよう。
「みんな、聞いてくれ! カグツチの行動パターンは分かった!」
そのまま作戦と必要なカードもすばやく全員に伝える。
あとはみずちが全員のカードが揃うまで耐えられるかどうか。
このままでは無理だ。なら、立ち位置を変えよう。
「俺が上に行くから、みずっちは降りろ!」
「りょーかーい! あとはよろしく!!」
反撃開始だ。
地上にいないんじゃ、当初の「みんなでタコ殴り大作戦」も通じない。いや、これしか作戦を用意しなかったのが悪いんだけれども。
こうなってしまったからには、きちんとした作戦を1から組み立てる必要がある。
「あいつどうやって飛んでるんだよ!?」
チョッキが指先から緑の光線を出しながら叫んでいる。光線はカグツチが数瞬前までいた虚空に向かって消えた。
俺も【強引な誘引】で引き寄せようと挑んでは見るが、引っ張ったつもりが奴の足先が少し動いた程度だった。
「さぁ? 『気』とかじゃねーの?」
舌打ちしながら俺は吐き捨てるように言った。駄目だ、【強引な誘引】はほとんど効果がない。
「じゃあ俺らも飛ばせてくれよ!」
「バランス調整の結果飛行は禁止されました」
「お前は運営かっ!」
こっちは炎に巻かれながら地上から反撃するものの、体がでかいわりにトリッキーな動きでこちらを翻弄し、あざ笑うようにカグツチは悠々と攻撃を落としてくる。
しかも、その落としてくる火炎球がまた厄介だった。
「ゲッ、また来たぞ」
「ミューミューちゃん! 頼む!」
俺とチョッキは遠距離へ撃てる攻撃が比較的多かったので本堂からの攻撃担当だ。
そしてミューミューは今の所「こいつ」担当だ。
「もう、私も、抑えきれないかもですっ!」
「俺がフォローに入る!」
降ってきた火球はさほどの速さも無いのでこちらとて当たることは無いが、それは着地し大きく燃え上がると、次第にその炎が形を成して「ホムスビ」という名のエネミーへと変化した。
火に包まれた1mほどの顔のない赤子のような姿で、四つん這いでのしのし歩きながらこいつも火炎弾を飛ばしてくる。
何が面倒って、ホムスビが吐くこの炎弾もまたダンジョン内で出てきた別のエネミーへと変化するのだ。
さっさとこのホムスビを倒さなければ、本堂内のエネミーはどんどん増える。
幸い、ホムスビから現れるエネミー達は炎から生まれる割に火への耐性があるわけではないらしく、フィールドの延焼ダメージを受けているのでもろい。燃え盛る炎の中でエネミー化し、そのまま勝手に燃え尽きている奴もいるくらいだ。
とはいえ、加速度的に増える敵を全て倒しきるのはさすがのミューミューでもキツイ。
時折俺がフォローに入りながら協力してホムスビを倒してなんとか均衡を保っているが、そうするとカグツチへの攻撃の手が減るため、どんどん長期戦化している。
「みずっち! 次、行けるか!?」
俺はホムスビにピコピコハンマーをぶん投げながら叫んだ。
「あと20秒~!!」
大きく空いた天井の端からみずちの声が聞こえてくる。
彼女は屋根の上まで放り投げて「外」に出てもらい、少しでもカグツチに近いところからの攻撃と、デッキを回して【老師の秘奥義】を最大威力で当てる為に立ち回ってもらっている。
1発目は直撃とは行かなかったが、カグツチの半身に当たりライフをしっかり削った。今は2発目のチャージ中だ。
視界ディスプレイ上に表示されたカグツチの残りのライフはまだ3分の2と言ったところだ。
あと【老師の秘奥義】を直撃で3発は必要だろう。
俺はパーティ全員のライフ残量も確認する。皆持ち前の回避と「やられる前に殺る」の思考回路でエネミーからのダメージは最低限に抑えているが、それでももう全員半分を切っていた。
特にカグツチからの攻撃目標になりやすいみずちは、火炎球以外の攻撃を多く受けていて一番ライフが少ない。とてもあと【秘奥義】3発を撃ち切るまで持たないだろう。
少しでもカグツチの攻撃意識を俺たちに向けなければ。
どうやって攻撃を当てる?
俺は燃えていない足場を転々と跳ね回りながら考える。
問題は攻撃が当たらないこと。解決するためには相手をなんとか足止めするか、移動先を先読みしなければならない。先読みは、まだ確定できていない。
俺のデッキにある敵の動きを強制させるカードは2種類しかないので、必然的にこれらを使ってなんとかカグツチの動きを止めるしかない。
【強引な誘引】と【獣王の咆哮】をどう使う?
【獣王の咆哮】は性質上、移動し続ける敵に当てるのは難しい。これは先読みが出来なければ使えないので除外だ。
残るは【強引な誘引】だけだ。直接作用させても効果が無いのは分かっている……。俺のデッキでは無理か?
そうこうしている間に、みずちに向かってカグツチの小攻撃技である無数の火の粉が飛ばされた。
みずちはそれを受けながらも【老師の秘奥義】のチャージを終える。
――まずい、このタイミングはっ……!
ごう、と屋根の上からみずちの【秘奥義】が放たれた。
カグツチがにやりと笑ったように見えた。
秘奥義が当たる寸前、奴の姿がブレる。次の瞬間、離れた位置にカグツチが再出現した。
【秘奥義】はかすりもせずに空の彼方へとその軌跡だけを残してかき消える。
今までのパターンで、カグツチが火炎球、小攻撃、移動、中攻撃か範囲攻撃、小攻撃、火炎球――と繰り返している事は分かっていた。
小さな回避では【秘奥義】が避けきれないことは実証済みだが、次のアクションは「移動」の可能性が高く、それは正しかった。
「みずっちー! ちゃんと狙えよー!」
「ごめーーーん!!」
「いや、今のは分かってたのに伝えなかった俺のミスだ! ごめん!」
外れたことを今更嘆いても仕方ない。彼女のライフもかなり厳しい。
一度降りてきてもらってミューミューの持ってる少ない回復手段を分けてもらうか?
俺は何か手は無いかと頭を回し……また手札に入ってきた【ピコピコハンマー】と【強引な誘引】を見てひらめいた。
この2枚なら――いけるか?
だがまだそれだけだと弱い。そのあとはどうする?
パーティの他のデッキ内のカードはもう頭に入っている。ずらりと脳内で並べ、必要なカードを抽出し、ルートを組み立てる。
よし、あいつらがタイミング良くカードを使ってくれれば、多分なんとかなる。
そこまで細いルートというわけでもない。もうパターンは読めているんだ、実行しよう。
「みんな、聞いてくれ! カグツチの行動パターンは分かった!」
そのまま作戦と必要なカードもすばやく全員に伝える。
あとはみずちが全員のカードが揃うまで耐えられるかどうか。
このままでは無理だ。なら、立ち位置を変えよう。
「俺が上に行くから、みずっちは降りろ!」
「りょーかーい! あとはよろしく!!」
反撃開始だ。
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