ロマン砲主義者のオーバーキル

TEN KEY

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問1 パターンを解明せよ

答1-3

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「だいたいこんな感じかな、俺のプランは。あの後も何発か雷落ちてたでしょ? あれが結局ループの位置確認って訳」
「何回か落ちたとこに追っかけて行ったのに、全然見つからなかったんだよね~」
「隠れてたからな、俺。デッキ内の他のカードをなるべく隠密性が高いものを選んで、どんどん空撃ちしながら回して移動し続けたんだよ」

 デッキの枚数制限は25枚。その内デッキに入れられる同名のカードは3枚までという制限もある。
 カードを使用していきデッキを一周させるとシャッフルされて元に戻るので、どんどんカードを使い捨てれば同じカードを複数枚使用することは可能だ。これを「回す」と表現する事が多い。

「またいつもより更に準備が必要なデッキだったんだねぇ……。途中からわかんないから諦めて鉄塔で待っちゃった」
「俺もさすがに疲れたわ。ようやく準備が整って挑みにいって、必死こいて戦ってなんとか『ロマン砲』かまして結末オチがあれじゃあな……」
「あはははは! いやー面白かった。あ、でも鏡が見えなくなってたのは何? そんなカードあった?」
「あるよ。俺は愛用してるぞ。お、そうだ、ちょうど良かった。あのシーン見ようぜ」

 またシークバーを動画の後半に動かし、俺がみずちのコンボを食らったシーンで止める。

「ここ、ここ。いやー、してやられたよ。まさかみずちが【隠し矢】を使うとはねぇ」

 【隠し矢】は少しテクニカルなユーティリティカードだ。直前に撃った攻撃カードをコピーし、連続で同じ攻撃をしたかのように見せかける事ができる。この「偽の攻撃」は相手にダメージを与えることは出来ない代わりに、着弾地点に次のカードの起動ポイントを設定できる。つまり避けられたり外れたりして背後に行った攻撃から別の攻撃を仕掛ける事ができるのだ。
 しかし、起動ポイントを指定できるだけなので直線的な攻撃ではあまりうまく働かず、追尾機能付きのものや範囲攻撃と併用されることが多い。奇襲攻撃としては一流だが、どの程度の効果があるかはまだ研究されきっていないカードだ。

「んふふー。良かったっしょ? 私の攻撃ってりょーちんにすぐ読まれて避けられちゃうから、この前『迦具土城かぐつちじょうを落とせ』のイベントでエリアボスの『クラオカミ』狩ったらドロップした【隠し矢】使ってみたんだよね―。意外と使用感はグッドだよ」

 グッド、に合わせてみずちは親指を立てたハンドサインを俺のほっぺたに押し付けて来た。邪魔。

「やっぱあのイベントに入り浸ってたか。俺が落下地点の検証してるときだな」

 俺はみずちの手を押しのけると、画面を少し操作してイベントを表示させる。まだイベントエリア解放から3日しか経っていない。確かあのイベントボスが落とすのが――

「そりゃやるべさー。『カグツチ』が落とす【老師の秘奥義】ぜったい欲しかったもん」

 彼女がピピッと自分のコントローラーを操作して【老師の秘奥義】3枚を手元に出すと、俺に自慢するように広げて見せた。イラストに描かれた秘奥義を撃つおじいさんはどう見ても甲羅を背負ってない亀○人だった。著作権関係ほんとに大丈夫? コラボ?

「もう3枚持ってるのかよ……すげぇなマジで。イラストも……」
「いいでしょー。がんばった! でもこれだけじゃりょーちんぶちのめせないから、コンボ考えたの、自分で!」

 自分で! をえらく強調して言ってくる。確かにいつもの彼女は適当に強いカードでデッキを組んで、ゴリ押ししてくるスタイルが多い。まれにコンボじみたことをしてくることもあるが、今回のような【隠し矢】から【拒絶の証】4連打、しかも【地獄釜】で上に飛ばしてから【インビジブルアクター】で身を隠して【レイルドスター】でフィニッシュなんて適当な手札管理じゃたどり着けない。

「どうしたんだよほんと、あれ完璧に決まってたぞ。【インビジブルアクター】もあの時のためか?」
「いや、実は適当に壁出して【インなんとか】で隠れて【お星様】ぶっぱしようと思ったらもっといい感じになっただけ」

 俺は糞デカいため息をついた。過大評価だったようだ。

「自分で考えてねーじゃん」
「いや、あの瞬間に手札見て思いついたからちょっと考えながら順番に撃ったの。すごくない?」
「……逆にすごい」
「でしょ!」

 本当に彼女は直感派だ。俺と真逆過ぎて逆にいい刺激にならんでもない。俺の愛する「ロマン砲」は直感とひらめきも必要だからな。
 画面をリプレイに戻し、みずちの「直感コンボ」を大迫力の映像で再生すると、最後の【レイルドスター】直前の場面で止める。

「みずっちの攻撃反射したでしょ、俺。画面のここ、よく見て」
「ん~? ……あっ! 2枚目が出てる!」

 俺は空中でとっさに出した2枚目の鏡に【インビジブルツール】を使っているシーンだ。すかさず地上に投げ落とし、なんとか【レイルドスター】の「当たってはいけない2撃目の星」を反射したのだ。
 【レイルドスター】はそれそのものがロマン性を抱えたカードで、アクションと同時に出るレーザー攻撃は非常に速く、威力は低め。その後にレーザー光から独特のパチパチと火花が散るような効果音を出しながら、光に沿って爆発する流星が流れてくるのだ。あれは「もうすぐ来るよ~」と合図がある攻撃だから当てづらいが、万が一当たるような間抜けにはそれ相応のダメージが用意されている。
 俺もかつてあれを当てるために苦心したもんよ。

「【インビジブルツール】って言って、みずちの使ってた【インビジブルアクター】の物体版っていうのかな? そういうステータスカード。効果は名前の通り触れている武器や道具を見えなくさせるだけ。ちなみに俺からも見えなくなる」
「それで鏡が全部見えなくなってたんだ~。よく見えないのに置いてある場所わかったね」
「最終的に攻撃を当てるポイントは鉄塔のとこについたあたりで目星をつけてて、後は並べるだけだったからな」
「ふ~ん。まー、してやられたよ~。かんっぜんに今回も……」
「「オーバーキルだったけどね」」

 ハモらせたった。
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