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問1 パターンを解明せよ
問1-5
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「手には鏡。地面にも鏡。これなーんだ?」
「もー! 分からないって解ってるくせに!」
みずちはわめきながら抱えていた俺の銅鏡を放り投げると、両手をかめ○め波の形にして身体の横に引く。あのアクションのカードは1枚だけ、【老師の秘奥義】だ。これ著作権関係大丈夫?
【老師の秘奥義】はアクションで何が来るかはバレバレの代わりに、ショットカードの中では異常なまでに出が早く、そのくせ威力は高い。
■□ ショットカード □■
バレットカードより攻撃が出るまでのスピードが遅く、大振りな起動アクションが必要でドロータイムが長いなど制限が多い。そのデメリットの分、高い威力や広い効果範囲を手に入れた攻撃カードだ。
対人戦で使用する場合、相手の動きを制限した上で決め技として使うか、あえて大振りな攻撃をすることで次の相手の行動を読みやすくしたりと腕が必要になるカード種だ。
これを対人で使いこなせるプレイヤーは中級者を名乗っても良いだろう。
だが、彼女の【老師の秘奥義】はひどく単純に使える上に、多機能で効果も上々と来たもんだ。レアリティはもちろん高い。欲しい。
攻撃カードの中でも「チャージ系」と言われるサブタイプを持つ【老師の秘奥義】は、身体の横に引いている間に両手のひらの中央から現れた光の球がどんどん膨れ上がる。それは好きなタイミングで両手を身体の正面に突き出すことで直線的な太いレーザー攻撃を前方に射出する。
「溜め」が短ければ近距離高威力、逆に最大まで溜まった大きな光球を撃ち出せばどこまでも伸び、なおかつ障害物無視の長距離攻撃として運用できる。
レーザーは強い「光」の属性を持っているため対戦相手など「敵」として認識したものだけにダメージを与える。壁などの破壊が出来ないのが唯一の弱みだろうか。
ただ、今回のように銅鏡を構えた俺がこれを跳ね返してもみずちは痛くもかゆくも無いので弱みとも限らないだろう。彼女にとってこの攻撃はノーリスクなのだから。
おっと、攻撃が飛んできた。最大チャージで放たれ、数秒でエリア端まで届く長大で超高威力の【老師の秘奥義】は、俺の手元にある銅鏡に当たりはるか上空に向かって飛んでいった。
……別に反射がそのまま反撃にならなくても、俺には当たらないしまぁ別に放って置いてもいいかなって。
あ、みずちが泣きそうな顔してる。
もう万策尽きただろうし、そろそろ終わらせよう。
俺はディスプレイにマップを表示させると、手元のコントローラーで【プッシュスプラッシュ】をアクティブ化させた。
握り込んだ拳をみずちの方向に向かって強く振るうと、振り抜いた腕の真横を人を飲み込めるほどの太く強い水流が射出された。
「ふぇ? わっぷ!」
水流は彼女の真正面にぶち当たると、そのままどんどん後ろへ押し込む。
【プッシュスプラッシュ】はダメージ判定が無いが、「相手をその場から動かす」という用途に関しては他のカードの追随を許さないユーティリティカードだ。一応火の属性攻撃を弱体化させる副次効果もあるので、爆発至上主義で炎上中毒者な彼女に対してはナチュラルに刺さってる。
そのまま数発の使用回数があるプッシュスプラッシュでどんどん押し込み、ようやく目的地にたどり着いた。
「今準備するから、ちょっと待っててね」
俺は全身をびしょ濡れにしたみずちにそう呼びかけると、最後の水流に乗せて【ポイズンマニア:パラライズ】を打ち込む。ポイズンマニアシリーズはそのままでは効果を及ぼすことが無いステータスカードだが、こうして別のカードとコンボすることで対戦相手を強力な「麻痺」状態にさせることができるという特殊なものだ。
やだー!へんたいー!ごうかんまー!と叫ぶ彼女を無視し、すばやく鏡を残った「所定の位置」に置いて回ると、俺は最後の詠唱に入った。
このゲームでは、単品で役に立たないカードは弱いという風潮がある。
ほとんどのシーンでは手札で腐り選択肢を狭め、「コンボが決まれば強い、ってつまりそのままだと弱いってことだよね?」とバカにされる。
その通りだ。
強いカードを額面通り強く使えれば、わざわざ1枚じゃ弱い糞カードを使う必要は無いだろう。
手札で1枚カードが腐らすという行為は、相手に対して常に1枚分のカードのアドバンテージ差を生み出し続けているということだ。当然負けに直結するくらいその差は大きい。
だが、それでも。
俺は弱いカードを強く使うことに憧れる。
だってそれって――格好いいじゃん。
ただの力。それは暴力や、権力や、才能。
それを振りかざして驕る奴って、だいたいどんな物語でも悪役だ。
仲間の協力、他者との因縁、むすびつく力。「絆」と呼ぶ強い強い力を使って勝ってるやつら。
それはどんな物語でも英雄だろ?
俺は悪役になりたいんじゃない。英雄になりたいんだ。
だってそのほうが――
「ロマンがある」
詠唱が終わる。
晴れ渡っていた空に暗雲が立ち込める。
ごろごろと音を立て、強い光が視界を数度覆い、そして無数の雷撃が降り注いだ。
【鳴神:萬】
極大ダメージの雷を20本、使用者の周囲30メートルにランダムに降り注がせる。
しかしその稲妻の過半数が地上に届く寸前に白い光のエフェクトを瞬かせ、地上を這うように向きを変えた。
それは複数の方向から、ただ一点に向って収束していく。
稲妻の交点には、ようやく麻痺が消えた涙目のみずち。
――耳をつんざく爆音。
そしてゲームは終わる。
「もー! 分からないって解ってるくせに!」
みずちはわめきながら抱えていた俺の銅鏡を放り投げると、両手をかめ○め波の形にして身体の横に引く。あのアクションのカードは1枚だけ、【老師の秘奥義】だ。これ著作権関係大丈夫?
【老師の秘奥義】はアクションで何が来るかはバレバレの代わりに、ショットカードの中では異常なまでに出が早く、そのくせ威力は高い。
■□ ショットカード □■
バレットカードより攻撃が出るまでのスピードが遅く、大振りな起動アクションが必要でドロータイムが長いなど制限が多い。そのデメリットの分、高い威力や広い効果範囲を手に入れた攻撃カードだ。
対人戦で使用する場合、相手の動きを制限した上で決め技として使うか、あえて大振りな攻撃をすることで次の相手の行動を読みやすくしたりと腕が必要になるカード種だ。
これを対人で使いこなせるプレイヤーは中級者を名乗っても良いだろう。
だが、彼女の【老師の秘奥義】はひどく単純に使える上に、多機能で効果も上々と来たもんだ。レアリティはもちろん高い。欲しい。
攻撃カードの中でも「チャージ系」と言われるサブタイプを持つ【老師の秘奥義】は、身体の横に引いている間に両手のひらの中央から現れた光の球がどんどん膨れ上がる。それは好きなタイミングで両手を身体の正面に突き出すことで直線的な太いレーザー攻撃を前方に射出する。
「溜め」が短ければ近距離高威力、逆に最大まで溜まった大きな光球を撃ち出せばどこまでも伸び、なおかつ障害物無視の長距離攻撃として運用できる。
レーザーは強い「光」の属性を持っているため対戦相手など「敵」として認識したものだけにダメージを与える。壁などの破壊が出来ないのが唯一の弱みだろうか。
ただ、今回のように銅鏡を構えた俺がこれを跳ね返してもみずちは痛くもかゆくも無いので弱みとも限らないだろう。彼女にとってこの攻撃はノーリスクなのだから。
おっと、攻撃が飛んできた。最大チャージで放たれ、数秒でエリア端まで届く長大で超高威力の【老師の秘奥義】は、俺の手元にある銅鏡に当たりはるか上空に向かって飛んでいった。
……別に反射がそのまま反撃にならなくても、俺には当たらないしまぁ別に放って置いてもいいかなって。
あ、みずちが泣きそうな顔してる。
もう万策尽きただろうし、そろそろ終わらせよう。
俺はディスプレイにマップを表示させると、手元のコントローラーで【プッシュスプラッシュ】をアクティブ化させた。
握り込んだ拳をみずちの方向に向かって強く振るうと、振り抜いた腕の真横を人を飲み込めるほどの太く強い水流が射出された。
「ふぇ? わっぷ!」
水流は彼女の真正面にぶち当たると、そのままどんどん後ろへ押し込む。
【プッシュスプラッシュ】はダメージ判定が無いが、「相手をその場から動かす」という用途に関しては他のカードの追随を許さないユーティリティカードだ。一応火の属性攻撃を弱体化させる副次効果もあるので、爆発至上主義で炎上中毒者な彼女に対してはナチュラルに刺さってる。
そのまま数発の使用回数があるプッシュスプラッシュでどんどん押し込み、ようやく目的地にたどり着いた。
「今準備するから、ちょっと待っててね」
俺は全身をびしょ濡れにしたみずちにそう呼びかけると、最後の水流に乗せて【ポイズンマニア:パラライズ】を打ち込む。ポイズンマニアシリーズはそのままでは効果を及ぼすことが無いステータスカードだが、こうして別のカードとコンボすることで対戦相手を強力な「麻痺」状態にさせることができるという特殊なものだ。
やだー!へんたいー!ごうかんまー!と叫ぶ彼女を無視し、すばやく鏡を残った「所定の位置」に置いて回ると、俺は最後の詠唱に入った。
このゲームでは、単品で役に立たないカードは弱いという風潮がある。
ほとんどのシーンでは手札で腐り選択肢を狭め、「コンボが決まれば強い、ってつまりそのままだと弱いってことだよね?」とバカにされる。
その通りだ。
強いカードを額面通り強く使えれば、わざわざ1枚じゃ弱い糞カードを使う必要は無いだろう。
手札で1枚カードが腐らすという行為は、相手に対して常に1枚分のカードのアドバンテージ差を生み出し続けているということだ。当然負けに直結するくらいその差は大きい。
だが、それでも。
俺は弱いカードを強く使うことに憧れる。
だってそれって――格好いいじゃん。
ただの力。それは暴力や、権力や、才能。
それを振りかざして驕る奴って、だいたいどんな物語でも悪役だ。
仲間の協力、他者との因縁、むすびつく力。「絆」と呼ぶ強い強い力を使って勝ってるやつら。
それはどんな物語でも英雄だろ?
俺は悪役になりたいんじゃない。英雄になりたいんだ。
だってそのほうが――
「ロマンがある」
詠唱が終わる。
晴れ渡っていた空に暗雲が立ち込める。
ごろごろと音を立て、強い光が視界を数度覆い、そして無数の雷撃が降り注いだ。
【鳴神:萬】
極大ダメージの雷を20本、使用者の周囲30メートルにランダムに降り注がせる。
しかしその稲妻の過半数が地上に届く寸前に白い光のエフェクトを瞬かせ、地上を這うように向きを変えた。
それは複数の方向から、ただ一点に向って収束していく。
稲妻の交点には、ようやく麻痺が消えた涙目のみずち。
――耳をつんざく爆音。
そしてゲームは終わる。
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