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第8話 吸血鬼のお食事
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「『攻略本』の能力がレベルアップしたのか?」
このダンジョンに来てから、『攻略本』のギフトを使ってできることが極端に増えた。ダンジョンに来てやったことと言えば、いたずらにレベルやステータスの上がるアイテムを見つけて、それを使用したくらいだ。
途中から面倒くさくなって確認をするのをやめてしまったが、レベルとステータスが随分と上がっていたらしい。
なるほど、『攻略本』でできることが増えたのはレベルが上がったからなのか。
確かに、それなら納得できる部分が多い。
「あの、京也様。そろそろ、いただいてもよろしいでしょうか?」
「ん? いただく?」
倒した猪のモンスターの料理を食べ終えて、そろそろダンジョンの下層に行こうとしていると、申し訳なさそうにリリィがそんなことを口にした。
「あの、私吸血鬼ですので、できれば京也様の血を頂きたいのですが」
「あー、なるほどね」
そう言えばすっかり忘れそうになっていたが、リリィは吸血鬼だったのだ。それも、俺が大きな結晶に囚われていたのを救って、契約したのだった。
そっか、確かに吸血鬼なら血は必要だよな。
「……えっと、血を吸われたら眷属にさせられたりするの?」
「眷属に? ふふっ、京也様は私の眷属になりたいのですか?」
俺が冗談を言ったと思ったのか、リリィは愉快そうにくすくすと笑っていた。上品な笑い方をする古風なメイド服を着た吸血鬼。
そんな吸血鬼の眷属になれるのなら、それはそれで悪くないのではないかと思ってしまう自分がいた。
むしろ、こき使われるのも悪くない。うん、悪くない。
「ご心配なさらないでください。そんなことを京也様にはできませんよ、そういう契約ではないですか」
「え、ああ、そうなのね」
どうやら、俺はよく分らない内容でした契約にそんな内容を含んでいたらしい。そもそも、どんな内容の契約だったのかも分からない。
……内容だけでも後で教えてくれないかな。
「少しの血と魔力を頂くだけです。京也様の魔力はドロッとしていて濃いような気がするので、そんなに多くは頂きません」
「魔力だよな? なんか妖艶な表情してるけど、魔力を少しあげるってことでいいんだよな?」
なんか意味ありげな言葉回しが気にはなるが、俺が契約した以上血をあげないわけにもいかないだろう。
そんなペットを飼ったはいいけど、餌を上げないみたいな状態は良くないはずだ。
「それなら、ほら。貧血になるまでは吸わないでくれよ?」
「あら、首から貰っていいんですか? ふふっ、誘われているんですかね?」
「さそっ、そんなんじゃないかな」
何をどうしたらそんな取り方ができるのか、リリィはうっとりとした顔で俺の首を眺めながらそんなことを口にした。
絶品を前に腹を空かせるというよりも、美女を前に喉を鳴らすような表情。
……吸血行動って、ただの食事っていう認識で良いんだよな。
「それでは、いただきます。ぺろっ、ちゅっ……ちゅぱっ」
「って、おい! なんで首責め始めてんの?! なんで前戯が始まってんの?!」
「あら、強引にされる方がお好きでしたか?」
「ご、強引なのも困るな。痛いのは嫌だし」
「それでしたらお任せください。もしかして、京也様は初めてですか?」
「……だったら何だって言うんだよ」
初めてというワードが一体何を意味してるのか俺には分からない。吸血されるということなのか、女性経験の方なのか。
一体、どっちの意味で言っているのか分からないけど、どっちも初めてだから関係ないか。
「ふふっ、穢れていないのですね。でしたら、もっと濡らしておかないと」
そういうと、リリィは必要以上に首を舐めてから吸血を開始した。献血をやったことがない俺は、血を抜かれる感覚を初めて知ったのだった。
吸血が終わると、リリィは満足げに口元を緩めてうっとりとしていた。
「濃くて喉に絡みつくような魔力ですね。ごちそうさまでした」
「本当に血を抜いただけなんだよな? 変なこととかしてないよな?」
「ええ、とても美味しかったです」
そんなことを言いながら唇を舐めるリリィは色っぽく、血を抜かれて体が少しだるいというのに少しだけ元気になったのだった。
いや、何言ってんだろ俺。
「よしっ、それじゃあそろそろ行くか」
「もう動いて大丈夫なんですか?」
「まぁ、大丈夫だろ」
俺はリリィにそう告げると、休憩もほどほどに立ち上がって下の階層に向けて歩き出した。
あまりゆっくりもしてられないしな。
多少俺が遅れてダンジョンを出るのは良いが、遅れ過ぎて早乙女達のグループに文句を言われても嫌だしな。
そう言えば早乙女達は今どこまで行ったんだろうな。
もしかしたら、すでにダンジョンを攻略して脱出してたりするのかな。
……十分にありえそうだ。だって、あいつら戦闘に特化したギフト持ちの集団だからな。
そうなると、いよいよお役御免か。少しは早くここを出られるように頑張るか。
俺はそんなことを考えて、少しだけ歩く速度を上げたのだった。
このダンジョンに来てから、『攻略本』のギフトを使ってできることが極端に増えた。ダンジョンに来てやったことと言えば、いたずらにレベルやステータスの上がるアイテムを見つけて、それを使用したくらいだ。
途中から面倒くさくなって確認をするのをやめてしまったが、レベルとステータスが随分と上がっていたらしい。
なるほど、『攻略本』でできることが増えたのはレベルが上がったからなのか。
確かに、それなら納得できる部分が多い。
「あの、京也様。そろそろ、いただいてもよろしいでしょうか?」
「ん? いただく?」
倒した猪のモンスターの料理を食べ終えて、そろそろダンジョンの下層に行こうとしていると、申し訳なさそうにリリィがそんなことを口にした。
「あの、私吸血鬼ですので、できれば京也様の血を頂きたいのですが」
「あー、なるほどね」
そう言えばすっかり忘れそうになっていたが、リリィは吸血鬼だったのだ。それも、俺が大きな結晶に囚われていたのを救って、契約したのだった。
そっか、確かに吸血鬼なら血は必要だよな。
「……えっと、血を吸われたら眷属にさせられたりするの?」
「眷属に? ふふっ、京也様は私の眷属になりたいのですか?」
俺が冗談を言ったと思ったのか、リリィは愉快そうにくすくすと笑っていた。上品な笑い方をする古風なメイド服を着た吸血鬼。
そんな吸血鬼の眷属になれるのなら、それはそれで悪くないのではないかと思ってしまう自分がいた。
むしろ、こき使われるのも悪くない。うん、悪くない。
「ご心配なさらないでください。そんなことを京也様にはできませんよ、そういう契約ではないですか」
「え、ああ、そうなのね」
どうやら、俺はよく分らない内容でした契約にそんな内容を含んでいたらしい。そもそも、どんな内容の契約だったのかも分からない。
……内容だけでも後で教えてくれないかな。
「少しの血と魔力を頂くだけです。京也様の魔力はドロッとしていて濃いような気がするので、そんなに多くは頂きません」
「魔力だよな? なんか妖艶な表情してるけど、魔力を少しあげるってことでいいんだよな?」
なんか意味ありげな言葉回しが気にはなるが、俺が契約した以上血をあげないわけにもいかないだろう。
そんなペットを飼ったはいいけど、餌を上げないみたいな状態は良くないはずだ。
「それなら、ほら。貧血になるまでは吸わないでくれよ?」
「あら、首から貰っていいんですか? ふふっ、誘われているんですかね?」
「さそっ、そんなんじゃないかな」
何をどうしたらそんな取り方ができるのか、リリィはうっとりとした顔で俺の首を眺めながらそんなことを口にした。
絶品を前に腹を空かせるというよりも、美女を前に喉を鳴らすような表情。
……吸血行動って、ただの食事っていう認識で良いんだよな。
「それでは、いただきます。ぺろっ、ちゅっ……ちゅぱっ」
「って、おい! なんで首責め始めてんの?! なんで前戯が始まってんの?!」
「あら、強引にされる方がお好きでしたか?」
「ご、強引なのも困るな。痛いのは嫌だし」
「それでしたらお任せください。もしかして、京也様は初めてですか?」
「……だったら何だって言うんだよ」
初めてというワードが一体何を意味してるのか俺には分からない。吸血されるということなのか、女性経験の方なのか。
一体、どっちの意味で言っているのか分からないけど、どっちも初めてだから関係ないか。
「ふふっ、穢れていないのですね。でしたら、もっと濡らしておかないと」
そういうと、リリィは必要以上に首を舐めてから吸血を開始した。献血をやったことがない俺は、血を抜かれる感覚を初めて知ったのだった。
吸血が終わると、リリィは満足げに口元を緩めてうっとりとしていた。
「濃くて喉に絡みつくような魔力ですね。ごちそうさまでした」
「本当に血を抜いただけなんだよな? 変なこととかしてないよな?」
「ええ、とても美味しかったです」
そんなことを言いながら唇を舐めるリリィは色っぽく、血を抜かれて体が少しだるいというのに少しだけ元気になったのだった。
いや、何言ってんだろ俺。
「よしっ、それじゃあそろそろ行くか」
「もう動いて大丈夫なんですか?」
「まぁ、大丈夫だろ」
俺はリリィにそう告げると、休憩もほどほどに立ち上がって下の階層に向けて歩き出した。
あまりゆっくりもしてられないしな。
多少俺が遅れてダンジョンを出るのは良いが、遅れ過ぎて早乙女達のグループに文句を言われても嫌だしな。
そう言えば早乙女達は今どこまで行ったんだろうな。
もしかしたら、すでにダンジョンを攻略して脱出してたりするのかな。
……十分にありえそうだ。だって、あいつら戦闘に特化したギフト持ちの集団だからな。
そうなると、いよいよお役御免か。少しは早くここを出られるように頑張るか。
俺はそんなことを考えて、少しだけ歩く速度を上げたのだった。
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