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第17話 クエストを受ける
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「く、クエストを! このままクエストを受けてもいいですか?」
「は、はい。冒険者登録をした後なので、可能ですけど」
冒険者登録をする際、私達は魔力の多さがバレてしまい、周囲の冒険者と受付の人たちに驚かれてしまった。
しばらくは力を隠す手はずだったのに、いきなりその作戦が難しくなってしまったのだ。
「あの、魔力量が規定値を超えていても、いちおうG級ランクからになるので、受けられるクエストは……この辺ですかね」
カウンターのお姉さんは丁度手元にあったのか、G級の私達でも受けられるクエスト内容が記載してある紙を三枚カウンターに並べた。
「もちろん、冒険者になり立てのG級なんで、簡単なクエストしか受けられないのは分かってます!」
「……急に声大きくなって、どうしたのカエデ?」
「アリスさん、ちょっと」
私は怪訝そうな顔でこちらを見ていたアリスさんの袖を引いて、耳元で小さな声で話し始めた。
「今、私達の魔力量の多さがバレて、結構注目を集めてるじゃないですか?」
「カエデが水晶割るからじゃん」
「あ、アリスさんも銀色にしたじゃないですか」
「あれは……仕方がなかったことでしょ」
私に指摘をされてアリスさんは気まずそうに顔を逸らしているが、私も人のことを言えた義理ではない。
初めはアリスさんだが、最終的にことを大きくしたのは間違いなく私だ。
「このまま冒険者登録だけして、ここを離れたら勧誘にあったり、凄い目立ってしまうと思うんです。なので、このまま自然にクエストに向かって、ここから立ち去りましょう」
「な、なるほど。確かに、悪くない案だね」
作戦を確認した私達は、並べられたクエストに目を向けた。
一つは薬草の採取。薬草はおじいちゃんの家にいるときに色々教えてもらったし、魔物との戦闘もないので、比較的に受けやすいクエストだと思う。その分、報酬も高くはないのだけれど。
二つ目はホワイトラビットの討伐。どんな魔物かは分からないけど、多分初心者向けなのだろう。報酬はそこまで悪くはない。
そして、三つ目がワイルドボアの討伐。多分、報酬手的に考えても、この三つの中で一番難しいクエストなのだと思う。あと、他と比べてこの魔物は一体倒せばいいみたいだし。
「アリスさんはどれがいいと思いますか?」
「できる限り、おじいちゃんが残したお金には手を付けたくないし、報酬が多いのにしようか」
そう言って、アリスさんはワイルドボアの討伐と書かれている紙を手にしようとしたところで、何かに気づいたように止まった。
「……ねぇ、これ全部受けちゃわない?」
「ぜ、全部ですか?」
アリスさんは私にしか聞こえないくらいの声でそんなことを言ってきた。
魔物がどんなものかも詳細に分かっていない私からすると、とても無謀に感じてしまう。でも、アリスさんは何か考えがあるのか私の反応を見ても冷静だった。
「だって、魔物がいる森まで近くないみたいだし、まとめて受けた方が効率的だって」
「それはそうでしょうけど……それって目立ちませんかね?」
ただでさえ目立ってしまっているのに、初めて受けるクエストが三つ同時なんて、さらに驚かれるんじゃないだろうか。
「大丈夫でしょ。だって、おじいちゃんから聞いたけど、複数の依頼をまとめて受けるのも普通らしいよ」
「あっ、そうなんですね。それなら、問題ないですね。……でも、いちおう慎重にいきましょう」
「そうだね」
作戦会議を終えると、アリスさんは小さく咳ばらいを一つした後、そっと薬草の採取とワイルドボアの討伐の依頼が書かれた紙をカウンターのお姉さんに手渡した。
「えっと、これとこれお願いします」
「えっと、二つまとめてでいいのかな?」
お姉さんはどこか優しそうな口調で、アリスさんに話しかけていた。少し驚いてはいるようだが、別に怪しんだり過度に驚いたりはしていないみたいだ。
アリスさんと目を合わせて頷くと、アリスさんはもう一枚残りのホワイトラビットの討伐依頼の紙もそこに重ねた。
「えーと、じゃあ、あと、これも一緒にお願い出来たり?」
「……わ、分かりました。三つでよろしいですね」
「いけた、いけたみたいだよ、カエデ!」
「さすがです、アリスさん! これなら絶対に悪目立ちしてませんね! はい、三つでお願いします」
この時の私達は知るはずがなかった。
腕の立つ冒険者ならまだしも、始めてクエストを受ける冒険者が、複数の依頼を同時に受けることが異例だということを。
そして、お姉さんの反応が薄かったのは、水晶が壊れたことに未だ驚いていて、ただ上手く反応をすることができなかっただけだったということに。
「は、はい。冒険者登録をした後なので、可能ですけど」
冒険者登録をする際、私達は魔力の多さがバレてしまい、周囲の冒険者と受付の人たちに驚かれてしまった。
しばらくは力を隠す手はずだったのに、いきなりその作戦が難しくなってしまったのだ。
「あの、魔力量が規定値を超えていても、いちおうG級ランクからになるので、受けられるクエストは……この辺ですかね」
カウンターのお姉さんは丁度手元にあったのか、G級の私達でも受けられるクエスト内容が記載してある紙を三枚カウンターに並べた。
「もちろん、冒険者になり立てのG級なんで、簡単なクエストしか受けられないのは分かってます!」
「……急に声大きくなって、どうしたのカエデ?」
「アリスさん、ちょっと」
私は怪訝そうな顔でこちらを見ていたアリスさんの袖を引いて、耳元で小さな声で話し始めた。
「今、私達の魔力量の多さがバレて、結構注目を集めてるじゃないですか?」
「カエデが水晶割るからじゃん」
「あ、アリスさんも銀色にしたじゃないですか」
「あれは……仕方がなかったことでしょ」
私に指摘をされてアリスさんは気まずそうに顔を逸らしているが、私も人のことを言えた義理ではない。
初めはアリスさんだが、最終的にことを大きくしたのは間違いなく私だ。
「このまま冒険者登録だけして、ここを離れたら勧誘にあったり、凄い目立ってしまうと思うんです。なので、このまま自然にクエストに向かって、ここから立ち去りましょう」
「な、なるほど。確かに、悪くない案だね」
作戦を確認した私達は、並べられたクエストに目を向けた。
一つは薬草の採取。薬草はおじいちゃんの家にいるときに色々教えてもらったし、魔物との戦闘もないので、比較的に受けやすいクエストだと思う。その分、報酬も高くはないのだけれど。
二つ目はホワイトラビットの討伐。どんな魔物かは分からないけど、多分初心者向けなのだろう。報酬はそこまで悪くはない。
そして、三つ目がワイルドボアの討伐。多分、報酬手的に考えても、この三つの中で一番難しいクエストなのだと思う。あと、他と比べてこの魔物は一体倒せばいいみたいだし。
「アリスさんはどれがいいと思いますか?」
「できる限り、おじいちゃんが残したお金には手を付けたくないし、報酬が多いのにしようか」
そう言って、アリスさんはワイルドボアの討伐と書かれている紙を手にしようとしたところで、何かに気づいたように止まった。
「……ねぇ、これ全部受けちゃわない?」
「ぜ、全部ですか?」
アリスさんは私にしか聞こえないくらいの声でそんなことを言ってきた。
魔物がどんなものかも詳細に分かっていない私からすると、とても無謀に感じてしまう。でも、アリスさんは何か考えがあるのか私の反応を見ても冷静だった。
「だって、魔物がいる森まで近くないみたいだし、まとめて受けた方が効率的だって」
「それはそうでしょうけど……それって目立ちませんかね?」
ただでさえ目立ってしまっているのに、初めて受けるクエストが三つ同時なんて、さらに驚かれるんじゃないだろうか。
「大丈夫でしょ。だって、おじいちゃんから聞いたけど、複数の依頼をまとめて受けるのも普通らしいよ」
「あっ、そうなんですね。それなら、問題ないですね。……でも、いちおう慎重にいきましょう」
「そうだね」
作戦会議を終えると、アリスさんは小さく咳ばらいを一つした後、そっと薬草の採取とワイルドボアの討伐の依頼が書かれた紙をカウンターのお姉さんに手渡した。
「えっと、これとこれお願いします」
「えっと、二つまとめてでいいのかな?」
お姉さんはどこか優しそうな口調で、アリスさんに話しかけていた。少し驚いてはいるようだが、別に怪しんだり過度に驚いたりはしていないみたいだ。
アリスさんと目を合わせて頷くと、アリスさんはもう一枚残りのホワイトラビットの討伐依頼の紙もそこに重ねた。
「えーと、じゃあ、あと、これも一緒にお願い出来たり?」
「……わ、分かりました。三つでよろしいですね」
「いけた、いけたみたいだよ、カエデ!」
「さすがです、アリスさん! これなら絶対に悪目立ちしてませんね! はい、三つでお願いします」
この時の私達は知るはずがなかった。
腕の立つ冒険者ならまだしも、始めてクエストを受ける冒険者が、複数の依頼を同時に受けることが異例だということを。
そして、お姉さんの反応が薄かったのは、水晶が壊れたことに未だ驚いていて、ただ上手く反応をすることができなかっただけだったということに。
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