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第15話 今後の方針
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「や、やっと着いた」
「ここが王都、王都ベルリア……」
私達はサーベルウルフを討伐した後、それから数日馬車で揺れて王都、ベルリアに到着した。
馬車から下りると、そこに広がっていたのはおじいちゃんの家があった街なんか比じゃないくらい、栄えている街並みが広がっていた。
活気のある商店や食べ物を売っている市場からは、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐってくるし、目移りしそうなくらいの多くの店と商品があった。
そして、その驚きを埋め尽くすほどの多くの人が道を行き交っていた。
おじいちゃんが言っていた通り、比較するのが失礼なくらいに賑わっている。
「すごいね……」
「そうですね。人が多すぎるくらいいますし」
「あ、お嬢ちゃん達! これを受け取ってくれ!」
「あれ? 御者のおじさんだ」
私達が馬車を降りて人の多さと街並みに圧倒されていると、後ろから慌てたように御者のおじさんが追いかけてきた。
何か忘れものでもしただろうか?
そんなことを考えながら、振り返ると御者のおじさんが何かが入った小袋を私達に手渡してきた。
それを手のひらで受け取ると、中からジャラっとしたコインが擦れるような音が聞こえてきた。
「え? お金ですか? でも、なんで?」
「なんでって、お嬢ちゃんたちがサーベルウルフを倒してだろ? そのお礼だよ」
「え? いいんですか?」
手のひらに乗せられている袋は中々の重量感がある。この重さの感じだと、決して少なくない量が入っているような気がする。
「いいもなにも、お嬢ちゃんたちがいなかったら、今日ここには着けてないからね。お礼をするのは普通のことだよ」
「アリスさん、貰っちゃっていいんですかね?」
「せっかく、くれるって言うだし、貰っておこうよ。おじさん、ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます!」
私達がお礼をすると、御者のおじさんは少しの笑顔を残して、私達が乗っていた馬車に再び乗り込んでいった。
もう他の街に行くのかなと思うと、御者のおじさんの苦労が窺えた。
それにしても、まさかクエストを受けたわけでもないのに、こうしてお礼を貰えるとは思わなかった。
「カエデ。とりあえず、休憩しない? 王都に来たから色々見たいっていう気もするけど、一旦宿取って休もうよ」
「そうしましょう。これだけ人が多いと、宿を見つけるのも大変そうですしね。あと、少しお話もあります」
「お話?」
アリスさんは私の言葉を聞いて、可愛らしく首を傾げていた。その顔から何も身の覚えがないことが見て取れた。
そう、先程のサーベルウルフを討伐したときに、私はとある懸念点を見つけたのだった。そして、それは今のうちに相談しておく必要がありそうなお話だった。
私達は馬車乗り場から商店街を抜けて、少し落ち着いている通りで宿を探すことにした。
「それで、話って何?」
私達は比較的安めの宿を見つけたので、少し早いけれどその宿に入って体を休めることにした。
一部屋に二つのベッドと、椅子と机だけがあるようなシンプル過ぎる部屋で、アリスさんは全身をベッドに投げ出していた。
私はベッドに腰だけを掛けて、アリスさんに向かい合ってずっと考えていたことを口にすることにした。
「単刀直入に言うと、今後は力を隠した方がいいんじゃないかって話です」
「力を隠す?」
「はい。多分このままいくと私達、実験体扱いされるような気がします」
「じ、実験体?! なんで急にそんな話になってんの?!」
くつろぐようにベッドに横になっていたアリスさんは、私の言葉を聞いて驚いたのか、ぴょんとベッドの上で跳ねて、畏まったように座り直した。
そして、ずいっと顔を前のめりにして、私の話の続きを促してきた。
「多分、私達が冒険者登録してクエストをこなしていくと、結構活躍できると思うんです。でも、活躍い過ぎて目立ち過ぎてしまう可能性が高い。そうなると、私達に興味を持った人が私達のことを調べて、私達の正体がバレることがあるんじゃないですか?」
「ば、バレると何かマズいの?」
「アリスさんはホムンクルスの成功例ですから、色々と調べられると思います。そして、私も別の世界から来た人間なので、体の隅々まで調べられるかも……」
一回戦闘をしただけなのに、あれだけ多くの視線を集めてしまったのだ。このまま強さをひけらかすように戦っていたら、いつかその強さの理由がバレてしまうかもしれない。
そうなると、私達の力の強さを解明するために実験施設に送られてしまう可能性がある。多分、私以上にアリスさんが危ない。
「でも、私は最終的にはホムンクルスだって言うつもりだよ?」
「それは私も同じです。でも、どんな人が来ても追い返せるくらい強くなるまでは、力を隠して冒険者をすることにしませんか?」
いつか有名な冒険者になって、おじいちゃんの汚名を晴らす目標は変わらない。でも、それより先に自分の身の安全も考えないと、夢の前に命が危ない。
だから、自分の身を完全に守れると分かるまでは、力を隠して安全に生きていた方がいいと思う。
「分かった。実験体にはなりたくないもんね」
「はい。至って普通の冒険者っぽく生きていきましょう」
こうして、私達は平凡な冒険者を目指しつつ、力を身に着けることを決めたのだった。
……いちおう、そういうつもりではあったのだ。
「ここが王都、王都ベルリア……」
私達はサーベルウルフを討伐した後、それから数日馬車で揺れて王都、ベルリアに到着した。
馬車から下りると、そこに広がっていたのはおじいちゃんの家があった街なんか比じゃないくらい、栄えている街並みが広がっていた。
活気のある商店や食べ物を売っている市場からは、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐってくるし、目移りしそうなくらいの多くの店と商品があった。
そして、その驚きを埋め尽くすほどの多くの人が道を行き交っていた。
おじいちゃんが言っていた通り、比較するのが失礼なくらいに賑わっている。
「すごいね……」
「そうですね。人が多すぎるくらいいますし」
「あ、お嬢ちゃん達! これを受け取ってくれ!」
「あれ? 御者のおじさんだ」
私達が馬車を降りて人の多さと街並みに圧倒されていると、後ろから慌てたように御者のおじさんが追いかけてきた。
何か忘れものでもしただろうか?
そんなことを考えながら、振り返ると御者のおじさんが何かが入った小袋を私達に手渡してきた。
それを手のひらで受け取ると、中からジャラっとしたコインが擦れるような音が聞こえてきた。
「え? お金ですか? でも、なんで?」
「なんでって、お嬢ちゃんたちがサーベルウルフを倒してだろ? そのお礼だよ」
「え? いいんですか?」
手のひらに乗せられている袋は中々の重量感がある。この重さの感じだと、決して少なくない量が入っているような気がする。
「いいもなにも、お嬢ちゃんたちがいなかったら、今日ここには着けてないからね。お礼をするのは普通のことだよ」
「アリスさん、貰っちゃっていいんですかね?」
「せっかく、くれるって言うだし、貰っておこうよ。おじさん、ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます!」
私達がお礼をすると、御者のおじさんは少しの笑顔を残して、私達が乗っていた馬車に再び乗り込んでいった。
もう他の街に行くのかなと思うと、御者のおじさんの苦労が窺えた。
それにしても、まさかクエストを受けたわけでもないのに、こうしてお礼を貰えるとは思わなかった。
「カエデ。とりあえず、休憩しない? 王都に来たから色々見たいっていう気もするけど、一旦宿取って休もうよ」
「そうしましょう。これだけ人が多いと、宿を見つけるのも大変そうですしね。あと、少しお話もあります」
「お話?」
アリスさんは私の言葉を聞いて、可愛らしく首を傾げていた。その顔から何も身の覚えがないことが見て取れた。
そう、先程のサーベルウルフを討伐したときに、私はとある懸念点を見つけたのだった。そして、それは今のうちに相談しておく必要がありそうなお話だった。
私達は馬車乗り場から商店街を抜けて、少し落ち着いている通りで宿を探すことにした。
「それで、話って何?」
私達は比較的安めの宿を見つけたので、少し早いけれどその宿に入って体を休めることにした。
一部屋に二つのベッドと、椅子と机だけがあるようなシンプル過ぎる部屋で、アリスさんは全身をベッドに投げ出していた。
私はベッドに腰だけを掛けて、アリスさんに向かい合ってずっと考えていたことを口にすることにした。
「単刀直入に言うと、今後は力を隠した方がいいんじゃないかって話です」
「力を隠す?」
「はい。多分このままいくと私達、実験体扱いされるような気がします」
「じ、実験体?! なんで急にそんな話になってんの?!」
くつろぐようにベッドに横になっていたアリスさんは、私の言葉を聞いて驚いたのか、ぴょんとベッドの上で跳ねて、畏まったように座り直した。
そして、ずいっと顔を前のめりにして、私の話の続きを促してきた。
「多分、私達が冒険者登録してクエストをこなしていくと、結構活躍できると思うんです。でも、活躍い過ぎて目立ち過ぎてしまう可能性が高い。そうなると、私達に興味を持った人が私達のことを調べて、私達の正体がバレることがあるんじゃないですか?」
「ば、バレると何かマズいの?」
「アリスさんはホムンクルスの成功例ですから、色々と調べられると思います。そして、私も別の世界から来た人間なので、体の隅々まで調べられるかも……」
一回戦闘をしただけなのに、あれだけ多くの視線を集めてしまったのだ。このまま強さをひけらかすように戦っていたら、いつかその強さの理由がバレてしまうかもしれない。
そうなると、私達の力の強さを解明するために実験施設に送られてしまう可能性がある。多分、私以上にアリスさんが危ない。
「でも、私は最終的にはホムンクルスだって言うつもりだよ?」
「それは私も同じです。でも、どんな人が来ても追い返せるくらい強くなるまでは、力を隠して冒険者をすることにしませんか?」
いつか有名な冒険者になって、おじいちゃんの汚名を晴らす目標は変わらない。でも、それより先に自分の身の安全も考えないと、夢の前に命が危ない。
だから、自分の身を完全に守れると分かるまでは、力を隠して安全に生きていた方がいいと思う。
「分かった。実験体にはなりたくないもんね」
「はい。至って普通の冒険者っぽく生きていきましょう」
こうして、私達は平凡な冒険者を目指しつつ、力を身に着けることを決めたのだった。
……いちおう、そういうつもりではあったのだ。
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