おじいちゃんの汚名を払拭、最強姉妹の冒険記録~長所がなかったはずの私の長所は膨大な魔力量?!~

荒井竜馬

文字の大きさ
上 下
15 / 21

第15話 今後の方針

しおりを挟む
「や、やっと着いた」

「ここが王都、王都ベルリア……」

 私達はサーベルウルフを討伐した後、それから数日馬車で揺れて王都、ベルリアに到着した。

 馬車から下りると、そこに広がっていたのはおじいちゃんの家があった街なんか比じゃないくらい、栄えている街並みが広がっていた。

 活気のある商店や食べ物を売っている市場からは、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐってくるし、目移りしそうなくらいの多くの店と商品があった。

そして、その驚きを埋め尽くすほどの多くの人が道を行き交っていた。

 おじいちゃんが言っていた通り、比較するのが失礼なくらいに賑わっている。

「すごいね……」

「そうですね。人が多すぎるくらいいますし」

「あ、お嬢ちゃん達! これを受け取ってくれ!」

「あれ? 御者のおじさんだ」

 私達が馬車を降りて人の多さと街並みに圧倒されていると、後ろから慌てたように御者のおじさんが追いかけてきた。

 何か忘れものでもしただろうか? 

そんなことを考えながら、振り返ると御者のおじさんが何かが入った小袋を私達に手渡してきた。

それを手のひらで受け取ると、中からジャラっとしたコインが擦れるような音が聞こえてきた。

「え? お金ですか? でも、なんで?」

「なんでって、お嬢ちゃんたちがサーベルウルフを倒してだろ? そのお礼だよ」

「え? いいんですか?」

 手のひらに乗せられている袋は中々の重量感がある。この重さの感じだと、決して少なくない量が入っているような気がする。

「いいもなにも、お嬢ちゃんたちがいなかったら、今日ここには着けてないからね。お礼をするのは普通のことだよ」

「アリスさん、貰っちゃっていいんですかね?」

「せっかく、くれるって言うだし、貰っておこうよ。おじさん、ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます!」

 私達がお礼をすると、御者のおじさんは少しの笑顔を残して、私達が乗っていた馬車に再び乗り込んでいった。

 もう他の街に行くのかなと思うと、御者のおじさんの苦労が窺えた。

 それにしても、まさかクエストを受けたわけでもないのに、こうしてお礼を貰えるとは思わなかった。

「カエデ。とりあえず、休憩しない? 王都に来たから色々見たいっていう気もするけど、一旦宿取って休もうよ」

「そうしましょう。これだけ人が多いと、宿を見つけるのも大変そうですしね。あと、少しお話もあります」

「お話?」

 アリスさんは私の言葉を聞いて、可愛らしく首を傾げていた。その顔から何も身の覚えがないことが見て取れた。

 そう、先程のサーベルウルフを討伐したときに、私はとある懸念点を見つけたのだった。そして、それは今のうちに相談しておく必要がありそうなお話だった。

 私達は馬車乗り場から商店街を抜けて、少し落ち着いている通りで宿を探すことにした。


「それで、話って何?」

 私達は比較的安めの宿を見つけたので、少し早いけれどその宿に入って体を休めることにした。

 一部屋に二つのベッドと、椅子と机だけがあるようなシンプル過ぎる部屋で、アリスさんは全身をベッドに投げ出していた。

 私はベッドに腰だけを掛けて、アリスさんに向かい合ってずっと考えていたことを口にすることにした。

「単刀直入に言うと、今後は力を隠した方がいいんじゃないかって話です」

「力を隠す?」

「はい。多分このままいくと私達、実験体扱いされるような気がします」

「じ、実験体?! なんで急にそんな話になってんの?!」

 くつろぐようにベッドに横になっていたアリスさんは、私の言葉を聞いて驚いたのか、ぴょんとベッドの上で跳ねて、畏まったように座り直した。

 そして、ずいっと顔を前のめりにして、私の話の続きを促してきた。

「多分、私達が冒険者登録してクエストをこなしていくと、結構活躍できると思うんです。でも、活躍い過ぎて目立ち過ぎてしまう可能性が高い。そうなると、私達に興味を持った人が私達のことを調べて、私達の正体がバレることがあるんじゃないですか?」

「ば、バレると何かマズいの?」

「アリスさんはホムンクルスの成功例ですから、色々と調べられると思います。そして、私も別の世界から来た人間なので、体の隅々まで調べられるかも……」

 一回戦闘をしただけなのに、あれだけ多くの視線を集めてしまったのだ。このまま強さをひけらかすように戦っていたら、いつかその強さの理由がバレてしまうかもしれない。

 そうなると、私達の力の強さを解明するために実験施設に送られてしまう可能性がある。多分、私以上にアリスさんが危ない。

「でも、私は最終的にはホムンクルスだって言うつもりだよ?」

「それは私も同じです。でも、どんな人が来ても追い返せるくらい強くなるまでは、力を隠して冒険者をすることにしませんか?」

 いつか有名な冒険者になって、おじいちゃんの汚名を晴らす目標は変わらない。でも、それより先に自分の身の安全も考えないと、夢の前に命が危ない。

 だから、自分の身を完全に守れると分かるまでは、力を隠して安全に生きていた方がいいと思う。

「分かった。実験体にはなりたくないもんね」

「はい。至って普通の冒険者っぽく生きていきましょう」

 こうして、私達は平凡な冒険者を目指しつつ、力を身に着けることを決めたのだった。

 ……いちおう、そういうつもりではあったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者ぴよ

まめお
児童書・童話
普通に飼育されてた変な動物。 それがぴよ。 飼育員にある日、突然放り出されて旅に出る話。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

処理中です...