おじいちゃんの汚名を払拭、最強姉妹の冒険記録~長所がなかったはずの私の長所は膨大な魔力量?!~

荒井竜馬

文字の大きさ
上 下
14 / 21

第14話 魔物の実力と勧誘

しおりを挟む
「今の凄かったな! お嬢ちゃんたち魔法使いなのか?」

「サーベルウルフをあんな一瞬で倒すなんて、すごいな!」

 サーベルウルフを倒した後、私達は冒険者の人たちに囲まれていた。

 男の人に囲まれるということに慣れていないので、私は反応に困ってしまっていた。

「あ、いえ、これから冒険者になろうと思っててーーあ、アリスさん? なんでこんなに驚かれてるんですか?」

「カエデの氷魔法が大き過ぎたからでしょ?」

 アリスさんにそっと耳打ちをして聞いてみると、アリスさんはジトっした目で私を見てそんなことを口にした。

 冒険者さん達の話を聞いていると、確かに魔法を褒めてくれる言葉もある。でも、それよりもサーベルウルフを倒したことに対する驚きの言葉の方が多い気がする。

「いやいや、助かったよ。俺達F級冒険だと倒せても時間がかかっただろうからな」

「……サーベルウルフって、もしかして、結構強いんですか?」

 私達と冒険者さんたちの間で何か食い違いがある気がしたので、私は少し遠慮気味にそんなことを聞いてみた。

「ん? まぁ、F級冒険者4人で挑めば倒せないことはないってくらいだな。まさか、お嬢ちゃんたちが二人で倒しちゃうとは思わなかったぜ」

 冒険者さんは頭をかいて、助けてもらったことを申し訳なさそうに眉をハの字にしていた。

 話を聞く限り、冒険者にもなっていない私達が倒すにしては目立ちすぎる相手だったみたいだ。

「あ、アリスさん、そんなに強くないって言ってませんでした?」

「お、おじいちゃんはそう言ってたんだもん」

 聞いていた話と違うと思って、アリスさんの袖を引いて抗議をしてみると、アリスさんも冒険者さんの言葉に目を丸くさせた後に、そんな言葉を口にしていた。

 どうやら、おじいちゃんからすると強くないというだけで、普通の冒険者たちからしたら、そこそこ手こずる相手なのかもしれない。

「確か、この馬車って王都行きだったよな? どうよ、王都に着いたら俺たちのパーティに合流しないか?」

「え? いや、私たちまだ冒険者登録もしてませんよ?」

「それでも、そこら辺にいる冒険者よりも力は上だろ」

 私とアリスさんが小声で話しているのを見た冒険者の一人が、突然そんなことを言ってきた。

 これから、冒険者を目指す上で経験者がいるパーティに入れるのは嬉しいもしれない。

 そう思って、アリスさんの方にちらりと視線を向けたのだけど、アリスさんはその冒険者さんを疑うように細めた目を向けていた。

 その視線の意味が分からなくて、きょとんと首を傾げていると、アリスさんは静かに口を開いた。

「……私達、まだ十二歳と十歳ですけど、それでもいいんですか?」

「え? じゅ、十二歳か……」

 さっきまでノリノリだった冒険者さんは、アリスさんの言葉を聞いて急に怖気づいたように眉を潜めて、私の方をちらりと見た。

「私が十二歳で、この子はまだ十歳です」

「え、十歳?!」

 アリスさんが続けてそんなことを言うと、冒険者さんは驚いて目を見開いた後に、他の冒険者さん達と目配せをして小さく頷いた。

「……ま、また五年後くらいに声掛けようかな、なんて」

 そういうと、私達が倒したサーベルウルフの方に行ってしまった。

 急に興味を失ったように私達から離れると、興味の対象をサーベルウルフの方に移して、素材のはぎ取りに行ってしまった。

「あれ? 行っちゃいましたね?」

「……あの冒険者たち、カエデ目当てだったね」

「え? 私ですか? でも、アリスさんだって複数の氷の塊を飛ばしてましたし、ただ大きいだけの私よりも……」

「そっちじゃなくて、カエデが可愛いからぐいぐい来てたって意味。もちろん、魔法が凄いっていのもあるけど」

 一瞬、アリスさんの言っている言葉のみが分からなくて私は首を傾げた。

 それから少し考えた後、ようやく言っている言葉の意味が分かって、私は体が少し熱くなってしまった。

「カエデはもっと自分が可愛いってことを自覚した方がいいよ」

 アリスさんにジトっとした目で見られて、私は急いでその言葉を訂正するように首と手を大きく振ってその言葉を否定した。

「え、いや、可愛い? 私、そんなモテたってこともないですよ?」

「そんなに可愛いのに?」

「それを言うなら、アリスさんの方が可愛いですよ。お人形さんみたいですし」

「わ、私はそんなことないから! それに、カエデとは違う気がするし」

 私がさらりとそんなことを言うと、アリスさんは不意を突かれたせいか頬を赤く染めていた。

 言われ慣れてないような初心な反応。そんな反応を可愛いと思うと同時に、私も同じように顔を赤くしていないか不安になる。

「やっぱり、冒険者が危険って言うのは本当みたい。……私がしっかりしないとね」

 頬を赤くしながら、何か決意をしたようにアリスさんはそんなことを言っていた。

「そこの可愛いお嬢さんたち! 出発するから、馬車に乗ってくれ!」

 そして、御者のおじさんに大声でそんなことを言われて、私達は周囲の視線を受けながら馬車に戻ることになったのだった。

 馬車に戻ってから、周囲の人の視線が私達に集まっていたのは、何かの勘違いであって欲しかった。

 ……見世物になった気分で恥ずかしかったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者ぴよ

まめお
児童書・童話
普通に飼育されてた変な動物。 それがぴよ。 飼育員にある日、突然放り出されて旅に出る話。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

四神黎明譚

コトノハーモニー
児童書・童話
世間知らずのランファは、白い虎の子・クルルをお供に、山深くの里を出た。 「お前は自分の使命を果たしなさい」 大ばば様のお告げによって、辿りついたトウシュクの町はある危機に瀕していた……。 これは一人の少女が運命に出会い、世界の存亡をめぐる中華風ファンタジー

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

処理中です...