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第8話 歓迎会
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「それでは、カエデちゃんが我が家にやってきてくれたこと祝って、乾杯!!」
「かんぱーい!」
「か、かんぱい」
料理をすべて終えて、私がリビングに戻ったときには、すでに酔っ払いつつあったオラルさんが乾杯の挨拶をしてくれた。
オラルさんのコップの中には引き続きお酒が、私とアリスさんのコップの中には柑橘系の甘いジュースが注がれていた。
「カエデちゃんは料理もできるのじゃな。美味い、美味いぞ!」
「うん、本当にお店で食べるみたいな味がする! もしかして、家が料理人の家系だったりした?」
「いえ、私が作ったのって本当に簡単な物だけですから。あっ、本当に美味しい」
私が作った料理を凄い美味しいに食べているのを見て、私もさっき焼いたばかりのお肉を食べてみた。
すると、噛んだ瞬間に口の中で肉汁が溢れだして、柔らかく口の中で溶けていった。その肉と、茶褐色のソースが絶妙に口の中で合わさって、肉の味を際立てていた。
「……これって、私の料理の腕というよりも、お肉の素材が良いだけなような気がする」
今までアリスさんがこの家で食べてきた料理は、基本的に素焼きした物だけだったって言ってたけど、素焼きでも十分に美味しいといえるような素材の質だと思う。
というか、こんなに美味しいお肉は前にいた世界でも食べたことがない。
「オラルさん、このお肉って何のお肉なんですか?」
「……」
オラルさんに尋ねると、オラルさんはにっこりと幸せそうな笑みを向けるだけで、続きを答えようとしなかった。
何だろうと思って少し考えてみて、すぐにその原因が分かったので、私は少しだけ照れながら言葉を続けた。
「お、おじいちゃん、このお肉って何のお肉なんですか?」
私におじいちゃんと呼ばれたオラルさんは満足そうに顔を破顔させた後、優しい口調で言葉を続けた。
「これはの、ブラックカウという牛の魔物のお肉じゃよ」
「へー、魔物の……え、魔物のお肉って食べれるんですか?」
「もちろんじゃ。ブラックカウは大人しいから、家畜として飼われてたりもするぞ」
「そ、そうなんですね」
勝手なイメージで魔物ってゲームとかに出てくる敵キャラってイメージで、それを食べるという発想はなかったかもしれない。
ていうか、普通に魔物もこの世界にいたんだ。
魔物の肉だと認識してからもう一口その肉を食べてみても、口に広がる美味しさは全く変わらなかった。
……美味しいなら、別に魔物肉でも問題ないよね。
「それにしても、ここまで美味しいとなると、また料理を作って欲しいくらいじゃな」
「こんなのでよければまた作りますよ」
「本当?! やったぁ、またこんな美味しいの食べれるんだ!」
「住まわせていただくんですから、他にできることあったら言ってくださいね?」
正直、ここまで絶賛してもらえるとは思わなかった。そんなに喜んでもらえるのなら、もっと色んな事を手伝いたい。
そう思ってそんなことを言ってみると、オラルさんは顎髭を触って少しだけ考えこんだ後、ごくごくとお酒を飲んでから口を開いた。
「それじゃあ、後はおじいちゃんと、アリスちゃんのお話相手になっておくれ」
「お話って、本当にそれだけでいいんですか?」
「いいのいいの。おじいちゃん、ただ孫が欲しいだけなんだから。話し相手になってあげるのが、一番いいの」
私が食い下がろうとすると、アリスさんが顔を緩めているオラルさんを呆れるように見ながら、そんなことを言っていた。
そういえば、以前にもオラルさんは孫が欲しいだけだと言っていたような気がする。
そうなると、私がいるだけでオラルさんにとっても嬉しいということなのだろうか。
……なんだから、少しだけ照れ臭いような気もする。
「アリスさんは何かして欲しいこととかありますか?」
「私? うーん。あっ、じゃあ、カエデがいた世界の話聞きたいかも」
「私がいた世界の話ですか?」
私は予想外の返答に驚きつつも、何か面白い話があったかどうか考えてみた。
でも、すぐに出てくるような話は他愛もないような話ばかりで、どうも盛り上がりに欠けるようなものしかない気がする。
「あっ、ごめん。悲しいこと思い出させちゃった?」
私が少し黙っていると、アリスさんが私を心配したように眉をハの字にして私を気遣ってくれた。
私が生前の話を思い出して、悲しい気持ちになっていると思ってくれたのかもしれない。
「いえ、そうじゃくて……爆笑喝采のお話をできるような自信がなくて」
私が真剣なトーンでそんなことを言うと、二人は噴き出したように笑い声をあげていた。アリスさんなんか目に涙を浮かべるほど笑っている。
「あ、あれ?」
「ふふっ、大丈夫だよ。べつに、面白い話をしてくれって言ってるわけじゃないの。むしろ、普通のカエデの話を聞きたいんだよ」
「孫の話であれば、ワシはどんな話でも聞きたいぞ」
「そ、そうなんですか。えっと、それじゃあ、私のいた世界ではですねーー」
思いもよらぬところで笑いを取れたせいか、私は変な緊張が抜けていた。口の筋肉が緩まったせいか、話し始めると自然と口が回り、私は元の世界の話と私の話をした。
そんな私の何でもないような話を面白そうに聞いてくれるのが嬉しくて、私はしばらく自分の話を続けた。
それから二人の話を聞いたりしていると、時間が経つのはあっという間だった。
昼間から始めたパーティーは夜になっても終わることなく、時間を忘れるほど長く続いたのだった。
「かんぱーい!」
「か、かんぱい」
料理をすべて終えて、私がリビングに戻ったときには、すでに酔っ払いつつあったオラルさんが乾杯の挨拶をしてくれた。
オラルさんのコップの中には引き続きお酒が、私とアリスさんのコップの中には柑橘系の甘いジュースが注がれていた。
「カエデちゃんは料理もできるのじゃな。美味い、美味いぞ!」
「うん、本当にお店で食べるみたいな味がする! もしかして、家が料理人の家系だったりした?」
「いえ、私が作ったのって本当に簡単な物だけですから。あっ、本当に美味しい」
私が作った料理を凄い美味しいに食べているのを見て、私もさっき焼いたばかりのお肉を食べてみた。
すると、噛んだ瞬間に口の中で肉汁が溢れだして、柔らかく口の中で溶けていった。その肉と、茶褐色のソースが絶妙に口の中で合わさって、肉の味を際立てていた。
「……これって、私の料理の腕というよりも、お肉の素材が良いだけなような気がする」
今までアリスさんがこの家で食べてきた料理は、基本的に素焼きした物だけだったって言ってたけど、素焼きでも十分に美味しいといえるような素材の質だと思う。
というか、こんなに美味しいお肉は前にいた世界でも食べたことがない。
「オラルさん、このお肉って何のお肉なんですか?」
「……」
オラルさんに尋ねると、オラルさんはにっこりと幸せそうな笑みを向けるだけで、続きを答えようとしなかった。
何だろうと思って少し考えてみて、すぐにその原因が分かったので、私は少しだけ照れながら言葉を続けた。
「お、おじいちゃん、このお肉って何のお肉なんですか?」
私におじいちゃんと呼ばれたオラルさんは満足そうに顔を破顔させた後、優しい口調で言葉を続けた。
「これはの、ブラックカウという牛の魔物のお肉じゃよ」
「へー、魔物の……え、魔物のお肉って食べれるんですか?」
「もちろんじゃ。ブラックカウは大人しいから、家畜として飼われてたりもするぞ」
「そ、そうなんですね」
勝手なイメージで魔物ってゲームとかに出てくる敵キャラってイメージで、それを食べるという発想はなかったかもしれない。
ていうか、普通に魔物もこの世界にいたんだ。
魔物の肉だと認識してからもう一口その肉を食べてみても、口に広がる美味しさは全く変わらなかった。
……美味しいなら、別に魔物肉でも問題ないよね。
「それにしても、ここまで美味しいとなると、また料理を作って欲しいくらいじゃな」
「こんなのでよければまた作りますよ」
「本当?! やったぁ、またこんな美味しいの食べれるんだ!」
「住まわせていただくんですから、他にできることあったら言ってくださいね?」
正直、ここまで絶賛してもらえるとは思わなかった。そんなに喜んでもらえるのなら、もっと色んな事を手伝いたい。
そう思ってそんなことを言ってみると、オラルさんは顎髭を触って少しだけ考えこんだ後、ごくごくとお酒を飲んでから口を開いた。
「それじゃあ、後はおじいちゃんと、アリスちゃんのお話相手になっておくれ」
「お話って、本当にそれだけでいいんですか?」
「いいのいいの。おじいちゃん、ただ孫が欲しいだけなんだから。話し相手になってあげるのが、一番いいの」
私が食い下がろうとすると、アリスさんが顔を緩めているオラルさんを呆れるように見ながら、そんなことを言っていた。
そういえば、以前にもオラルさんは孫が欲しいだけだと言っていたような気がする。
そうなると、私がいるだけでオラルさんにとっても嬉しいということなのだろうか。
……なんだから、少しだけ照れ臭いような気もする。
「アリスさんは何かして欲しいこととかありますか?」
「私? うーん。あっ、じゃあ、カエデがいた世界の話聞きたいかも」
「私がいた世界の話ですか?」
私は予想外の返答に驚きつつも、何か面白い話があったかどうか考えてみた。
でも、すぐに出てくるような話は他愛もないような話ばかりで、どうも盛り上がりに欠けるようなものしかない気がする。
「あっ、ごめん。悲しいこと思い出させちゃった?」
私が少し黙っていると、アリスさんが私を心配したように眉をハの字にして私を気遣ってくれた。
私が生前の話を思い出して、悲しい気持ちになっていると思ってくれたのかもしれない。
「いえ、そうじゃくて……爆笑喝采のお話をできるような自信がなくて」
私が真剣なトーンでそんなことを言うと、二人は噴き出したように笑い声をあげていた。アリスさんなんか目に涙を浮かべるほど笑っている。
「あ、あれ?」
「ふふっ、大丈夫だよ。べつに、面白い話をしてくれって言ってるわけじゃないの。むしろ、普通のカエデの話を聞きたいんだよ」
「孫の話であれば、ワシはどんな話でも聞きたいぞ」
「そ、そうなんですか。えっと、それじゃあ、私のいた世界ではですねーー」
思いもよらぬところで笑いを取れたせいか、私は変な緊張が抜けていた。口の筋肉が緩まったせいか、話し始めると自然と口が回り、私は元の世界の話と私の話をした。
そんな私の何でもないような話を面白そうに聞いてくれるのが嬉しくて、私はしばらく自分の話を続けた。
それから二人の話を聞いたりしていると、時間が経つのはあっという間だった。
昼間から始めたパーティーは夜になっても終わることなく、時間を忘れるほど長く続いたのだった。
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