おじいちゃんの汚名を払拭、最強姉妹の冒険記録~長所がなかったはずの私の長所は膨大な魔力量?!~

荒井竜馬

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第6話 近くの街

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「久しぶりの街だぁ!」

「酒と肉を狩って家に籠るんじゃー!」

「……街、ですか?」

 服を乾かした私達は山から下りてす、ぐ近くの街まで来ていた。

 オラルさんの家を出てしばらく歩いていく中で、あそこが山だったことに気がついた。

 ここまで下りてくるのに結構時間かかったし、結構な山奥にいたんだなと実感した。

「カエデ? どうかしたの?」

「いえ、街というよりも町だなと」

 街と聞いていたから勝手に東京みたいな栄えている所を想像したけど、ぽつぽつと店が並ぶ程度の街並みだった。

 そうだよね、異世界に東京みたいな街並みがあるわけないよね。

 でも、勝手にもっと栄えているのかとか想像しちゃうのも仕方がないと思う。

 アニメの世界の中の街も、もう少し栄えていたような気がするし。

「まぁ、街と言ってもここは田舎じゃからな」

「え、そうなんですか? ていうことは、もっと栄えている街もあるってことですか?」

「王都などはここと比べるのも失礼なくらい、栄えておるぞ」

 オラルさんは顎髭を触りながら、少し遠くを見ながらそんなことを口にしていた。ふざけたような様子が鳴りを潜めていた気がしたので、私は少しだけ首を傾げてしまっていた。

「おじいちゃん、カエデと服飼ってくるからお金ちょうだいっ」

「服? それなら、おじいちゃんも一緒にーー」

「だめだって、女の子に必要な物とかも買うんだから。そんなところについてきたら、おじいちゃんカエデに嫌われちゃうよ?」

 アリスさんはオラルさんを注意するように、演技がかった口調でそんなことを言っていた。

別に嫌いにはなったりはしないけど、買う物を考えると見られたくないものもあったりはする。

 だから、おどけた口調でそんな指摘をしてくれるアリスさんの対応が、少し助かったりもした。

「き、嫌われたくはないのぅ。か、カエデちゃん、後で買った服を着て見せてくれるかのぅ?」

「あっ、はい。それくらいでしたら、喜んで」

 一瞬沈んでしまったようなオラルさんだったが、私の返答を聞いてすぐに元気を取り戻したようだった。

 むしろ、さっきよりも余計に元気になっているような気がする。

「それじゃあ、ワシは一通り買い物済ませてくるから、後で公園のベンチの方に来るのじゃぞ!」

 オラルさんはそう言うと、アリスさんにお金の入った小袋を差し出した。

 アリスさんがそれを受け取ると、オラルさんは近くにいたお店の人に絡みながら笑顔でどこかの店へと入っていた。

 そのやり取りを見るだけで、オラルさんがこの街の人に好かれていることが見てとれた。

「……オラルさんって、すごい気さくな方ですよね」

 私達に対する反応をもそうだけれど、街の人との話し方を見てもそれが伝わってきた。あんなにフランクに人と話せるのは結構羨ましい。

「気さくって言うか、何も考えてないんだって。ずっとあんな感じだよ」

 アリスさんは苦笑交じりにそんな言葉を口にしていた。

私がオラルさんに羨むような目を見ていると、アリスさんは微かに呆れるような笑みを漏らして、言葉を続けた。

「やっぱり、ここは田舎なんだね。カエデがいたところは、もっと栄えてたの?」

 歩き出したアリスさんは先程の会話を思い出したのか、辺りを見渡しながらそんな言葉を口にした。

「そうですね。こことは結構違うかもしれません。あと、買い物をするためにこんなに歩くってのも初めてです」

「あっ、すぐ近くにお店があったんだ」

「それもありますけど、基本的に徒歩で長距離の移動はしなかったですね」

 人生でこんなに歩いたのは、家族で山登りをした時くらいだった。私と違って二人は何も気にならない素振りで長時間歩いていたし、この世界では徒歩の移動が結構主流なのかもしれない。

「馬車移動ってこと?」

「大体そんな感じですね。えっと、馬の代わりに燃料で走るんですけど、なんか鉄でできた装甲みたいなので勢いよく走るんです」

「え、なにそれ。普通に怖くない?」

「そ、そうですね。改めて言われると、怖いかもしれません」

 鉄の塊が高速で動いてくるというのは、確かに少し怖いかもしれない。

 それが当たり前だと思って生きてきたから何も感じなかったけど、改めて指摘されるとその光景は少し異常かもしれなかった。

「あっ……そういえば、空気が美味しいですね」

「え? うーん……普通じゃない?」

「いえ、そんなことないですよ」

 気づかなかったけど、改めて意識をして呼吸をしてみると、いつもよりも多くの空気が肺に広がっている気がする。

 空気が澄んでいるというのは、排気ガスという概念がないこの世界の空気のことを言うのかもしてない。

 車がなくて、移動をするのも一苦労な世界。それでも、こんなふうに空気が澄んでいるのなら。少し多く歩くのも悪くないかって思ってしまう。

「着いたよ、ここが服屋」

「……結構こじんまりとしたお店ですね」

 お店の中に入ったときに思ったのだけど、少し欲を言うのなら、取り扱う服の種類がもう少しあってもいいかなって思ったりもした。
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