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第2話 私が異世界に呼ばれた理由

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「ワシは、アルエド・オラル。おじいちゃんと呼んでくれ」

「私はアルエド・アリス。ふふっ、カエデが十歳っていうことは、私の方がお姉さんだね。私、十二歳だし」

「え? じゅ、十二歳ですか?」

 私の前にいる二人は、何かを誇るかのように胸を反らしながらそんなことを言っていた。

 私は目をぱちくりとして、その小さな女の子の方を見ていた。

 身長は私と比べて頭半個分以上は小さな身長。くりくりとした栗色の瞳と同じ色をしている髪は、ツインテールに結ばれているせいもあり、より子供らしさを強調しているようだった。

 この子が私よりも歳上? これは、何かのボケなのかな?

「えっと、な、なんでやねん!」

「……え、急にどうしたの?」

 私がびしっと胸の前で手を動かしてツッコミを入れると、アリスさんは不信な物を見るかのように、眉を潜めてしまった。

「あれ? てっきり、ボケなのかなと」

「あ、私が年上ってこと疑ってるでしょ。どうせ、私の身長が小さいからでしょ」

「え、えっと、そんなことはないです、よ?」

「じゃあ、お姉さんの方をちゃんと見なさい」

 アリスさんは私の目の前に立つと、ジトっとした目を向けてきた。私が疑っていることを見抜いているのだろう。

 まぁ、これだけ目を泳がせながら言ったら、信じてもらえる訳もないか。

 私は失礼に当たらないようにアリスさんの方を見て、言葉を訂正しようとした。

 上目遣いで少し不満げな瞳。怒っているような逆ハの字の眉が可愛らしく、拗ねた子供のように頬を膨らませている。

「……可愛い」

「え?」

 そんな姿を直視してしまい、私は思わず心の声が漏れ出てしまった。

「小さいし、ほっぺももちもちだし、アリスっていう名前がもう可愛すぎますよ。存在がファンシー過ぎます」

「ちょ、ちょっと!」

「そうじゃろ、そうじゃろ。アリスちゃんはワシの可愛い孫じゃからな」

 私がアリスさんのほっぺをムニュムニュと触っていると、隣にやってきたおじいさんがアリスの頭を優しく撫でていた。

 小さな子供が大人たちに可愛がられる図。それが完全に完成していたのだが、可愛がられている本人は何やら不服そうだった。

 アリスさんは私達の手を振り払うと、一定の距離を取ってから私達の方に人差し指をびしっと突き立てていた。

 そして、照れている真っ赤な顔をそのままに、アリスさんは言葉を続けた。

「か、可愛くないし! それに、身長が小さくても私、元宮廷魔術師のおじいちゃんと同じくらい、魔法だって使えるんだから!」

「……宮廷魔術師って、なんですか?」

 初めて聞いたような、何かのアニメで聞いたことがあるような言葉を前に、私はアリスさんに聞き返していた。

「宮廷魔術師は世界で五人しかいないって言われてるくらい、凄い魔法使いなの! つまり、私はそれと同じだけの魔法が使えるってことなんだよ!」

「え、オラルさんって、そんなにすごい人だったんですか?

 目の前にいるアリスさんよりも、近所にいるようなおじいさんにしか見えないオラルさんが凄い人という方に驚きだった。

 私がオラルさんの方に視線を向けると、オラルさんは優しい笑みを浮かべたまま口を開いた。

「おじいちゃんと呼んでおくれ」

「……オラルさん」

「おじいちゃん、と」

「…………おじいちゃん」

「むふふっ、そう、おじいちゃんすごい人なんじゃよ」

 私におじいちゃんと呼ばれて満足したのか、オラルさんは嬉しそうに顔を破顔させるようにして笑っていた。

 ただおじいちゃんと呼ばれただけで、普通あんなに喜んだりするのかな?

「あっ、お礼が遅れてしまいました。私を助けてくれたんですよね? ありがとうございます」

「なに、感謝には及ばんよ」

「私が死にそうな所を助けてくれたんですよね? あれ? 私って、一回死んでるんですか?」

 そういえば、私は一回トラックに轢かれたのだろうか? 私が死ぬところだったから、この世界に呼んだんだって、オラルさんは言っていた気がするけど。

「いや、死んではおらんよ。死ぬ運命が決まった瞬間に、この世界に呼んだのじゃ。さすがに、黄泉の世界から魂を呼ぶことはワシにはできんよ」

「そうだったんですね。えっと、もしかして、なにかしら用があって呼んでくれたんですか?」

 何も理由がないのにわざわざ他の世界から人を呼んだりはしないと思う。

それに、深夜にやっていたアニメとかの感じだと、世界を救ってくれ! とかって言われる展開だったりする。
 
 ということは、私はもしかして選ばれし勇者だったり、するのかもしれない。

 少しの期待もあって、私はオラルさんにそんなことを聞いていた。

「アリスがずっと一人で寂しそうにしてたから、話し相手になって欲しいんじゃ。あ、あと、ワシの孫になってくれ」

「……はい?」

 思わず首を傾げる私を見て、オラルさんは満足そうに笑みを浮かべていた。
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