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第113話 気になること
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「ドーナさん、できましたよ」
私はさっそく作った料理を持ってドーナさんがいるテーブルにその二品を持っていった。
南蛮ダレの良く染み込んだ『アジザカナの南蛮漬け』と、お酢の酸味が染み込んだ『サーモンザカナのマリネ風』。マリネ風はマヨネーズをかけてあるマヨラー思考の一品となっている。
「おおっ、また知らない料理だな。すんっ……ん? どっちもお酢を使っているのか?」
ドーナさんは運ばれてきた料理を興味津々といった感じでじっと見た後、その匂い嗅ぎながらそんな言葉を漏らした。
今になって気づいたけど、どっちもお酢を使った新メニューになってしまっていた。
まぁ、それでもあくまで南蛮ダレとマリネは別の食べ物だろう。
「はい。お酢をベースに別の調味料を使ったって感じですね」
「なるほど……そんなこともできるのか」
ドーナさんは感心するように小さくため息を吐くと共に、そんな言葉を漏らしていた。
そして、不意に私ではないどこかに視線を向けた後、小さく笑い声をあげていた。
「エルド、なぜ当たり前のようにお酒を持ってきてるんだ」
「なぜって、酒のつまみになるかも確かめないとでしょ。あっ、これ、ドーナさんの分です」
エルドさんはそう言うと、いつの間にか持ってきた酒瓶とコップを机の上に置くと、お酒をとくとくと注いでいた。
どうやら、今から酒盛りをする気満々らしい。
まぁ、日々のエルドさんの頑張りを見て、今から酒盛りをしようというエルドさんを止められるものはいないだろう。
それに、試食と言って意気揚々と白米をよそって持ってきた私が、エルドさんを止められるわけがないのだ。
「あっ、ちょっとだけ待ってくださいね」
各々準備が整っていき、さっそく試食をしようというタイミングになったところで、私はそんな言葉を口にして店の外を覗いてみた。
しかし、私は少しだけお店から出てキョロキョロと探してみたけど、探している姿はそこにはなかった。
「やっぱり、今日も帰ってきませんね」
ドーナさんのお店で働いて数日が経った頃、何を思ったのかシキは少しだけ用事ができたと言ってこの街から離れた。
一ヶ月後のお店の手伝いが終わるころには帰ってくると言っていたし、シキなら何も問題はないと思うが、あれから一度も帰ってきていないとなると少し心配にもなる。
まぁ、シキからしたら、ずっとこの街でお店をやっているというのも退屈だったかもしれない。
それにしても用事って何のことだろ?
「アン、早く食べ始めようぜ」
「あっ、はい」
少し気になる所ではあるが、新メニューの試食に付き合ってもらっている二人をあまり待たせるのもよくはないだろう。
しょうがない、シキには帰ってきた時に色々作ってあげようかな。
そんなことを考えて、私はエルドさんたちのテーブルに戻るのだった。
私はさっそく作った料理を持ってドーナさんがいるテーブルにその二品を持っていった。
南蛮ダレの良く染み込んだ『アジザカナの南蛮漬け』と、お酢の酸味が染み込んだ『サーモンザカナのマリネ風』。マリネ風はマヨネーズをかけてあるマヨラー思考の一品となっている。
「おおっ、また知らない料理だな。すんっ……ん? どっちもお酢を使っているのか?」
ドーナさんは運ばれてきた料理を興味津々といった感じでじっと見た後、その匂い嗅ぎながらそんな言葉を漏らした。
今になって気づいたけど、どっちもお酢を使った新メニューになってしまっていた。
まぁ、それでもあくまで南蛮ダレとマリネは別の食べ物だろう。
「はい。お酢をベースに別の調味料を使ったって感じですね」
「なるほど……そんなこともできるのか」
ドーナさんは感心するように小さくため息を吐くと共に、そんな言葉を漏らしていた。
そして、不意に私ではないどこかに視線を向けた後、小さく笑い声をあげていた。
「エルド、なぜ当たり前のようにお酒を持ってきてるんだ」
「なぜって、酒のつまみになるかも確かめないとでしょ。あっ、これ、ドーナさんの分です」
エルドさんはそう言うと、いつの間にか持ってきた酒瓶とコップを机の上に置くと、お酒をとくとくと注いでいた。
どうやら、今から酒盛りをする気満々らしい。
まぁ、日々のエルドさんの頑張りを見て、今から酒盛りをしようというエルドさんを止められるものはいないだろう。
それに、試食と言って意気揚々と白米をよそって持ってきた私が、エルドさんを止められるわけがないのだ。
「あっ、ちょっとだけ待ってくださいね」
各々準備が整っていき、さっそく試食をしようというタイミングになったところで、私はそんな言葉を口にして店の外を覗いてみた。
しかし、私は少しだけお店から出てキョロキョロと探してみたけど、探している姿はそこにはなかった。
「やっぱり、今日も帰ってきませんね」
ドーナさんのお店で働いて数日が経った頃、何を思ったのかシキは少しだけ用事ができたと言ってこの街から離れた。
一ヶ月後のお店の手伝いが終わるころには帰ってくると言っていたし、シキなら何も問題はないと思うが、あれから一度も帰ってきていないとなると少し心配にもなる。
まぁ、シキからしたら、ずっとこの街でお店をやっているというのも退屈だったかもしれない。
それにしても用事って何のことだろ?
「アン、早く食べ始めようぜ」
「あっ、はい」
少し気になる所ではあるが、新メニューの試食に付き合ってもらっている二人をあまり待たせるのもよくはないだろう。
しょうがない、シキには帰ってきた時に色々作ってあげようかな。
そんなことを考えて、私はエルドさんたちのテーブルに戻るのだった。
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